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ざんすかの森、じゃたの森 【後編】

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ざんすかの森、じゃたの森 【後編】

リアクション

 第4章 皆で協力! 機関銃退治のこと

 ダンスバトルで劣勢になったグレートマシンガンは、ついにキレて襲い掛かってきた。
 「ダンス勝負など、どうでもよいわ!! 俺は手段など選ばん!! 最後に勝った者が正しいのだ!! ガハハハハハハハハハハハ!!」
 機晶姫のジェーン・ドゥ(じぇーん・どぅ)はゴングを鳴らして実況を始める。
 「うおおおおう! 大怪獣! 大怪獣であります! マスター! 大怪獣でありますよ! 凄いあれほしい!」
 マスターと呼ばれたジェーンのパートナー、ファタ・オルガナ(ふぁた・おるがな)も解説に参加する。
 「ダメじゃ、ジェーン。あんなもん、家にいたら邪魔でかなわん……。キモい踊りを踊らなくなったのはよかったが、それにしても暑苦しいのう……。それにひきかえ、ざんすかはかわいいのうハァハァ」
 大怪獣大好きなジェーンと、女の子大好きなファタのコメントにより、戦いが盛り上がる。
 
 そこへ、ディアス・アルジェント(でぃあす・あるじぇんと)が、グレートマシンガンに真面目にツッコミを入れようと空飛ぶ箒に乗り、顔付近に近づく。
 「魔大樹暴走させて兵器にするって言ってるらしいが、どんな兵器になるのか」
 「ガハハハハ! 世界征服できるくらいすごい兵器だ!!」
 「お前、本当はよくわかってないんじゃないのか? 俺の予想じゃ、魔大樹が暴走したらお前らも瘴気に巻き込まれるぞ。そうなったらドージェを超える以前の問題だ。鏖殺寺院の誰になんて言われたか知らねぇがあいつらはお前らの事を捨て駒程度にしか思ってないだろうぜ。んな奴らに乗せられたままでいいのか?」
 「やかましいわ! 瘴気が発生すれば、俺はもっと巨大化して世界征服できるようになるのだ! 好都合ではないか!」
 グレートマシンガンは、ディアスの説得にまったく聞く耳を持たない。
 「まったく、しかたねえな」
 面倒くさそうにつぶやくと、ディアスは離脱し、雷術でステージを攻撃する。
 ステージの一部が、派手に破壊される。
 「なっ!? 貴様ああああ!!」
 グレートマシンガンが怒声をあげる。
 ディアスのパートナーの剣の花嫁ルナリィス・ロベリア(るなりぃす・ろべりあ)が、ディアスを誘導する。
 「……こっちよ、ディアス」
 ルナリィスは、迅速に逃げられるよう、周囲を警戒しており、退路を確保していた。
 空飛ぶ箒に乗ったルナリィスの誘導で、ディアスも飛んでいく。
 「やっぱり話は聞かなかったか。とりあえず、逃げるが勝ちだな。30メートルの奴なんか、まともに相手に出来るか」
 「………………そうね」
 無口なルナリィスが、ディアスにうなずく。
 
 「逃げられて、大怪獣が悔しそうに吼えてるでありますよ、マスター!」
 「せっかく新たな女の子参戦と思ったのに、惜しいのう」
 ジェーンとファタが、実況を続ける。

 そこへ、リアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)が、執事服を着て登場する。
 傍らには、パートナーのドラゴニュートパルマローザ・ローレンス(ぱるまろーざ・ろーれんす)が、ダンス用のドレスを着ている。
 「それでは、参りましょう。お嬢様」
 「ええ」
 なぜか、リアトリスは執事を、パルマローザは貴族のお嬢様を演じており、お嬢様と呼ばれたパルマローザは、恥ずかしそうだが、少しうれしそうに笑う。
 そして、リアトリスとパルマローザは、フラメンコを踊り始めた。
 「行きますよ、グレートマツソガソ!」
 わざと名前を間違えつつ、フラメンコを踊りながら、リアトリスがソニックブレードを放つ。
 パルマローザは、雷術でリアトリスを支援する。
 「なんなんだ、貴様らはああああ!! あと、俺はグレートマシンガン様だ!」
 グレートマシンガンが応戦しつつ、リアトリスとパルマローザにツッコミを入れる。
 
 その隙に、ブレイズ・カーマイクル(ぶれいず・かーまいくる)はざんすかと共闘して、グレートマシンガンの頭部を狙う。
 「おのれあのデカブツ! 蛮族の分際でこの僕を利用するとは……赦せん!」
 「別にあの方が私達を利用したのは結果的にそうなっただけでは?」
 パートナーの機晶姫ロージー・テレジア(ろーじー・てれじあ)が、冷静に指摘する。
 前回、ブレイズ達はざんすかと一緒に除草剤を撒きに来て、魔大樹を炎上させたせいで、魔大樹に瘴気を集めてしまったからである。
 「……い、イルミンスールの平和のためにも! 絶対に奴を止めるのだ! 今! スグ!」
 「……“死人に口なし”ですか……」
 ブレイズは、都合の悪いことはグレートマシンガンに押し付けて、闇に葬ろうとしているらしい。
 「何を言っているのか解らんな! 君は僕の言う事を聞いていれば良いのだ! 解ったか?」
 「……了解、行動を開始します」
 ロージーはジトッとした目でブレイズを見てから、箒から飛び降り、グレートマシンガンの頭部に降下する。
 「フハハハハ! 奴の自慢のモヒカンを燃やした後、アシッドミストでサッパリなくしてやるのだ! ……何!? モ、モヒカンじゃないだと!?」
 ブレイズは、グレートマシンガンの頭を見て驚く。
 グレートマシンガンは、黒い剛毛を伸ばし放題にした頭であり、モヒカンではなかったのである。
 しかも、頭部には、カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)が椅子とちゃぶ台で特等席を設けていた。
 「な、なんだ、そこで何をしている!?」
 「ファイヤー・オン!」
 驚くブレイズに、カレンはヒーローっぽいかけ声で返す。
 前回、成り行きとは言え自称「魔大樹の巫女」になってしまったので、カレンはグレートマシンガンに味方しているのである。
 とはいえ、実際には、カレンの思惑は別にあった。
 (グレートマシンガンを徹底的に強化すれば、強情なざんすかもじゃたと手を組まざるを得なくなるよね。それに、コイツはアホっぽいけど逸材だ! コイツが破壊神として覚醒するのを見てみたいな。そして校長やアーデルハイト師匠のド派手な大魔法でフルボッコにされるのを見てみたい!)
 そう考えて、あえてパイロット的なポジションを確保していたのである。
 「サンダーブラスト!」
 「うわあああああああ!?」
 不意をうたれて、カレンの攻撃でブレイズが吹っ飛ぶ。
 「ブレイズ! ……しかたがありません、撤退します」
 ロージーは、ブレイズを回収すると、撤収した。
 前回はロージーと戦っていた、カレンのパートナーの機晶姫ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)は、ステージでジャタ族とともにスリラーダンス的な「不思議な踊り」で瘴気を噴出させていた。
 「我らの“不思議な踊り”でSPを吸い取られるがいい!」
 そう叫び、先頭に立って踊るジュレールであったが、ジャタ族からは次第に元気がなくなり、瘴気の噴出が衰えていく。
 「ええい、気合が足りぬわ!」
 ジュレールの怒りの爆炎波で、ステージが全焼するかの勢いで炎上する。
 そして、踊りはさらに狂気に満ちたものになったのだった。

