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ザンスカール・フェスティバル

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ザンスカール・フェスティバル

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4.イベント屋台での風景

 ザンスカール・フェスティバルも佳境を迎えた。

 この祭りでは、食べ物屋台以外にも、いろいろな店が個性豊かに並んでいる。

 では、こちらの様子を見てみることにしよう。


貸衣装屋、フェイスペイントサービス

 ナガン ウェルロッドが店主をつとめるこの屋台に、シャーロット・マウザーとシルフェノワール・ヴィント・ローレントがやってきた。

 でも、シルフェノワールはちょっと不安げな様子でつぶやいた。

「ナガンの事だから何か嫌な予感がしますがまぁ、普通のもあると信じましょう。
着るのは露出系やきぐるみ系じゃない可愛いのがいいなあ」

 そんなシルフェノワールとは裏腹に、シャーロットは楽しげに挨拶をした。

「こんばんは、ナガン様。
 相変わらず良いピエロメイクをしてますねぇー」

 すると、シャーロットの挨拶を聞いていたクライス・クリンプトが横から入ってきた。

「ノーノー、基本は『ヒャッハー!』
 挨拶や例などを言うときに必ず入れてね。
 例えば『ヒャッハー!こいつはいいもんだ、頂くぜぇ!』と言うんだよ」

「わかりました。
 ひゃっはー! こんばんは、ナガン様」

 ナガンは、シャーロットの挨拶を受けるとニヤリと笑ってこういった。

「ヒャッハー! これなんかどうだい?」

 といって取り出したのは、アニメのお色気キャラが着るようなバニーガール衣装だった。

「い、嫌です、そんなの着れませんですぅ・・・・・・!」

 シャーロットとして、露出多めな服はNG。
 全力でお断りを入れた。

 しかし、そばにいたクラウン ファストナハトはかまわず追撃。

「ナガンで見慣れてるから、男だろうが女だろうが、裸を見てもナハトは何とも思わないじゃんじゃじゃじゃん」

クライス・クリンプトも便乗して
「こまけぇこたぁいいんだよ!
 考えるのは学校に置いて来ちゃって、とりあえず楽しもう!」

「さぁ、後はみんなではじける時間だよ!
 行ってきやがれ、野郎女郎ども!
 ヒャッハー!」
と手が付けられなくなった。

 これはまずい。
 コスプレをムリヤリ着せられそうになったシャーロット・マウザーは、シルフェノワールに助けられながら、ほうほうのていでナガンの店から逃げ出した。


 次にやってきたのは戸隠 梓とエリザベートだった。

「エリザちゃ・・・・・・じゃないです。
 校長、貸衣装なんてどうでしょう?
可愛いと思うのですが♪」

 梓はこう言うと、ふりふりびらびらの可愛らしい少女チックな衣装をエリザベートとアーデルハイトに勧めたのだった。

「わー、とってもかわいいです!」

 エリザベートたちは、とても衣装がよく似合っていた。

 さらに梓は
「この花細工・・・・・・校長の髪にとっても似合いそうです。
買ってあげようかな」
といって、店員のクライス・クリンプトにお金を差し出した。

 すると、クライスはおどけた様子でパラ実流の会計を説明した。

「お釣りは来ないと思って。
 4以上を数えられない人も多いから、適当にお金を出せばそれが正しい金額と思ってそのまま頂かれちゃうんだ。
 だからといってわざと少ない金額で買おうとしないように。
きちんとぴったし払ってね!」

