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お祭りなのだからっ!? 

リアクション公開中!

お祭りなのだからっ!? 
お祭りなのだからっ!?  お祭りなのだからっ!? 

リアクション



◇ ◆ ◇ 『飲んでも飲まれすぎるな! 酒にも熱気にも!』 ◇ ◆ ◇

 イベント会場は大盛況。幾つかの出し物が終了した頃には既に会場の椅子は埋まり、立ち見の客が出るほどだった。
「席は空けずに座ってください! 混雑のため出し物が行われている最中はご退出できませんのでご了承ください!」
 会場の司会進行役を担当しているレティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)は、マイクを通して来場者達に呼び掛ける。
「会場は現在満席です! ネットでの配信も行っていますので、よろしければそちらをご覧ください!」
 会場の外でも源 鉄心(みなもと・てっしん)が入りきらない客に対して必死に呼び掛けていた。
 そんな光景を月美 芽美(つきみ・めいみ)は一人時計塔から見下ろす。
「すごい混雑してるわね。ある意味ここは特等席ね」
 動画撮影のためのビデオカメラを設置し、手元には写真撮影用のカメラ。さらに傍らには気にいった絵を描くための画材が置かれている。
「そろそろ透乃ちゃん達の番ね」
 入場が規制され、会場のざわめきが徐々に落ち着き、レティシアが次の出し物を紹介する。
「大変お待たせしました! 続きましては透乃さん達によるドキドキハラハラのショーをお送りいたします! どうぞ拍手でお迎えください!」
 レティシアが紹介と共に幕の袖へと身を引くと、代わりに拍手の中緋柱 透乃(ひばしら・とうの)緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)が舞台に上がってきた。
 透乃は観客に大手を振ると、中央で陽子と共にお辞儀をする。挨拶を終えると、陽子がマイクを手に観客へショーの説明をする。
「今からこちらの透乃ちゃんが次々と重い物を持ち上げます。皆さまはぜひ曲とともに手拍子をお願いいたします」
 会場に軽快なメロディーが鳴り響き、拍手が重なる。
 透乃は舞台の袖にあらかじめ用意された鋼鉄製のマストを持ち出すと、まずは余裕の様子で自転車を運んできた屈強な男ごとマストに乗せて持ち上げてみせた。
 次に自転車と男を一端降ろすと、今度は二人がかりで運んできた冷蔵庫を乗せて持ち上げる。揺らめく素振りを見せつつも、足を動かすことなくバランスを保った。
 さらにもう一度降ろすと、男が数人で運んできた自動車も同様に持ち上げた。
 会場から感嘆の声と激しい拍手が起こる。
「ではここからは少しヒートアップしていきましょう」
 曲のテンポが上がった。
 陽子の一声で男達は次々と重たい物を運び込み、【奈落の鉄鎖】で一時的に軽くしたそれらを次々と自動車の上へと積み重ねていく。
 肩に乗せたマストで全てのバランスをとる透乃は、投げつけるように物が乗せられるたびにふら付きつつもバランスをとって見せる。そのたびに会場全体が息をのみ、ホッと胸を撫で下ろした。すでに拍手のことなど忘れている。
「ここで一つ、私の剣の舞も皆様に披露したいと思います」
 ある程度積みあがった所で曲調が変わり、ふわりと浮く箒の上に乗った飛び乗った陽子が【剣の舞】を踊り始めた。具現化させた剣を手に、一本の箒の上で踊る姿は思わず見とれてしまうほどの美しさだった。
 そんな中、マストで大量に物を重ねた透乃が歩き始めた。壇上をゆっくりと降りて観客の目の前へ。密集した会場内の間観客は、イスに背中を押し付け、固唾を飲んで見守る。
 ふいに、陽子が具現化した剣を積みあがった物の一つに投げつけた。剣が刺さり大きく揺らぐと、観客から言葉にならない悲鳴が漏れだす。それは数回に渡って繰り返され、透乃はどうにかバランスをとって見せた。
 全て投げ切り、舞台に降り立った陽子が再びマイクを手にとる。曲が停止した。
「ご視聴ありがとうございました。この辺で『フィニッシュ』と締めくくりたいと思います」
 そう告げ終ると、陽子は透乃とアイコンタクトをとった。
 そして――透乃がマストごと積み上げた物を全て、観客に投げつける。悲鳴が会場を埋め尽くした。
 頭上から迫りくる大量の物質。逃げる場所も、その時間さえも与えられず、観客は目を見開いていた。そんな中――

