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【蒼空に架ける橋】第4話の裏 終末へのアジェンダ

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【蒼空に架ける橋】第4話の裏 終末へのアジェンダ

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 まず語られたのは監獄島襲撃の話であった。
「報告は受けている。看守、囚人共々無事である者は誰一人としていないそうだ。ただ――例外として、新たに収容された隔離区域に居たはずの奴らは死体すら見つかっていないようだが?」
 メ・イはそう言うと再度殺意むき出しの視線でコントラクター達を睨み付ける。
「俺様達も襲われたんだよ、変な奴らにな。奴らの目的は俺様達、というよりはナオシみたいだったけどな。他の囚人たちはついでで襲われたみたいだぜ?」
 メルキアデスが「碌でもねぇ」と嫌悪感を露わにして呟く。
「貴様らがやっていない証拠はないだろう?」
 だがメルキアデスの言葉を信用していないようにメ・イが視線を向ける。
「いや無理だろどう考えても。武装できるような物なんて持ち込めないだろあの島。俺様達丸腰だったんだぜ?」
「そもそも私達の荷物もほぼ奪われていました。その事は参ノ島の件で御存知のはずでは? それと看守や囚人たちを襲ったのは黒い影の……えっと、ヤタガラスっていうんですか? 私達も襲われそうになりました」
 メルキアデスに同調する様にマルティナが発言すると、メ・イは「ヤタガラス……」と何かを考える様な表情を見せる。
「後これを見て頂戴」
 フレイアがそう言って目配せをすると、視線が合った唯斗が懐から写真を取り出す。
 その写真には包帯が取られ、傷口が露わになったナオシの姿が映っていた。全身図から痛々しい傷口のアップ等様々な角度から撮影されている。その中には緊張したウヅ・キの姿も一緒に写っている。
 先程オミ・ナからカメラを借りて部下立会いの下撮影した物である。
「その男、見覚えあるだろ? こっちもナオシが襲われて怪我をしているんだよ。一応言っておくが、それは脱獄後に撮った物だからな。証拠にウヅ・キも一緒に写ってるだろ?」
 メ・イは唯斗から差し出された写真を手に取りじっと見つめる。その内何枚かを堂々とポケットに突っ込んでいた。きっとウヅ・キの写りが良かったのだろう。
「傷口を見て貰えれば、監獄島の犠牲者にも同じ物がついているって解ってもらえると思うわ。言っておくけど、改竄なんてしていないわよ? 」
 フレイアの言葉に「そうそう」とメルキアデスが頷く。
「まるで食われたような傷だろ? そんな傷俺様達がつけられるわけないだろ?」
「そうとは限らん。この様な芸当ができる奴がいたのかもしれないではないか。地上人にも、色んな奴がいるようだからな」
 そう言ってメ・イが視線を向けた先に居たのは、

「む、何だ?」
「あ? 何見てんだよ?」
「ナゼ……コッチ……ミル……?」

コアとオクトパスマン、ベアードの三名であった。
「……やべぇ、これ俺様反論できねーぞ」
「俺も今一瞬納得しちまったよ……」
「一気に形成が不利になりそうですよ……」
「どうするのよこの状況……」
「あの、私も気になってたんですけど……あの方達地上人なんですよね……?」