 そこへ、ミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)が、15mのクロカミキリ、スパーキングの背に乗ってやってきた。
 (森を悪用するな。すごく迷惑だよ。スパーキングが病気になったらどうしてくれるの。鏖殺寺院が絡むとろくな事がないよ)
 森の好きなミレイユは、勝手なことをして瘴気まみれにしたグレートマシンガンに腹を立てていた。
 「肝心の器が小さいくせして何が最強だ。でかいだけで目触りだよ。元のままじゃ自信がないだけだろ。ガハガハうるさいし威厳もないよね。漢なら背中で語れ!」
 グレートマシンガンを挑発するミレイユだったが、当然、激昂させてしまう。
 「なんだと、この小娘がああ!! 踏み潰してくれるわ!!」
 そこへ、ミレイユのパートナーの吸血鬼シェイド・クレイン(しぇいど・くれいん)が、あわててかばいに入る。
 「ミレイユ! また無茶なことを! もうどこを突っ込んでいいのか……!」
 シェイドは、ミレイユをかばい、二人は地面に転がる。
 「あ、シェイド! ……くぅ、シェイドがいなければ即死だった」
 「……何をマスクが無ければ即死だったみたいな事を言ってるんですか」
 悔しそうに言うミレイユに、シェイドが吐血しながら突っ込む。
 ミレイユはおかまいなしに、スパーキングに再び乗ると、スパーキングに立ち上がってもらい、肩に乗った状態で、氷術ででっかい氷を作り、グレートマシンガンにガンガン落とし始めた。
 「ミレイユ! 無茶するなと言っているじゃないですか!」
 「森を傷つけるなんて許せないんだよ!」
 シェイドにそう言うミレイユだが、今回はシェイドに対する扱いがひどい。
 そんな様子を、同じくミレイユのパートナーで、目つきが鋭い白うさぎの着ぐるみを着た黒スーツのゆる族デューイ・ホプキンス(でゅーい・ほぷきんす)が、光学迷彩で姿を消した状態で見て、驚いていた。
 (我が用事でいなかった間に何が起こったというのだ……。まぁ、ミレイユが無茶をしているというのは察しがつくがな)
 デューイは、ため息混じりに銃で応戦し始める。
 「……終わりだ、エネミー」
 スパーキングに群がるジャタ族を、デューイは渋く着実に倒していった。
 しかし、グレートマシンガンとまともに戦っているため、ミレイユやスパーキングに危険が迫る。
 「スパーキング、ミレイユを降ろしてください! みんなで逃げますよ!」
 シェイドが叫び、ミレイユ達は撤退した。

 そこに、金色の光が樹上から輝く。
 「たとえ世界が瘴気に満ち闇に落ちようとも戦う意志を持つものは必ず現れる。人、それを……光明という!」
 光精の指輪を使用して自らライトアップし、全身を金粉で塗り、金色のビキニを着用、顔バレ防止にサングラスを着用したエル・ウィンド(える・うぃんど)が叫ぶ。
 「誰だ!」
 グレートマシンガンの言葉に、エルは答える。
 「太陽の戦士エル・ウィンドRX! 貴様の野望は白日の下にさらされた!」
 決めポーズをするエルのビキニには、「RX」と書かれていた。
 「おいおい、本名名乗っとるじゃないか。顔バレ防止の意味がないぞ」
 ファタのツッコミに、エルは慌てる。
 「し、しまったああああああああ!? ボ、ボクは断じてエル・ウィンドではない! 太陽の戦士エル・ウィンドRXだあああああああ!! グレなんとか、勝負だ!!」
 無理やりごまかして叫ぶと、エルは技を繰り出そうとする。
 「エネルギーチャージ!」
 光精の指輪で、エルが気合を溜める。
 「これが新必殺サンシャインバーニングブレイカー!」
 そう叫びつつ、エルは空飛ぶ箒で、グレートマシンガンの口めがけて特攻した。
 そして、目潰しとして、さらに光精の指輪を使用する。
 「ぬわあ!?」
 グレートマシンガンが驚いて叫ぶ。
 「とどめだ!」
 口付近でさらに光精の指輪を使用するエルだったが、そのままグレートマシンガンの口の中に突っ込んだ。
 
 ガリバクゴックン。

 辺りを沈黙が支配する。

 「うわあああああ!! 胃液が!! 胃液が!!」
 エルは、グレートマシンガンの胃の中で溶かされつつ叫んでいた。

 そこへ、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が思いっきり突っ込んできた。
 「あ〜〜〜もう何なのよ! 静かになるどころかどんどん騒ぎが大きくなるばかり。ふ〜ん……あのでかい奴が騒ぎの中心にいるみたいね。よし、黙らせる」
 リカインのパートナーのドラゴニュートキュー・ディスティン(きゅー・でぃすてぃん)も、うなずく。
 「……なるほど、周りで踊っている連中も厄介なわけか。リカの援護にもなる、雷術で静かになってもらうことにしよう。これならば誤爆の心配も少ない。では、ゆくぞっ!」
 「いっけ〜っ、トライデントスマッシュ!!」
 パワーブレス、ドラゴンアーツ、ヒロイックアサルト発動での全力飛び蹴りで、リカインがグレートマシンガンを攻撃する。
 向こう脛などを狙って体勢を崩すつもりだったが、勢いあまって鳩尾に当ってしまう。
 「ガハッ!?」
 グレートマシンガンはまともに「トライデントスマッシュ」を受け、咳き込む。
 すると、胃の中から、溶けかけていたエルと、時間がたっているうえ、身体が小さいのでさらにやばい状態の一瞬 防師(いっしゅん・ぼうし)が飛び出してきた。
 「な、なんなの? 口から人を吐き出すのがグレートマシンガンの技なわけ?」
 「絶対に違うと思うぞ……」
 驚くリカインに、キューがツッコミを入れる。
 
 「おい、グレート(笑)! おめーなんかお呼びじゃねーんだよ!」
 佐々良 縁(ささら・よすが)は、グレートマシンガンを挑発しながら、怪我人の搬送などの援護を行っていた。
 (なんだかエラそーにしてるやつって言葉で揺さぶってやれば動揺しそうだよね)
 というのが、縁の考えである。
 さらに、
 (皆突っ込むだろうから屍はおばちゃんが拾ってやる!)
 と、縁は思っていた。
 なお、縁は学生の平均年齢から言うと年上の部類であるが、実際に「おばちゃん」なわけではない。自分で言っているだけである。
 縁のパートナーの剣の花嫁佐々良 皐月(ささら・さつき)はヒールによる後方支援をしていた。
 しかし、ピコピコハンマーでグレートマシンガンに殴りかかろうとしたりして、縁に止められたりしていた。
 「ねー、よすがー? あれなーに?」
 胃液まみれのエルと防師を指さして、皐月が無邪気にたずねる。
 「しーっ、みちゃいけません」
 「そうなの?」
 縁の言葉にきょとんとする皐月であったが、疑問に思いつつも、援護を再開した。
 エルと防師は、縁によって、コントの退場シーンっぽく搬送されていった。
 