 パクリ

 突如現れた陽子の虚無霊:ボロスゲイプが、全ての物を呑み込んでしまった。
 皆が呆然としていた。そんな中、曲が再び流れだし、透乃と陽子が深くお辞儀をする。我に返った観客は、慌てて拍手と歓声をあげていた。

「お疲れー」
「お疲れさま、透乃ちゃん」
 時計塔にいた芽美の元へ、透乃が梯子を昇ってやってきた。芽美は笑顔で迎え入れる。
「見てたわよ。大成功だったわね」
「ありがとう♪」
 褒められて嬉しそうにする透乃。鳴りやまぬ拍手が今でも耳に響いていた。
「あ、そうそう。芽美ちゃんはこれからどうする? 私達、整備所のおじさんたちに誘われて一緒に飲むことになったんだけど」
 ショーが終わった透乃は、客席で見ていた整備所で働くおっさんに腕っぷしを認められ、仲間内で行われる飲み会に誘われていた。
「そうね……もうちょっと見てたいから、後で行かせてもらうわ」
「わかった。その時は連絡ちょうだい」
 透乃が梯子を降りていく。梯子にかける足音に混じって、「タダ酒〜♪ タダ酒〜♪」と楽しそうな声が聞えてきた。その声に芽美は笑いを漏らした。
 声が聞えなくなると、芽美は傍らに置かれた画材を舐めるような手つきで触れた。
「壊したくなるような、良い場面に出会えるかしらねえ……ふふふ」
 芽美の狂気を感じさせる笑いをかき消して、眼下では観客達が新たな出し物に拍手をあげていた。

 会場ではポミエラ・ヴェスティン(ぽみえら・う゛ぇすてぃん)が企画したファッションショーが行われようとしていた。司会進行役を担当することをことになっている遠野 歌菜(とおの・かな)は、笑顔で観客に呼び掛ける。
「本日は当ファッションショーにお越し頂き、誠に有難う御座います♪ 本日の司会は、私『魔法少女 マジカル☆カナ』が務めさせて頂きます!」
 【変身!】で一瞬して魔法少女の華やかな衣装に変身する歌菜。会場から驚きの声と口笛が起こる。
 歌菜が舞台上でショーの趣向の解説と注意事項を説明しだす。
 その頃、舞台袖ではポミエラ達が慌ただしく動き回っていた。
「たっ、ただいま」
「もう遅いですわ! 急ぎますの!」
 街で宣伝していた想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)がようやく戻ってきた。急いで衣装に着替えてもらうと、ポミエラは夢悠に化粧を施す。
 その横では弓彩 妃美が青ざめた表情で床の一点を見つめている。
「緊張してきたわ」
「深呼吸、深呼吸、リラックスしなきゃ」
 想詠 瑠兎子(おもなが・るうね)がそっと妃美の両肩を掴んで呼吸を促す。
 会場に音楽が流れ出した。
 音響と照明を担当していた月崎 羽純(つきざき・はすみ)が小声で合図を送ってきた。モデル達の緊張が高まる。
 一番手のセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が進み出る。
「ポミエラちゃん、お先に行ってくるわね」
「お願いしますわ!」
「それじゃあ行くわよ」
「しっかりねセレン」
 セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)に見送られ、セレンフィリティは舞台へ。膝丈の華やかな柄のワンピースにカーディガンを羽織り、コットンハットを被ったセレンフィリティ。
 照りつけるスポットライトに一瞬だけ目を細め一歩踏み出すと、そこにはモデルとしての一人の女性がいた。背筋を伸ばして、デザインされた服の魅力を存分に引き出すように舞台上をゆったりと歩く、セレンフィリティ。
 続いて清楚さをイメージした衣装でセレアナが登場する。落ち着いた印象に会場のどこからか感嘆が漏れる。
 そんな中、舞台袖では妃美と夢悠が弱音を吐いていた。
「い、今から逃げちゃだめ?」
「オレも……」
「しっかりしなさい!」
 二人は瑠兎子に背中を思いっきり叩かれた。
 渋々と舞台に上がった妃美は、緊張のためぎこちない動きで転びそうになっていた。しかし一度経験して慣れたらしく、衣装を変えた後は少し余裕が見えていた。
 女の子の姿をさせられた夢悠は、自分だとばれないか心配していた。囁き声が聞えるたびに不安になり、戻るたび瑠兎子にああしろこうしろと指摘を受けた。
 余裕で振る舞う瑠兎子になぜそんな風に振る舞えるか尋ねると、「楽しいから」と答えた。
「いってきますわ!」
 ポミエラの番になる。彼女は緊張していたが、不安はなかった。自分がデザイナーの子どもだから、誰にも負けない絶対の自信を持っていた。
 流れる曲に合わせて竪琴を演奏するティー・ティー(てぃー・てぃー)が口だけ動かして応援してくれた。フルートを懸命に吹くイコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)とも目が合い、応援してくれているとわかった。
 ポミエラは堂々と自分が作った衣装を身につけて、舞台に上がって行った。

