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リアクション
5.神話と射的
クトゥルフ神話学科の屋台
ザンスカール・フェスティバルの数ある屋台の中でも、特に人気の高い屋台があった。
そのひとつがここ、いんすます ぽに夫の「クトゥルフ神話学科の屋台」だ。
屋台は、目立つように暗黒の雰囲気を漂わせる外装で、来場者も多くいた。
店主のパートナー、巨獣 だごーんを目当てに来る客もおり、彼の巨体を待ち合わせ場所として使う者もいるくらいだ。
ここでは、神話学科の紹介を行なっている。
ヘレトゥレイン・ラクシャーサは嬉々として、やってきた。
「クトゥルフ神話の店!?
すごく気になりますわ。
イアイアハスタアですわね!」
「実家がウィザードの家系ですので、こういうものに興味があるのですよ♪
わたくしはプリーストですけど・・・・・・。
家にある書庫にはそういう本が多かったですし・・・・・・」
と、興味深々の様子だ。
いんすます ぽに夫から学科の説明を聞くと、ますますその魅力の虜になり、自分の専攻学科にしようと密かに心に決めたくらいであった。
ラクシャーサと一緒に来ていた譲葉 大和は、少し驚いた様子で言った。
「君はなかなか高尚な話が好きなんだな。
俺も神話好きだよ。
ギリシアのイカロスは翼を焼かれて地面に落ちたけど、俺は地面じゃなく、君に堕ちていきたいよ」
しかし、ヘレトゥレイン・ラクシャーサはこれを聞いておらず
「さ、次はクトゥルフ焼きのお店に行って、たこ焼きを食べましょ」
そういって、さっさと歩き始めた。
この屋台では、神話学科の紹介音楽もかけていたが、聞き続けると正気をなくす人がでるかもしれないという。
現に、立川 るると一緒に来ていた織機 誠が気分を悪くし、うわごとを言い始めた。
「う・・・・・・頭が痛くなってきた。
あれナ うわさハ ゼンブ ウソッパチ デスヨ」
「今回は見逃してください・・・・・・」
「織機くん、大丈夫?」
これをみたいんすます ぽに夫は喜んだ。
「デートしている織機に魔の手を!」
が、ぽに夫の目的らしい。
ここで出しているのは海産物のBBQだ。
食材は、深海魚より気持ち悪いグロテスクな魚や、全長15メートルのパラミタオオホタテの貝柱などだ。
ウェイド・ブラックと遠野 歌菜、巫丞 伊月とファタ・オルガナがその貝柱を食べてみる。
「おいしい!」
しかし、しばらくして食べたメンバーの気分がおかしくなる。
織機 誠が
「あなたもか・・・」
と同情していた。
水神 樹は、神話学科の紹介を興味深そうに聞いている。
そして、巨獣 だごーんと握手し、サインをもらった。
しかし、握手したことで、正気度が下がってしまったようだ。
水神はカノン・コートに
「大丈夫か?」
と介抱されていた。
国頭 武尊も、エリザベートを引き連れてここにやってきた。
腹が減ったらイルミンの生徒がやっている食べ物系の屋台に行ってみようと思っていたし、クトゥルフ神話学科の屋台に何故か引き付けられるので、ここで食事と決め込んだ。
「クトゥルフってのが何だか良く知らないが、ここの食べ物は、『正気を失うほど』美味しいらしいから楽しみだな」
国頭がこういうと、水神 樹が
「ここのものを食べたりするとヤバイですよ」
と忠告してきた。
しかし、国頭 武尊は平気で深海魚を食べてしまう。
少しフラフラしてきた。
国頭は
「全然大丈夫!」
といいながら、屋台をイタズラし始めた。
巨獣 だごーんがこれを注意しにきたが、逆に国頭 武尊は、だごーんがエリザベートにちょっかいを出しに来たと思い、だごーんにケンカを売ってしまった。
すると、巨獣 だごーんにはるかかなたまでぶん投げられる。
まるで、ギャグ漫画で投げられた人のように、遠くでキラッと光っていた。
さて、ここでプレゼントタイムだ。
いんすます ぽに夫は、みんなにステキな贈り物を用意していた。
まず、ファタ・オルガナには、萌えクトゥルフな13歳少女。
これは、人間ではない何かということらしい。
次に、羽高 魅世瑠には、だごーん様の彫り物入り銀の鑰と輝くトライアスロン選手。
宝石付きである。
立川 るるには、外宇宙まで見えると噂される天文望遠鏡だ。
しかし、織機 誠だけは他の人と違う様子。
彼には、インスマス女性の18禁写真集をプレゼント。
しかも、一緒に来ている立川さんに見えるように渡したのだ。
「へへへ、これが例のブツですよ。
デートなどする不埒な者は【インスマス顔が好みです】という称号でも貰っていればいいのです!
