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リアクション
「いやあああー!! 僕のものだああぁ!」
サガンにとりつかれていた男子生徒が急にむくり、と立ち上がると血眼でよだれを垂らしながら、ホストコンピュータを抱き締め、おのれの身を盾として、他の面々から守ろうとしていた。しかし、その姿は狂気以外の何ものでもなく、争奪戦を繰り広げていた面々もさすがに及び腰となった。
「誰にも渡さない! 誰も僕をバカになどさせない、全能の智慧は僕のものだああぁ! キィヒヒヒヒ!」
「なにやってんだ!」
先に我に返ったトライブが男子生徒をホストコンピュータから引き剥がそうとするが、上手くいかない。その時、いきなりホストコンピュータがバチバチっと音を立てたかと思うと、凄まじい機械の焼ける音とともに火を吹いてしまったのだ。
「ひっぃぎゃあああ!」
悪魔召還プログラムのホストコンピュータは完全に破壊されてしまった。
すると、次々、同じラックに置かれていたバックアップ用のコンピュータもバンバン音を立て、火を吹く。
「な、なにが起こったんだ…」
あまりの出来事に白目を剥いて、男子生徒は憤死しかねない勢いで悲鳴をあげた。その瞬間に、本当の意味でサガンの呪縛から彼は解かれたのだった。
悪魔憑きから解放された男子生徒がかくん、と体から力が抜けたように倒れ込む。
「…み、みんな僕のことをバカにしやがって…」
「危ない…!」
頭から床に倒れ込みかけた男子生徒を、アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)と小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が受け止めた。
「高橋ツゲ雄君…よね?」
アリアがそっと微笑む。
「な、なぜ僕の名を…」
「アリアと一緒に環菜校長にことを問いただしたのよ。『あのプログラム』って何かってね! そうしたら、あんた…高橋ツゲ雄君って言ったっけ? じゃあ、ツゲ雄君に環菜校長は『東洋魔法の陰陽術や修験道などをプログラム化できないか』って依頼してたそうじゃん! だからツゲ雄君が怪しいと思ってここまで探しにきたの! それにしても、とんでもないことをしてくれたもんねえ〜! 悪魔をどうやって召還したの?」
「高橋君、本当はみんな、手を取り合えるはずなのよ。私は吉野山でそういう経験をしているわ。ちゃんと話をして?」
アリアはそっと胸にほんのりと光る珠を握りしめている。
美羽とアリアの言葉に高橋はサガンの呪術とともにこわばっていた心がほどけたのか、ううっと涙をこぼし始めた。
「ぼ、僕は、環菜校長の指示で、魔術に関するプログラムを組んでいたんだ。でも、それを察知した悪魔のサガンが、僕に強引に接触してきた…サガンは、人を機知に富ませる力がある…そして僕の能力を飛躍的に向上させる代わり、僕に憑依して『悪魔召還プログラム』を作らせたんだ…」
「なんでそんなことしたの!?」
美羽の言葉に高橋は顔をぐしゃぐしゃにして、泣き出してしまう。
「ぼ、僕は、プログラムは得意だけれど、人付き合いが、ヘタで、…でも、みんなにバカにされたくなくて、一生懸命、プログラムを組んでたんだ…僕の心の弱さやプライドにサガンはつけ込んだ…サガンは言ったんだ。『オ前ヲ見下シテイタ奴ラヲ見返スコトガデキル、ソノ通リダ。サァ我ノ手ヲ取ルノダ』…って」
「なんてことを…」
アリアが顔を曇らせると、犯人を倒そうと意気込んでいた美羽も言葉を無くすが、ぐっと高橋を脇から支え、助けおこした。
「ツゲ雄君も利用されてただけ…とは言え、もう二度とこんなこと、するんじゃないわよ」
「美羽…」
アリアは美羽のぶっきらぼうな優しさに笑みを溢すと、逆側から高橋を支えた。
「人はみな、弱いものよ。高橋君、これから心を強く持つよう、頑張っていきましょう」
