空京

校長室

選択の絆 第一回

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選択の絆 第一回
選択の絆 第一回 選択の絆 第一回

リアクション


最前線の戦士 ♯1

 イベント船で生の活力を送り出している頃、戦場の前線も激しさを増していた。
 その中でもシフ・リンクスクロウ(しふ・りんくすくろう)アイオーンに乗り、世界樹の防衛に奮戦していた。
「当初の目的は防衛。そこを忘れては本末転倒ですからね」
 シフはアイオーンを駆り、敵が密集している地点に向かい銃剣付きビームアサルトライフルを放った。
 密集していたせいで回避行動が遅れた何機かがライフルの餌食となり、爆散する。
 攻撃を受けて蜂型イコンはアイオーンに向けて突っ込んでくる。
 アイオーンはそれを見ると、後退し蜂型イコンに追撃される。
「シフ! 敵は直線上に追いかけだしたよ!」
 ミネシア・スィンセラフィ(みねしあ・すぃんせらふぃ)はディメンションサイトで敵の位置を把握すると、アイオーンの武器をライフルからバスターライフルに持ち替えた。
「振り返り際に構えて即座に撃つわ」
「うん、アシストは任せて」
 シフは一気に振り返りバスターライフルを構え、ミネシアは照準を定める。
「バスターライフル発射!」
 アイオーンは引き金を引き、一斉に襲ってきた蜂型イコンはバスターライフルの光りで機体を激しく損傷し、爆発させて一筋の道が出来た。
「よし、上手くいったわ」
「ん? シフ、下でも誰か戦ってるみたいだよ」
 そう言って、二人は地表で戦っているマスティマに目を向ける。
 マスティアのパイロット天貴 彩羽(あまむち・あやは)はステルス機能を使って蜘蛛型イコンに近づくと、ギロチンアームで挟み込み。
「せーの!」
 蜘蛛型イコンを切断してしまう。
 破壊を確認するとマスティアは一度ワープで敵から離れる。
「空の敵は他の人が相手してるみたいだから、こっちはこっちで集中するでござる!」
 スベシア・エリシクス(すべしあ・えりしくす)は上空のシフたちを確認しながら地表の敵にも注意を向ける。
「それじゃあ、こっちは一気にカタをつけるわよ!」
 彩羽はヴィサルガ・プラナヴァハで覚醒すると、EMジャマーで敵を攪乱させると再びギロチンアームを構えると混乱している蜘蛛型イコンにワープで背後に近づくと装甲ごと真っ二つに切り裂き、アームで叩きつぶしたりと一騎当千の大立ち回りを見せる。
 周囲は炎の海と化すと、蜘蛛型イコンたちもマスティアを補足して砲撃を開始するが、機晶制御ユニットで回避性能を上げてなおかつ覚醒状態に入っているマスティアに攻撃が当たることはなく、ギロチンアームの餌食となっていった。
「まだまだぁ! 上で戦っている子たちには負けてられないんだから!」
 彩羽は闘志を燃やして、次々と蜘蛛型イコンを破壊していった。


 陸と空で破壊数の競い合いが起きている中、そこに一つのイコンが現れる。
 柊 真司(ひいらぎ・しんじ)が操るゴスホークだ。
「ヴェルリア、戦況確認」
 ヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)は言われるがまま、ディメンションサイトで状況を分析する。
「敵は目立った動きを取っていないようです。敵と定めた敵に向けて攻撃を繰り返すを繰り返しています。おそらく数で圧倒するつもりなんでしょう」
「よし、なら限界まで戦って補給をして戦う作戦はそのままで攻撃を開始する」
 真司はそう言うと、ゴスホークを覚醒させて上空にいる蜂型イコンに向けてレーザービットによるオールレンジ攻撃を行う。
 遠隔で動く小型の砲台が蜂型イコンの薄い装甲を貫き、次々と蜂型イコンが撃破されていく。
「地表から砲撃が来ます! G.C.S展開」
 ヴェルリアは地表の蜘蛛型イコンの砲撃に対してG.C.Sを展開させる。
 砲撃はG.C.Sの空間湾曲により大きくそれて近くにいた蜂型イコンたちに直撃して同士討ちの形になる。
「次は地表の敵を殲滅する!」
 真司は叫ぶとエナジーバーストを使ってそのまま地表に突っ込むと、プラズマライフル内蔵のブレードからのファイナルイコンソードで攻撃を仕掛ける。
 覚醒で機体性能を向上させているゴスホークは高速で蜘蛛型イコンを切り裂き、ガラクタの山を築いていく。
「真司さん、コンディションレッドです! 一度撤退を!」
「そうか、よし一度戦艦に帰還する。調整後、再度突撃を試みるぞ」
 真司はそう言って、覚醒を止めると戦艦に向けて戻っていった。