 一方、グレートマシンガンに味方するものもいた。
 国頭 武尊(くにがみ・たける)もその一人である。
 「パラ実生は、常にイロモノの味方だ!! まぁ、こまけぇこたぁいいんだよ!! 詳しい事情は知らないが、魔大樹から瘴気を得る事が出来れば、巨大化できたり「ガハハ」笑いが似合うナイスガイになれる事は良くわかった。族長が、邪悪な気持ちで邪悪な踊りを踊るなら、邪悪な気持ちで応援し、ステージから溢れてくる瘴気を吸収してパワーアップだ!! パワーアップしたオレはきっと、ガハハ笑いが似合うナイスガイになっているに違いない。そう、今日からオレは、国頭武尊改め、グレートクニガミンだ!! そして、瘴気の力で族長を狙うイルミンの悪童達を蹴散らすぜ!!」
 武尊のパートナーの剣の花嫁シーリル・ハーマン(しーりる・はーまん)も、グレートマシンガンを支援していた。
 「ジャタの森のパラ実の皆さんが、イルミンスールの鬼子達に襲われていると聞いては黙っていられません。早急に助けねば。良く分りませんが、ジャタ族の族長さんと武尊さんが森の瘴気でパワーアップとか言っていますので、その応援です」
 「ガハハハハ!! 粉砕!! 玉砕!! 大喝采!!」
 両手を天に掲げ、武尊が叫ぶ。
 「ジャタの森に溢れる瘴気よ。オラに力を分けてくれ!!」
 武尊は瘴気を吸収して、みるみる巨大化し、「瘴気玉」を作り始めた。
 そこに、シーリルが、パワーブレスを、巨大化した「グレートクニガミン」こと武尊とグレートマシンガンに使う。
 「祝福を与え能力強化を図る魔法と瘴気に力が相乗効果的なものを起せば、きっと通常の何倍もの戦闘能力強化が可能かな……多分。うん、私もパラ実の生徒ですし。こまかいことは気にしません」
 「ガハハハハハ!! 巨大化すばらしいぜ!!」
 「おまえ、なかなか見所のある奴だな!! ガハハハハ!!」
 武尊とグレートマシンガンが、巨大化すばらしいと、邪悪友情パワーを芽生えさせているところに、上空から声がかけられる。

 「そこまでですっ、グレートマシンガンさんっ!」
ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)が、フリフリのかわいらしい衣装に身をつつみ、空飛ぶ箒に乗って叫ぶ。
 「え、えーと……あ、あなたのハートにサンダーブラストッ! 正義の魔法少女ストレイ☆ソア、ただいま参上ですっ!」
 赤面しつつ、ソアがヤケクソになって叫ぶ。

 なぜこんなことになったのかといえば、ソアのパートナーの白熊型ゆる族雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)の提案のせいであった。
 「奴の『大きさ』には、ご主人の『小ささ』で対抗するしかない!」
 「……はぃ?」
 「というわけで、ご主人にはちびっこ魔法少女になってもらう!」
 「えっ? えぇぇー!?」
 「え? 魔法少女だって? だ、大丈夫なのかその作戦は……」
 緋桜 ケイ(ひおう・けい)は、ソアたちと協力し、「小ささ」で勝負する作戦を立てていた。
 (まともに戦っても勝てそうにないので、ここは逆転の発想だ。ソアたちは『大きさ』のグレートマシンガンに対して、『小ささ』で勝負を挑むようだから、俺たちも協力させてもらうぜ!)
 そう考えていたものの、ベアの作戦に、ケイは不安を隠せない。
 しかし、ケイのパートナーの魔女悠久ノ カナタ(とわの・かなた)は、ノリノリだったので、ケイはその作戦を承諾したのだった。
 
 「今時デカいだけのキャラなんて流行らないぜ! 機械だってどんどん小型化するのが今の時代。小さいことは、技術だ!」
 ベアが、ソアを見守りつつ叫ぶ。
 「そしておまえら、ご主人を見ろ! 小さい娘は可愛い! 可愛い娘はある意味、最強だ! ……すなわち、小さいイコール最強だぁっ!」
 「あ、あんまり見られても困ります〜っ!」
 ベアによるジャタ族へのアジテーションにより、ソアにジャタ族たちの視線が集中する。
 「た、たしかに、いかついオッサンの族長より、小さい娘の方がいいかもしれない……」
 「なんだ、この湧き上がる感情は!?」
 「これが……『萌え』……『萌え』だというのかっ!?」
 ジャタ族は、ベアの作戦により、確実に「小さい娘好き」に洗脳されていた。
 「ま、まあ、要はグレートマシンガンを妨害できればいいわけだしな……」
 ケイは、若干顔を引きつらせつつも、作戦を見守っていた。
 「小娘があ! 俺に盾突くとはいい度胸だ!!」
 グレートマシンガンが、お決まりの悪役台詞でソアに攻撃する。
 「きゃああああ!?」
 ソアは、真面目にやったら勝てるわけがないと考え、ステージを引っ掻き回せればよいと、逃げ回りながら戦っていた。
 そこに、上空からファイアストームが放たれ、グレートマシンガンの動きが止まる。
 「そこまでにしておくがよい! グレートマシンガン!」
 カナタが、高らかに決め台詞を叫ぶ。
 「刮目せよ! 天に輝く紅蓮の光! 悪を打ち砕く正義の焔! 魔法少女スカーレット★カナタ、ここに見参!」
 魔女の短衣を、自らの魔力を示す色である紅に染め上げたカナタの衣装は、アーデルハイトのような露出度であった。
 「……っておい! カナタのヤツ、なんて格好してるんだよ!」
 ケイが、パートナーの衣装に驚き、赤面する。
 (は、恥ずかしいからもう少し離れた場所で応援させてもらうとしよ……)
 そう考えて、後方から見守ることにしたケイであったが、カナタは完全に「ストレイ☆ソアのライバル、スカーレット★カナタ」になりきっていた。
 日本生まれ、日本育ちのジャパニーズウィッチであるカナタは、実は密かにジャパニーズオタク文化にも詳しい。ソアに「日本文化」である魔法少女を理解させるため、カナタは颯爽と駆けつけたのである。
 転んだソアに、カナタが不敵な笑みで手を差し伸べる。
 「ソア、おぬしを倒すのはわらわよ」
 「カナタさん……!」
 ソアは、カナタの手を取って立ち上がる。