美少女二人に支えられている高橋ツゲ雄は涙まみれでみっともないことこの上ないのだが、しかし、ある意味役得であった。
…時は前後し、アキバ分校のサーバールーム周辺。
鈴木 周(すずき・しゅう)は、環菜から借りたハンドヘルドコンピュータを使い、活きているパソコンを探索していた。
「凶司がカワイイ女悪魔でハーレム作ってくれるって言うし〜これは張り切るしかないな!」
「なに、独り言いってるの? 周くん?」
既に長年の付き合いでスケベ心が出たときの周を感知する能力を持ったパートナー、レミ・フラットパイン(れみ・ふらっとぱいん)がじとっと睨む。
「な、なんでもねえよ! アキバ分校のピンチに駆けつけたってわけじゃねえか!」
「一緒に行動してるのは、凶司くんたちと刀真くんたち? 刀真くんと月夜ちゃんはともかく、凶司くんかぁ。…なんか二人で悪いこと考えてない…よね? 二人とも、何かよからぬこと考えてたらこのウォーハンマーが唸るよ?」
「ひぃぃ〜!! いえ、なにもかんがえてないでっす! レミさん、インプが潜んでないかチェックしてくださいネ、インプいたら、そのウォーハンマーをふるってインプもボッコボコにしてくださいねええ〜」
周は汗をダラダラかいていた。この調子ではもし、女悪魔ハーレムができても、レミに一瞬にして蜃気楼として潰されてしまうだろう。
アキバ分校はそれほど大きくはなかったが、サーバなどに関してはセキュリティ構築やサーバダウンへの対策がきちんとしている。そしてパソコンルームとは別に、サーバルームが地下に設置されており、そこへの鍵やセキュリティパスは環菜や一部の教師しか知り得ないものであったが周が次々とハンドヘルドコンピュータに投入していたセキュリティ解除パスで開いていく。
「あとは頼むぜ、凶司!」
カンナからの連絡でアキバ分校に急行した湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)は、校内LANに自分のPCを接続させた。
(魔術のプログラム化なんて初耳だぞ・・・この僕を無視するとは、御神楽環菜め! ちょうどいい機会だ、悪魔召喚プログラムとやらを手に入れてやる。何かと使えそうだしな・・・御神楽環菜を襲わせるとか、女悪魔でハーレムとか・・・はっ!?)
「い、急ぎましょう大事になる前に!」
凶司はカンナから手を回して貰い、学園関係者に緊急事態と話してマスター権限をもらい、該当PCにリモートアクセスをかけた。遠隔操作でプログラムを手元に確保し、該当PCより削除・停止させようとトライするが、何者かが該当PCを操っているのか、阻止されてしまう。
「くっ…相手も相当のハッカーの腕を持っているようですね…ではこれではどうだ!」
カタカタカタと即行で凶司はプログラムを解析、逆用して送還プログラムを作り、送信をかける。
凶司とセラフ・ネフィリム(せらふ・ねふぃりむ)にインプが迫ってくるが、セラフはカービンの掃射で足止めを食らわせた。
樹月 刀真(きづき・とうま)と、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)も凶司の護衛に当たっている。
「何だ? 死にたいのかお前等」
刀真が鬼眼を使用し、血の色をした眼で睨むとインプたちは震え上がってしまう。
「悪魔、本の中だけだと思ってた」
月夜は、凶司をシャープシュータで護衛する。
「君には悪魔の力があるようですが、俺にも力がある! 我は汝、汝は我。汝我が心の海より出でし者、出ろっペ×ソぐはっ」
「刀真、それ以上は大人の事情でダメ」
月夜は思い切り、刀真の顎にアッパーカットをお見舞いした。
「お互いパートナーに苦労する、嫌じゃないけど」
月夜は淡々と、レミに語る。
「まったくね」
レミは嬉しそうに光条兵器を振るってインプを倒している周を見て、ため息をつく。
「どうせすぐ怪我して、ヒールしてあげなきゃいけないんだけど」
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