そして立川さんから侮蔑されろ!」
しかし、こうなることがわかっていた織機 誠はプレゼントを受け取らず、立川 るると逃げるように立ち去ってしまった。
「にげましたね!
でも次はそうはいかなくてよ。
覚えてらっしゃい!」
このほかの人には、全長20cmのだごーん様フィギュアが配られた。
「これだけやればクトゥルフ神話学科も知名度向上だな!」
いんすます ぽに夫はそういうと、本郷 涼介の屋台に遊びに出かけていった。
須鯛律朱(すたいりっしゅ)☆射的遊戯
クトゥルフ神話学科の屋台に負けず劣らず人気なのが、御弾 知恵子がやっているこの射的だ。
御弾は、スケバン風の言い回しで、宣伝文句を述べている。
「アタイが開く屋台の名前は『須鯛律朱(すたいりっしゅ)☆射的遊戯』!
基本はよくあるコルク鉄砲の射的ゲームさ。
景品はお菓子、玩具、化粧品等。
値段のあまり張らないものを集めてあるさ」
「一回分の料金でもらえる弾は3発。
決められたラインから銃を撃ち、景品に弾を当てられればそれがもらえるという寸法さね」
そう、上手に宣伝していたが、彼女の心の内は商売としての計算もあった。
独りになると、いつもこのようにつぶやいている。
「ただし、そう簡単には当たらないよ。
安い方の景品は素人でもそれなりに当たるように配置されてるけど、高くなればなるほど遠く難しく、一番難しいのはソルジャーのスキルを駆使して取れるかどうかって位のインチキな場所にあるよ」
「あと、ここの目玉、という名の罠として二挺拳銃コースってのもあるよ。
このコースだと一回分の料金で弾が6発もらえるよ。
ただし、銃は通常のライフル型でなく、二挺の拳銃型になる。
これを片方ずつ使うか、両手に持つかは自由だけど、実際のところかなり狙いにくくなるから、それこそソルジャーじゃないとマトモに使えないね」
なかなかしたたかな女性である。
さて、次にこの須鯛律朱☆射的遊戯にやってきたのは柊 美月と茅木 綾人だ。
美月は、首をかしげつつ、おねだりをしていた。
「ねえねえ、綾人。 あれ、ほしいなー
あの大きいぬいぐるみがほしいのですわ
頑張ってとってね♪」
「ああ、美月はあのぬいぐるみがほしいのか。
仕方が無いなー」
そして、綾人はぬいぐるみに狙いを定めると、見事にこれを射当てた。
「お、なんとか無事に取れたかな?
