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リアクション
アジトはすっかり廃墟になっていた。煙がむなしく上がっている。ペステの骨の体は残骸に紛れてどこにあるのか分からなくなっていた。
「天馬騎兵か……。派手な攻撃だぜ。総動員させるのに相当金掛かったろうなー。デタラメな決着だが……ふー。こいつでやっと一安心だ」
キロスは大きく背伸びをして腰に手を添えた。
「30000000000Gであります」
安心するのは早かった、吹雪がキロスに詰め寄った。
「なんだぁ?」
「約束は守ってもらうであります。キロスケは言っていたであります。一番活躍した者には報酬を与えるだけでなくその人の望みを何でも叶えると」
「は!?」
「ぶりっ子奈落人が逃げ出してしまった以上、キロスケから報酬を貰って願いを叶えてもらうであります。
これじゃあくたびれ儲けでありますからね」
「まてまてなんだよ30000000000Gって!そんな金俺が出せるわけねえだろ!」
「じゃあせめて自分の望みを叶えてもらうであります」
キロスは顔をしかめたまま固っている。だが決心がついたのか「仕方ねえ!」と言い捨ててその場にどかりと胡坐をかいた。
「乗っ取られようが俺が言ったことには変わりねえ!ああ、いいぜ。俺も男だ。何でも言ってくれ」
「秘密基地を建ててくれであります」
「がぁー!結局は金じゃねえか!そこはもっと遊園地でデートしてくれとか女の子らしくさ!」
「じゃあ建てた基地でデートしてやるであります」
「じゃあじゃねえ!全然分かってねーじゃん!」
「うーん。キロスケは望みを叶える気なんてないでありますね。やはりくたびれ儲けでありましたか。
はぁ〜なんだか疲れたであります〜。もう体中筋肉痛でありますよ〜……ん?」
吹雪は背中を突かれて振り返った。そこはもじもじとしているアルテミスがいた。
彼女は声を震わせて、
「ふ、ふ、吹雪様!い、い、いややや、なな、何でもないです!ででででもちょっと、
わわ、私どうしてもあああの、ちょちょちょ、い、イヤあーーッ!!」
甲高い声を上げ後ろを向いてしまった。キロスがアルテミスを見つめていたのだ。
アルテミスの心情を吹雪は察した。
「……んー。ボウガンは撃ったことはありますが、キューピットの矢を扱うのは初めてであります」
■■■
夜の空にたくさんの星が星が瞬いている。
建物もイルミネーションに彩られていてアルテミスの告白を応援しているかのように光り輝いている。
噴水の近くでキロスは待っていた。するとそこにアルテミスがやってきた。
「おうどうした。なんだか話があるようだが、ん?なんだその花束は?」
この日のためにエースに選んでもらった花束を彼女は抱き寄せた。
心に決めていたようだったが、いざキロスを目の前にしてしまうとすっかり動揺してしまって、
青い瞳はキョロキョロと右へ左へ右へ左へ右へ、右。右で止まって見開いた彼女は「あーッ!」と声を上げた。
「詩穂様!ローズ様!」
噴水の傍の茂みに隠れていた詩穂とローズだったがすっかり顔を出していたのだ。
2人は驚いて顔を見合わせ、バレしまっては仕方がない、と頷いた。
「アルテミスちゃんがんばって!詩穂たちみんな応援してるよ!今がアタックチャンスだよ!」
「アルテミスならできるよ!あのとき私に放った攻撃のように想いをぶつけるんだ!」
動揺でいっぱいで震えるアルテミス。
すると彼女の足元に落ちたのは白い雪。
いや、ペガサスの羽だった。アルテミスは頭上を見上げた。
そこにはたくさんのペガサスたちが羽ばたいていた。
天馬騎士団だった。
「おおっ!あれは美和とコハク。ウィルにファラまで、おーおー。あっちにいるのは貴仁と唯斗かよ。
ん?あそこでキャーキャー腕回してるのは香菜じゃねえか。なんだよなんだよ。みんな揃いも揃ってよ。
前回のメンツ全員集合じゃねーか。あ。そういやアルテミス話ってなん……ぬごっ!!」
ああ!大丈夫キロス!?これは大変だ。詩穂、そっちの脚を持って!一先ずそこのベンチに寝かせよう。
大丈夫これ、ローズちゃん!?へっこんでないよね顔!?あ、まってアルテミスちゃん!ちょっとちょっと、どこいくのー!
