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特別授業「トランプ兵を捕まえろ!」(第2回/全2回)

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特別授業「トランプ兵を捕まえろ!」(第2回/全2回)

リアクション

 戦線変わって西門である。チーム「PLANT」サニーのクイーン(12)に挑んでいる。小型飛空艇に乗りしはプリーストの鈴倉 虚雲(すずくら・きょん)とパートナーのセイバー、紅 射月(くれない・いつき)である。
「くっ、わっ」
 虚雲は絵柄兵のカルスノウトをホーリーメイスで何とか受けている。その背後に紅が回り込んでアタックを仕掛けるはずに。
 一瞬の隙だった、紅の飛空艇を目で追ってしまった瞬間に、虚雲はメイスを弾かれてしまった。
 絵柄兵の一撃が振り下ろされた、無防備な虚雲の前に体を投げたのは紅だった。
「紅っ!!」 
 虚雲の手をすり抜けて紅は地へと落ちてゆく。
「くそっ、あの馬鹿…………、副会長!!」
 虚雲のパートナー、瀬戸鳥 海已(せとちょう・かいい)は向かい来る虚雲の飛空艇を足場に跳ぶと、火術を放って絵柄兵の箒を燃やすに成功した。
 落ちる紅は虚雲がキャッチしたが、落ちる絵柄兵は誰もキャッチしない、むしろ追撃が待っているのだ。
 柳生 匠(やぎゅう・たくみ)が血煙爪で斬りつける、そして罠地帯へと斬り落とした。
 平地にだって罠は仕掛けられる。地面に落ちた絵柄兵はワイヤーによって動きを封じられ、そこへ落下の勢いを加えた匠の血煙爪が絵柄兵の体を貫いた。
 トランプへと戻る絵柄兵、その絵の先に、倒れている紅の姿が見えた。
 大きく斬られた紅の傷に虚雲は必死にヒールをかけた。
「馬鹿野郎、こんな、こんな傷つくりやがって」
「僕はあなたに感謝しているのです、これはそのホンのお返し……」
「もぅいい、しゃべるな」
 虚雲の必死な表情が紅を満足させていた。虚雲のもう一人のパートナー、瀬戸鳥 海已(せとちょう・かいい)はそんな二人を気にする事なく、再び空のサニーの8へと挑んでいた。
 自分に何が出来るのか、何をする事が最善なのかを見極めた上での行動であるのか、ただの戦闘狂なのか。咄嗟の行動に垣間見れるとは思えるが、その為にはもう少しだけの時間が必要にも思えた。
 チーム「PLANT」サニーのクイーン(12)を撃破した、つまり西門の上空は防衛網が崩れたという事になる。
 すかさずにナイトの水神 樹(みなかみ・いつき)はパートナーのカノン・コート(かのん・こーと)と共に空飛ぶ箒でポールを目指した。
 スピードを上げた先にサニー兵がいるが、空中戦は十分に経験できていた、更に界下の状況は未だに混沌としていた、それならば、ここは一気に通過するが良い。
 カノンが唱えたはバニッシュ、強力な光に数字兵の動きが止まる。通過する際には樹がハルバードで斬りつけたが、スピードを落とす事はしなかった。
 緊張感の中で箒のスピードを試す事もできた。ポールの通過が正しく本日の修練終了を意味すると樹は思いた。


