リアクション
――エピローグ――
戦いは終わった。村人は助かり、村を跋扈していた輩は縄で縛られ、適当な荷車に積み上げられている。しかし、そんな中にあっても、一同は勝利の余韻にも浸れないでいた。
その理由は明白である。なぜなら、少女、ムゥの容体が次第に悪化していたからだ。
村に残った契約者の中で、治療が出来る人は力の限りを尽くして治療にあたったが、いかんせん効き目がほぼないと言っていいほど薄い。
もうすぐムゥが本当に死んでしまう。そんな時だった。
「ムゥ! 大丈夫か!!」
扉が忙しく開き、全力で走ってきたアリフがムゥの元に駆け寄った。
部屋に夕焼け時のオレンジ色の光が差し込む。アリフの手には小瓶がしっかりと握られており、それを目にすることが出来た周りの人々はみな、やっと安心が出来た。
「ムゥ……もう大丈夫だからな」
アリフは瓶の蓋を開け、少女の口に特殊な薬草を煎じた液体を流し込む。
ピクリ、とムゥの喉が跳ねた。きっと生きたいという彼女の意志が、咽を動かしたのだろう。ムゥは小さな咳と共に、次第に呼吸の音を大きくしていった。
「…………」
ただ無言で、アリフは空になった小瓶を投げ捨て、ムゥの手を握る。
ムゥの手は徐々に熱を取り戻していく。感覚がまだ完全に戻り切っていないアリフの手にも、その事実がよくわかった。
アリフはその暖かさを両手でかみしめながら、ゆっくり、ゆっくりと頭を下げた。
「…………良かった。本当に、本当に良かった…………」
心からの言葉が、小さなその発音が、村中の全ての人に聞こえたような気がした。
「契約者の人たち……本当にありがとうな。おかげでこの村も救えたし、何より、ムゥが助かった」
数十分後、アリフも契約者も傷の治療が終わり、改めて彼が礼を言う。
30名を超す人々は流石に一つの家には入りきらなかったが、それだけ多くの人に助けてもらえたことが、アリフにとって本当にうれしかった。
「ヤバルも、ダグザも倒れた。ダインスレイヴ傭兵団も捕まえた。何もかも、アンタ達無じゃぁ出来なかったことだ。まったく、アンタらは村の英雄だよ。村長としても、人としても感謝だ」
アリフは笑った。血だらけの服は裂け、爪は変色し、長距離を走った足は疲労困憊だったが、それでも感謝の気持ちに精一杯笑った。
その気持ちは、一同にも強く伝わっただろう。そんな中……
「アリフ……!」
「! ムゥ! ダメじゃないか休んでなきゃ。まだ歩けるような状態じゃないだろ!」
「ううん、もう大丈夫、大丈夫だから」
ムゥがアリフの胸に倒れ掛かるように寄りかかる。状態は改善しているとはいえ、まだ安静にする必要があった。
しかし、ムゥは聞かずに、心配するアリフに軽く微笑んでから、一同の方を向いて柔らかな笑顔でこう言った。
「ありがとう、みんな」
元気になった村人と、村長のアリフ、それからその胸に抱きかかえられた、病弱な少女、ムゥ。
彼女らの感謝の声を受けて、一同は心から安堵し、蒼空学園へ事の顛末を報告しに戻った。
ダインスレイヴの目的
ヤバルのバイオガンから出てきた、ドロドロのトウモロコシと、消えたパラミタトウモロコシ
結局正体のわからなかった、大きなダグザの釜
消えた魔剣・ダインスレイヴ
謎は多く残ったが、今の彼らにとって、そんなことは些細なことだった。
村を救い、人を助け、悪を罰した。夕日を背に受けて、誇り高き戦士たちは胸を張って村を後にしたのだった。
『暴虐の強奪者!』 END
皆さん、初めまして! 初めてのリアクション執筆を終え、まだ興奮冷めやらぬ山内 丸満です!
僕のシナリオに参加してくださった多くの方、本当にありがとうございました!
そして、言わねばなりません。本当に申し訳ないのですが、このリアクション、文章量が既定の二倍なんです。
皆さんの行動を見て、書いている僕も楽しくなってきちゃいまして……こうしたら面白いかな! とか、これ使いたいな! と文章をこねくり回しているうちに、
とてつもない長文になってしまいました……。
このシナリオに参加してくださった多くの方、本当に申し訳ございませんでした!
今回の『暴虐の強奪者!』ですが、謎や伏線を大きく残しました。全ての複線を回収するためには、全三回のシナリオが必要な構成になっています。
一つ一つでももちろん楽しめますが、この続きが知りたい! 今回参加しなかったけど、俺も黒マントを駆逐したい! という方がいらっしゃれば、疎らでも良いんで是非いらしてくださいね!
長くなってしまいましたが、以上になります。参加された方も、参加はしていないけどどんなことをやったのか知りたかった方も、このリアクションを見て楽しんでいただければと思います。
それでは、また今度お会いしましょう。山内 丸満でした!