 髪に花細工をつけたエリザベートは、衣装とも相まって、とっても可愛らしかったのはいうまでもない。


 さてお次は、ターラ・ラプティスと棚畑 亞狗理のカップルがご来店。

 ターラが
「何か面白いことない?」
というので、棚畑が貸衣装屋に連れてきたのだ。

 ターラは、特攻服、さらし褌、刺繍入り長ランなど、ナガンの勧めるままに衣装を着てみる。

「これが、いつも俺たちが着ているもんだ」

「わー、すごーい」

「統一された堅苦しい制服ではなく、カオスな衣装を着てみんなが騒ぎまくること!
 これが楽しいからやるんだぜ」

 ナガンの薀蓄を、ターラははしゃぎながら聞いていた。


 羽高 魅世瑠と王 大鋸も、ナガンの店にあらわれた。

「キング様、ナガンの貸衣装屋をのぞいてみましょうよ」

 こんな感じで、羽高は、普段の口調とは違った猫なで声を出し、しなを作って王に話しかけていた。

 しかし、羽高 魅世瑠の格好は、 ビキニ水着に携行エネルギー砲と飛行用バックパック という目も彩なコスチュームだ。

 このため、ナガンから
「こんな奇抜な格好しているやつにはこれ以上衣装を貸す必要はねえな」
といわれてしまった。

 ただ、面白いことにこだわるのがパラ実生の流儀。

「でもフェイスペイントならしてやるぜ」
とフォローも忘れないナガン。

 羽高、フローレンス、王は3人揃って「目も彩な」フェイスペイントをしてもらい、仲良く並んで祭りの会場に戻っていったとさ。


恋愛成就薬、ミラクルキューピッド

「告白する勇気がない人は、自分で飲むのもよし!
 好きなあの子に無理矢理飲ませちゃうのもよし!」

 店主のカレン・クレスティアが、軽快な調子で宣伝をしていた。

 ここで売っているものは、それを飲んだ後最初に目にした人を好きになると言う「媚薬入りジュース」です。

 自称調合師のカレンが、研究に研究を重ね、イルミンスールの森の薬草を吟味して作った謎の秘薬・・・・・・なんだとか。

 ただ、呼び込みするだけでは余りにも胡散臭すぎるので、パートナーをダシにした公開実験を行うことも忘れない。

 パートナーのジュレール・リーヴェンディは
「なぜ我がその様な事を・・・・・・」
と困惑するが、カレンは一度言い出したら聞かない人だ。

 そのことを十分以上承知しているジュレは、仕方なくサクラになる事を同意したのだった。

 ジュレは媚薬ジュースを飲むと、なんと最初に見たカレンにしなだれかかった。

 その演技の妖艶なこと!

 しかも、見た目が幼女なので、どう考えてもアブナイ雰囲気がプンプン漂っていた。

「ホラ、すごいでしょ!
 こんなツンツンした娘が一撃で恋に目覚めるこの威力!
 今ならお祭り特価で、さらにもう1本おまけにつけちゃうよー
 在庫限り、早い者勝ちだよ」

 と、カレン・クレスティアは得意顔で宣伝していた。


 さらに、ジュレールは、薬の宣伝効果をこれ以上無いほど高めたいと思い、学園の有名人が近くを通らないかチェックしていた。

 エレクトリック・オーヴァーナイト、王 大鋸が通りかかる。

「うふふ、来た来た。
 一番のターゲットが!」

 ジュレールは、さっと手をあげてカレンに合図を送り、彼女に一際大きい声で目立つように呼び込みさせた。

「さあ、効果はバツグンだよー!」

 これをみたエレクトリック・オーヴァーナイトが、王 大鋸に媚薬入りジュースをけしかけないわけがない!