 そんな、「大怪獣VS魔法少女ショー」が展開されている中、レオナーズ・アーズナック(れおなーず・あーずなっく)が、ざんすかにじゃたとの共闘を呼びかける。
 「あの魔法少女コンビを見るんだ。ああいうふうに、女の子がユニットを組むのは世の常。ざんす口調やラリアット芸もやがては飽きられる。語尾が『〜じゃた』という新しさを持つ、はらぺこ素直クールキャラのじゃたちゃんと組めば、お笑い芸人としてパラミタ最強になれるはずだ! 名前と体格が出オチなだけのオッサンに負けるはずがない!」
 ズレた説得を行うレオナーズに、ざんすかがキレる。
 「誰がお笑い芸人最強ざんす! ミーのラリアットは芸じゃないざんす!」
 ざんすかのラリアットで、レオナーズがぶっ飛ばされる。
 「うん、いいリアクションだ!」
 ぶっ飛ばされつつ、レオナーズはざんすかを激励した。
 レオナーズのパートナーの魔女アーミス・マーセルク(あーみす・まーせるく)は、それを見て、グレートマシンガンに叫ぶ。
 「よくもレオナをぶっ飛ばしてくれたわね! ぜったいに許さないんだから! 私がレオナの敵を討ってみせるわ!」
 「いや、ぶっ飛ばしたのは俺じゃなくてザンスカールの小娘だろう?」
 もっともな反論をするグレートマシンガンに、なおもアーミスは続ける。
 「問答無用よ! 悪は必ず滅ぶもの! 私だって、やれば出来る子って言われてるんだから出来るわよ!」
 そう言うなり、アーミスは、雷術でグレートマシンガンに攻撃する。
 「ええい、うっとおしいわあ!」
 「きゃあああああああ!?」
 グレートマシンガンは、アーミスを思いっきりぶっ飛ばした。
 同じくレオナーズのパートナーの吸血鬼ウトナピシュティム・フランツェル(うとなぴしゅてぃむ・ふらんつぇる)は、火術で周囲の森ごとジャタ族達を攻撃していた。
 「はっはっはっはっはー!! 俺様の炎を喰らえー!!」
 当然、ジャタの森も一緒に炎上する。
 「こらっ、ウトナ! そんなに見境なく魔法を使ったら危険じゃないか!」
 「周りを巻き込んじゃダメじゃないの!」
 復活したレオナーズとアーミスが、ウトナに説教する。
 「ここの風が……俺をおかしくさせたのさ……」
 遠い目をしながら言い訳をするウトナだったが、レオナーズとアーミスはお説教モードに入る。
 「何を言ってるんだ! 魔法というのはそもそも……」
 「他人に迷惑をかけちゃダメっていつも言ってるでしょ!」
 「えー、だって……」
 そんな三人を、グレートマシンガンがにらみつける。
 「俺を無視するなあああ!!」
 レオナーズとアーミスとウトナは、なかよくぶっ飛ばされるのであった。

 その騒動の脇で、セレンス・ウェスト(せれんす・うぇすと)はざんすかとじゃたに駆け寄った。
 「あっ! ざんすかちゃん! じゃたちゃん! やっと会えたわ! もうホントに探したんだから!」
 即効でだきゅつき突進しつつ、セレンスが続ける。
 「二人ともお洋服が可愛くなってる! 誰に着せてもらったの? でも、泥で汚れちゃってるわ!」
 「これを着れば強くなれると思って着たざんす!」
 「……お弁当、じゃた」
 じゃたは、セレンスのパートナーのシャンバラ人ウッド・ストーク(うっど・すとーく)の用意したお弁当で餌付けされていた。
 ウッドは、セレンス達のやりとりを見守りつつ、周囲を警戒する。
 そこに、藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)が近づいてきて、じゃたに言う。
 「じゃたさん、血をいただけませんか? ああ、血管を切り開いて余計な要素を体外に排出するのは、地球に伝わる古い医療行為で、『瀉血』と言います。健康のために、こうやって瘴気を外に出しましょうねー」
 殺し合い大好きの優梨子は、得物に毒を塗ろうと、じゃたの身体をざっくり斬って、刃を瘴気の入った血で染めようとしていた。
 「本当か、じゃた?」 
 「こらこらこらーっ! 素直なじゃたを騙そうとするんじゃない!」
 ウッドは、あわてて優梨子とじゃたの間に割って入る。
 (仕方ありません。そこらの除草剤で我慢します)
 優梨子は、大人しく引き下がり、得物に除草剤を塗って光学迷彩を使ってグレートマシンガンに接近し、脚を切り刻んで攻撃した。
 「ぐおっ!? なんだ!?」
 グレートマシンガンが驚いて暴れ、足踏みする。
 「あ」
 姿を消したままの状態で、優梨子はグレートマシンガンに踏み潰された。
  
 ウッドも、セレンスの様子を見守った後、グレートマシンガンに突撃する。
 「ここは俺が引き受ける! その間に、おまえの目的を果たすんだ!」
 「小賢しいわあ!!」
 しかし、すぐにグレートマシンガンにぶっ飛ばされるのであった。
 
 「最近知ったお話なんだけどね、女の子が二人いてね、お洋服がとっても可愛いんだけどヒーローみたいに戦うの」
 一方、セレンスは、ざんすかとじゃたに自論を力説していた。
 バスケットをごそごそすると、セレンスは自分が着ているような、ひらひらのいっぱいついた可愛いコスチュームを二着取り出した。若草色とピンクの二色でそれぞれデザインは違う。
 これは、元々、自分が着るために持ち歩いていたものだ。
 「じゃん! 今から戦う時はこれに着替えて! この衣装にはスペシャルパワーが宿ってるわ! これを着ればあなた達は格段に強くなるわ! 女の子は可愛さがパワーなの。だから可愛くなればなるだけ、その分の何倍もパワーアップするのよ! 絶対よ! 女の子は可愛い衣装で戦ったらカッコイイの! 可愛ければ、格好良ければ強くなる、これはある意味心理よ! 理屈じゃないわ! ほら! 似合うわよ! 元々可愛いんだから!  女の子なんだから、おめかししなくちゃ!」
 謎の力説をしつつ、衣装を身体に押し当ててくるセレンスに、ざんすかが息を飲む。
 「本当ざんすか? 強くなれるならその服を着るざんす!」
 「ワタシも着るじゃた」
 じゃたも、素直にうなずく。
 「あ、着替えるんだったら、髪の毛もセットさせてね!」
 こうして、「パワーアップ」を理由にざんすかとじゃたは説得され、着替えが行われた。

 「これで完璧よ!」
 セレンスが言い、ざんすかとじゃたが、グレートマシンガンの前に登場する。
 
 「「ふたりは精霊!」」
 
 ざんすかとじゃたは、揃って叫ぶと、ポーズを取り、グレートマシンガンに戦いを挑む。
 
 「おお、小さい娘達がまたあらわれたぞ!」
 「かっ、かわいい!!」
 「じゃた様! こっち向いてください!」
 ジャタ族から歓声が上がる。
 
 「まさか、ご主人達だけじゃなくてざんすか達も変身するとはな……これでジャタ族がますます『小さい娘好き』になるぜ!」
 かくして、ベアの狙いどおり、ジャタ族のロリコン化がさらに促進されるのであった。
 