「うまくいきそうだな」
 ショーが順調に進んでいることに安心する羽純。間もなく全ての衣装を披露し終わる。無事終了。そう思われた時だった。
 ――ピィ!
 突如、曲から外れた間の抜けた音が鳴り響く。
 振り返ると、イコナがパニくりながら音を取り直していた。その額には大量の脂汗。疲労が滲み出ていた。
 さらに外れはじめる音。ざわめきが余計にイコナを焦らせる。ティーが落ち着くように声をかけていたが、泣き出しそうな勢いである。
 羽純はギターを手にとり、ごまかしとフォローを入れようとした。その時――
「〜♪」
 ふいに会場から羽純のものではないギターの音が鳴り響く。舞台袖から覗きこむと、皆川 章一(みながわ・しょういち)が演奏をしていた。
 羽純は目を瞬かせ、苦笑した。
「俺も行くか」
 タイミングを見計らい、羽純はギターを演奏しながら舞台に上がる。呆然としていた歌菜が振り返り、視線が合う。
 歌菜は羽純の意志を理解して頷くと、優しい声で歌いはじめた。

「夏は今、この胸に〜♪
 輝く夏――」


 会場が音楽に包まれ、観客が耳を澄ませ、曲合わせて身体を揺らす。ようやく落ち着いたティーとイコナも演奏に参加し、舞台袖から衣装をきたポミエラ達モデルが現れる。踊りだした夢悠に合わせてモデルたちが動き始め、舞台が華やかになっていく。