がんばれアルテミス。君ならいつか絶対告白できるだろう。
■■■
上空の雨雲の中を稲妻が蠢く。
暗闇に保護色のレインコートを羽織った男が歩いている。顔は深く被ったフードで見えない。
カチャカチャと動かす手元など見もくれずに周囲に転がる残骸を注意深く見て歩いている。
稲妻の閃きが全身を一瞬照らす、手元で慌しく動く銀の輪が見えた。
男は立ち止まった。後ろから誰かが迫ってくる。闇に染まった大きな生き物だ。形からしてドラゴニュートだろう。
「こいつはひでぇな。契約者共、随分派手にやってくれたもんだぜ」
ドラゴニュートは足元の石を手にとった。
「リリーのやつも自由だな。ま。あいつらしいといえばあいつらしいがよ!」
喰らいつくと石はボロボロと砕けた。ドラゴニュートは咀嚼しながらレインコートの男を見た。
「相変わらず楽しそうだな。あーん……なんてったかそれ、たしか、あー……なんだ……知恵ぇの輪ぁ?だったか?」
男はコートを広げた。稲妻が落ちる、その一瞬ベルトとコートの裏にいくつもの銀色の輪が光り輝いた。
男は3つ1組の巨大な知恵の輪を放り投げる。ドラゴニュートはそれを掴むと闇の中でガチャガチャ音を立て始めた。
男はベルトに括り付けられた知恵の輪を取り出す、口笛を吹きながらまたカチャカチャと歩きだした。
雨が降ってきた。
数歩先にそれは転がっていた。外しかけの知恵の輪を後ろに放り捨て数歩先の残骸を手に取った。
ペステの頭部だった。上空で雷鳴が轟く。
「レーゲン!」
ドラゴニュートを振り向いた。
「ドーナツと同じじゃねえか!牙でグッとやりゃ簡単にグンニャリよ!」
稲妻が落ちた。ドラゴニュートの姿が一瞬映った。
両手に輪を握り締めていて、片手に持った輪は引き裂かれていた。
そのときレインコートの男がくしゃみをして鼻を啜る。
「おいおい大丈夫かよ。まーた風邪拗らせちゃ笑えねえからな。はっはっはっは!」
大きな声で笑い飛ばす。男は手の甲を黒いフードの中に埋めると舌打ちした。
「あー……37度4……微熱か」
「おっとそいつはいけねえな。帰ったらお粥でも食おうぜ。特大の中華鍋に溢れるぐらいたんまり作ってよ!
さーて、目当ての物は手に入れたんだ。とっととズラかろうかアンダーボス!」
「メイクが落ちる。雨は嫌だな本当に」
レインコートがドラゴニュートを向いた。
フードの中は真っ暗だ。そのとき男の背後に稲妻が落ちた。闇の中に白い亀裂が閃くとフードの中の闇に髑髏の顔が浮んだ。
ドラゴニュートは後から追いついた雷鳴と共にはっはっはっはっは!と笑うのだった。
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担当マスターより
▼担当マスター
藤松 明
▼マスターコメント
はじめまして、藤村 明です。お話はもう少し続きます。
頭の中ではキャラクターもストーリーも大体出来上がっているので続きを作っていきたいです。
こうやって文章を書く仕事は始めてです。
なかなか大変なところもありますが、それでも楽しいです。
反省点はたくさんありあますが、みなさんが楽しめる作品を作れるようにがんばっていきます。
それでは、またお会いできる時を楽しみにしています。
▼マスター個別コメント