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【2019修学旅行】奈良戦役

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【2019修学旅行】奈良戦役
【2019修学旅行】奈良戦役 【2019修学旅行】奈良戦役

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第5章 石舞台を目指す者たち

 そしてこの頃、石舞台古墳では、真っ先に到着したマリー・ランカスター(まりー・らんかすたー)が、すでに道満と対峙していた!
 (カナリーちゃんは、騎凛とのやり取り(第2章参照)で少し遅れます。)


5‐01 石舞台問答

 石舞台の入り口に立つ蘆屋 道満
 周囲には、屯する鬼、猿、マラたちがマリーをじっと見つめ、石舞台の上では、白狐が、そ知らぬ顔で踊りを踊り始めている。
 異質な光景であった。
 道満は今、とくに術を詠唱してもおらず、ずんずんと、己に近付いて来る弁髪の美女を、いぶかしむ様子もなく見ている。
 マリーは、光精の指輪を掲げると、精霊を放った。人工精霊⇒式⇒道満という経路で、道満との対話を試みようというのだ。
 戦うつもりはない。武器も持っていない。
 マリーの手にあるのは、マイク一本。
 道満に距離1mくらいまで近付くと、マリーはマイクを突き出して、
「道満。取材しにきたでありますぞ。わては教導団憲兵科マリーであります」
「そうか。よく来た」
 普通に会話できた。マリーはずっこけた。
「……気を取り直していくでありますぞ。
 質問その一であります。
 あなたは後世では通好みするキャラなのを知っていますか?」
「さあな。そのようなことは、オレにはどうでもよい」
「……。
 質問その二でありますぞ。
 契約に応じた理由? 召還した術者との力関係?」
「お前に答える必要はない」
「……。
 質問その三でありますぞ。
 ゛撲殺寺院゛に参加(もしくは予定)の有無?」
「何だ? 撲殺寺院とは」
「あ、興味はあるでありますか? 寺院の人(※ある生徒)が、友好を結びたいと言っていたでありますぞ」
「興味はない。撲殺だろうが、謀殺だろうが、清明を殺す以外にはな。
 ただ、オレと共にあろうとする者を拒みはせぬが」
「そうでありますか!
 では、最後の質問であります。
 今後の予定?」
「清明を殺すわけだが?」
「その後であります」
「ふむう……」
 ばしっ。マリーは、すかさず、道満に、薄っぺらい冊子を差し出した。
「これは? 何のまねだ」
「道満にぴったりのところであります。教導団秘術科のパンフでありますぞ」
 惨状パンダ先生の挿絵がグーでありますぞ。
 更に、現役生の声には、セオボルトやフリッツが写真付で載っている。
「秘術科はとてもいいところですぞ、何を研究しているかは秘密♪……か」
 パンフを読みふける道満をよく見れば、なかなかに渋いオジ様だ。実年齢はともかく、甦った道満は、見たところ三十前半くらいの外見といった感じ。
 セオボルトにフリッツに、それに道満が揃えば、人数の少ない秘術科を、更に売り出せるかも知れない。
 いや、と言うか、こんな美男子ほっとく手がないでありますぞ……
「やりたいことがない、即ちフリー! なんならばこのマリーがつきあってあげてもいいですぞ」
「フッ」
 道満は、パンフをぽいと捨てた。
「あっ! 何するであります。もうあまり残部ない貴重なパンフをわざわざ持ってきたのにでありますぞ! それに、修学旅行のごみは捨てずに持ち帰らなければでありますぞ」
「言いたいことはそれだけか」
「であります!!」
 道満の身体に、邪悪な気が漲る。
 はぁぁぁ!! マリーの闘志も高まり、軍服がぼんっと弾け飛んだ。
「よいでありましょう!
 ならばこの自分を押し倒してからいきなさい。それがあなたにできるか?」
 ガッ!! 拳と拳がぶつかり合う。激しい闘いが始まった。



