空京

校長室

選択の絆 第一回

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選択の絆 第一回
選択の絆 第一回 選択の絆 第一回

リアクション


生の活力を奮い立たせろ! ♯2


 イベント船での歌はまだまだ終わる様子も無く、船内の人たちにも熱気があふれていた。
 そんなテンションが最高潮に達しているステージに立っているのは綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)だった。
 イコンパイロットのような衣装に身を包んでいるが、さゆみは生き生きとした可愛らしい魅力を引き出し、アデリーヌはそれとは対照的に儚げな印象を受け、ガラス細工や推奨のようなものを彷彿とさせた。
 そんな二人の姿を見て、船内の盛り上がりも加速していく。
 さゆみはそんな人たちに声をかける。
「みんなー! 今日は新曲を発表するからいっぱい盛り上がってね!」
 声をかけられて、男たちは一斉に声を上げた。
「それなら、あたしたちも協力するわ!」
 そう言ってステージに上がったのはセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)だった。
 衣装はさゆみたちに合わせたようにイコンパイロット風の衣装ではあるが、胸やお尻が強調されるような作りになっており、二人とはまた違う妖艶な雰囲気を纏っていた。
「せっかくの新曲発表なら、バックダンサーがいた方がいいでしょう? ダンスは即興になるけど、なんとか合わせるわ」
 セレンはグッと親指を突き出して見せ、セレアナはフォローするように前に出た。
「ごめんなさい、出番が待ちきれないって聞かなくて……もし、よければお手伝いさせてくれないかしら?」
 そう言われて、アデリーヌはいやいやいやと手を前に出して振ってみせる。
「そんな! 盛り上げてくれるならこちらからお願いしたいくらいですから、お気になさらないでください」
「それじゃあ、新曲いきまーす! ラヴァーズ・ファイト!」
 さゆみが声を出すと曲がかかり、船内に歓声が上がる。
 曲は恋人同士のすれ違いを題材にしたもので、さゆみは女の子に振り回される男のパートを歌う。
 元気よく歌い上げるさゆみに合わせて、セレンは切れのある動きで躍動感に溢れるダンスを魅せる。
 アデリーヌは男の子を振り回す女の子のパートを歌う。
 こちらは男の子に対して素直になれない気持ちが歌詞に込められており、アデリーヌもそれに合わせるように印象深く歌い、セレアナもセレンの切れのある動きとは対照的に流れているような綺麗なダンスを魅せる。
 いつの間にか船内は耳から入る刺激と、目に映る刺激に心を奪われて静かになっていたが曲が終わると、魔法が解けたように歓声が上がった。
「よーし! バックダンサーはおしまい! 次はあたしたちがメインで踊るよ!」
 セレンはそう言って、ステージ衣装を脱ぎ捨てると衣装の下からはビキニにアクセサリーのみという衣装が出てきた。
 セレアナも同じような姿を晒し、船内は異様な熱気を孕んだ。
「よーし、それじゃあガンガン生の活力を出していこう! ミュージックスタート!」
 セレンが声をかけると、再び音楽が響き渡り今度はセレンたちがメインのダンスがスタートする。
 船内の熱気はまだまだ留まることを知らない。


 大熱狂のステージではあったが、船内の人たちもぶっ通しで騒ぎ続けたせいで少し疲労の色が隠せなくなってきていた。
 そんな様子を見かねて早川 あゆみ(はやかわ・あゆみ)がステージに立つ。
「みんな、ちょっと騒ぎすぎて疲れちゃったみたいね。少しクールダウンも含めて、落ち着いた曲を挟ませてもらおうかしら」
 そう言うと、メメント モリー(めめんと・もりー)はステージの裏からスモークを炊き、バラード調の音楽を流し始める。
「また、みんなが盛り上がれるように落ち着かせないといけないもんね。頑張れあゆみん、ボクも応援してるからね」
 裏の方で一人ステージに立つあゆみにメメントは精一杯のエールを送りながら、スモークを炊き続ける。
 落ち着いた雰囲気にステージが包まれて、あゆみを言葉を続ける。
「この歌は、今外で戦っているあの子たちに捧げます」
 あゆみは震える魂、激励や熱狂も使ってバラードを心を込めて、しっとりと歌い始める。
 歓声は無く、やさしい音色が船内を流れ疲れが出ていた船内の人たちに心地良い雰囲気が満ちていく。
 大声を張り上げるような曲ではないが、その声は、全員が無事に帰ってきてほしいと願うあゆみの歌は外で戦う全員の心に届いていた。


