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リアクション
ドージェの代わりとなって 2
「鹿次郎お兄ちゃん……頑張って」
とは、巫女装束を着たタマーラの言である。
自分のパートナーに対してとは異なり、
かわいらしく、上目遣いでサービスを送っていた。
坂下 鹿次郎(さかのした・しかじろう)が、大陸を支える見返りとして、
「巫女さんの応援がないと支える力が足りぬ!
集中できぬ!
目の前にいなくてもとにかくどこかにいれば少しは元気になるでござる!
世界を救うためなのでござるよ!」
と要求したためである。
「な、なして、うちばかりこないな目に」
清良川 エリス(きよらかわ・えりす)も、
邪馬壹之 壹與比売(やまとの・ゐよひめ)に、
ミニスカ巫女装束を渡され、
「巨大カブトムシに乗って戦うか、お色気巫女舞いショーのどちらがようございますか?」
と聞かれたため、やむをえず、後者を選んだのである。
「大丈夫でございます、どうせ見られる程度の話。
神話で巫女が舞って見せる等基礎中の基礎でございますよ。
本当に埋められたり訳の判らない生き物の嫁になれなどと言う事ではないのでございますよ?」
壹與比売が、最も古き巫女の一人として、ちゃんと舞を舞ってみせる。
なお、装束はちゃんとした正統派の巫女装束である。
エリスは、交換してほしいと思っていた。
「一見ふざけた儀式こそ生の活力と言う物でございますよー」
「そないなこと言うたかて……」
エリスが、スカートがめくれないか心配しつつ、舞を舞う。
「おお、漲るでござる!
力が漲るでござるよ!」
鹿次郎は、職権乱用を満喫していた。
鹿次郎のパートナーの姉ヶ崎 雪(あねがさき・ゆき)は、
さらなるとんでもない要求に、
後でお仕置きすることを決意して、
実現に尽力していた。
鹿次郎は、愛するエメネア・ゴアドー(えめねあ・ごあどー)を呼び出して、
自分のいい恰好を見せて愛の告白をしようとしていたのである。
「た、確かにシリアスは完全粉砕な上に
愛の告白ショーは生の活力垂れ流しですわね……」
雪は、やむを得ず、エメネアに連絡して、来てくれるように頼んだのであった。
一方、立川 るる(たちかわ・るる)は。
就活のことで頭がいっぱいであったが、
巫女の格好をすれば、世界を救うことができるという話を聞き、
「『パラミタ大陸を支えるために尽力し、世界の危機に立ち向かいました』
……うん、イケル!」
と、面接のアピールに利用しようと考えていた。
なので、大漁巫女服を部屋の奥から引っ張り出し、
着替えてきたのである。
「丈夫で寒さにも強いから、きっとナラカでも大丈夫!
エメネアちゃんとお揃いってのがちょっと癪だけど……」
そこで、ふと、最近会ってない相手のことを思いだした。
「そういえば良雄くんは今何してるのかな。
忙しくしてるかもしれないけど、暇なら一緒に来ればいいよね。
大学のAO入試でアピールできるし」
と、御人 良雄(おひと・よしお)にメールを送ったのであった。
「なななななな!」
立川 ミケ(たちかわ・みけ)が、
るるに、何かをしきりに言っていた。
「んー、どうしたの、ミケ」
「ななな、なな、なななー!」
「ミケもるるがかわいいって言ってくれてるの?
やだなー、照れちゃうよ」
「なな、なななー!」
「これでかっこいいところを見せれば、
エメネアさんに結婚してもらえるでござる!」
大張り切りで、大陸を支えていた鹿次郎は、
巫女装束と青い髪を視界の端に認め、
思いっきり叫んだ。
「おお、来てくれたのでござるな、エメネアさーん!
無事支えきったら拙者と結婚を前提としたお付き合いをー!
父上にも許可は貰ったでござるー!」
エメネアの父親こと、吉井 ゲルバッキー(よしい・げるばっきー)の言葉を信じ、
そう、プロポーズした鹿次郎だが。
振り返ったのは、巫女装束のるるであった。
「残念、るるちゃんでした!」
「なな、なななー!」
(さすがよ、るるちゃん!
エメネアのフリして坂下鹿次郎の能力をアップさせる策士な上に、
青い髪の女の子ならではの決め台詞で窮地を乗り切ろうとするなんて!)
しかし、ちょうどその時、
るるに呼ばれて喜び勇んでやってきていた良雄と、
雪に呼ばれてやってきていたエメネアが、その様子を目撃してしまったのである。
「るるさんが、るるさんが他の男に求婚されているッス!?」
「鹿次郎さん……!?
私と他の女の子を間違えるなんて……。
私のことを好きっていうのは嘘だったんですねぇー!?」
「ご、誤解でござる、エメネアさーん!?」
「きゃー、大陸が!?」
るるが悲鳴を上げる。
鹿次郎が一気に脱力してずっこけたため、
パラミタが崩落するかと思われたが、
すんでのところで戻ってきたドージェが支えたため、なんとかなった。
しかし。
「るるさん……。
わざわざ私のコスプレをしてまで、恋のライバルになろうとするなんて……。
とことん、私の前に立ちふさがるつもりなんですねぇ……!」
エメネアが、るるをにらみつける。
さらにエメネアからのライバル関係を深めてしまうるるなのであった。
そして。
「俺も大陸を支えられるような男にならないといけないのかもしれないッス……。
そうしないと、るるさんを奪われてしまうッス……!」
良雄は、鹿次郎を見て、
勘違いしたまま、微妙な決意を固めていた。
かくして、微妙な四角関係ができあがってしまったのである。
「な、なんだか、昼ドラっぽい様相どすなあ」
「古代より、こうしたことは珍しくないのでございますよ」
エリスに、壹與比売がうなずいた。
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