5‐02 エル・ウィンドご一行

 さて、この石舞台を目指す者たち……に、少し目を向けておこう。
 駅から真っ直ぐ石舞台を目指す、騎凛たち教導団とは違った方角から、同じくそれを目指す彼らは……
 エル・ウィンド(える・うぃんど)ご一行だ!
 すでに、情報は察知している。
「シャンバラの知合いが、たくさん来てたから怪しいと思ったけど、まさか戦闘とは。事情は大体、わかったぜ☆」
 金色に輝くマントを纏い、颯爽と歩く、エル・ウィンド。……かなり、目立って目だっている。
「地球の麗しい女性たちを守らないとナンパすらできないし〜。
 それに……今からボクたちが目指す、石舞台と言えば……フフ」
 エルの瞳が、更にきらっと輝いた。
「石舞台の上で舞い踊るのは、美しき……フフフ」
 奈良の町にゴールドの輝きと笑みとを振りまき歩くエルの後ろでは、少々あきれ顔ながらも、真面目にエルと共に戦おうという彼のパートナーたち。
「エル様、またよからぬことを考えていますね、ええ分ります」
 ホワイト・カラー(ほわいと・からー)。アホ毛レーダーで、エルたちを石舞台へ導く、彼の機晶姫。調子に乗りがちなエルに手を焼きつつも、彼のことを信頼している。
「エルめまた馬鹿なことを考えているな」
 ギルガメシュ・ウルク(ぎるがめしゅ・うるく)。ここにも、英霊在り! ギルガメシュ……無論、紀元前・古代メソポタミアはウルク第一王朝の伝説の王。古の英霊である。……ただし、エルの影響で、復活の際に女性化してしまったとのことだが。
「地球の麗しき女性、ナンパ、石舞台、美しき、……ナンパ、……フフフフ」
「ふつうの観光……したいなぁ(アホ毛レーダーくるくる回し)」
「あうっ、つまずいてしまいましたっ……ドジっ娘いうな!」
 ……彼らの活躍は、後編(石舞台攻防)にしっかりと見られることになるだろう。



5‐03 ドーマンセーマンご一行

 こちらにも、石舞台を目指す者たち。
 その真ん中にいるのは、こちらもイルミンスールの、女子生徒のようだが、他は教導団では見知った顔の者たちだ。
 彼らは何故か、橿原市から出発する。
 これはおそらく彼らが、他校の修学旅行で先に日本へ来ていた。あるいは何らか特殊な任務で先に日本に送られていた者もいるのかも知れない。とにかく、何故か、何らかの経緯で、このメンツが集った。
 そして人工生命体のイレブンが、道満の野望を阻止せねばならないという、教導団の意志をキャッチした。
 ……のだろうか。
 ともかく、彼らこそが今回の戦の鍵を握る、かも知れないその名も【ドーマンセーマン】ご一行、だ。
 彼らの道中も少し追っておこう。無論、その主戦場は、石舞台ということになるだろう。

