天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

スライムとわたし。

リアクション公開中!

スライムとわたし。

リアクション

「ふっふっふ。ツァンダの皆さん、待っててくださいなのです。暑い暑い夏から、もうじき解放してさしあげるのですよー」
 フードマントをまとった少女なぞの占い師は、巨大スライムの肩(?)あたりに腰かけて、意気揚々と前を見据える。
 スライムは弾力ある体で、ぽよんぽよんと飛び跳ねながらシャンバラ大荒野を行進している。
 大きいスライム、中くらいのスライム、小さいスライム。
 それらが集まって群れをなし、思い思いの高さでぽよんぽよんぽよんぽよん跳ねている光景は、だだっ広いシャンバラ大荒野でも結構目立っていた。




「ふー、あっつーい。
 なんでこんな暑い日に、わざわざ照りつける大荒野に来なくちゃいけませんの? わたくし、こういう日は空調のよく効いた部屋で過ごしていたいですわ」
 スライムの行進を見下ろす小高い崖の中腹で、藍玉 美海(あいだま・みうみ)がぱたぱたハンカチであおいでいる。
 そしてその暑さをさらに助長する、暑っ苦しいやつが1人。

「うおおおおう!! タケシよ! 待っていろ!! 今私がおまえのかたきを討ってやるからな!!」


 青い空に向かって叫んでいる。
 コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)である。
「ちょっとちょっと、ハーティオン。そうは言うけどあんた、何か策はあるの!?」
「ない!
 だが案ずるな、ラブよ。私はすでに裸も同然なのだ!!」
 胸を張るコアの頭のてっぺんから靴の先まで、ラブ・リトル(らぶ・りとる)の懐疑的な目が何度も往復する。
「……まあ、裸っちゃあ裸なのかもしれないけどーぉ。
 それ認めたら、あんたいつも裸で外歩いてるヘンタイってことに――」
「というわけで、突撃ーーー!」
 的確なラブのツッコミは完璧無視して、コアは、うぉーーー! と突撃し、
 案の定、ピカーーーーーーッとスライムたちから桃色光線を一斉に浴びせられ、
 うぉーーーーー!! と一目散に駆け戻ってきた。
「ど、どうしたの!? ハーティ――オン……?」
 うぉーー! と吠えながらラブの横をまっすぐ素通りしたコアは、ブレーキをかける様子もなく憔悴したままの松原 タケシ(まつばら・たけし)の元へたどり行くやいなや、服を引っぺがし始めた。
「ハーティオン!?」
 え? やだ。あなた、そんな性癖が……(どきどき)
 無駄にハートを高鳴らせつつ見守るラブの前、
「ちょ!? いきなり何すんだよコア!!!」
 驚愕のあまりタケシは正気に返った!
「分からん! 分からんが、私は今、無性に服を脱ぎたくてたまらんのだ!!」

 だからまずその前に服を着る。当たり前ですねっ(キラーン☆

「キラーン、じゃないっ!
 待て! 落ち着いてよく考えろ! おれのサイズがおまえの体に合うわけないだろー!?
 第一おまえ、今教導団じゃねーか! なんで蒼学のおれを狙うんだよ!! 教導団のやつ狙えよ!!」
「あいにく、教導の制服を着たやつがいない!
 それに私の心はいつまでも蒼空の戦士なのだーーー!!」
「なんだそりゃー!!」
 そこに、すすす……とラブが近寄った。
「ふっ……タケシ。
 久しぶりにハーティオンに会って忘れていたようね…。
 そいつ『真面目系バカ』だからッ!!」

 ――ピカッ! ガラガラドッシャーーーーン!


 と、バックに雷が落ちたかは不明だが。
 せっかくのラブのキメポーズやキメゼリフも、残念ながら今タケシはそれどころじゃなかった。
 タケシは必死に抵抗するが、コアは無理やりタケシの体から服をはぎとってはそれに強引に手足を突っ込んで、ビリビリ破っていく。
 アッ――! という間にタケシは下着姿になって、ビリビリに引き裂かれた自分の服の残骸の山に埋もれてることになったのだった。



「そうか。あれがタケシの恐怖していたスライムの特殊能力ってやつね……」
 つい、ノリというか勢いで、コアと一緒に突っ走っていた者の1人セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は、真相を知って息を飲んだ。
「まさかスライムがあんな光線を吐くなんて。これは厄介ね」
 対策を練るためにも一時撤退を促そうと、我は射す光の閃刃でスライムを切り裂いているはずのセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)の方を見たが遅かった。

 セレアナの目の前、セレンフィリティがスライムの逆襲を受け、桃色の光にピカーーーっと全身を包まれる。

「セレン!! 大丈夫!?」
 大急ぎ駆け寄ったセレアナは、セレンフィリティの具合を測るように肌に手をすべらせる。
「ん? 全然平気よ」
「よかった。
 まあ、今の格好も似たようなものだし。あの光線の効力は弱いのかも――」
 ほっと胸を撫で下ろしたセレアナの目の前で、突然セレンフィリティが胸のトライアングルビキニをパパっと脱ぎ捨ててしまった。
「あーもう、暑いったらないわね!」
 ――その堂々とした脱ぎっぷり、さすがです、セレンさん!