「祭り如きで私を満足させられるか、実に楽しみね」

 再度このセリフを言い放つと、王 大鋸は困惑しつつも媚薬入りジュース飲み干した。

 すると、王の顔が赤くなり、譲葉 大和顔負けの歯の浮くようなセリフを言い始めたのだ。

「君とこの人ごみではぐれても、俺はすぐに見つけ出せますよ。二人を繋ぐこの赤い糸を辿ればいいんですから」

 これを聞いていた譲葉 大和はびっくりして言った。

「いつのまに俺のセリフを覚えたんだ!」

「さっきお前が女の子たちを誘う前にセリフの練習してんのを見ていたんだな」

「・・・・・・!!」

 譲葉 大和は、媚薬ジュースを飲んでいないのに、王に負けないくらい顔が真っ赤になってしまった。

 このセリフを言うために用意したGPS発信機がムダになってしまった。

 王の様子を見たカレンが、クスクスと笑いながらジュレにささやいた。

「すごい効き目!
 いわゆるプラシーボ効果だね。
 根の単純なパラ実生は、すぐ本気になってくれるから面白いよね!」


 エリオット・グライアスは、あまり屋台めぐりに乗り気ではなかった。

 感情の問題で、パラ実生とはお近づきにはなりたくないと思っていたからだ。

 でもメリエル・ウェインレイドに
「ここならパラ実生の屋台じゃないからいいでしょ?」
といわれ、ミラクルキューピッド屋台にやってきた。

「わー、これ面白そう。
 ねえエリオット、これ飲んでみてよ」

 エリオットは恥ずかしがってジュースを飲まなかった。

 でも、カレン・クレスティアにも勧められて、エリオットはしぶしぶ媚薬入りジュースを飲んだ。

 すると、身体が熱くなってくる。

「どう?」

 こう訊くメリエルに対し、エリオットは苦しげにうめいただけ。

「ううん・・・・・・★#@」

 どうやら、エリオット気分が悪くなってしまったようだ。


 ダブルデート中の東雲 いちるとヤジロ アイリも、この媚薬入りジュースを面白がって飲んでみた。

 しかし、間違ってふたりとも最初に互いの相手のパートナーを見てしまった。

 東雲 いちるは
「セス・テヴァン、あなたのことをずっと思っていました」

 ヤジロ アイリも
「ギルベルト・・・おまえのことがずっと好きだった!」

「やめてぇぇーー!!」

 こういって、セス・テヴァンとギルベルトは、フェスティバルの会場中を逃げ回った。


金魚さん危機一髪!? 弱肉強食金魚すくい!!

 この屋台の店主、伊達 恭之郎を手伝うのは、パートナーの天流女 八斗。

 天流女は、赤い金魚柄の浴衣を着てニコニコと楽しそうに店番をしていた。

 初めてやる夏祭りの屋台に興奮気味のようだ。


 ここに、和原 樹とフォルクス・カーネリアがやってきた。

 和原は、道中フォルクスが肩を抱いたり腰に手を回そうとしてくるのをひたすら払いのけ続けていた。

 が、あまりのしつこさに和原はキレて
「いい加減、鬱陶しいっての!」
と、ついフォルクスを殴ってしまった。

 でも、さすがに和原はまずいと思ったのか、フォローの手を差し伸べた。

「まったく・・・・・・手ぇ繋ぐくらいなら許す。
 特別大サービスだ。
 普段は絶対お断りだけどな」

 すると、フォルクスは嬉しそうに手をつないで、ここ金魚すくい屋台にやって来た。

 水槽を見ると、金魚のほか、そこらの川や池から取ってきた魚も混ざっている。

 中にはタガメやオタマジャクシまで泳いでいる。

「色んな種類がいたほうがお客さんも楽しいと思うんだ。
 ひょっとしたらピラニアっぽい凶暴なお魚もいるかもだから気をつけてね。
 水槽の中でお魚さんたちの共食いが始まるかも?
 か弱い金魚さんは生き残れるのか!?
 あなたのポイですくってあげて!!」