 さて、彼らドーマンセーマン班の滞在する橿原市は、周辺他市とは少し異なる異様な雰囲気に包まれていた。
 市の中心部に、人だかりができている。
 巫女さん衣装を、ミニスカ・ハイニーソックス萌え♪という、アイドル仕立てに着用して踊るのは、遠野 歌菜(とおの・かな)
 ここから(上空カメラ)では、声まで聴き取ることはできないが……。
 デゼル・レイナード(でぜる・れいなーど)の姿も確認できる。しかしあの重々しい鎧に身を包んだ機晶姫ルケトの方は、今日はいないようだが……? いや、バックダンサーを務めているのはもしや……?!
 ひとしきり歌って、踊って拍手喝采を集めると、そのまま歌菜は聴衆に何か語りかけ、空飛ぶ箒に乗って、飛び立った。
 それを追っていく、奈良の少年たち……だけでなく、無論、興味をもった様子の大人たちも、ぞろぞろとそれについて行く。
 埒があかないので、少しだけ視点を近付けてみよう。
 ラジカセを手に持ち、大音量で先ほどの歌のカラオケを流し、歌菜の横を箒で飛んでいるのは、彼女の守護天使ブラッドレイ・チェンバース(ぶらっどれい・ちぇんばーす)
「……これも歌菜を大物にする第一歩……か?」
 そんなブラッドレイの箒に相乗りして、横断幕をはためかせる、リヒャルト・ラムゼー(りひゃると・らむぜー)は北欧神話から甦ったエルフの王子。
 彼らが二人がまた美形なので、少女たちもわれ先にと、箒のしたに群がって、ついて行く。
 それから、子どもから老人まで、皆、行列について行く。
 横断幕には、こうある。
『カッコイイ陰陽師、蘆屋道満様を皆で崇めるお祭りを開催中☆』
『参加してくれる皆は、一緒に付いて来てね☆』
 これで、彼らの企てが明らかになった。
 要するに、お祭りだ。これは、橿原市民がこぞってついて来ない理由はない!
 いや……彼らの企てのまずポイントは、すなわち、どうやら道満を敵に回すというつもりはないらしい。
 どう戦うのか、【ドーマンセーマン】。
 列の先頭には、林田 樹(はやしだ・いつき)とその仲間たちが、バイクで護衛にあたる。
 使用する武器・弾薬は、祈祷済み。
 念のため清めの塩もパートナー二人のサイドカーに積んである。
「ジーナは右側面、洪庵は左側面の敵をたのむ。
 後方の護衛は、馬鹿騒ぎに姉御(デゼル)も参加しているから大丈夫だろう。
 って、お前等、私の話を聞いているのかっ!!」
 林田の右側。ジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)
「(……、歌って踊るの楽しそうだなぁ。)
 はいっ、林田様、了解いたしました」
 林田の左側。緒方 章(おがた・あきら)
「は〜い、樹ちゃんの頼みならどんなことでも聞いちゃうよ。
 買ってもらったホワイトアーマーにも傷が付かないよう、頑張るよ」
 ジーナがぴき、と反応。
「……あんころ餅、今ちょっと自慢しているような気がしましたけど」
「ん? もちろん自慢ですよ。
 バイクも鎧も、樹ちゃんが僕のことを思って用意してくれたからね」
(一番実戦経験がないから保険をかけただけだ。)
「あれ、林田様のお声が聴こえたような気が。
 とにかく!
 ……、勝負いたしませんか?
 より多く悪霊を退治したヒトが今夜一晩林田様を好きにして良いって事で良いですか!」
「その勝負良いですね、受けて立ちましょう。
 カラクリ娘のゼンマイが切れて動けなくなる姿が楽しみです。
 勝ったらしっぽり混浴しようね、樹ちゃん。
「来てみやがれなのですよ。餅の姿で吠えヅラかいても知りませんなのですよっ!!
 勝ったら林田様と混浴露天風呂でラブラブなのです!
「……はぁ、やる気が起こるのは良いが、何故私がその対象になるのだ?」
 というわけで、この三人の戦いの事情は少し違うようではあるが……。

「……ふふふ、うまくいった。うまくいったぞ」
 続々と橿原市民を味方に付け、ドーマンセーマン一行は膨れ上がっている。
 誘導係りに扮しつつ、その様子を眺めるイレブン・オーヴィル(いれぶん・おーう゛ぃる)
 この企画の仕掛け人である彼は、事前に十分な宣伝を打っていた。
 メディア対応は、イレブンのパートナーとなっているシャンバラ人、グロリアーナ・イルランド十四世(ぐろりあーな・いるらんどじゅうよんせい)が担当。
 事前、【ドーマンセーマン】の行動中継を、地元のTV局や新聞社にお願いしてまわっていたのだ。
 道満の企みについては、教導団との連携で奈良県警は把握しており、関連する一部メディアについても然りであった。
「学生達と一緒に行動頂ければ、記者やリポーターの安全を守ることができますわ。復活の舞はみなさまも取材したいでしょうし、是非、わたくし達とご一緒していただけませんか?」
 奈良全域とはいかず、橿原市限定であったが、この効果は大きかった。
 これによって、このように事は上手く進んだ。
 企画を打ち立てたイレブンに、しっかりとした意志があったことも重要であったろう。
 彼は道満のことを、様々な業績をあげた偉人であり、悪玉となっていることを不憫だと感じた。
 今回の道満の暴挙の一因にそのことがあるなら、道満の業績を認める人が増えたり、道満のファンが出来上がれば事態は変わるのでは?
 彼なりの考えであった。
「奈良県民に道満の素晴らしさを歌と踊りでアピールしよう!」
 かくしてドーマンセーマンは、橿原市民を巻き込みながら、一体になりながら、石舞台へと向かうことになる。



