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≪スプリングカラー・オニオン≫と魔法学校の編入試験

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≪スプリングカラー・オニオン≫と魔法学校の編入試験

リアクション

 その頃、イルミンスール魔法学校へと続く道を進んだ緋柱 透乃(ひばしら・とうの)達は、≪カメレオンハンター≫と交戦状態に入っていた。

「これだったら、見えなくても関係ないよね!」

 透乃は持前の怪力で丸太を持ちあがると、勢いよく振り下ろした。
 叩きつけた丸太から、豪風と共に地響きが周囲へ広がる。
 豪風を食らった≪カメレオンハンター≫の一人が、大木に叩きつけれて正体を現す。

「発見っ!」

 透乃は丸太を捨てて、≪カメレオンハンター≫へ向かう。
 上空から、姿を隠した別の≪カメレオンハンター≫が透乃へ襲いかかろうとする。

「そこにいるのはわかっています……」

 【地獄の天使】で飛行する緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)が、【ディテクトエビル】で察知して透乃を援護する。
 陽子は複数の鎖を利用して、敵がいると思われる場所を蜘蛛の巣のように囲い、逃げ場を奪う。  

「透乃ちゃんの邪魔はさせません!」

 陽子が引っぱると、鎖の牢は一気に縮小して敵を締め上げた。

 
 体制を崩した相手に攻撃をしかけにいった透乃は、増援にきた敵も含めて三対一の状況になっていた。
 素早い動きで刀を振り下ろしてくる相手に、透乃は攻撃のタイミングを狙う。
 しかし、連携のとれた攻撃に、一人を狙おうものなら背中からばっさりやられそうな状況だった。

「くぅぅぅ! なら、これどうだぁぁぁ!」

 透乃は飛び退くと、気合と共に地面を殴りつけた。
 すると、周辺の地面を大きく揺れ、亀裂が走った。
 ≪カメレオンハンター≫達がバランスを崩す。
 その隙を逃さず、透乃は地面を蹴った。

「ひとぉぉぉぉつ!!」

 透乃の燃え上がる拳は、相手の武器の刀身を溶かして胴体へと直撃した。
 金属が砕ける音がして、≪カメレオンハンター≫が遥か彼方へと吹き飛ぶ。

「およっ、鎧か」

 透乃は腕を回しながら、残りの≪カメレオンハンター≫を振り返る。
 ≪カメレオンハンター≫が後ずさった。

「さて、残りは二人だね」

 ニヤリと透乃が笑っていた。


 透乃が戦っている場所から少し離れた位置で、≪カメレオンハンター≫が爆弾を手に狙いを定めていた。
 戦っている仲間ごと透乃を爆破してしまおうとしているのだ。
 手をゆっくり振り上げる。
 すると、足元で何かが動き回る音がした。
 ≪カメレオンハンター≫は不思議に思って見下ろすと、大量の虫が身体にまとわりついていた。

「おっと、こんなの落としちゃだめよ」

 月美 芽美(つきみ・めいみ)が≪カメレオンハンター≫の落とした爆弾をキャッチする。
 ナイフを取り出そうとする相手のみぞおちに、芽美が拳を叩き込む。
 呼吸困難に陥り膝をつく≪カメレオンハンター≫。
 芽美は背後から蹴り飛ばし相手をうつ伏せにさせる。

「それではショウタァァイム♪」

 芽美はうつ伏せになっている≪カメレオンハンター≫の首に足を置くと、ゆっくりと電流を流し始めた。
 痙攣を起こして、泡を吐くのを構わず続ける。
 すでに気絶しているにも関わらず、芽美は肉が焼けて異臭が漂うまで攻撃を続けた。

 芽美が足を離すと毒虫達が失神している相手に群がっていく。

「さてと、他の子はどこにいるのかしらね」

 地を蹴った芽美は、一瞬のうちに世界樹が大きく成長させた森の中へと消えて行った。


「援護を頼む!」
「了解しましたでふ」

 「代理人の大剣」と「GARB・OF・BH’S」を組み合わせた剣を手に、十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)が前へでる。
 リイム・クローバー(りいむ・くろーばー)は賢狼を使って相手の位置を探る。