 こう宣伝する伊達 恭之郎の横から、天流女 八斗がポイとボウルをふたりに配った。

「金魚すくいのやり方が分からない人には、実際にすくって見せてあげますよ」

 天流女 八斗の上手な手並みを拝見した和原 樹とフォルクス・カーネリアは、すっかり打ち解けたようだ。

 仲よさそうに寄り添って金魚すくいをしていた。


 国頭 武尊も、エリザベートにいいとこ見せようと、金魚すくいにやってきた。

 国頭にとってみれば、得意の体育の能力が生かせるので、腕の見せどころだ。

「たまには、普通に楽しむのも悪く無いしさ」

 そういって、金魚やタガメなどを20匹ほどあっという間にすくいとってしまった。

「ざっとこんなもんだぜ!」

「すごいですぅ」

 エリザベートへのアピールは成功したようだ。

「あ、すくったお魚は責任もって持って帰って育ててね。
 食べちゃったり、実験に使っちゃったりしちゃダメだよ?!!」

 魚を持って屋台を去ろうとする国頭に、天流女 八斗はさようならの挨拶をしたのだった。


 茅野 菫も、アーデルハイトと一緒にここに来た。

 しかし、菫は金魚すくいが得意ではないようで、ポイがすぐ破れてしまう。

 飽きてしまった菫は
「リンゴ飴が食べたい、ヨーヨー釣りも一緒にやりたい」
とだだをこねはじめた。

 パートナーのパビェーダ・フィヴラーリが
「それはないのよ」
とたしなめる。

さしずめ、パビェーダは菫のお姉さん的ポジションといったところだろう。


 さて、祭りを華やかに彩るものといえば、それはいうまでもなく浴衣姿の女性だろう。

 この金魚屋台にも、浴衣姿の女性たちが訪れた。

 シャーロット・マウザーは、まっ白いロリ浴衣姿。

 そして、シャーロットと一緒にまわっているシルフェノワール・ヴィント・ローレントは、白生地にピンクの桜吹雪模様の浴衣を着ている。

 しかも、髪を結って和風スタイル!

 さらに、晃月 蒼も可愛い浴衣姿であらわれた。

 店主の伊達 恭之郎は、彼女たちをみるとこういった。

「浴衣姿のお姉さんにはサービスしちゃいますよっ!!」

 そういって、天流女 八斗にポイを配らせていた。

 浴衣姿での特典は、いろんなところにあるものである。


世界樹異琉明数流慈慧斗鋼巣蛇(世界樹イルミンスールジェットコースター)屋台!

 ハーリー・デビットソンが主催する異色の屋台は、結構人気があるようだ。

 やはり、ジェットコースターというのは、みんなが好きなアトラクションなのだろう。


 まずここにやってきたのが、巫丞 伊月とファタ・オルガナだ。

 すると、ファタ・オルガナは、少女のように振る舞い、猫をかぶったような声を出した。

「そんな・・・・・・、わし、こういうのこわいんじゃがのう・・・・・・。
 でも、伊月がどうしてもっていうなら乗ることにやぶさかではないぞ」

 そういいつつ、巫丞 伊月の背中を押してチケット売場に連れて行ったのだ。

 どうやら、タダで乗りたいようだ。

「一応デートではあるから相手も楽しめるだろう!
 ってかデートしてやってるんだから金払え!」
というのが、ファタの魂胆らしい。

 ところが、チケット売場に行くと、今度は巫丞 伊月が猫なで声で言った。

「・・・・・・ねぇ、私コレに乗りたいのぉ・・・・・・チケット買ってくれない・・・・・・?」

「はぁ?」

 ファタ・オルガナはびっくりしてしまった。

 どうやら巫丞 伊月も、相手に払わせる気でいたのだ。

 これを見ていたエレノア・レイロードが、あきれた様子で仲裁に入った。

「ふたりともしょうがないですわねー。
 もう、今回はエレノアが払ってあげるから・・・・・・」

 で、ジェットコースターに乗ると、ファタと伊月は、さきほどのことなんか全く忘れてしまったかのように、はしゃいでいた。


 南 鮪は、さきほどからエリザベート拉致のチャンスをうかがっていた。

 そして、チャンスが巡ってきた。

 生徒たちに囲まれているエリザベートが、近づいてきたのだ。

 南 鮪は、エリザベートの前にでると、いきなり
「ジェットコースターごあんなーい!!」
といって、エリザベートを捕まえた。

 鮪は、目にもとまらぬ早業でエリザを小脇に抱えると、一目散に猛ダッシュ。

「ただ見て遊ぶだけの屋台なんざつまんねえだろ
 ヒャッハァー俺がご褒美をくれてやるぜー」

 そういうと、懐から酒を取り出して、エリザベートに飲ませようとした。

 彼女の弱点は酒だということを判っている上での犯行だ。

 エリザベート自身、幼いから酒に弱く少量でも酔ってフラフラになることを知っていたので、
「いやですぅ」
と飲むことを拒んだ。

 すると、なんと鮪はエリザベートの顔にバッシャーンとぶっかけた。

「へへっ、これは酒じゃねえ。
 アルコールが混入した甘酒よ」
と、どうみても言い訳にならないセリフを並べて、ジェットコースター屋台に駆けつけた。

 恐怖爆走屋台が、エリザベートを乗せて世界樹を疾走する!