5‐04 石舞台は目前だ

 今日は、騎凛のパートナー・アンテロウムの姿は見えない。
 それなりに冷ややかな距離を取りつつも、騎凛の副官のポジションを狙う(?)戦部。
 戦部は奈良県警への根回しに続き、式神への対処も進言していた。鬼、猿、マラ(チ○コだとも戦部は見抜いた)に明日香でそれぞれに対応する史跡が、鬼の俎、雪隠。猿石。マラ石であり、そこに呪術的な施しがされていると。当然これに手勢を向けるべしとのことだったが、これにはすでに、岩造の部隊が向かっている。おそらく、心配ないであろう。あの岩造率いる龍雷連隊なれば。
 戦部を支えるリースも、咳き込んで修学旅行への随行を諦めたアンテロウムの引退が近いことを察知、アンテロウムをよく気遣い、慰めることで、彼が後釜を決めるときのため、戦部のイメージアップを図っておこうと……はしていませんが、今日は労ろうと思っていたアンテロウムはいないので、代わりにニャンコ兵あたりの相手をしている羽目になった。
 また、にこやかでありつつも騎凛を着実に諌める黒軍師・匡も、傍らで常に策を練っている。のか、あるいは今日はどちらかというと道中を楽しんでいるだけかも知れないが。
 若干第四師団の宣伝?になるが、今日はすでに各々の戦地へ散っている皇甫、沙鈴、マリー等も知恵の火花を散らす者たち。
 アンテロウムが死去した暁に、騎凛のLC登録されるのは戦部か。それとも……?

 奈良の町歩き。
「時代変われど雅なものだよねぇ」と独りごつ、柳生 三厳(やぎゅう・みつよし)。生前日本生まれなので、馴染みは深い。
 隣りを歩く知己、ニャガル族の戦士ニャイールにはこっそり、「互いに片想いの相手に想われる用に頑張ろうよ」、なんて声をかけている。
 そんな会話も含みつつ、騎凛ら本隊は、間もなく、石舞台に到達しようとしている。

 隊の後方にいる、獅子小隊一行。
 無論、彼らの活躍のときも目前に迫っているわけだが……
 新しく見る女性の顔。新隊員、なのだろうか?
 レジーヌ・ベルナディス(れじーぬ・べるなでぃす)
 今回の修学旅行は軍事活動メインと心得、観光は始めから控えるつもりでいたのだが、パートナーが「観光したいしたい!」駄々を捏ねるので……それならば、観光と本来の目的が同時に達成できるとして、こちらへ向かった。その石舞台への途中で、獅子小隊と出会い話すなかで、今日、隊に参加することとなったのだ。
 帽子を目深にかぶって相手の顔を見ないようにしないと話せない、というくらい男性と話すのが苦手な彼女だが……
 今日は修学旅行だもの。
 男子とも頑張って話そうという心構え。
「お嬢さん、この後デートに……」
「ルース!」
 イリーナが睨む。
 久々に隊員(今日は一日隊員だが)に対し炸裂したルースの決め台詞。
 イリーナに睨まれしょんぼりするルースに更なる受難が。
 ざっ。今回修学旅行に行くにあたって、「レジーヌが誰かにナンパされそうになったらそいつをシバく」ようプログラムされている機晶姫、エリーズ・バスティード(えりーず・ばすてぃーど)。ジャキン。剣を抜く。