 「ビクトリーーーッ!!!」
 ビクトリー・北門(びくとりー・きたかど)が、パートナーの剣の花嫁百二階堂 くだり(ひゃくにかいどう・くだり)の鳴らす、良い音のゴングとともに登場する。
 「ざんすか! 好敵手(トモ)のてめえと一緒に戦うぜ!」
 軍服を脱ぎ捨て、プロレスパンツ一丁のビクトリーは、グレートマシンガンに踊りかかる。
 前回、プロレス対決をしたビクトリーは、ざんすかに対して、好敵手と書いてトモ、もしくは強敵と書いてトモという熱い気持ちを抱いていた。
 「あたしはコードネーム【アルティメットアトミック核爆弾】! ざんすか! らりあっとの指導をするぞ!」
 くだりは頭には「必勝」の文字の入ったハチマキを締め、赤いジャージを羽織った体操服とブルマ、裸足という姿で、ざんすかに指導する。
 くだりのコードネームは、グレートマシンガンに対抗してのものである。
 レフェリー兼セコンド兼実況兼リングドクター兼ファン兼照明さんのくだりは、光精の指輪でビクトリーにライトをあてる。
 「ビクトリーーーッ!!!」
 ステージ上で、グレートマシンガンを転ばせようと、寝そべってのアリキックでビクトリーが攻撃する。
 「うおっ!?」
 「ミーの強化されたラリアットを喰らうがいいざんす!」
 ざんすかのラリアットでさらにグレートマシンガンがぐらついたところを、ビクトリーが気合で持ち上げる。
 「ビクトリーーーッ!!!」
 ビクトリースープレックス、つまり、ただのジャーマンスープレックスをかけ、グレートマシンガンの30メートルの巨体が持ち上げられる。
 「くらえ! 甲賀忍法! 炎を纏いしツインスラッシュ!」
 そこに、グレートマシンガンに味方していた甲賀 三郎(こうが・さぶろう)が乱入し、甲賀製忍者印の火薬玉の炎をまとわせたツインスラッシュでビクトリーを攻撃した。
 「うおおおおおおおおッ!?」
 グレートマシンガンの超巨体を気合で無理やり持ち上げていたビクトリーは、さすがに耐えられず、倒れる。
 グレートマシンガンの巨体に、ビクトリーはつぶされる。
 「立て〜、立つんだ〜〜!!」
 眼帯をつけたくだりがダミ声で叫ぶが、ビクトリーはさすがに応答しない。
 「困ったことがあったら、ゴクサツジインよりうちで兵士になれ! 衣食住は支給品だ!! 世界征服よりよっぽど面白いぜ、マシンガン!!!!!!」
 三郎は、ビクトリーと同じシャンバラ教導団の軍人であったが、グレートマシンガンに背中とアキレス腱を預けあい、味方する。
 「大層な名前にしやがって……マニアが泣くぞ!! 腕も飛ばせないし、胸から、ぅんたらファイヤーとか出せねえだろ!? 30メートル? それがどうした30メートルだろ……」
 などと言っていた三郎だが、グレートマシンガンと実際に会い、
 「で、でけぇー」
 と感嘆していた。
 「ガハハハハハ!! 面白い奴だ! あと、俺に知識を与えたのはゴクサツジインではなくオウサツジインだぞ!」
 「こまけぇこたあいいんだよ!」
 律儀にツッコミを入れるグレートマシンガンに、どちらかというとパラ実風の台詞で三郎が答える。
 「よくもビクトリーを、ざんす!」
 激怒して攻撃するざんすかに、三郎のパートナーのサーベルタイガーの着ぐるみのゆる族ロザリオ・パーシー(ろざりお・ぱーしー)が、銃で迎撃する。
 「けけけけ、オレの弾丸でなんべんでも死んでこ〜い♪」
 声が高くてきれいだが、口調は乱暴なロザリオが銃を乱射し、弾丸はグレートマシンガンにも当る。
 「わりぃなマシンガン、でけぇーずーたいなんで撃ちった♪」
 「おい! なんのつもりだ!」
 「邪魔なんだよ! あと、他の族長の意思が電波になってきたんだよ!」
 怒られつつも、まったく悪びれないロザリオは、なおもグレートマシンガンに誤射しつつ、攻撃する。
 グレートマシンガンは、本気でイライラしていた。

 ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)も、パートナー達とともに、グレートマシンガンに味方していた。
 「女の子の精霊2人を相手に、むさくるしい大男というだけで、すでに負けたも同然です! 身長30メートルで世界征服できると思っているのはおかしい。世界樹イルミンスールだって雑草と呼ばれているんですよ! 力だけでは世界征服は無理です。何事も大義名分が大事なのです! 邪妖精ザンスカー成敗を大義名分に利用したら、上手く行くかもしれません。今こそ、伝説の勇者グレートマシンガンと名乗る時です! 邪妖精を倒し世界の危機を救った英雄なら、民衆に支持されてパラミタの王になれるかもしれません」
 「なんだと!? しかし、おまえの言うことも一理ある! では、俺は伝説の勇者グレートマシンガン様だ!」
 「その調子です!」
 ガートルードは、パートナーの機晶姫シルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)に、SPリチャージを行った。
 「おらあ! ソニックブレードじゃ!!」
 シルヴェスターは、渾身のソニックブレードを連発する。
 同じくガートルードのパートナーのドラゴニュートネヴィル・ブレイロック(ねう゛ぃる・ぶれいろっく)はドラゴンアーツで暴れる。
 「ブルドックがいるざんす!」
 「ブルドックじゃねえ!」
 そう言ってざんすかにキレるネヴィルは、顔がブルドックそっくりなマッチョ獣人で、ドラゴンに成長する様には見えないが背中に立派な翼が生えている。
 しかし、以前、近所の子ども達から「悪物獣人ブルドックマン」と呼ばれて襲撃された事があったりする。
 同じくガートルードのパートナーの英霊で、バルト海でバイキングをしていた女戦士で、ガートルードの先祖の妹であるパトリシア・ハーレック(ぱとりしあ・はーれっく)はヒロイックアサルトで暴れる。
 「邪妖精ザンスカー! 海の戦士の誇りにかけて勝負ですわ!」
 「誰が邪妖精ざんす!」
 パトリシアの攻撃を避けながら、ざんすかが叫ぶ。
 
 一方、日堂 真宵(にちどう・まよい)は、グレートマシンガンに別の悪事をそそのかそうとしていた。
 (グレートマシンガンってBAKAよね。言う通りのやり方で本当に世界征服できるなら、鏖殺寺院の連中がもう使ってるに決まってるじゃない。もうドージェ倒してるに決まってるじゃない)
 内心ではグレートマシンガンをバカにしつつ、真宵が言う。
 「あの無茶苦茶強かったざんすかにパラミタ堆肥は効果覿面だったわ。巨体を活かして周囲一帯に撒きなさい。瘴気よりもパラミタ堆肥が上よ。むしろぶっちゃけパラミタ堆肥さえばら撒けばドージェも倒せるし世界も征服できるわよ? あの群がってくる連中も簡単に蹴散らせること請け合いよ? 踊りは私が代わりに踊るわ。邪悪な気持ちじゃ多分負けないし多分部分的には勝ってる自信があるわ。何よりむさ苦しいオッサンが踊るよりもわたくしの様な“清楚”で”かわいい“女の子”の方が絶対盛り上がるわ!」
 ラスボス狙いの真宵は、ドラゴンの糞などが入った激臭の「パラミタ堆肥」をグレートマシンガンに勧める。
 「なに!? これで世界征服できるだと!?」
 単純なグレートマシンガンは、パラミタ堆肥をざんすかや周囲に撒き散らす。
 「ぎゃあああああ!? なんてことするざんす!!」
 「瘴気が……発生しすぎて苦しいじゃた」
 ざんすかとじゃたがピンチに陥る。
 
 真宵のパートナーの吸血鬼アーサー・レイス(あーさー・れいす)は、ザンスカールの樹木やジャタの魔大樹をスパイスにカレーを作り、ジャタ族に食べさせていた。
 「カレー布教が一番の世界征服なのです!」
 カレーを王者の食べ物と信じて疑わないアーサーは、ジャタ族にカレー好きを着々と増やしていた。
 「うめえ! これが、世界を統べるものの料理か!」
 「そうですとも!」 
 ジャタ族の言葉にうなずくアーサーだが、真宵に捕まる。
 「ちょっと、アーサー! あなた、生贄になりなさい! そのほうが盛り上がるでしょ?」
 「わあああああ!?」
 邪悪な踊りの儀式の雰囲気作りのため、アーサーは生贄っぽく飾られ、かがり火もガンガン焚かれた。
 「おほほほほほほほ!! わたくしが世界征服する魔王になるのよ!」
 ラスボスを狙う真宵は、邪悪な踊りで瘴気を噴出させた。
 魔大樹も急成長する。

