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リアクション
■□■3■□■
騒動の脇で、沢渡 真言(さわたり・まこと)は、自分も執事なので、執事に対する疑いを晴らしたいと考えていた。
「第一発見者だからとか、とてもすぐ近くにいたからとか、実際とっても怪しいとかそんな理由で疑ってはいけません。執事と言う職業はとても大変なんですよ!」
力説しつつ、真言は決意を固める。
「アーデルハイト様が聞いた犯人の言葉……これはきっとセバス・チャンさんを自分のものにしたいと言う誰かの仕業にちがいありません! 彼を第一発見者にして疑わせて執事を首にさせる気なんですよきっと。そしてきっと自分の執事(もの)にしたいに違いありません。ですから私はセバスさんの身の回りの人物が怪しいと思うので彼に始終くっついて探ろうと思います」
小柄な真言がセバスチャンを見上げて言う。
「あなたの側にずっといさせてもらえませんか?」
「え? それはどういう……」
執事と執事が見つめあう。
「わー! 真言ってばだいたーん!」
幼なじみの三笠 のぞみ(みかさ・のぞみ)が、騒ぐ。
「この中でチャンといったらセバスチャン。犯人はセバスチャンが好き。つまりセバスチャンをいじめたら、犯人にダメージを与えられるわけだよね!」
第一発見者のセバスチャンを犯人として、拘束して拷問する振りをするというのが、のぞみの作戦であった。
なお、エリザベートに話を持ちかけたところ、「特に問題ないのですぅ」ということであった。
「えいっ! 執事には服装の乱れは耐えられないだろうから、セバスチャンのネクタイを取っちゃうよ!」
「あっ、何をされるのですか!?」
のぞみが、セバスチャンのネクタイを外す。
「のぞみ、ネクタイは執事にとって大切なアイデンティティーなんです! な、なんてむごいことを!」
真言があわてる。
「あれー? 真言がやりたかった? むー、犯人出てこないなあ。それでもダメなら、シャツの第一ボタンを外しちゃえばいいんじゃないかな?」
「そんな!? シャツのボタンを開けて歩く執事なんて……ズボンのチャックが開いているみたいなものですよ!」
「あ、あの……」
のぞみと真言が大騒ぎの中、シャツの第一ボタンを外されたセバスチャンが置いてけぼりになる。
「そんななまぬるい方法じゃだめです!」
ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)が、セバスチャンを拘束して、椅子に縛り付ける。
「うわあ、何するんですか!?」
「セバス・チャンの持ち主を、何をしてでも聞き出しますっ! こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ」
「あははははっははははははははっはははははははははははは!!」
ヴァーナーにくすぐられて、セバスチャンが悶絶する。
「つんつんつんつん、つんつん、つんつん」
「ああっ、や、やめてくださ……うわああああ」
続いて、つんつん攻撃が炸裂する。
「女の子が老眼鏡執事を縛り付けてのプレイ……なんてマニアックな! さすがにあたしも思いつかなかったよ!」
「のぞみ、感心してる場合じゃないでしょう」
「そうだった。真言はセバスチャンを自分のものにしたいんだよね!」
「違いますよ。ずっとお側にいたいんです」
「まだ教えてくれないんですね……犯人は光学迷彩使いなゆる族みたいだから、関係者のセバス・チャンもそうに違いないです! チャックを探して開いちゃいますよ!」
ヴァーナーの言葉に、セバスチャンの顔色が変わる。
「わ、わかりました。お話します! すべて事情をお話しますから!」
かくして、セバスチャンは陥落した。
「……そうです。お察しの通り、私はゆる族です。本名はセバス・チャンといいます。私は成体になる際に、脱皮して着ぐるみを着替えるという、特殊な風習を持つゆる族の部族の一員でした。元々は、クマの姿で、パートナーと楽しく暮らしていましたが、ある日、ゆる族の部族の掟により、『人気のある生徒リンネ・アシュリング(りんね・あしゅりんぐ)のパートナーのモップス・ベアー(もっぷす・べあー)と被っているのでNG』というお達しが来たのです。愛されるキャラクターとして、他のキャラクターと被るということは許されない、というのが、私たちの覆せない掟です」
「セバスおじちゃん、大変だったんだね……」
ヴァーナーが同情する。
「ということで、脱皮しなくてはならなくなったのですが、クマの着ぐるみのファスナーが引っかかって、中から出られなくなってしまったのです。困っていたところ、アーデルハイト様が通りかかり、魔法で着ぐるみを破壊してくれました。そうして、執事姿の私は飛び出したのです。老眼鏡執事として生まれ変わった私は、恩人であるアーデルハイト様に仕えることを決意しました。……しかし、着ぐるみを魔法で壊していただいた様子が爆発に見え、私のパートナーは、私がチャックを開けられて爆発して死んだ、と思っているのかもしれません。これまでの手口から、私のパートナーが犯人ではないかと思います」
「どこから突っ込んでいいかわからないけど、やっぱりセバスチャンの関係者が犯人だったんだね」
のぞみがうなずく。
ちょうどそのとき、マシュ・ペトリファイア(ましゅ・ぺとりふぁいあ)の「ディテクトエビル」が反応する。
「ロミー殿、来たようだね」
パートナーのシャンバラ人、ロミー・トラヴァーズ(ろみー・とらばーず)が、アーデルハイトの死体を、校長室の入り口に立たせ、棒立ちしているように見せかけた罠に、犯人が近づいてきたのだ。
犯人が死体に発砲する。
「今じゃ!」
釣竿を持ってワクワクしていたロミーが、マシュに合図を送る。
「サンダーブラスト!!」
マシュが邪念の場所に向かって魔法を放ち、校長室の床に、電撃が炸裂する。
「避けられたか……」
ロミーが残念そうにつぶやく。
「気絶させて捕まえるつもりだったけど……まだやるのかな?」
「当然じゃ! まろが必ず犯人を捕まえてみせるのじゃ!」
内心、「何回も生き返るんだから犯人が飽きるまでほっとけばいい」と思い、面倒だと感じているマシュだったが、ロミーに連れてこられた以上、しかたないと、溜息をついた。
「今、犯人来たよね!?」
「来たよ、のぞみおねえちゃん! ……持ち主は、セバスおじちゃんがチャンだって気づいてるのかな?」
「うん、椅子に縛ってるのにこっちにこなかったよ……」
のぞみとヴァーナーは、疑問を抱いていた。
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