「さあ、クールダウンしたところで、もう一回盛り上がっていこうぜ!」
 あゆみの歌の後、少しの休憩を挟んでの再開。
 第二幕の一回目は紅坂 栄斗(こうさか・えいと)がステージに上がった。
「とりあえず誰でもノってくれるような曲をチョイスしたから一緒に騒ごうぜ!」
 栄斗が叫ぶと、船内に誰もが一度は聞いたことがあるような曲が流れ、船内の人たちのテンションは徐々に上がり始めた。
 栄斗はノリノリで歌を歌う。歌詞は仲間との絆を信じると言った内容のもので、まるで戦場で戦う人たちをそのまま歌詞にしたようだった。
 間奏に入り、栄斗はビッとユーラ・ツェイス(ゆーら・つぇいす)を指さした。
「それじゃあ、パフォーマンスのフォローよろしく頼むぜユラユラ!」
 栄斗に声をかけられて、ユーラは呆れたようにため息をつきながら光条兵器を手に取った。
「まったく……お前はわしの光条兵器をなんだと思っておるのじゃ……ま、お前に恥をかかせるのも本意ではないから協力はしてやる」
 栄斗は渋々了承してくれたのを確認すると、ダークヴァルキリーの羽を展開してアクロバティック飛行をすると、その軌跡を追うようにユーラの光条兵器が光りの線を描く。
 アクロバティックの派手さと流線型の光りが見ている人間の心を奪い、船内のテンションは再び最高潮に達し、第二幕の序盤は最高のスタートを切った。
 続いてステージに立ったのは吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)だった。
「ヒャッハー! さあ、てめえら最高に盛り上がっていこうぜ!」
 竜司の呼びかけに数人の男たちが周りより一層大きい声で応えた。
 その男たちは竜司の舎弟であり、周りより高いテンションはサクラをしているようにも見えた。
 そんな様子を見ながら上永吉 蓮子(かみながよし・れんこ)はため息をつく。
「なんで私が盛り上げ役なんか……」
 ぶつぶつと文句を言っていると、蓮子の周りに竜司の舎弟たちが寄ってくる。
「まあまあ、姐さん、そんなこと言わず盛り上がりましょう!」
「そうですよ! ここで盛り上がらない方が問題ありますって」
「まあ……そうだね。仕方ないから竜司の余興に付き合ってあげるよ」
「さあ、一緒に騒いで戦ってる奴らに生の活力を届けるぞ!」
 竜司が声をかけると、蓮子並びに船内の人たちも一斉に声を上げる。
 竜司は熱狂で舎弟たちを盛り上げさせ、そのテンションが周囲の人たちに伝播する。
 そして、肺に空気を送り込み竜司は幸せの歌を優しく歌い上げる。
 が、
「ぼえええええ〜〜〜!」
 とんでもない歌声に船内にいる半数以上がずっこけた。
 そんな状態にも関わらず舎弟たちは無理やり歌に乗って合いの手を入れ、蓮子は苦笑いを浮かべる。
「まあ、気持ちは間違いなくこもっているだろうし歌は上手い下手じゃなくて心がどれだけ篭ってるかだから、竜司の歌はきっと戦場に届くよ」
 そんなことを呟きながら、蓮子は騒音に近づきつつある竜司の歌声を聞き続けた