 真司が帰還したウィスタリアの格納庫では柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)は補給の準備をして待ち構えていた。
「待ってたぜ。さあて、さっさと補給して元気にまた送り出そうか。柊先輩たちはそのままそこで待機しててください」
 そう言って桂輔はF1のピットイン作業のように手際よく作業を始める。
 すでに相当な数の敵を撃破したゴスホークだが、なにも機体の性能やパイロットの腕だけでそこまでの戦果を上げた訳ではない。

 ゴスホークが出撃する前の格納庫。

 長谷川 真琴(はせがわ・まこと)移動整備車両キャバリエから整備機材を下ろしてゴスホークの整備に向かっていた。
 特技のイコン整備でゴスホークの調整を行いながら額を汗を拭う。
「かなりエネルギー消費の激しい機体ですね、キャバリエには資材があるから対応は出来るだろうから……後は、完璧に整備してパイロットに渡すだけね」
 真琴が一心不乱に整備を続ける横でクリスチーナ・アーヴィン(くりすちーな・あーう゛ぃん)も同様にイコン整備の特技を活かして整備を続けていた。
「相手がゴーストイコンとはいえ油断は出来ない……帰ってきてからも最高の整備が出来るように今のうちにしっかりやれることやっとかないとな」
 独りごちて、クリスチーナは真琴と一糸乱れぬ連携を見せて整備を続けていく。
 整備機材を手配していた{SFM0025940#佐野 誠}はゴスホークを見上げて結城 真奈美(ゆうき・まなみ)に声をかけられる。
「どうしたんですか誠さん」
「いや、最近短期留学やらなにやらで生粋の御柱生の立場がなくなりつつあるな、と思って」
「はあ……」
「だから、ここはいっちょウチのエースに頑張ってもらおうかと思ってよ」
「そうですね。私たちもこの子が一番になれるように頑張りましょう!」
 真奈美はやる気を瞳に宿らせてみせる。
「よし、それじゃあ俺は武器と機体のエネルギーを補給してやるか。そろそろ出撃だろうしな」
「あ、じゃあ私は装甲と武装のスペアの準備をしておきますね。あと、栄養ドリンクも」
「栄養ドリンク? 何のために?」
「パイロットの人たちに渡すんです。機体が完璧でもパイロットのコンディションが最悪だったら意味ありませんから」
「……整備士の鏡だなお前は」
「ありがとうございます。それじゃあ、行ってきますね?」
 真奈美はにっこりと微笑んでみせると、そのまま走り去ってしまう。
「……さて、俺も準備するか」
 誠はエネルギーの補給作業を開始したのだった。

 それが数時間前のこと。

 桂輔が黙々と整備をしていると、真琴とクリスチーナが応援にかけつけた。
「真琴教官、ありがとうございます」
「お礼はいいから、整備を終わらせましょう」
「はい!」
 桂輔は返事を返すと、誠たちが用意してくれた武器のスペアと補給を素早く補給する。
「アウラ、こっちの準備はOKだ、そっちは大丈夫か?」
 桂輔はウィスタリアの艦長アルマ・ライラック(あるま・らいらっく)は眼前の蜂型イコンを見つめていた。
「こちらはいつでも大丈夫です。ゴスホーク出撃後、グラビティキャノンで道を開きます。……ゴスホーク、発進してください」
「了解、ゴスホーク発進」
 桂輔がゴスホークを送り出すと、ウィスタリアはグラビティキャノンでゴスホークの活路を開いた。