 同じ時間の少し前、西門、混沌戦陣内。チーム「カードバスターズ」が挑みしはクラブのキング(13)ムーンの3。2枚はまるでコンビのような戦い方をしていた。
 ナイトの菅野 葉月(すがの・はづき)がランスでの突きを繰り出す。絵柄兵はカルスノウトで軌道をズラして避けると、数字兵が葉月を狙いてアサルトカービンを向けた。
 数字兵が撃つよりも先にソルジャーの比島 真紀(ひしま・まき)がアサルトカービンで数字兵の銃身を狙い撃つも、これを絵柄兵が打ち落とすのだ。
 数字兵の銃弾を防いだはメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)のパートナーで英霊のフィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)、葉月に覆い被さった彼女のホワイトアーマーが葉月を守る。
 攻撃の手は緩めない。ウィザードのミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)は辺り一面に氷術を放ち足場を奪おうとしたが、絵柄兵、数字兵ともに宙に跳び、着地の際にはカルスノウトの渾身の一撃が地を砕いた事で無効化された。
 プリーストのメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)とウィザードのサイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)のバニッシュとアシッドミストの連続発動は大いに視界を奪う事に成功を見せたが、攻撃を当てるには近づく必要が出てくる、近づくという事は避ける対処される、今までの攻防と変わらぬ結果になりかねないのである。
 メイベルのパートナーで剣の花嫁のセシリア・ライト(せしりあ・らいと)は、自身にパワーブレスを使用して、光条兵器のメイスを振りかぶったのだが。
 この瞬間に、落下物。ナイトの水神 樹(みなかみ・いつき)が斬りつけたサニーの10が絵柄兵の目の前に落ちてきたのである。セシリアの姿を見て迎撃体勢に入っていた絵柄兵が動きを止めた、その瞬間は落下物を認識しようとしたか否かの僅かな差、セシリアのメイスが絵柄兵を殴りつけた。
 間髪も入れずに葉月の斬撃、ミーナの雷撃。サイモンの雷撃は数字兵へ、続いて真紀の銃撃で終劇。
 一同に大きく息を吐いた。体の力が抜け切れなかった。達成感と一体感。倒したという事実よりも点数よりも何よりも、疲労感すらも心地よく思える満足感がチームの心に満ち溢れていた。


