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リアクション
最前線の戦士♯2
クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)はLSSAHに乗り、ドージェの防衛にあたっていた。
「まさか、こんな形で教導団最大の敵だったドージェを助けることになるとはな……」
ジーベックは一瞬だけ苦笑を浮かべると、すぐに表情を戻して号令を発した。
「新星の諸君! 我々の目的はドージェの防衛にある。ヤシュチェの守り異界耐性をつけ、敵の撃破に囚われて突出しないように注意! 現れる敵を落とす壁となるのだ! クロッシュナー中尉は蜘蛛型の殲滅!」
「はっ! 了解です!」
トーテンコップに乗っていたマーゼン・クロッシュナー(まーぜん・くろっしゅなー)はジーベックの指示に従い蜘蛛型イコンにプラズマキャノンを構えた。
「飛鳥、射程距離の算出を頼む」
「了解!」
黒岩 飛鳥(くろいわ・あすか)は指示に従いトーテンコップのプラズマキャノンの射程距離と蜘蛛型イコンの射程距離を算出する。
「敵イコン、プラズマキャノンの射程内。また、こちらは敵の射程外に位置してるよ!」
「よし、プラズマキャノン発射!」
トーテンコップはプラズマキャノンを撃ち、地上にいた蜘蛛型イコンは直撃し呆気なく破壊されてしまう。
蜘蛛型イコンたちは一斉にトーテンコップに向かって砲撃を仕掛けるが、射程外のため砲弾は直撃する前に力なく落下してしまう。
それならばと蜘蛛型イコンたちは接近を試みるが、クロッシュナーは接近した分退いて敵を撃破しては元の位置に戻りを繰り返し、指示通り壁としての役割を全うしていた。
「クロッシュナー! 敵がドージェに狙いを変えたみたいだよ!」
飛鳥が叫び、クロッシュナーが視線をそちらに向けると何機かがドージェに照準を合わせていた。
「フリンガー少尉!」
「心得ました!」
ノルトに乗るゴットリープ・フリンガー(ごっとりーぷ・ふりんがー)はジーベックに声をかけられるのと同時にノルトの舵を取り、敵側に船の側面を見せる。
巨大な船が動くのに釣られて蜘蛛型イコンが標的がドージェからノルトに移すと、一斉に砲撃してきた。
砲弾はノルトの横っ腹を直撃するが、それも構わずにノルトは側面の砲門を上げるとガトリングガンが三門顔を出した。
「撃てぇ!」
フリンガーが号令を下すと、ガトリングガンは一斉に回転を始め鉛の弾を撃ち出し始めた。
厚い弾幕は蜘蛛型イコンの砲撃を打ち落とし、雨のように降り注ぐ鉛玉はそのまま蜘蛛型イコンを貫いた。
「幻舟さん、損傷は大丈夫ですか?」
フリンガーは通信で枝島 幻舟(えだしま・げんしゅう)と連絡を取る。
『心配無用ですじゃ。今、消火活動が終わりましたゆえ、これから穴が空いた装甲の修繕作業を行おうと』
「無理でしたら、一度退くようにしますが」
『なになに、心配なされるなこのフネはこれぐらいの攻撃で沈みはせん! それより、眼前の敵に集中を』
幻舟にそう言われて前方を見ると、今度は蜂型イコンが隊列を組んでいるかのように並んでこちらとドージェの同時に攻め込んだ。
『蜂の始末は俺たちに任せな!』
そう言って、通信に割り込んできたのはネーデルラントに搭乗しているハインリヒ・ヴェーゼル(はいんりひ・う゛ぇーぜる)だった。
『今からそっちに修理のクルーをよこすよ』
ヴェーゼルが言うと、ネーデルラントをノルトに近づけて川原 亜衣(かわはら・あい)を渡した。
「亜衣、修復が終わったら迎えに行くからな!」
「うん! そっちも気をつけて」
ヴェーゼルは亜衣に見送られながらネーデルラントをノルトから離して、こちらとドージェに近づいてくる蜂型イコンにカタパルトに狙いを定めた。
「ドージェの方は近づかせる前にさっさと蹴散らすぞ1」
そう言って、ネーデルラントは爆薬をカタパルトに乗せて射出した。
放物線を描いた爆薬は重さも手伝って、強い衝撃で蜂型イコンに激突するとそのまま周囲の蜂型イコンも巻き込んで爆発しました。
「よぅし! 次はこっちだ」
ネーデルラントは続いて自分たちの方に近づいてくる蜂型イコンに向けて爆薬を水平発射させる。
こちらも凄まじい勢いで爆薬が叩き付けられて目の前にいた蜂型イコンはバラバラに飛び散った。
「よし、まあこんなもんだろ。……ちょっと後方支援にしては出過ぎたかな、さっさと亜衣を回収するか」
ヴェーゼルは反省したように呟くと、再びノルトに接近を試みた。
だが、目の前でそんな惨状を繰り広げても蜂型イコンたちは数にものを言わせて突っ込んでくる。
「ジーベック大尉、ご指示を」
ヴィーキングに乗るヨーゼフ・ケラー(よーぜふ・けらー)は指示を仰いだ。
