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闇世界の廃校舎(第2回/全3回)

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闇世界の廃校舎(第2回/全3回)

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第2章 その者・・・人間かゴーストか・・・2人目のピエロの出現

-PM17:00-

 冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)はシスター服を身に纏い、1人で校舎内をウロついていた。
「誰かいないんですか・・・トンネルをくぐってきたときはあんなに沢山生徒がいたのに会わないなんて・・・」
 ハンドライトを握り締め調理室へ向かう。
 そっとドアを開けて中の様子を窺うと誰もいなかった。
「特に変わった所はありませんね・・・。―・・・ひっ!」
 誰もいないと思っていた調理室から、コツンコツンと足音が響き始めた。
 屈んで隠れていると歩の姿が見えた。
「あの・・・襲ってくるピエロにちょっとだけ似てるんですけど、良く喋るナガンさんって人見かけませんでした?」
「見てませんけど・・・・・・」
「そうですか・・・」
「また誰かきたんでしょうか」
 ペチャッペチャと水に濡れた足を引きずるような音が聞こえる。
「ひっ・・・!」
 ずぶ濡れの服を着た青白い肌の少女が、厨房内を徘徊していた。
 無闇に出てしまったら追われると思い、2人は幽霊が離れていくのを待つ。
 しばらく身を潜めていると音が聞こえなくなり、ほっと安堵し棚の中から出たその時、無表情で少女が2人を見下ろしていた。
 逃げようとすると幽霊の少女は小夜子の腕を掴んだ。
「いっいやぁああ離して離してぇえー!」
 歩は幽霊から引き離そうと、小夜子のもう片方の腕を掴み引っ張る。
「お姉ちゃん・・・お姉ちゃん・・・行こうよ・・・・・・」
 人間離れした強い力で霊はグイグイと引っ張り続け、優しそうな小夜子を一緒にナラカへ連れて行こうとする。
「いやあぁあっ!私まだ生きていたい、生きていたいんですー!」
 首を左右に振り連れて行かれたくない彼女が必死に叫ぶと、少女はパッと手を放し姿を消した。
 その場から逃れようと急いでドアを開けると、さっきの少女がニヤッと笑って待ち構えている。
 小夜子と歩は泣きながら、悲鳴を上げて廊下を駆けた。



「チェーンソーを持ったゴーストってどんな感じかしら?」
 怖がるよりもルカルカ・ルー(るかるか・るー)は、楽しそうに校舎の廊下を歩きゴーストを探す。
「―・・・楽しそうだな」
 多くの生徒たちがゴーストと対決することを嫌がる中、遭遇したいという彼女にダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)はため息をつく。
「チェーンソーを奪って使うんだろうな・・・・・・」
 2人の後ろを歩きながら、カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)は冷静な口調で言う。
「そいうのがあるなら使ってみたいじゃないか」
 むしろ自分も使ってみたいという態度で夏侯 淵(かこう・えん)はニヤリと笑った。
「誰か来るわ。ナガンかしら・・・」
 階段からピエロの格好をしたチェーンソーを持った者が1階へ下りてきた。
「ナガンか?」
 2階からエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)が正体を確認しようとする。
「少し背が高くない?」
 エースの後ろからクマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)がひょこっと顔を覗かせた。
「いや・・・・・・あれはゴーストの方だな。油断しないように気をつけないと・・・てっ・・・おい!」
 ダリルが止めるのも聞かず、ルカルカは光条兵器を手に身長2メートルのゴーストに立ち向かう。
「フフッそれ、私によこしなさい♪」
 錆びた階段の手摺を踏み台にし、エペを標的へ振り下ろす。
 身の丈ほどありそうなチェーンソーで、2階の床へ飛ばされる。
「蟲でも何でも、やっぱり頭を潰しておかないとねっ」
「そうだな!」
 エースはパートナーが詠唱している間、ゴーストの注意を自分に向けるためハンドガンのトリガーを引く。
「いっくよぉおおっ」
 ゴーストの頭部へ火術を放つが、ゴゥウッと燃えながらも亡者はチェーンソーを手に向かってくる。
「くぅ・・・やるわね・・・。武器がなかったら腕を斬られてしまうところだったわ」
「これならどうだ!」
 ダリルがゴーストに向かって氷術を放つが、すぐに再生してしまいあまり効き目がない。
「1人では無理そうだな、俺も手伝うか」
 氷術をカルキノスが3人でくらわしてやろうと提案する。
「そうね!」
 ゴーストの動きを封じるため、ルカルカたちは足元へ目掛けて氷術を放つ。
 ビキビキッと音を立ててゴーストの足が凍りつく。
「いっきに決めるわよっ」
 標的の四肢を斬り落とし、パリィインッと割れた破片を全身に浴びた。
「なんとか倒せたみたいだな」
「皆が援護してくれたからね」
 ハンドガンをおろし駆け寄ってくるエースに、ルカルカはニコッと笑う。
 床に落ちたチェーンソーをルカルカが拾い上げようとする。
「―・・・結構重いわね・・・・・・」
「こりゃぁ淵には無理そうだな」
 ルカルカがやっと使えるチェーンソーを見てカルキノスはボソッと言う。
「なっ!俺だってそれくらい・・・・・・」
「持ってみる?」
「うわっ!?」
 手渡されたチェーンソーのあまりの重さに、淵は床に尻餅をついてしまった。
「使えそうなのは私だけかしら。そんなに長時間持てそうにないわ・・・」
「じゃあ置いていくか?」
「そうしたほうがいい・・・体力がもたないぞ」
「うぅ・・・・・・頑張る!」
 重そうに抱えながら、ルカルカは2階の廊下を進む。