「みつけたでふ」

 賢狼が吠えた方角にリイムが銃弾を撃ち込んだ。
 弾丸は鎧に命中し、≪カメレオンハンター≫が姿を現す。
 姿を隠すのを無意味と判断したのか、敵が次々と姿をあらわす。
 敵は宵一達を囲むようにして武器を構えていた。

「一気に決めるぞ!」

 宵一が剣を握り直す。
 一瞬、刀身の青白い炎が揺れた。
 瞬間、宵一は相手の懐にとびこみ、【シーリングランス】をぶち込んだ。
 吹き飛ぶ敵。
 怯んだ隙に、宵一はリイムの弾幕援護を受けて敵を行動不能に追い込んでいった。


 拳銃を両手に持った佐野 和輝(さの・かずき)は、立ち止まって周囲の空気に神経を研ぎ澄ませる。
 ≪カメレオンハンター≫が近くにいることは分かっていた。

「……」
「和輝、相手の位置を伝えるよ」
「了解」

 和輝は【精神感応】でアニス・パラス(あにす・ぱらす)から≪カメレオンハンター≫の位置を聞く。
 数はそう多くない。
 グリップをしっかりと握り直す、和輝。
 魔鎧になったスノー・クライム(すのー・くらいむ)が話しかけてくる。 

「これくらいならいけるわね。
 でも、油断禁物よ」
「わかっています」

 和輝はゆっくりと歩き出しながら、腕を左右に伸ばす。

「開幕です」

 ――引き金を引かれる。
 その銃声を合図に、木々の隙間から次々と銃弾が飛んでくる。
 和輝は目だけで位置を確認して、【ゴッドスピード】を使った軽やかな動きで銃弾を回避し、反撃に弾丸をぶち込む。
 身体を反らし、丸太を蹴り、空中を舞いながら、さらに大量に銃弾を撃ち込んだ。
 敵の銃弾が止む。
 
「和輝、上!」

 ≪カメレオンハンター≫が両手にナイフを持って飛び降りてくる。
 和輝は一瞬で腰のホルスターに二丁拳銃をしまう。
 相手は至近距離でナイフを交互に繰り出してくる。
 和輝は連続で手を弾いてそれを回避した。
 隙をついて強烈な蹴りを入れる。
 体制を崩した相手の手を思いっきり弾いてナイフを奪うと、相手の喉を切り裂く。
 崩れる敵。
 周囲が静かになった。
 どうやらもう敵はいないようだ
 
「……完了」

 和輝は地面にナイフを投げ捨て、次の標的を探しに行った。


「罠、発見です」

 ルナ・クリスタリア(るな・くりすたりあ)が、賢狼や動物と会話して仕掛けられた罠を発見した。
 そして事前に渡されていたペイントボールを、傍の木に投げつける。
 賢狼の背に乗ったルナは次に向かおうとした。

「あ、まずいですぅ……」

 だが振り返ると、そこには≪カメレオンハンター≫がナイフを持って立っていた。
 賢狼が低い声で威嚇する。
 相手は怖気づくことはなく、ナイフを振り上げてくる。

「きゃっ!?」

 もうだめだと思い、顔を隠すルナ。
 一瞬で、頭が真っ白になった。
 ……しかし、待てどもナイフが振り下ろされる気配はなかった。

 顔を上げてみると、≪カメレオンハンター≫の顔面にキュゥべえのぬいぐるみがくっついていた。
 空飛ぶ箒ファルケで飛んでいたアニスが降りてきて、敵にサイコキネシスで丸太をぶつけて気絶させる。

「大丈夫だよね?」
「あっ、ありがとうございますぅ」

 ルナはほっと胸を撫で下ろす。


 ――その時、爆発音が連続して鳴り響いた。

「な、何事ですかぁ!?」

 爆発音は祠の方から聞こえていた。