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闇世界の廃校舎(第2回/全3回)

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第7章 第2生存者ラビアン・クィーン

-PM22:00-

 校庭や保健室などを順番に回りながら行方不明たちを探している影野 陽太(かげの・ようた)は、恐怖心を抱きながらも3階の校舎内で探していた。
「行方不明者たちの背格好を保健室で聞けましたけど、なかなか見つかりませんね・・・。しかもどういうわけか、他の人にも何故かまったく合わないんですけど・・・」
 2階へ向かおうとすると下の階に下がる階段の方から、カツンカツンと足音が聞こえてきた。
「(ゆゆゆ幽霊の足音でしょうか!?)」
 壁際に隠れて姿を確認すると、表面にスペードのエースを描いたダンボールを着ているあーる華野 筐子(あーるはなの・こばこ)が廊下を歩いていた。
「よかった・・・生徒さんでしたか。てっきりチェーンソーの方が出たかと思って冷や冷やしましたよ」
「ねぇキミも行方不明になった生徒たちを探しているの?もしよかったらワタシたちと一緒に探さそう!」
 陽太の姿に気づいた筐子は、階段の方から3階にいる彼へ片手を振って呼びかける。
「―・・・・・・誰か見つかったの?」
 捜索に加わっていたセルシア・フォートゥナ(せるしあ・ふぉーとぅな)が、筐子の傍へ駆け寄った。
「一緒に捜索に加わってもらおうと思って誘ってたんだよ」
「行方不明者が見つかったわけじゃないんだな」
 ウィンディア・サダルファス(うぃんでぃあ・さだるふぁす)も階段を下りてくる陽太の顔を確認する。
「他にも一緒に探してくれている人がいるんだよ」
「私たちは探索がてらに・・・・・・気になったから」
 笑顔で言う筐子に対して、セルシアは本音を隠すように言う。
「1階を探してみたんだが、それらしいヤツは見つからなかったな」
「俺も見つけられませんでしたね」
「たしかチェーンソーを持ったゴースト以外にも、悪霊とかもいるんだったな・・・」
「そうなんだよね・・・。とり憑かれたら厄介だよ」
「追い払おうにも身体がないようだし・・・・・・明確な対策方法も今の所ないからね」
「光精の指輪でも対処しきれるか謎ですね・・・」
「もしもの場合を考えて、気づかれそうになったらどこかに隠れた方がいいかな?」
 首を傾げて言う筐子に、生徒たちは同意したように頷く。
「いちいち相手をしていたらこっちの身が持たないしな」
「それじゃあ教室内を探してみようか。すでに他の生徒たちも行方不明者を探しているから、一緒に協力すれば早く見つけられるだろうし」
 筐子たちは2階の教室を中心に、行方不明者を探し始めた。



「チェーンソーを持ったゴーストがいるようだが・・・まるでホラー映画だな」
 行方不明者が教室内に隠れていないか、ロブ・ファインズ(ろぶ・ふぁいんず)は机や掃除用具入れの中を探す。
「こっちにはいないようですね・・・」
 アリシア・カーライル(ありしあ・かーらいる)はカーテンを捲り、隠れていないか確認する。
「さすがにロッカーの中には入れないよなぁ」
 錆たロッカーの扉を開けてレナード・ゼラズニイ(れなーど・ぜらずにい)が中を覗き込む。
「2人とも隠れろ、どこからか足音が聞こえてくる・・・」
 捜索の手を止めさせ、ロブたちは壁際に身を潜める。
 ズシッズシッと足音を立てて、何者かが彼らがいる場所へ近づいてきた。
 足音の正体を確認しようと机の下に隠れ、様子を窺っているとピエロの格好をした巨大なチェーンソーを持つ大男が教室内に侵入してきた。
「(かなりの人数の人々を、あの凶器の餌食にしてきたようだな・・・)」
 血肉に塗れたチェーンソーを見たロブは、今すぐにでもゴーストを叩きのめしてやりたい怒りを抑えて顔を顰めた。
「なかなか教室から出て行きませんね・・・」
「俺たちの気配に気づいて探しているかもしれないな。だとしたらこうして隠れていても見つかるんじゃないのか?」
「こちらの位置を確認できていないようですし、攻撃を仕掛けるなら今でしょうか」
 ゴーストに聞こえないようにアリシアとレナードの2人は、机の下から出るタイミングをヒソヒソ声で相談し合う。
「待て・・・ここから出て行くようだぞ」
 ピエロの格好をしたゴーストへ向かっていこうとするアリシアたちを止めると、ロブたちがいる教室から亡者の足跡が遠く離れていった。
 ほっと安堵して教室の外へ出ると、再び生存者探しを始めた。



「見つかりませんね・・・。うわぁあっ!?」
 生存者を探しながら廊下を歩いていると、陽太は何者かに腕を掴まれ教室の奥くへ引き込まれた。
「しっ!静かにしろ!」
 政敏に口を突然塞がれた陽太はパニック状態になり、暴れないようにカチュアとリーンに両腕を掴まれる。
 ズリズリッと摺り足で歩く足音が近づいてきた。
 床に伏せながらドアの方へ視線を移すと、ゆっくりと廊下を歩く青白い2本の足が見え、教室の傍を通り過ぎていく。
「危なかったな・・・もう少し隠れるのが遅かったら、ゴーストに見つかって憑かれていたぞ」
「と・・・・・・とり憑かれる!?おおぉお化けにぃ・・・・・・おば・・・おば・・・お化け・・・・・・」
 恐怖のあまり陽太は顔面を蒼白させ、ブルブルと震えならがら口をパクパクさせる。
「誰かそこにいるの・・・・・・?」
「ほぎゃぁああっ!お化けの声ぇええ!とり憑かないでくださいっ、俺にとり憑いても何もいいことありませんからぁあっ!」
 掃除用具入れの中から聞こえた若い女の声を、幽霊と思い込んだ陽太が絶叫する。
「何よ失礼しちゃうわ!こんな可愛い女の子をお化けだなんて!」
 カチュアに扉を開けてもらい、用具入れの中から出てきた18歳くらいの女子生徒が、陽太に向かって怒鳴り散らす。
 見た目は色白の肌に細身の体型で、美人だが気が強く茶色の瞳で睨みつける態度は、かなり高飛車な雰囲気だった。
「どうしたんだ!?今、誰かの悲鳴が聞こえたようだが」
「ゴーストでも出たの!?」
 陽太の悲鳴を聞き、ロブと筐子たちが駆け寄ってきた。
「出たがこちらに気づかずに去っていったな」
「そうか・・・それならよかった。そっちの生徒は・・・?見かけない顔だが・・・」
 用具入れに隠れていた女子生徒の方へ視線を移し、この女子は何者なのかとロブが政敏たちに聞く。
「ヘルドに聞いた容姿の特徴からしてラビアンじゃないのか?黄緑色っぽい髪の毛の色だったと聞いたしな・・・」
 政敏は行方不明者の特徴を書いたメモ帳をロブに見せた。
「えぇそうよ。一緒に来た友達とはぐれてとても怖かったわ・・・」
「とりあえず傷などの外傷は見当たりませんね」
 ラビアンの身体をぱっと見て、傷を負っていないかカチュアがチェックする。
「ゴーストにとり憑かれている様子もないし・・・大丈夫そうね」
 生存者の彼女の顔を覗きこみ、正常かどうかセルシアも調べる。
「とりあえず生徒たちが集まっている美術室へ向かうとしよう」
 ロブたちは教室を出ると、ラビアンを連れて美術室へ向かった。