校長室
お祭りなのだからっ!?
リアクション公開中!
\(○ ◇ ○)/\(○ ◇ ○)/ 『!? 予想外!?』 \(○ ◇ ○)/\(○ ◇ ○)/ 「い、以上。ヴィ・デ・クルのイベント会場からでした」 戸惑いを隠せないラジオパーソナリティの声。それを聞いている早見 騨(はやみ・だん)達もポカンとした表情をしていた。 先ほどまでイベント会場の様子がラジオで流れていた。映像がなくても、ライブの熱狂が一瞬にして冷めていくのがありありと想像することができた。 この空気をどうにかしようと必死になるラジオパーソナリティ。 「ええっと、祭りでは現在屋台の人気ランキングが行っています。途中経過を発表いたしますと、一位がジーナさんの中華屋台、二位エースさんの猫喫茶……」 上位十位までの屋台が紹介され、その後一つ一つのお店について解説が行われた。 「なお、この後は花火が――」 「花火……!?」 ぼんやりしていた騨は慌てて時間を確認した。 「やばっ、もう時間がない! あゆむ、一緒に来て!」 「え、騨様!?」 騨は≪猫耳メイドの機晶姫≫あゆむの腕をつかむと、強引に外へ連れ出した。残された生徒達も顔を見合わせると、制止を聞かずに慌てて飛び出していった騨を追いかけることにした。 転びそうになるあゆむを急かして騨は走る。男女集団の間を抜け、恥ずかしげな恋人を避け、時折人とぶつかりながらも騨はあゆむの手を握りしめて走った。 そして、彼らは飛空艇の乗船場へと辿りつく。 「あの! ミッツさんから連絡がいってると思うんですがっ!」 騨は目的の飛空艇の前に立っていた係員に名前を告げる。予約の確認が行われ、騨はついてきた生徒達と一緒に飛空艇へと乗り込んだ。 飛空艇はゆっくりと空へと舞いあがり、街から離れすぎず一定の距離を旋回し続けた。 デッキに立つ騨は、風を感じながら一安心していた。すると、横に立ったあゆむが問いかける。 「騨様、この飛空艇はどこに行くんですか?」 「ああ、それはね……」 騨が答えようとした時―― ドォン 真っ赤な花火が、目の前の空で花開いた。 「わぁ……」 「近いでしょ?」 嬉しそうに頻りに頷くあゆむ。飛空艇から眺める花火は、見上げるよりも大きくて綺麗に感じられた。 騨は花火で照らされた愛しい人の横顔を暫く眺めていた。喜んでもらえてよかった。 「あゆむ、これ……」 タイミングを見計らって騨はあゆむにプレゼントを渡す。紙袋に入っていたのは、安物のガラスのイヤリング。 一生懸命選んだ物だが、いつか本物の宝石がついた物を送りたいと思ってしまう。 「ありがとうございます」 あゆむはその場で耳につけた。キラキラと光ながら揺れるイヤリング。いつも幼く見えるあゆむが少し大人っぽく見えて、騨は赤くなった頬を隠すため花火を見るふりをしていた。 その様子を見ていたキリエは今にも飛びかかりそうで、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)は前に立ってどうにか止めようとしていた 「落ち着いて、キリエさん。飛空艇の上で暴れると危険だからね。」 「………………………………………はぁ」 歯を剥きだしにして苛立ちを露わにしていたキリエが、深いため息を吐く。 「わかったちょよ。あなたがそう言うなら、今日は見逃すちょよ」 そう言ってキリエはベンチに座ると、エヴァルトと花火を鑑賞することにした。 フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)の店で、ポミエラ・ヴェスティン(ぽみえら・う゛ぇすてぃん)は生徒達とくつろいでいた。 「来年の夏はモデルさんをいっぱい雇って盛大にやりたいですわ」 ポミエラがテーブルにぐたりと顔をつけてだらける。すると、想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)がポミエラの口にお菓子を運びながら提案する。 「またファッションショーもいいけど、来年はどっか一緒にいこうよ」 「もぐもぐ……いいですわね。どこにします?」 「う〜ん、瑠兎姉は何かある?」 「あるわよ」 想詠 瑠兎子(おもなが・るうね)はポミエラに顔を近づけ、ニコニコしながら答える。 「ねぇ、ポミエラちゃん。来年は一緒に海に行きましょ!」 「海? いいですわね!」 身体を起こして立ち上がると、ポミエラは腰に手を当て胸を張る。 「その頃にはきっとグラマーなお姉さまになってますわ!」 