「さっきから他の生徒たちに、ゴーストに間違われているようだが・・・。しかもわざと襲ってこようとしている感じもあるんだが気のせいだろうか」
 チェーンソーを持ったゴーストと同じような格好のナガンは、生徒たちに誤射されそうになったりしていた。
「ん・・・あれは・・・・・・ナガンと格好をしているな。もしかしてあれがそうなのか!」
 ニヤリと笑い喜々として、ピエロ女は血煙爪で襲いかかる。
「死ネ死ネ死ネェー!」
 標的の腹部を斬り裂き、腸を掻きだしてやる。
「はっははー!この程度かぁあ!?たいしたことねぇなぁあっ」
 白色の髪を返り血で真っ赤に染め、ゲラゲラと高笑いをする。
「―・・・あっ、ナガンさん!」
「歩か・・・どこにいっていたんだ?」
「ふぇ・・・・・・うわぁああん、怖かったですよー!」
 歩は泣きながらナガンへ駆け寄る。
「さっきそこで、お化けに追いかけられましたぁあっ。霊体だから武器すりぬけちゃいますし、捕まったらナラカに引き込まれちゃいます!」
「大丈夫だからもう泣くな」
 優しく歩の焦茶色の髪を撫でてやり、なんとか泣き止ませようとする。
「あぁ・・・ぁあ・・・・・・」
「どうした・・・・・・?」
 顔を青ざめさせて歩が指差す方向へ振り向くと、倒したはずのゴーストが身体の再生を終え、チェーンソーを振り下ろそうとしていた。
 ナガンは歩の身体を抱えて床を蹴り、間一髪でかわした。
「ピエロチェーンソーはナガンだけでいいんだぜェ!」
 相手の首元を狙い血煙爪を斬りつけようとするが、チェーンソーで防がれてしまい壁際へ叩きつけられてしまう。
「ナガンさん・・・!どうしよう・・・・・・このままじゃナガンさんが・・・・・・。怯えてばかりいられませんよね・・・戦わなきゃ!」
 歩はモップを使ってゴーストの足にひっかけ、彼女の腕を掴みピエロ男がから逃げるように離れていく。
「(チッ・・・・・・惜しかったな。今度見つけたら奪ってやる!)」
 巨大チェーンソーを諦めきれないのか、ピエロ女は心中で呟いた。