 「そこまでよ! グレートマシンガン!」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)が現れ、グレートマシンガンに正々堂々勝負を挑む。
 「森と貴方を心配する人々の声があなたにとどくまで、愛ある限り戦おう。命燃え尽きるまでっ! 魔樹の力は貴方の力じゃない。そんなものを使わなくても貴方は強い。いいえ、むしろ魔樹に頼ってる貴方は弱い。一族の声を聞けない、後を振り返れなくなった時に貴方は弱くなったのよ。それを私が証明するっ」
 そう叫び、剣を投げ捨てると、ルカルカは、素手でグレートマシンガンに立ち向かおうとする。
 「愚かな小娘が! この俺に勝てるとでも思っているのか!!」
 グレートマシンガンが、ルカルカに向きなおる。
 ルカルカのパートナーの剣の花嫁ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は、心配して見守っていた。
 (どう考えても無茶だ。敵う相手じゃないと、ルカを止めたが彼女はそれでも戦うという。俺達が支えてくれると信じてるから行くと言われたら、もう、止められん)
 同じくルカルカのパートナーのドラゴニュートカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)が、両手指を組んで一人の足が乗れる組み手を作り、そこにルカルカを乗せる。そして、そのままドラゴンアーツで上空へ投げるのと、ルカルカがジャンプするのを合わせる。
 (強い相手に自分の主張を届かせるには、相手の土俵に立たないとだ。相手が強さを自慢にしているなら、その土俵で戦うことだ。でなければ、魂を揺さぶるなんてできねーからな。だが、サポートは全力でするぜ)
 そんな思いで、カルキノスにジャンプさせてもらったルカルカが、グレートマシンガンにヒロイックアサルト「疾風」によるキックを肩に食らわせ、そのまま脇をしめてえぐりこむように、ドラゴンアーツの拳で顔面にパンチする。
 「邪魔だ、小娘え!」
 グレートマシンガンはルカルカを振り払い、ルカルカは地面に落下する。
 「ルカ!」
 ダリルが慌ててヒールを飛ばす。
 ダリルをサポートするのは、同じくルカルカのパートナーの英霊夏侯 淵(かこう・えん)である。
 (森や国ってのは1人の若造がどうこうしてもいいものではない)
 前世の肉体があればと思う夏侯淵であるが、ステージの破片や瘴気からダリルを守るのに専念していた。
 ヒールを受けたルカルカは立ち上がり、何度もグレートマシンガンに向かっていく。
 (カルキは、私をジャンプさせてくれるしアーツを授けてくれた。ダリルは、傷ついた私にヒールをくれる。夏侯淵は、私にかつての英雄の力「疾風」を授けてくれた。私は1人じゃない)
 パートーナー達の思いを乗せたルカルカの拳が、グレートマシンガンに叩き込まれる。
 「邪魔だといっているだろう!」
 ルカルカは、グレートマシンガンに弾き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
 「くっ、これまでか!」
 カルキノスが、アシッドミストをグレートマシンガンに放とうとするが、ルカルカはそれを制止する。
 「やめて! 私が直接、戦わなきゃ……意味がないのっ!」
 そこに、ルカルカにヒールが飛んできた。ステージからは、「小さな翼」も聞こえてくる。
 エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)が、ハンディカラオケを持ち込んで、ステージ上から歌いながら、ルカルカにヒールをかけていたのだ。
 「森と貴方を心配する人々の声があなたにとどくまで、愛ある限り戦おう。命燃え尽きるまでっ!」
 エースが、ルカルカを激励する。
 「ありがとう!」
 ルカルカは立ち上がり、さらにグレートマシンガンに向かっていく。
 エースのパートナーの魔女クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)は、ギャザリングヘクスで、事前にルカルカたちの強化を行っていた。
 「一緒だから強くなれる!! それが本当の魔法だもん!!」
 (魂で一緒に繋がってる仲間だから、きっとこの想いは皆に届くよ。魂で繋がっている皆に、届け☆ この効果☆)
 きゃるるん、という効果音とともに、カールッティケーヤは、応援する。
 「それに、よく言うじゃん? 『腹が減っては戦は出来ぬ』と!!」
 そう言って食べさせたのは、ゲテモノスープだったりするのだが、魂で繋がる仲間にその効果は確実に届いていた。
 「自分より20倍はでかいグレートマシンガンに拳で語ろうというルカルカさんは凄いよ……」
 エースは感嘆し、全力でルカルカをサポートする。
 かくして、瘴気の発生は弱まり、ルカルカは戦い続ける。

 水橋 エリス(みずばし・えりす)はその間に、じゃたの味方として、ジャタ族をボコって、頭を冷やさせ、言いくるめようとしていた。
 (袖すり合うも多生の縁、せっかく知り合ったのだから、じゃたの手助けをしてあげたいものです。それに、とりあえず、グレートマシンガンという名前の響きだけで強そうなどとというお馬鹿なジャタ族なので適当にボコり頭が冷えたくらいに言いくるめれば、こちらに寝返るでしょう)
 しかし、エリスは前回、闇鍋で口の中がボムっており、呂律が回らない。
 「らりるれろおおおおおおお!!」
 「おお、マスター、やる気だな!」
 エリスのパートナーのシャンバラ人リッシュ・アーク(りっしゅ・あーく)は、エリスの心配をしつつも、大立ち回りにわくわくして槍を振り回していた。
 「悪いが、マスターにゃ指一本触れさせやしねぇぞ!!」
 リッシュが、エリスの前に立ち、ジャタ族に叫ぶ。
 「らりるれええええええええええええええろおおおおおおおお!!」
 エリスの説得がジャタの森に響きわたるが、理解できるものはいない。
 こうして、エリスとリッシュは、ひたすらジャタ族をボコり続けるのであった。
 
 「きゃあっ!!」
 「ルカ!!」
 グレートマシンガンにじわじわとダメージを与えつつも、ついに、ルカルカが倒れ、ダリルが駆け寄る。
 「ここまでか……」
 ダリルは、ルカルカを抱きかかえると、撤退しようとする。
 「逃がさんぞ!」
 グレートマシンガンが追うが、そこに、駿河 北斗(するが・ほくと)の怒声が響く。
 「ざんすかに協力……とか、細けえこたあ良いんだよ。グレートマシンガンだあ? てめえマジでふざけんな!戦争? 世界を統べる? 舐めんな、図体ばかりでかくて小せえんだよ!! そんな半端な心意気でドージェが超えられるかってんだ。やんなら自分の腕一本で勝負しやがれ!!! いいや、そもそも……ドージェを超えるのは、この俺だ!!!」
 完全な私情による行動ではあったが、北斗は必死にグレートマシンガンの身体をよじ登っていた。
 「てめえっ、なんかがっ、ドージェの、名前を、語るんじゃねえぇぇぇぇぇぇ!!!」
 鉤爪のついたロープで、グレートマシンガンの身体をよじ登っていた北斗は、頭にまでたどり着くと、渾身の一撃を、グレートマシンガンに叩き込む。
 「おおおおおおるああああああ!! ドージェを! 超えるのは!! この俺だああああああああ!!!」
 「ぐわあ!?」
 光条兵器が、グレートマシンガンの頭部に当り、さすがのグレートマシンガンといえど、それなりのダメージを受ける。
 「ありがたい!」
 その隙に、ダリルに抱きかかえられたルカルカは無事逃げることができたのだった。
 「……こんなのどうせアーデルハイドが何とかするでしょうに……本当……余計な事ばかりする馬鹿なんだから」
 北斗のパートナーの剣の花嫁ベルフェンティータ・フォン・ミストリカ(べるふぇんてぃーた・ふぉんみすとりか)は、うんざりしつつも、ジャタ族を光精の指輪で攻撃する。
 「族長になんてことしやがる! ぶっ殺せー!!」
 「確かに……北斗は余計な事ばかりする馬鹿だけど……より一層の馬鹿達に邪魔をされると微妙にムカっ腹が立つわね……」
 絶対零度の微笑を浮かべたベルフェンティータは、ジャタ族に宣言する。
 「……ふうん? 女子どもと馬鹿にするなら構わないけど……見た目で判断すると凍傷じゃすまないわよ……」
 同じく北斗のパートナーの魔女クリムリッテ・フォン・ミストリカ(くりむりって・ふぉんみすとりか)は、ギャザリングヘクスで魔力を強化し、火術を撃ちまくっていた。
 「あっはははは、ほらほらもっと燃えなさいよね! 綺麗に、激しく! 愛を込めて!! せめて私の退屈を晴らしていきなさい!!」
 周囲が森であることなどおかまいなしに、あっちに火術、こっちに火術とぶっ放しまくるクリムリッテだったが、当然、ダメージを受けるのはジャタ族だけでなく、周囲の木々が炎上する。
 「あれ? あれれ? あっはは、えーっと、またやりすぎちゃった?」
 可愛い娘ぶりっこしてごまかしつつ、クリムリッテは、退路を確保しはじめた。
 