「ヒャッハァ おまえの為に貸切だァ
 美津富(ビップ)待遇だぜェ」

「ヒャッハァ 校長を帰して欲しいなら追いかけて来いや」

 緊急ザンスカール世界樹屋台レース大会開幕である。

 まさにやりたい放題。

 しかし、こんな無法が許されるわけがない。

 警備を担当していたレベッカ・ウォレスがジェットコースター屋台に駆けつけ、南 鮪を捕縛すべくレースを繰り広げる。

 レベッカがもつ光条兵器の銃弾が南 鮪の足をかすめ、結局鮪はつかまった。

 すかさず、レベッカの相棒、アリシア・スウィーニーが南 鮪の口に猿轡を付けて静にさせる。

 南 鮪は、十字架型の磔台に括り付けて輸送され、フェスティバルの実行委員に引き渡された。

 この一部始終を見ていたのがエリオット・グライアスだ。

 彼はパラ実を良く思っていなかったが、レベッカ・ウォレスの行動を見て、こうつぶやいた。

「彼らの中にも世の中の役に立つことをする者がいたんだな。
 見直したよ」

 パラ実のマイナス印象を軽減したい、というレベッカ・ウォレスの思いは、イルミンスールの生徒にも理解してもらえたようだ。


 さて、平和が戻ったところで、茅野 菫がアーデルハイトと一緒にジェットコースターにやってきた。

 本当は、ヨーロッパ風なお祭りならメリーゴーランドに乗りたかったが、それがないので、ジェットコースターはメリーゴーランドのかわりだ。

 菫は、乗る前にアーデルハイトへ向き直ると、お願いをした。

「アーデルハイト様だとよそよそしいし呼びづらいので、アディと呼ばせてよ」

 もちろん、アーデルハイト様は年齢的にも経験的にも大先輩なので尊敬はしている。

 だが、それよりも親愛の情を込めた親しみのある呼び方をしたいと思う気持ちが強かった。

 もちろん、アーデルハイトはニッコリ笑って承諾してくれた。

 ジェットコースターでは、菫とアーデルハイトは一緒に座り、キャーキャー騒いで楽しんだ。

 降りてから、菫は
「アディ楽しかったね」
と話しかける。

 それは、自然に、親しみをこめて呼びかけたものだった。


歌とダンス

 ザンスカール・フェスティバルは、そもそも魔法学校のイベントだ。

 屋台だけでなく、当然、芸術系の催し物だってある。

 こちら、特設ステージでは、歌やダンスを披露するイベントが行われていた。


 戸隠 梓は、エリザベートをこのイベントに誘っていた。

「このステージ観に行ってみませんか?
 きっと楽しいと思いますよ♪」

 そういって会場に向かったのだが、つと立ち止まると、パートナーのキリエ・フェンリスを不満そうな顔で見つめた。

 キリエは梓が何を言いたいのかすぐ察した。

「歩いて回りたくない?
 ったくこれだからガキは・・・・・・
 ほら、肩車してやるよ」

 そういってヒョイと梓を抱えあげた。

「えへへ・・・・・・
 らくちんらくちん」

 梓はうれしそうだ。


 グレン・ラングレンも、アーデルハイトを連れてこの会場にやってきた。

 年上のアーデルハイトならば、こういう高尚なものが好きだろうと思っての提案である。

 晃月 蒼と王 大鋸のコンビもここへ来た。

 しかし、晃月を心配していたパートナーのレイ・コンラッドは
「やれやれ、危なっかしくて見ておれませんな」
と、こっそり尾行していた。

