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リアクション
決着、エリザベートvsエギル 1
「次は、必ず殺すと言った……だからこそここで死ねッ! エリザベート!」
エギルの声と共に、夢魔とゴーレムが一斉にエリザベートへ襲い掛かる。
「おっと! それ以上近づくなよ、躊躇なくぶっとばすからな!」
夢魔の群れの前に泉 椿(いずみ・つばき)が立ちはだかり、エリザベートを警護する。
「夢魔とゴーレム、ねえ。夢魔になら効くかしら」
椿のパートナーである緋月・西園(ひづき・にしぞの)が自分の声色を低くするため、トーンドロップを一つ口に放り込む。
「……簡単に、倒せると思ってるの? 私たちを」
先ほどまでの綺麗な女性の声ではなく、低くドスの利いた声が緋月の口から発せられる。口調が口調なだけに、変に迫力が増す。
「……ドスが効きすぎじゃね?」
「アラ、ちょっとオカマっぽいわね。普通の声でもよかったかしら……でも攻撃を躊躇してくれてる相手もいるし、成功かしら」
「三十分はその声だけどな……まっ、援護は任せた!」
緋月に後衛を任せて、椿は前へ。軽身功を使って壁などを走り、相手を翻弄しながら夢魔を撃退していく。
「ふぅん。おチビちゃんは (チビって言うなですぅ!) エギルとやらの相手で、夢魔の相手もいる……と。
するとまだゴーレムが邪魔だねぇ……どれ、ご退場願おうか」
徳利の中に入った手作りギャザリングヘクスを口の中へ零しつつ、戦況を把握するノア・レイユェイ(のあ・れいゆぇい)。
「ニクラス、夢魔は任せた」
「……御意」
そう短く返し、ニクラス・エアデマトカ(にくらす・えあでまとか)は素早く行動を開始。既に夢魔との戦いをしている椿たちに続く。
グラップラーらしく、地を駆け、その肉体を駆使して夢魔を殴り、蹴り、意識を刈り取っていく。
「さぁてと、ぼちぼち始めるするかねぇ。とは言っても一瞬で終わることだが……」
紅の魔眼を発動し自分の奥底に封じている魔力を覚醒させ、自身の魔力を最大限に引き出した上で、炎の嵐を呼び出して複数のゴーレムを飲み込むノア。
「これで気兼ねなく土に還れるだろう、土くれども。まあ、土は土でも焦土だがねぇ」
ノアの攻撃により次々とゴーレムが崩れ落ちる。が、ファイアストームの範囲の外にいた一体のゴーレムがノアへと突進し、体当たりをしようとする。
「……」
その攻撃にいち早く反応したニクラスがノアの前に立ちはだかり、ゴーレムの突進を受け止める。
「一歩届かず、御破産だなぁ?」
動きの止まったゴーレムを見たノアが魔法を放ち、ゴーレムを撃退。
「しかして、これでスッキリしたと言うものだ」
「よくやったですぅ。さあ、今度こそ決着をつけるですよ、エギル!」
エリザベートがビシィっと人差し指をエギルへ突き立てると、エギルは笑うことなく受け答えた。
「そうしよう。お前の死という決着でな!」
「いいや、そうはさせない。決着は貴様の敗北で終わる」
自身にゴットスピードをかけ、その潜在能力を解放させた十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)が現れ、エギルの側面から猛進する。
星辰の籠手を利用して、握り締めている神狩りの剣にイーダフェルトから供給されたエネルギーを流し込み、エギルへと振りかざす。
「速い、がそれだけだ!」
構築した魔力をバリアへと転換し、振り下ろされた宵一の一撃を受け止める。更に宵一の後方に魔力の玉を具現させ、背中へとぶつける。
「ぐっ!」
「こらー! おまえの相手は私だって言ってるですぅ!」
見かねたエリザベートが不用意にエギルへと近づいてく。するとエギルがニヤリと笑い、エリザベートへと右手を突き出して魔法を放った。
「仲間をやられて冷静さを欠いたか? 不用意にもほどがある」
「それは、どうですかねぇ」
「……なにっ?」
魔法の直撃を食らったかのように見えたエリザベートだが、実際は無傷。その手には魔法を無効化する、女神の右手が装備されていた。
「……貴様、誰だ! 以前のエリザベートはそんなもの持ってはいなかったはずだ!」
「わたくしが誰なのか、それはどうでもいいことですわ。需要なのはあなたが罠に嵌った、ということ」
「なんだと? ……っ!? 体の動きが!?」
「今ですわ! 宵一様!」
エリザベート、に変装したヨルディア・スカーレット(よるでぃあ・すかーれっと)が青のリターニングダガーをエギルに投擲しながら宵一に叫ぶと、宵一がヴァンダリズムを発動。
「さっきの一撃ごと、返させてもらうぞ!」
村を滅ぼし、イコンすら破壊するラヴェイジャーの奥義がエギルを襲う。
荒れ狂う暴力に、魔力で構築したバリアを展開して辛うじて耐えるエギルだがその表情は苦しい。
「……奢るな、雑兵!」
エギルが目を見開き、自分に宿るロゴスの力を解放し、その身から魔力を迸らせ、宵一の攻撃を中断させる。
「はあ、はあ……」
しかし、相当疲労するのか途端にエギルは肩で息をし始めた。ヴェンダリズムによる攻撃が凄まじかったのもその一因だ。