 そこへ、水神 樹(みなかみ・いつき)が、空飛ぶ箒でグレートマシンガンの背後から近づいてくる。
 「正攻法? それって美味しいのですか?」
 と、武士道をお星様にした樹は、グレートマシンガンに着実にこっそり近づいていた。
 「くらいなさい! 妄想脳みそ筋肉!!」
 言うなり、樹は、ハバネロの粉末をグレートマシンガンの顔面に投げつける。
 「ぎゃああああああああ!? き、きさまあああああ!!」
 怒ったグレートマシンガンに捕まらないよう、樹は空飛ぶ箒で飛び回る。
 「妄想脳みそ筋肉! 妄想脳みそ筋肉!」
 挑発しまくりながら、樹はグレートマシンガンから逃げ回る。
 「ゆ、許さん! 握りつぶしてくれる!!」
 「あなたなんかに世界征服できるわけないでしょ! 何度でも言ってやるわ! 妄想脳みそ筋肉!」
 グレートマシンガンは、樹を追って暴れまわり、さらに大混乱となった。
 
 そんな中で、メニエス・レイン(めにえす・れいん)は、シュールな状況に呆れつつ、半ば傍観していた。
 (正直あれはバカすぎるだろうと思うけど、一応、鏖殺寺院が絡んでるので、むやみに手出しできないのよね。
 踊ると瘴気が出るって……。とはいえ、もっと面白くしてやろうかしら)
 ヒールなどの後方支援をしていたメニエスだが、火術で矢に火をつけ、火矢にすると、グレートマシンガンの尻に向かって撃った。
 その結果、グレートマシンガンの腰巻が燃える。
 「ぎゃあああああああ!?」
 暴れまわるグレートマシンガンにより、味方のジャタ族も一緒に踏み潰され、さらに大混乱となった。
 「狙いどおりにはなったけど……美しくなさすぎだわ」
 メニエスは、さらにシュールになった状況を眺め、独りごちた。

 羽瀬川 セト(はせがわ・せと)は、前回、パートナーの魔女エレミア・ファフニール(えれみあ・ふぁふにーる)と仲間達とともに、除草剤を撒いて魔大樹を炎上させたことに責任を感じており、ざんすかを助けようとしていた。
 (魔大樹がああなったのにはオレ達にも原因がありますし……いや……オレは関係ない……はず!)
 なんとなく釈然としない気持ちながらも、セトはグレートマシンガンを挑発する。
 「グレートマガジンラック、あなたの好きにはさせませんよ」
 「誰がマガジンラックだ! 俺はグレートマシンガンだっ!」
 尻が燃えているというのに、グレートマシンガンはわざわざ名前を訂正する。
 「……あれ違いました? コノクレープマズイガナでしたっけ?」
 「全然違うわああああ!!」
 セトの狙いは、皆で名前を間違えることで、偉そうにしているグレートマシンガンに精神的ダメージを与えるということであった。
 その目論見は成功し、ばっちり効いている。
 「あのデカブツなんと言ったか……ええい! めんどくさいグレタマンモスじゃ、たぶん。わらわの友に手を出しおって許せん! ラリアット娘を助けに行くぞ!」
 エレミアは、空飛ぶ箒でステージ上空に行き、ギャザリングヘクスを飲んで魔力強化した。
 「やつらの服を溶かしてくれる! アシッドミスト!」
 ドラゴニュートのアイン・ディスガイス(あいん・でぃすがいす)も、グレートマシンガンにアシッドミストを放つ。
 「防御力も落ちて幾分攻撃が通るだろうしな」
 こうして、グレートマシンガンの服と、近くにいたジャタ族の服は溶けてなくなった。
 「うおっ? しかし、こんなことで俺が動揺するとでも思ったかああ!!」
 グレートマシンガンはじめ、ジャタ族たちもみんな蛮族なので、全裸になっても気にしない。
 「むう、美しくない光景が広がっただけか! では、氷術で霜を下ろして凍えさせてやろう! 一介の蛮族族長風情がわらわの友に手を出そうとは万死に値するのじゃぁぁ! かーかっかっか。グレタマンモス諸共凍えてしまえ馬鹿どもがぁ〜」
 エレミアの氷術で、さすがにグレートマシンガンたちは凍える。
 「さ、寒い! 寒いぞおお!!」
 グレートマシンガンの頭の上にいたカレンが、勝手に心情を歌にして、グレートマシンガンを励ます。
 「俺は〜涙を流さない〜、ジャタ族だから、族長だから〜だだっだー」
 そこへ、アインが、霜の降りた身体のグレートマシンガンに雷術を放つ。
 「さて、少しきつい仕置きでもやるか」
 「ぐわあああああああああああああああ!?」
 雷術の効果は、普段より高くなり、グレートマシンガンを痺れさせた。
 
 「くそっ!! こうなったら、踊りでもっと瘴気を出してくれる!」
 グレートマシンガンは、ドタバタ踊りを踊り始めた。
 そして、また、容易には近づけなくなる。

 「はいはーい、ステージを真っ黒にしちゃいますよー」
 ナナ・ノルデン(なな・のるでん)が、グレートマシンガン達に味方するフリをして、ステージを薄汚れた洗剤でツルツルにする。
 グレートマシンガンを転倒させるのが目的だった。
 和原 樹(なぎはら・いつき)も、自然素材の石鹸水で、グレートマシンガンを転ばせようとしていた。
 (それにしても、邪悪な気持ちってどんなのだろ。働くの嫌だなーとか、人気者になりたいなーとか、女の子の裸が見たいなーとかかな? ……何か違う気がする。邪念っぽくはあるけど。あ、今のは俺の気持ちじゃないからな? 特に最後。そりゃ男として、興味ないとは言わないけどさ……)
 邪悪な気持ちで踊るとはどういうことかと疑問に思っていた樹は、そんなことを一人で考えつつ、パートナーの吸血鬼フォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)とともに、石鹸水を撒く。
 「あの族長が転倒したらちょっとした災害だろうな。樹、背中側には行くなよ」
 「ああ、わかってる」
 樹達の用意した石鹸水はフローラルな香りを放ち、瘴気とあいまって大変なことになっていた。
 しかし、ステージ上では、瘴気発生を食い止めるため、残っていたメンバーがまだ踊っていた。
 「きゃあああああああ!?」
 「いやああああ、見ないでくださいいいいい!!」
 転倒したナトレア・アトレア(なとれあ・あとれあ)や、高潮 津波(たかしお・つなみ)はボディコン服で踊っていたため、悲鳴を上げる。
 「おお、すばらしい! 絶景じゃ!」
 「ああっ、大怪獣がピンチであります!」
 実況のファタが、歓声を上げる。パートナーのジェーンは、大怪獣グレートマシンガンの心配をしていたのだが。
 「な、なるほど、これが邪悪な気持ちか……」
 角度的に見えない位置にいた樹は、周囲の様子を見て驚きつつ、納得していた。
 