「ああっ、やっぱりーー!?」
 全然大丈夫じゃなかった!
 思わず叫んでしまったものの、ルームライトの下でなく、照る太陽と青い空の下で見るセレンフィリティの肉体の健康的な美しさに、つい目を奪われてしまう。
 見とれているセレアナの両肩に腕をもたせかけ、セレンフィリティはしなだれかかった。
「んっふっふー。
 セレアナも、こんな邪魔な布切れ、さっさと取っちゃいましょ!」
 と、セレアナのメタリックレオタードのホルターをはずしにかかる。
「駄目! ここをどこだと思ってるの!? 周りを見て思い出しなさい!」
 セレアナは必死に抵抗したが、セレンフィリティ相手に乱暴なこともできず、引きはがす先から腕はしなってまとわりついてきて、なんだかんだしているうちに結局ホルターははずされその場に押し倒されてしまったのだった。

「な、なんて恐ろしいの……」

 ごくり。
 思わずサンダーブラストを放っていた手を止めて、綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)はセレアナの惨状(?)に目を奪われる。
「って、こっちも見入ってる場合じゃないわね」
 視界の隅でぴょんぴょん跳ねているスライムが見えて、あわてて止まっていた手を動かした。
 ここは大荒野。街なかでないとはいえ、油断はできない。パパラッチやオタクストーカーはどこにでもいる。すっぽんぽんになっている姿など撮られでもしたら、コスプレアイドルデュオ【シニフィアン・メイデン】の危機だ。それこそアイドル生命が終わりになりかねないっ。
「撤退よ。あんなの見せられたら、撤退してもおかしくないわ。そう、これは戦略的撤退というやつよ」
 うん、とうなずき、公私ともにパートナーのアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)の方を振り返ろうとしたところで、リーレン・リーン(りーれん・りーん)が憤っている姿が見えた。
「なんてよこしまなエロスライムどもなのっ!
 待ってて、セレン、セレアナ! 今私が助けに行くからっ」
と、バットを手に、小型スライムにたかられている2人の元へ行こうと息巻いている。
「リーレン、もうあの2人は助からないわ。ああなってしまっては、(別の意味で)手を出さない方があなたのためよ」
 スライム追っ払ったりしたら、それこそ下に隠れてるいやーーーんなものが見えちゃうじゃないの。
 まさに恋に恋する乙女のリーレンには目の毒、ショックが大きすぎる。
 しかしそんなさゆみの配慮もリーレンは分からない。
「放して! こんなやつら、あたしがぎったぎたにしてやるんだからっ」
 さゆみに羽交い絞めにされても暴れるリーレンは手がつけられない。
「アディ、あなたも手伝って」
 さゆみは近くでブリザードを用いてスライムを凍らしているはずのアデリーヌを呼んだ。
 直後。

「あぶない、さゆみ!」

 という緊迫した声とともに、どんっと背中を強く突かれる。
「きゃあ!」
 何が起きたか分からないまま、次の瞬間リーレンともつれあって地面に転がってしまった。
「いったーーーーいっ」
「一体何が……まさかっ!?」
 手元の地面が、ピカッと桃色っぽい光に照らされる。
 急ぎふり仰いださゆみの前、アデリーヌが突然思い切りよく服を脱ぎ捨てた!
「まったく……どうしてこんな物を着ていたりしたのでしょう?
 こんな邪魔な服、わたくしには無用ですわ!」
「ちょ、ちょっとアディ。私たち、アイドルなのよ!?」
 それ、超マズいんじゃない?
「グラビア撮影をしているとでも言えばよいのです。
 ふふふふふ。さあさゆみ、あなたも脱ぎましょう」
 まだ地面に手をついたままだったさゆみの上に、アデリーヌがかぶさるように体を寄せていく。
「そうすれば、2人とも同じ姿ですもの、真実味がさらに増すというものです」

「……いっ、いやーーーーっっ!! 私、健全派でいきたいのよーーーーーっ!!」

 って、あれっ?
 てっきり自分もやられるとばかり思っていたリーレンは、ブロックするように両手を上げたが、いつまで経っても自分を脱がそうとする手がないことに気づいて、閉じていた目をぱちっと開いた。
「ふふふ。そんなに抵抗するものではありませんわ。こちらの方がずっと動きやすくて効率的ですのよ……」
 アデリーヌはさゆみを脱がすことに夢中で、リーレンなど目に入っていないようだった。
 そしてアデリーヌに撫でられ、肌をこすられているうちに、さゆみの方も何かのスイッチが入ってしまったのか(それともリーレンが目をつぶってるうちに桃色光線を浴びちゃった?)、アデリーヌの脱ぎかけの下着の下に手を入れて、はずしにかかっている。
「…………」
 なんだかぽつんと1人ほうっておかれている気分になってしまったリーレンだったが、かといって、あのなかへ入っていく気にはなれず。
 氷が溶けて解放された小型スライムたちが、仕返しするつもりなのか、こちらに集まってきているのを見て、そろーっと脇へ後退し、その場を立ち去っていった。

「ふふふ。スライムにまみれながらというのも、たまにはいいかもしれませんわね。ね? さゆみ……」