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学園に生まれた迷宮

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学園に生まれた迷宮

リアクション

第一章
探索開始・罠を超えて

「えーと、そこにもトラップ、ですわね……」
 やれやれ、といった感じでコーディリア・ブラウン(こーでぃりあ・ぶらうん)が、トラップ解除のスキルを使い、仕掛けられた罠を発見、解除した。
 かれこれ十個目の罠だ。
 蒼空学園に突如現れた迷宮に潜り込み、そろそろ一時間になろうか。
 彼ら契約者たちはそれぞれの思いを胸に、未知の冒険にはりきっていた。コーディリアも張り切っていたが、それも序盤三十分ほどまで。パートナーの大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)とデート気分だったが、出てくるのはトラップばかりでさすがに飽きてきた。
「あ、またとらっぷみーっけ!」
 と、少し離れた場所で元気な少女の声。
 チルナ・クレマチス(ちるな・くれまちす)はひゃっほーとか叫んでトラップを破壊。きっと機械系のトラップだったのだろう、何かのチップだの細いコードだのが飛び散った。
「ええで、チルナ。その調子で罠をバンバン壊したれ。それでHIKIKOMORIの城の築城にどんどん近づくで!」
「おー!」
 上條 優夏(かみじょう・ゆうか)もボルテージが高い。彼も見つけたトラップを片っ端から破壊している。どうやらこのダンジョンを引きこもりの牙城にすべくやってきたようだ。
「なーに言ってんのよ!」
 と、杖を片手にフィリーネ・カシオメイサ(ふぃりーね・かしおめいさ)が野次を飛ばす。
「そんなお城即日落城よ。大怪我しないうちに解決させて帰るからね!」
「えー! こんなたのしーところもったいないじゃん」
「チルナの言う通りやでフィー。こんなおもろい洞窟、きっとニートの神の力で出来たHIKIKOMORIの城に違いないで、きっと!」
 はあ、とフィリーネがため息を一つ。
「賑やかね……」
「賑やかでありますな……」
剛太郎とコーディリアがぽつりと呟いた。

 そんな五人よりも進んだ位置から、ゆっくりと様子を伺う影が一つ。
「ふっふふふ。もっと近づくがいいであります」
 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)がにやーりと悪い笑顔を浮かべた。
 彼ら五人の前方50メートル地点には、なんと吹雪が仕掛けた地雷が数個ある。地雷とは言っても人が死なない程度に威力を弱めた代物ではあるが。
「トレジャーセンスにはこの先にお宝の反応があるであります。手に入れるのは一人、すなわち自分だけでいいのであります」
 地雷原に入ったら、爆弾を投げつけて誘爆させてやろう。そんな彼女の両手には爆弾がたくさん。あとは投げるだけ。
 やがて、目標がキルゾーンに入った。
「今であります!」

「!」
「!」
「!」
 突然躍り出た影に、フィリーネ、チルナ、剛太郎が瞬時に反応。
 チルナのスキル・ダイヤモンドダストが飛来する物体、爆弾を分厚い氷で包む。それは銃弾一発で撃ち抜けるような厚みではない。
 剛太郎のスキル・スナイプがその全ての爆弾を補足、射撃。すべてが相手に撃ち返された。
 最後にフィリーネのスキル・天の炎が発動。撃ち返された爆弾すべてに余すことなく命中。氷を破り、引火、爆発。
 爆弾を投げつけてきた何者かは「うおー」とか悲鳴をあげて吹っ飛んだ。そして迎撃した三人がハイタッチ。
「ふっふーん。あたいったらさいきょーね! ばくだんぜーんぶかちこちにしたもんね!」
「敵ね。追うわ!」
「お待ちなさいフィリーネ様! 罠があります! 迂闊に動いては危険です!」
 コーディリアに言われ、全員が動きを止めた。先ほどの爆風で地面がめくれ、仕掛けられた地雷が見えていた。
「ここまで一本道です。逃げられはしません。ゆっくり行きましょう」
 四人は頷いた。
「……ん? これはなんだ?」
 と、剛太郎が足元に光る何かを発見した。
「これは……イヤリング?」

「い、意外な連携プレーであります……これは、不利でありますね」
 吹雪が顔についた土を拭い落とした。
「ならば、もっと巧妙な罠を仕掛けてやるであります!」
 再び悪ーい笑顔を浮かべて、また地面にごそごそ何かを仕掛けはじめた。
 その後、迂闊にも別の罠に引っかかってしまった彼女を優夏、剛太郎一行に助けられ、同行することになった。