ポミエラは鼻を高くして、さらに胸を張りまくっていた。 「海か……」 ポミエラ達の会話を聞いていたベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)は、フレンディスにそっと話しかける。 「なぁ、フレイ」 「なんですか、マスター?」 「来年も一緒にどこかいくか」 「いいですね。またみ――」 「二人きりじゃだめか?」 ベルクの思わぬ発言に、フレンディスは驚いた。そして、顔を真っ赤にして一歩距離をとる。 この距離がいつか縮まればいいなと、ベルクは思うのだった。 「いや〜、今日もよく働きました」 出し物が全て終わり、すっかり寂しくなったイベント会場。そこでレティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)はミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)に膝枕をしてもらっていた。ミスティが腕を揉んでマッサージをする。 「ほんとお疲れさま、レティ」 「うう〜ん、回復術もいいですけど、やっぱりこういうのもいいですねぇ」 身体の上に脱いだ祭りの衣装をかけられ、時折団扇で心地よい風が頬を撫でる。レティシアは気持ち良すぎて今にも寝てしまいそうだった。 そんな彼女達のすぐ近くのテーブルでは富永 佐那(とみなが・さな)がライブの成功を喜んでいた。 「新メンバーの告知もうまくいきましたし、いっぱい希望者が来るといいですね♪」 「佐那さんは随分嬉しそうね。それに比べてこっちは……」 佐那と同じテーブルについていたアイビス・エメラルド(あいびす・えめらるど)が、暗いオーラを漂わせる隣のテーブルへと目を向けた。そこには本人の意志とは関係なくライブに参加させられた榊 朝斗(さかき・あさと)、ルシェン・グライシス(るしぇん・ぐらいしす)、弓彩妃美の姿があった。 「また、あんな恥ずかしい恰好……」 「私も巻き込まれるとは……」 「しかもテレビ放送ね……」 「「「ハァ……」」」 額を机にくっつけた三人のため息が、見事に重なる。ルシャンと妃美が巻き込まれた事に一枚噛んでいるアイビスは、罪悪感から慰めを試みる。 「ほら、でも大丈夫よ。テレビは生放送じゃなかったみたいだし、きっとうまく編集してくれるわよ。だからそんなに深く落ち込むことは――」 再び聞こえてきた先ほどよりさらに深いため息。慰めは失敗に終わった。 飛空艇の整備所。この場所で腕力を認められて酒の席に誘われた緋柱 透乃(ひばしら・とうの)は、男達と腕相撲をしていた。 「よっし! また私勝ちだね! お酒まだー?」 透乃は勝てば酒を飲むことができた。負ければ代わりにタダの水道水というルールだったが、結局連勝無敗。空になったグラスが次々とテーブルに並べられていく。 すると、その様子を眺めていた緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)が酒を口にしながら注意する。 「透乃ちゃん、あんまり飲んでますと皆さんの分が無くなってしまいますよ」 「あ、そうだね。ごめんごめ――って、陽子ちゃんの方が飲んでるじゃん!!」 陽子を振り返り、透乃は大声を出すほどに驚いた。そこには透乃の倍以上あるグラスと、酔い潰れた男に囲まれた陽子がいた。 「これはですね……私と皆さんの分です♪」 陽子は新たにグラスを空にしながら笑いかけていた。 そんな二人から離れた席では夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)が祝杯をあげていた。 甚五郎は花火の手伝いを行ったことを感謝をされていた。 「いやいや、こっちこそ貴重な経験と酒の席まで用意してもらい感謝してる」 遠隔操作で打ち上げられる花火は、もうすぐ終わりを迎えようとしている。 大変で長かった準備期間。でも花火は一瞬で終わってしまう。寂しいと思えるが、誰かの心に刻まれる物になれたら、街に元気を届けられたら、それも悪くない。 甚五郎が感傷に浸っていると、阿部 勇(あべ・いさむ)の声が聞えてきた。 「だから、僕はまだ未成年ですって!」 勇は酔っぱらった男達に酒を勧められ、断っていた。その様子を甚五郎は苦笑いで見守る。 「ああ! やっと甚五郎を発見しましたよ、羽純ちゃん!」 そこへホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)と草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)が、屋台で買ってきた食べ物で両手をいっぱいにやって来た。 「おぬしら遅かったな」 「それはそうであろう。何の連絡もなしにこんな所へ行かれては、探すのにも苦労するであろうに」 「もう少しで迷子センターで呼び出す所でしたよ」 「迷子センターか……」 甚五郎は自分が呼び出されている所を想像して苦笑いを浮かべた。 ホリィ達と一緒にやってきた月美 芽美(つきみ・めいみ)は、陽子の隣に座り込む。すると陽子はグラスを片しに来た女性に追加を頼み、芽美に質問を投げかける。 「芽美ちゃん、透乃ちゃんから聞きましたけど、何かいいの描けましたか?」 「ええ、いくつかね」 芽美は絵に描いたファッションショーでの大合唱や、ライブの風景を陽子を見せていた。その出来栄えは見事と言わざるを得ないものだった。 その時、空に最後の花火が上がる。関係者しか入れない整備所で見る巨大で眩い花火は、まるで夜空に描かれた大輪を独り占めしているかのようだった。 「結和、ちょっといいかな」 最後の花火の直後、飛空艇のデッキで、アンネ・アンネ 三号(あんねあんね・さんごう)は高峰 結和(たかみね・ゆうわ)に声をかけた。数回言葉を飲み込みながら、三号はようやく言いたい言葉が喉から出てくる。 「どうしようかはっきり決めた訳じゃないけど……」 三号は聞かされた過去について悩んでいたことを告白すると、償いと全て過去を知るため、それに結和達を傷つけないために旅に出ようか考えていることを話した。 話を聞いた結和は黙って俯く。三号は頭を撫でようと手を伸ばすが、途中で自分の手が震えていることに気づいて引っ込めた。傷つけるかもしれないという脅えだ。 三号は背を向けて、結和から離れようとする。すると――結和が背後から抱きついてきた。 「三号さん。私はあなたの、パートナーですよ?」 三号は離れようとするが、がっしり腕を回されて逃れることが出来ない。 離れたくない。お別れなんてしたくない。結和の脳裏に三号と過ごした思い出がよみがえる。楽しかった思い出。つらかった思い出。一緒に進んできた道だ。 湧き上がる胸の想い。気管を通ってあふれ出る想いに、喉が焼けるように痛い。目を開けてたら涙が零れ落ちてしまいそう。目を閉じてもあふれ出てしまいそう。 早く言わないと泣いてしまう。 「どうか、離れて行っちゃうなんて、言わないで……信じているん、です。私は、あなたが……」 ついに結和の言葉に嗚咽が混ざりだす。結和はそれを必死に堪えるように、三号から離れて両手で顔面を覆い、最後の言葉を絞り出した。 「私は今の、あなたが……好きです」 三号は結和の言葉に驚いていた。どう反応していいのかわからず戸惑う。ただ、目の前の大切な人は今も辛い思いをして泣いている。彼女を苦しめ、傷つけているのは自分だ。 胸に決意し、三号は大きく深呼吸する。 そして、そっと結和を抱きしめた。結和は周囲の視線も気にせず盛大に泣きだした。 飛空艇が地上に降り立つと、乗客は次々と降りはじめた。その頃には結和も泣きやみ、自分の恥ずかしさを理解して慌てて三号から離れた。 なんか勢いで告白みたいになってしまった……。 結和は顔を真っ赤にして、早口に言い訳をする。 「そそそれに私だって修行とか頑張ってますしいざとなったらきっとお止めしますからっ。笑いあいたいので命をかけてとは言えないかもしれないですけど……が、がんばりますからっ」 その慌てっぷりに、三号は思わず笑い出し、結和もつられて笑った。 三号は今後どうするか、まだはっきり決めたわけじゃない。でも結和を置いて勝手にどこかに行くわけにもいかない。彼女はきっと追ってくるし、迷惑をかけるだろう。それは危険を伴うかもしれない。 なら僕は……。 沢山の思い出を残した今年の夏が終わる。 それぞれの想いを胸に、新しい季節が始ろうとしている。 (END)
▼担当マスター
虎@雪
▼マスターコメント
この度は『お祭りなのだからっ!?』に参加していただきありがとうございました。 リアクション製作を担当させていただきました、虎@雪(とらっとゆき)です。 今回で久しぶりの戦闘なしでしたが、どうでしょうか。楽しんでいただけたでしょうか。 皆さまに楽しい思い出を残せたのなら嬉しいです。 いつものことながら素直な感想が聞ければ、嬉しいと思います。 機会がありましたら、またどうぞよろしくお願いいたします。ありがとございました。