 メルキアデス、唯斗、マルティナ、フレイア、ウヅ・キがヒソヒソと話しつつチラチラと件の三名を見る。
「ふむ……一体なんだというのだ?」
 首を傾げつつコアがラブに問いかけるが、
「ごめんハーティオン、ラブちゃんも擁護できないや」
と思い切り眼を逸らされてしまった。
『ほらほら、脱線しとらんと話し戻すでー』
 メ・イの腕輪から流れるリ・クスの声でヒソヒソ話をしていた面々がはっとなる。
『とりあえずアンタらには監獄島の件は無理って前提で話進めよか。ならなんでそのナオシっつー男が襲われなアカンかったのか。その辺りはどうなん?』
「それは……」
「その話は私にさせてもらおうか」
 話そうとするウヅ・キの横にコアが立つ。
「まずはメ・イとリ・クスだったか? 我々の話を聞いてくれることに礼を言いたい」
「前置きはいい。さっさと話せ」
 メ・イにそう言われ、コアは「すまない。これはある人物から聞いた話なのだが……」と言ってから話し始める。
 内容はオミ・ナに聞いた過去に起きた出来事――アク・タツ・バキの事件についてである。
 オミ・ナの名前は出さないように、アク・タ=ナオシというのではないかという事を説明する。更に冤罪なのではないか、という事も。
「冤罪?」
「うむ」とコアは頷くと「ナオシが一度脱獄しておきながら、何故浮遊島群に戻って来たのか」ということを疑問に思っていると言う。
「あたしも不思議だわ。ナオシがアク・タだとして、その話通りなら悪人じゃん。けどおかしいよね? 本当に悪人なら逃げられたなら逃げ続けるもんじゃない? 少なくともあたしならそうするわよ。ってことは、何か理由があって戻って来たって事じゃない?」
 同調するようにうんうんと頷きながら語るラブをバカにするようにオクトパスマンが鼻で笑う。
「けっ、そもそも同一人物かなんてこと自体が妄想じゃねぇか……だがよ、もしその話が本当だっていうなら理由は一つだけだろ」
「む、何だというのだ?」
 コアの問いに、オクトパスマンは「そんな事もわからねぇか」と悪態をつく。
「復讐だよ復讐……お、なんだハーティオン? 『そんなワケねぇ』って言いたい顔してるな?」
「当然だ」
「甘ぇ、甘ぇよハーティオン、情に熱い人間どもがテメェの仲間焼かれて黙ってられるワケねぇだろうがよぉ!」
 そう言っている間に興奮して来たのか、オクトパスマンの声が段々と大きくなってくる。
「そもそもよぉ、敵にとっつかまって『オカでサメに噛まれた』みてーな、なんだかワケ判らん傷を食らわされる間抜けをなんで俺様たちが庇うんだよアホらしい! とっととそのナオシだかアク・タだか知らねぇが、そいつをこいつらに渡しちまえば一発じゃねぇか!」
『そこや』とリ・クスが割って入る。
『気になっとったんやけど監獄島の被害者の傷跡はヤタガラスじゃつけられへんで。ヤタガラスの疑いがある被害者もいるのは確かやけど、アレは噛みついたりはしないはずや』
 リ・クスの言葉に唯斗が首を傾げる。
「おかしいな、噛みつく奴もいるとか聞いたぞ?」
「あーそんな奴いたっけなー」とメルキアデスが頷く。
「なんつったっけか……確か白い奴でー……タタリとか言う全身に札みたいなの貼った奴がマガツヒ、とか言ってたような」
「タタリだと!?」
 メルキアデスの言葉にメ・イが顔を強張らせる。
「あの、知ってるんですか?」
 ウヅ・キがおずおずと尋ねると、代わりに腕輪からリ・クスの声が流れる。
『……そいつにミツ・ハ様が襲われて、腕を食いちぎられたって報告を受けとる』
「ミツ・ハ様が……!?」
 ウヅ・キが顔を強張らせた。
「……今回のこの件、暗躍してる存在方がいるようですがどうも気にいりません。互いにこのまま黒幕の手の平で転がされるのは本意ではないはずですが?」
「こっちも好き勝手やられてるわけだし。贈られた貢物ごと突っ返してやらないと気がすまないわね……私達はあの影みたいな化物と一応交戦もしてるしね、貴方達と協力できなくもないはずよ?」
 マルティナとフレイアが問うが、メ・イはちらりと一瞥するだけである。
「貴様らの事を全て信用したわけではない。先程言っていたアク・タの事件などが今回の件に関与しているか解らないままだからな。だから協力はできん。しかし我々は我々でこの件を調べてみるとしよう……ウヅ・キ、何かあった時は連絡する様に」
 それだけ言うと、メ・イは踵を返し去っていった。
「振られたみたいね……協力は無理か」
 少し残念そうにフレイアが呟く。
「けど、少なくとも今の所は敵に回る事は無さそうかな」
 そういうと唯斗が「やれやれだ」と溜息を吐いた。