 14人と6体の大混戦。西門前の狭きエリアにチーム「トランプハンター」ムーンのクイーン(12)クラブのジャック(11)、そして数字兵が4対。合わせて20人の大戦陣となっていた。
「だぁぁぁぁあ、もう、邪魔くせぇ!!」
 ウィザードのウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)は無差別に氷術と雷術を連続で放った。驚きと困惑、恐怖と怒り。ウィルネストの行動は一同に様々な想いを抱かせた。ウィザードのシルエット・ミンコフスキー(しるえっと・みんこふすきー)が抱いたのは怒りであった。
「ちょっとウィル、やめなさいよ!」
「いーんだよ、これ位やんなきゃ混み混みは減らないんだ!」
 ウィルネストのパートナーでプリーストのヨヤ・エレイソン(よや・えれいそん)はセスタスを装備した拳を構えながら、もう一人のパートナーでウィザードのシルヴィット・ソレスター(しるう゛ぃっと・それすたー)は満面の笑みでウィルネストの背に寄りていた。
「後方確認を怠るな! 絵柄兵が来る!」
「にゃはー! 氷と雷がキレイだーハぁー」
 ヨヤの指摘の通りにムーンのクイーン(12)が迫り来た。フォローに入ったのはナイトのクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)とパートナーのウィザード、マナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)である。絵柄兵のカルスノウトをライトブレードで受けて続けた。
「ウィル、もう良いですよ、十分です」
「へっ、SP温存し過ぎてて余ってんだ、もう少しやらせろ!」
「よし、私も加わろう」
「マナ! 加わらなくて良い!」
 ウィルネストの雷術が起こした混乱の内、最大に効果を発揮したのはローグの志位 大地(しい・だいち)の伊達眼鏡を地に落とした事だろう。パートナーのシーラ・カンス(しーら・かんす)は、のんびりと手を口に当てた。
「まぁ、大変ですわ」
「ふっ、…… ふふっ、ふふふふぅ」
 大地が顔を上げた瞬間、長刀の綾刀がムーンのエース(1)を一閃した。
「ふっ、…… ふふっ、ふふふふぅ」
 着地と共に飛び駆けた。シルエットのパートナー、エルゴ・ペンローズ(えるご・ぺんろーず)が雷術を放ち戦っていたムーンの8に背後から襲い掛かり、背を斬り、正面を斜めに斬り下ろした。
「ちょっと、大地、横取りしないでよ」
 大地はシルエットを視界に入れて目を大きく、口を怪しく開いていったが、動き出す直前にシーラが大地に眼鏡をかけた。
「おっと…… ありがとう、助かったよ」
「いいえ、とっても生き生きしてましたわ」
「いえ、お恥ずかしい限りです」
 照れ笑いと優しい笑み。「笑ってないで謝らんかぃ!」と言ったシルエットの言葉は、届いていないかも知れなかった。
 場の混乱を見つめて、静かに滾っているのはナイトのエル・ウィンド(える・うぃんど)である。
「へっ、こんなもん、混乱に乗じるまでもねぇ」
 相手はムーンの6、アサルトカービンの銃撃にエルはナイトシールドを片手に防ぎ、その後方からセイバー、ホワイト・カラー(ほわいと・からー)のツインスラッシュが数字兵の両手を襲う。
 銃が落ちた瞬間に、パートナーのナイト、ギルガメシュ・ウルク(ぎるがめしゅ・うるく)とエルのランスによる突きが炸裂した。
「へっ、口ほどにもねぇ」
「ギル、言葉が汚いです」
「あら、いけませんね、オホホホホ」
 二人を見つめてエルは満足そうに、短く息を吐いた。
 空飛ぶ箒に乗って戦っているはナイトの譲葉 大和(ゆずりは・やまと)とパートナーの剣の花嫁、ラキシス・ファナティック(らきしす・ふぁなてぃっく)である。大和はサニーのエース(1)と距離を取りながら、小さく界下を見下ろした。
「ふぅ、あとは俺達と絵柄兵だけか」
「あっ、大和、見て!」
 ラキシスに言われて見ると、クロセルの肩の上でマナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)が手を上げて合図を送っていた。
 視線を送る大和、短き間であれクロセルと交わしてから頷いた。
 大和はライトブレードで斬りかかってから、方向を変え、急降下で数字兵を誘導した。
 向かう先にはクロセルとウィルネスト、そしてムーンのクイーン(12)である。
「ウィル!」
「分かってるよ、おらっ」
 ウィルネストがアシッドミストを放つ。降下してきた大和とクロセル、そしてウィルネストが交差する。霧の中、飛び込んできた数字兵をウィルネストの雷撃が撃した。降下の勢いのままに絵柄兵の前に現れるは大和、そしてクロセルも駆け放つ。ライトブレードによるクロス斬撃、不意打ちからの高速の剣は絵柄兵にも捌けなかったようだ。
 霧が晴れてゆく、先程までの騒々音も一緒に消え晴れていった。
 場に残ったのは…… 、クラブのジャック(11)ただ一人…… あれ?
「クロセルぅ、いいのかよぅ」
「いいんです、絵柄兵を2体も何て相手する事ありません」
 霧と一緒に消えていた、チーム「トランプハンター」の面々は一目散にポールへと駆け出していたのだった。
 文字通り、ただ一人だった。風が吹くまでは。
 門を目指して歩いていた、セイバーの東條 カガチ(とうじょう・かがち)とパートナーの柳尾 なぎこ(やなお・なぎこ)クラブのジャック(11)の前を通りかかっていた。
「はぁ、やっぱり寄り道が良くなかったみたいだねぇ」
 カガチの手にはダイヤの9ハートの2が握られていた。サニーやムーンとの戦いに胸躍らせていたが、途中に遭遇、戦闘を楽しんでいたばっかりに。
「時間もないみたいだけど、相手してくれるのかな?」
 クイーン(12)とは戦った、痺れる戦いだった。相手がただのジャック(11)であれ、不満は無い。
「待って」
 静かに穏やかに、ウィザードの九弓・フゥ・リュィソー(くゅみ・ )が歩み寄る。
「彼は私たちに譲って頂けませんか?」
 パートナーのマネット・エェル( ・ )クラブのジャック(11)に抱きついた時、隠れていたスペードの5は姿を現し、様子を伺っていたソルジャーのフィル・アルジェント(ふぃる・あるじぇんと)弥隼 愛(みはや・めぐみ)も笑顔で通り過ぎていった。
 西門付近も、ようやくに静寂を取り戻したようだった。