 ところが、つい晃月ばかりを見ていて、目の前にあるゴミ箱に足の指をしたたかぶつけてしまった。

「ギャン!!」

 パートナーを守るのも、命がけである。


 愛沢 ミサもここに来て、笑顔でシー・イーに語っていた。

「俺、とっても歌好きなんだ。どんな歌が聴けるか楽しみ!」

 エリザベートに王招待された松平 岩造も、このイベントを楽しみにしていたのだ。

 ショーが始まるまでの時間、彼は王にいろいろなことを語っていた。

 四天王争奪戦で、みんなの戦いを止めに入ること。

 マレーナのためにこの戦いを止めようとしたら逆に戦いが増える羽目となってしまったこと。

 パラ実とイルミンが、世界樹でカブトムシの次郎さんのことで喧嘩し、両校の生徒達を仲直りさせて一緒に協力し合わせた話・・・・・・などなど。


 さて、このイベントに出演するはるかぜ らいむは、胸を高鳴らせていた。

「こんなにたくさんの人が集まるんだ。
バラミタ一のアイドルを目指すボクとしては、こんなチャンスめったにないぞ!」

 そして、舞台がはじまった。

 はるかぜ らいむはメインステージの壇上に上がり、めいっぱい歌い、踊った。

 らいむの魂がこもったパフォーマンスは聴衆の心に響き、大きな喝采を浴びたのである。


アクロバット飛行イベント

 イベントの興奮さめやらぬ頃、舞台のすぐそばで「キーン」という轟音が鳴り響いた。

 何事かとみんなが色めきたってみると、それは飛行機の姿をしたエー テンだった。

 乗り手はパートナーのテクノ・マギナ。

 エー テンは、低空スレスレを飛んだり、バーストダッシュを交えたりとアクロバットな飛行を行い、周囲の目を釘付けにした。

 周りの屋台が風で吹き飛んでもお構いなし。

「こまけぇこたぁいいんだよ!」
と、パラ実精神全開で、大空を自由に飛びまわっていた。

 そしていよいよ着地だ。

 急速降下したエー テンは、ド派手に祭りの会場へと降り立った。

「俺の名はテクノ、テクノ・マギナだぜ!
 ヨ・ロ・シ・ク、ヒャッハー!!」

 登場も、もちろんド派手である。

 フェスティバル会場の注目を一手に浴びて、テクノ・マギナは得意げに口上を述べた。

 そして、茅木 綾人がテクノ・マギナを止めようと駆けつけてくると、マギナはヒョイとエー テンに乗り、バーストダッシュで飛び去ってしまった。

 離陸で風が巻き起こり、立川 るるのサマーワンピースがバーッとめくれる。

「キャーッ!」

 彼女は普段、箒に乗る時のパンチラ防止でスカートをはかないのだけど、今回は箒に乗る用もないしお祭りだから特別! と思っていたのに、このありさま。

 この様子を見た織機 誠は

「騎士として立川さんを全力でお守り・・・・・・」
といいつつ、戦わずに彼女を抱えて逃げだした!

「彼女には、指一本触れさせません・・・・・・・・・・・・織機の名にかけて!」

 逃げながらそう言い放つのがやっとだった。

 だいぶ走った織機 誠は、ようやく立川 るるを下ろした。

 すると、るるは恥ずかしそうにこう言った。

「見た? パンツ」

「いや、見てない見てない! チラッとしか・・・・・・」

 織機は顔を赤らめ、慌てて否定したがもう遅い。

「織機くんのばかぁーっ!」

 ズドーン!

 立川 るるの雷術、ここに炸裂せり!