5‐05 おじいちゃんと一緒

「今回の相手は、陰陽師である、と……。ううむ。
 黄巾の方術が相手ならば如何様にもしてみせるのでござりまするが……日本陰陽術相手は勝手が判らぬ……」
 悩める将軍、いや……悩めるおじいちゃん?
「……相変わらず、何を比べるにも、後漢の時代が頭をよぎるのですぅ、おじいちゃんは」
 皇甫 伽羅(こうほ・きゃら)のおじいちゃんというのは、最近英霊として甦った後漢の将軍、皇甫 嵩(こうほ・すう)のことである。
 実際、皇甫の祖先にもあたる。
「おじいちゃん。
 中華と勝手が違うのなら、その勝手の違いを知っている方にアドバイスを貰えばいいのですぅ」
 そして皇甫は事前調査をした結果……
 明日香村檜隈寺跡内に、献帝の孫・東漢氏始祖:阿智使主(あちのおみ)が祀られている「於美阿志神社(おみあしじんじゃ)」があることを知った。
「ここに詣でて神託を請い、併せて図々しくも、その子孫である初代征夷大将軍・坂上田村麻呂の霊力を借りてしまうのですぅ!」
 うんちょう タン(うんちょう・たん)も、「それならば霊験もござろうな」。
 参拝に同意するのだった。
 更に皇甫は、皇甫嵩に、一切れの紙を渡した。
「う、うむ?」
「これで勝機ありですぅ!」

 そしてもちろん、その護衛についていく……つれていかれるのは……
「歴史情緒あふれる寺社仏閣巡り……たまらんな。
 え? 皇甫氏が儀式を? 木刀買って欲しい? 蘆屋道満!?」
 ――昴 コウジ(すばる・こうじ)!!
「歴史好きだから本当はゆっくり見学したかったが、皇甫氏の危機とあらば仕方ない。
 と言うか、
 是非も無い……」
 こうして、皇甫伽羅は、皇甫崇、うんちょう、昴コウジらを率い、於美阿志神社へと向かった。
「皇甫氏! 儀式が成功の暁には、弾んで下さいよ! レッツゴー!!」





 昴とともに、奈良を訪れていたライラプス・オライオン(らいらぷす・おらいおん)
 「修学旅行」……データ検索、照合。
 :遠方の事物を見聞する事による学徒の学習効果を見込んで行う宿泊行事。
 戦前・戦中は国歌神道教育の一環としても行われたが、近年はレジャーランドを目的地として設定するなど「学習旅行」の体裁を取らない物も多い。/
「その反面……
 なるほど。教導団のそれは、古き良き学習旅行ですね。
 では私としては、土産物屋で「木刀」の購入を提案します」
 昴、「……」。
「殊に「洞爺湖」の刻印が成されている物が土産物としては一級品と記憶しております」
 昴は素直に財布を開いた。
 境内。
 いよいよ、参拝し儀式に入る、皇甫たち。
 おじいちゃん……こと皇甫嵩、さき皇甫伽羅に渡された紙を手に、そこに記された我流(博識使用・皇甫オリジナル)による祝詞を、朗朗と読み上げた。
「掛巻も畏き
 大漢孝献皇帝陛下の御孫にして東漢氏が始祖
 征夷大将軍坂上田村麻呂公十三代の祖
 阿智使主の大神の広前に恐み恐みも白す

 我名は漢朝の臣 驃騎将軍皇甫嵩と申し
 大神の祖宗に微衷を尽くせし者なり

 今日此の良き日に大神の御舎に参り出で
 御国に仇なす蘆屋道満なる外法の徒輩を討ち祓わんが為に
 臣嵩の嘗ての微功を汲み給い
 大神と公との
 御智慧を垂給い御力を下し給えと
 恐み恐み白す」

 ……
 ……
 びきびきびき!
 三人が持ち構えていた弓に、坂上田村麻呂の霊験が降りた。
 しゅうううううーー
 三人は、「鳴弦の法」(弓弦を鳴らして邪魅を祓う法)を授かった。

 神社を出てくる皇甫たち三人。
 昴が駆け寄るが……
「皇甫氏! みたらし団子、おしいです……ぞぞぞ」
 すでに様子が違う。
 べんべんべんべん、
 べんべんべんべん
 勇ましく、弓弦鳴らしてリズムを奏でる皇甫たち。
 昴、「……なんかこうすさまじいものがありますな」。
 ライラ、「主?」
 昴、「まあ、ついて行くしかぁありませんね。方角は、確かにあちらを向いているみたいでありますし」
 ……そう、いざ石舞台へ!