「うむ、弾幕を張り敵の掃討を優先。撃ち漏らしは気にするな、こちらで処理をする」
「了解。ヨーゼフ・ケラー、作戦行動に移ります」
ケラーは指示通りに弾幕を張るためアサルトライフルを構えた。
「エリス、敵の位置を把握してほしい。撃ち漏らしても構わないと言われたが、ジーベック大尉の手を煩わせたくない」
「まったく、呆れた真面目さですわね……まあ、そこが長所なのでしょうけど」
エリス・メリベート(えりす・めりべーと)はレーダーで敵が多く集まっている部分を調べ始める。
「データが出ましたわ。メインのコックピットに転送するから、狙いは任せますわ」
「了解した」
ケラーは送られてきたデータを参考にヴィーキングにアサルトライフルを構えさせると敵が多く集まっているところを中心に弾幕を張った。
直進だけをしていた蜂型イコンたちの装甲には呆気なく穴が空くが、それでも後続たちは怯まずに接近を試みる。
「く……! 人が乗っていないと随分大胆に出てこれるものだ……!」
ケラーが残りの弾薬に気を配っていると、その隙に弾幕をかいくぐった何機かがドージェに向かって接近していった。
「し、しまった!」
ケラーは一瞬だけ気を取られるが、手だけは止まらずに命令通り弾幕を張り続けている。
撃ち漏らしをカバーするのは前言したようにジーベックだった。
LSSAHはすでに撃ち漏らしを想定していたようにウィッチクラフトライフルを構えていた。
「悪いが、ドージェたちには手を出してもらっては困るのだよ」
そう言って、ジーベックはトリガーを引くとウィッチクラフトライフルから魔法弾が発さされ、背中を向けていた蜂型イコンたちは何をされたかも理解できぬまま地上に落下していく。
「麗子君、ドージェに近づいた敵はあれで全部かね」
ジーベックはサブパイロットの三田 麗子(みた・れいこ)に訊ねた。
「ええ、ですが撃墜数と同じだけ敵が増えているような気がしますわ。このままでは……」
「理解はしているが、敵が多いから戦いを止めるとは口が裂けても言えまい?」
「そうですね……失礼致しました。今は部隊の戦力を最大に活かせる作戦のことだけを考えます」
「よろしく頼む」
ジーベックは落ち着いた口調でそう言うと、目の前に広がる戦火の海をじっと見つめていた。
ジーベックが見つめる戦火の中央。
別働隊として動いていたラック・カーディアル(らっく・かーでぃある)はアルカナに乗り、フォトンを駆るクローラ・テレスコピウム(くろーら・てれすこぴうむ)と彼に従う傭兵団のイコン二機と連携してドージェやジーベックたちに近づくイコンを横から奇襲し続けた。
「テレスコピウム少尉。敵の分断はこちらで引き受けますから、散った敵の撃墜をお願いします」
「了解、そちらも無理をしないように」
「了解!」
カーディアルは威勢良く返事を返すと、アルカナを先行させた。
「ゲテモノは案外美味しいのが多いけど……この蜂や蜘蛛は食べれそうにないから思いっきりやっちゃうよ!」
「いや、その張り切りかたはおかしくないか?」
サブパイロットのイータ・エヴィ(いーた・えびぃ)の発言に苦笑いを浮かべながら、カーディアルは装備されていたカボチャ爆弾を両手に持ちながら、蜂型イコンたちの間を縫うように走り去り、置き土産のように爆弾を投げ捨てた。
「食べられないもの同士、仲良くこんがり上手に焼かれてちょうだいねっ!」
アルカナの背後で爆発が巻き起こり、爆風で背中が押される。
蜂型イコンたちは爆発に巻き込まれてデタラメな軌道で撃墜していく。
その爆発に巻き込まれなかった蜂型イコンたちは爆心地から逃げるように散り散りになって逃げ出すが、それをテレスコピウムは見逃さなかった。
「銃構え!」
テレスコピウムの号令で後続の二機が武器を構えて、孤立してしまった蜂型イコンたちに狙いを定め、フォトンも同様に機晶ブレード搭載型ライフルを構える。
「撃てぇ!」
テレスコピウムに合わせるように後ろの二人も一斉に発砲し、爆発でバラバラになっていた蜂型イコンたちに容赦ない追い打ちがかかる。
「ほらほら、攻撃が終わったら一度距離を取らないと。こっちは少数精鋭なんだから」
フォトンのサブパイロットのセリオス・ヒューレー(せりおす・ひゅーれー)はテレスコピウムに進言した。
「そうだね。とりあえず、敵の大部分は瓦解したことだし、まだいけそうだけど一度戦艦に戻って整備してもらおうか」
「あ、君たちは機動要塞上から援護射撃して、交代で整備を受けようね?」
「了解」
「了解」
後続二人は了承し、フォトンとアルカナは隊列を組み直すために慌ただしく動いている蜂型イコンたちを警戒しながら移動要塞に一度戻っていった。
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