 柊 美月は、さきほど止めに入った茅木 綾人を心配して言った。

「怪我はない? 大丈夫? 無事ならいいの・・・・・・ よかった」

「悪かったな、心配かけて。
 騒ぎも収まったし、屋台を楽しもうぜ」

「うん、最後まで思いっきり楽しみますわよ♪」


恋愛支援

 さて、場面を再び屋台へ戻そう。

 當間 零が店主を務めるここ恋愛支援屋台では、ウェイド・ブラックと遠野 歌菜が恋愛相談に来ていた。

 ウェイドの悩みは自分勝手な性格をなんとかしたいということ。

 そして遠野のほうは、さきほどウェイドを誘う際に言った
「私の白馬の王子様になって」
というクサイセリフで、恥ずかしがっている。

 そのようなぎこちない二人に対して、當間 零は親身に受け答えをしていた。

「ウェイド、君は自分勝手なんかではないから自信をもって!」

「遠野、そのセリフは決して恥ずかしいものじゃない」

 そういってふたりを元気付けたのだ。

 安心したふたりは優しい目で見つめあい、ニッコリ笑い合う。

 そして、ウェイド・ブラックが恋愛運の上がるお守りを買っていった。


 次は、織機 誠が立川 るると連れ立ってやってきた。

 織機は、さきほどのパンチラ事件でのマイナス印象を挽回すべく、當間 零に相談をしてきたのだ。

 ちょうどそのとき、アーデルハイトが茅野 菫と一緒に来ていた。

 これは、くじ引きの代わりだ。

 店主、當間 零としては、校長のパートナーのアーデルハイト大先生には協力をお願いしたいと考えていた。

「人生経験豊富な大先生がどのような恋愛指南を行うのか・・・・・・
 非常に興味があるからね」

 というわけで、當間 零がアーデルハイトに意見を求めると
「そんなの大したことないじゃない」
となぐさめられ、織機 誠は安心する。

 さらにアーデルハイトは立川 るるに向かって
「織機 誠くんはちょっと不器用だけど、好青年じゃないか」
といった。

 これを聞いて、るるも少し安心したようだ。

 ぎこちない空気が和らいだところで、立川 るるは言った。

「そういえば織機くん、るるのこと苗字で呼ぶよね。
るる的には自分でも気に入ってるし、下の名前で呼んでほしい・・・・・・かな。
えへへ」

 これを聞くと織機 誠は顔を赤らめ
「え・・・あ・・・・・・るる・・・・・・」
と小さな声でいう。

 しかし、立川 るるはすぐに元の調子に戻って
「まぁ残念ながら、るるには愛だの恋だの別次元の話だしね。
・・・・・・あはは、まさか、ね。」
と切り返されてしまった。

 でも、彼女の目は微笑んでいるように見えた。

 そして、また元気に織機を次の屋台へと誘った。

「ねえ織機くん、るる、いんすます ぽに夫さんの『クトゥルフ神話学科の屋台』に行きたいな」

「え、ぽに夫さんの屋台にも行くんですか?」

 なぜか、織機は汗ダラダラになった。

 行くとまずいことになる心当たりでもあるのだろうか?


 ターラ・ラプティスと棚畑 亞狗理も、ここにきて相性占いをやっていた。

 結果、相性は良いようだ。

 しかし、棚畑 亞狗理は、そんなことどうでもいいとばかり、ポイントシールを無断で商品へ貼り付けていることに夢中になっている。

 それでもターラは、棚畑の性格が面白くて憎めないので、つい微笑んでしまうのだった。


 そして、お次は當間 光がエリザベートを伴ってやってきた。

 例の、罰ゲームつきの勝負をするためだ。

 エリザの提案により、2人の相性がよければ當間 光の勝ち、ということになった。

 相性占いをやってみると、結果は、相性バツグン!

「やったー!それじゃあ『生徒の日』という休校日を創るか『一日校長』をやらせてもらうよ」

エリザベートは困惑して
「それは困りますぅ」

「冗談ですよ。
勝負の勝敗は特には気にしません」

 光は、エリザベートと遊びたいだけなのだ。

 因みにこの店では、エリザベート校長に対しては、商品はタダ。

 理由の半分は子供からお金を取るわけにはいかないからで、もう半分は秘密だという。