ほらよっ!」
「ふふふ、とってくれてありがとう。
でも大きすぎてちょっとこれをもったままじゃ歩きにくいですわね」
「お気に召しましたか? お姫様
たく・・・・・・こういう時だけ甘えるのって卑怯だよな」
東雲 いちる、ヤジロ アイリのダブルデート組も射的を楽しみにやってきた。
ヤジロ アイリは、居並ぶ景品を見てつぶやいた。
「景品のぬいぐるみ、かわいい。 欲しいな。
店だと恥ずかしくて買えないけど・・・・・・」
さらに
「2丁拳銃コースなら景品を徐々に後ろにずらして落とせそうだ、力学的観点から後ろに下がらせるポイントを割り出し狙うぜ!!」
アイリはそう思ったが、やっぱ恥ずかしくて集中できないようだ。
そのうち、弾切れになってしまった。
パートナーのセス・テヴァンは、いちるとギルの二人を見て
「良いカップルですね。
私もアイリと・・・・・・」
とほほえましく観察していたが、アイリは射的中だった。
しかし、恥ずかしがって欲しい商品を狙えないでいるアイリを見ると、こう言い放った。
「さあアイリ、後は任せなさい、貴方の努力私が引き継ぎましょう」
「セ、セスが取ってくれるのか?
・・・・・・キュンときた・・・・・・
やっぱりセスは優しいな」
セスは、ずらされた景品をライフルでしっかり狙いを付けて、撃った。
「当たった!
アイリ、ぬいぐるみをゲットしたよ」
「わーい、セスありがとう。
え、手を繋ぎたいって?
恥ずかしいが・・・・・・今日はいい、ぞ」
アイリは嬉しくなり、真っ赤になってデレていた。
そして、アイリとセスは手を繋いで、このダブルデートを最後まで楽しんだのだった。
ヘレトゥレイン・ラクシャーサのお相手をしている譲葉 大和も射的にチャレンジ。
化粧品を狙うが当たらないので、お菓子に狙いを変えてゲットした。
譲葉は、リリサイズ・エプシマティオのお供もしているため、彼女の分もやろうとしたが、これまた振られてしまった。
「ふ・・・・・・射的なんて所詮はお子サマのお遊びですわ」
彼女としては、内心羨ましいけど羨ましくないように振舞っているのだ。
水神 樹もこの店にやってきたが、やってみようか迷っているようだった。
そこで、店主のパートナーであるフォルテュナ・エクスが、SPリチャージを使って水神やる気にさせた。
彼は、普通に射的を楽しんでいた。
国頭 武尊もエリザベートをエスコートしてあらわれた。
彼が選択したのは二挺拳銃コース。
「シャープシューターでオレの射撃の腕を存分に見せ、大量の景品をゲットだ。
貰ったものは全て校長に与え、好感度上昇を狙うぞ」
そう意気込んで、難関の二挺拳銃を構える。
結構失敗も多かったが、何回もチャレンジして、それなりの玩具をゲットしたようだ。
茅野 菫も、射的をやってみるが、当たらない。
さすがにまだ9歳のお子様には難しかったようだ。
トリを飾るのはラルク・クローディスと王 大鋸。
「もし、あれだったら賭け勝負してもいいぜ?
こういう勝負事は燃えるしな!」
こういうと、ふたりとも二挺拳銃コースを選んだ。
先攻は王 大鋸。
しかし当たらず。
次にラルク・クローディス。
彼はめちゃくちゃに撃ったが、なんと、一番奥にあるゲーム機をゲットした。
御弾 知恵子は舌打ちしながら
「ち、もってきな!」
といい、王 大鋸は
「お前の勝ちだぜ」
と賞賛した。
気分を良くしたラルク・クローディスは
「次はお化け屋敷とかあれば入ってみてぇなー」
と笑いながら言った。
しかし、このお祭りにお化け屋敷はないようだ。
「え、お化け屋敷がない? なんだ・・・・・・
わ!! って二人を脅かしてからかうのも悪くはねぇと思ってたんだけどな」
そこに木の上から大きなクモが一匹スススーっと降りてきた。
「わーーーーー!!」
慌てふためくラルクと王。
「やっぱり、俺もお化けとかそういうのは少し苦手だぜ」
さすがのパラ実生も、苦手なものはあるようだ。