「弾ける笑顔 貴方と夏〜♪
 楽しもう☆」


 歌菜が飛び跳ねると、舞台の後ろ側でカラフルな爆発が起きていた。まったく知らされていなかった生徒達は驚きつつも、ファッションショーは無事に終わりを迎えた。

 ショーが終わり、ポミエラ達は会場の裏手で羽純が用意していた飲み物を手に休んでいた。
「むぅぅぅ」
 セレンフィリティが洋服を着た感想を良い点と悪い点をそれぞれ正直に伝えると、ポミエラは感情を隠さず表に出しながらメモをとっていた。
「さっきの服可愛かったね、お母さん」
 ショーは観終わった佐野 悠里(さの・ゆうり)は、母親の佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)に連れられて会場の裏手に回っていた。
「確か悠里ちゃんと同じくらいの歳の子がデザインしたんですよぉ。ええっと……ほら、あの子です〜」
 ルーシェリアの指さす先には生徒達と談笑をしているポミエラの姿があった。
「あの子が作ったの?」
「そうですぅ。せっかくですから、お友達になってみてはどうですかぁ?」
 言い終わるや否や、ルーシェリアは悠里の腕を掴んでポミエラの元へと歩いて行った。
「あ、ちょっとお母さん!?」
「こんにちは〜」
「こんにちわですの!」
 笑顔のルーシェリアに挨拶を返すポミエラ。悠里も緊張気味に挨拶をした。
 悠里がこの後どう話をしたらいいか悩んでいると、ルーシェリアが話を進めていく。
「ポミエラさんよかったら悠里ちゃんのお友達になってくださいませんかぁ?」
「ちょ、お母さ――」
「いいですよ!」
「即答!?」
 あっさり友達になってしまった。
 お互いに通っている学校について話し、趣味について話した。ショーで披露された服が気にいったと伝えると、ポミエラは大喜びで試着を勧めた。
「どうですか?」
「そうね……ちょっと胸が――」
 実際ポミエラが来た服を着てみると、特に胸がきつくチャックが閉まらなかった。すると、ポミエラが涙で瞳を潤ませていた。
「うわっ!? だ、大丈夫だからっ! すぐ大きくなるから!? 身長の問題かもしれないし、だからほら泣かないで!?」
 終いにはついに泣き出してしまったポミエラに困り、悠里はルーシェリアに助けを求めていた。

「楽しそうだね」
 ミッツ・レアナンドとその友人ジェイナスが歌菜達の元へやってきた。彼らは羽純からの連絡で夏祭りへ遊びに来ていた。
「ショー、見せてもらったよ。どうだった最後の爆発? 驚いただろ?」
「あれミッツさんの仕掛けなの!?」
「怪我人がでたらどうするんだ……」
 目を丸くして驚く歌菜に対して、羽純は額に手を当てて呆れていた。
 ミッツは病院から抜け出した日のことを熱く語り上げ、その元気な姿に歌菜と羽純は安心した。
 その一方で、泣きやんだポミエラの所に笹野 朔夜(ささの・さくや)がやってくる。
「ポミエラさん、こんにちは」
「あ、朔夜さんお久しぶりですわ! それに――」
 ポミエラは朔夜に挨拶すると、視線を外して脇に立っていたアンネリーゼ・イェーガー(あんねりーぜ・いぇーがー)の元へと両手を広げて駆け出した。
「アンネリーゼさんも!」
「お久しぶりですわ!」
 アンネリーゼはポミエラのハグを受け止め、力強く抱きしめた。朔夜は嬉しそうに微笑むと周りを見渡す。人数が増えたせいか、ショーの準備をする人達の邪魔になりつつあった。
「積もる話もあるでしょうが、とりあえずお店を見て回りながらにしませんか? さすがにこの数で固まっているのは迷惑でしょう」
「そうですわね。でしたらまずは浴衣に着替えましょう。たしか貸し出している店があったはずですわ!」
 朔夜は自分の中に奈落人の笹野 桜(ささの・さくら)がいることを教え、笹野 冬月(ささの・ふゆつき)が待っていることを伝えると、冬月と合流してから移動をすることを決定した。
「よっしゃ、屋台を冷かして回るか!」
「ミッツ。そんなことをしてると実家に連れ戻されるぞ」
 ジェイナスに釘を刺されて舌打ちするミッツ。
「俺はパーティーの手伝いがあるのでこれで」
「さっきは助かった」
「いいえ、こちらこそ楽しかったよ」
 ≪猫耳メイドの機晶姫≫あゆむのパーティーを手伝うために別れることになった章一に、羽純は感謝を告げた。
「私も手伝い頼まれているから残るね」
「はいですわ。頑張ってくださいですの」
 妃美も富永 佐那(とみなが・さな)の手伝いのため残ることに。
「では行きますわ!!」
 ポミエラは残った生徒達と一緒に街へと繰り出した。