 そんな状況で、清泉 北都(いずみ・ほくと)は、グレートマシンガンに真面目に物申していた。
 「瘴気で魔大樹が暴走するとして、暴走したら操れないんじゃない? そうなると、ジャタ族も危ないと思うんだけど。それに他の力を利用してドージェに勝って嬉しいんだろうか? 自分の力で戦ってこそ意味があるし、そうでなきゃ他の皆も『強い』と認めないんじゃないかな」
 「ガハハハハ! どんな手段でも勝てばよいのだ!」
 聞く耳を持たないグレートマシンガンに、北都は攻撃の意志を固める。
 「鏖殺寺院の口車に乗せられてるんじゃないよ」
 グレートマシンガンの脛に、北都はデリンジャーを押し当てて打ち込む。
 「ぐおっ!?」
 巨体とはいえ、人体の急所への攻撃に、グレートマシンガンの足元がぐらつく。
 
 さらに、橘 恭司(たちばな・きょうじ)が、隠れ身とバーストダッシュを駆使して、グレートマシンガンの足元に近づき、バナナの皮を撒く。
 「オッサン! 派手に転ばせてやる!」
 「ぬなあ!? そんなものにやられてたまるか!」
 グレートマシンガンは、バナナの皮を避け、恭司を攻撃しようとするが、恭司は素早く離脱する。
 「オッサン! 文字通り、鏖殺寺院に踊らされてるってことがわからないのか!」
 「なんだとおおおお!! 俺のことはグレートマシンガン様と呼べと言っているだろう!」
 恭司は、グレートマシンガンを完全に怒らせるのに成功していた。
 恭司が、ステージをバナナの皮だらけにしたところに、魔楔 テッカ(まくさび・てっか)と、パートナーの機晶姫マリオン・キッス(まりおん・きっす)がいた。
 「ほれほれ、グレート不潔ガン……じゃなくてグレートオジンガン! いくらキモダンスをしてもあんたじゃドージェどころかあたいらにも勝てないんですなっ! テッカセッタァァァー!!」
 叫ぶなり、テッカと甲冑型機晶姫のマリオンは合体して、「テッカマリオン」に変身する。
 「ひゃ〜、あのオジサン大きくて、臭くて怖すぎますぅ。あんなに大きいんじゃ、ず、ずっとお風呂に入ってないんじゃ……。あ、あの夢にまで出てきそうな踊りで瘴気が増えるって、汗臭さが増すって事じゃないんですかぁ? よかった、違うんですねぇ。……ってやっぱり良くないですぅ、グ、グレート不潔ガンがこっちに来ましたぁ。ダメ、もう怖くて動けませんですぅ」
 涙目でマリオンが動けなくなり、当然、内部のテッカも動けなくなる。
 「ガハハハハ! 踏み潰してくれる!」
 余裕でテッカマリオンに近づくグレートマシンガンであったが。
 「今ですなマリオン、バナナ・パワー解放はっ!!!」
 「は、はいはいサー!」
 マリオンが自分の両方の胸を手で持って左右にかぱっと開くと、開いた小窓からテッカの手がにゅ〜っと出てバナナの皮とポイッと放った。
 「そんなバナナァ〜!?」
 グレートマシンガンは予想外の出来事に動揺し、バナナの皮を踏んで転ぶ。
 「やりましたな!!」
 テッカは、転んだグレートマシンガンをバックに、カメラ目線でピースして見せた。
 
 全裸で転倒したグレートマシンガンであったが、アインのパートナーラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)が、ハリセンで殴り、銃で撃つ。
 「とりあえずだ……その変な踊りはやめろ!!」
 しかし、攻撃はグレートマシンガンには通用しない。
 「なんつーか、ムカつくから、こうだ!」
 ラルクは、石を持って、ドラゴンアーツでグレートマシンガンの股間をぶん殴る。
 同時に、ナナのパートナーの魔女ズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)が、光術で周囲の者を目潰しし、ギャザリングヘクスでフル強化したサンダーブラストを放つ。
 「雷の精霊よ、雷光の槍となりて彼の者のゴールデンボールを貫け」
 「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
 こうして、ラルクとズィーベンの攻撃により、グレートマシンガンに決定的なダメージを与えた。

 そこへ、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が、ざんすかとともに現れる。
 「とどめよ! グレートマシンガン! 私とざんすかの友情ラリアットを食らいなさい!」
 「これで終わりざんす!」
 前回は、ラリアットとレッグラリアットで激突したざんすかと美羽であったが、今回は、ライバル同士共闘して、強大な敵を倒そうとしているのである。
 「うるああああああ!!」
 「たあああああああああ!!」
 ざんすかのラリアットと、美羽のレッグラリアットが、グレートマシンガンの頭に叩き込まれる。
 「ぐおあ!?」
 転げまわっていたグレートマシンガンは、頭部への衝撃により気絶し、完全に沈黙した。
 「やったざんす!! 尊い犠牲のもと、グレートマシンガンを倒したざんす!!」
 「やったわね! でも、一応、誰も死んでないと思うわ!」
 ざんすかと美羽は、グレートマシンガンの頭を踏んづけつつ、高らかに宣言した。

 そんな中、森の中を一人さまよっていたロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)は、道なき道を進むうち、だんだん草や蔦などがからまって、「緑色の生き物」と化していた。
 「ん? あっちで大きな音が聞こえました。……あの大きな人がグレートマシンガンでしょうか?」
 ロザリンドは、騎士のたしなみとして、名乗りを上げる。
 「そちらがグレートマシンガンならこちらはハイパーランサー。ロザリンド・セリナ、突撃いきまーす!!」
 叫ぶなり、ランスをかまえて、ロザリンドは突進する。
 ……巨大化した武尊に向かって。
 「ガハハハハ! 違うぞ、オレはグレートクニガミン! って、ぶしゅうううううううううううううう!?」
 「きゃああああああああああああああああああ!?」
 ランスで突かれた武尊の身体からは瘴気が一気に抜け、風船のようにしぼんでいき、それと同時に吹っ飛んでいった。
 「緑色の生き物」ことハイパーランサー・ロザリンドも、巻き込まれて吹っ飛んでいく。
 「た、武尊さん!? ま、待ってくださーい!」
 武尊のパートナーのシーリルが、慌てて空に飛んでいく武尊を追いかける。
 
 「キミの勇姿は忘れないよ」
 カレンは、グレートマシンガンに向かって爽やかに親指を立てて見せると、撤退した。
 三郎やガートルードたち、グレートマシンガンに味方していた者たちも、皆、撤退する。

 こうして、ジャタの森に、つかの間の静寂が訪れた。