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デーモン氾濫!?

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デーモン氾濫!?

リアクション

 しかし、ドラゴンアーツでダメージを受けたサガンだったが、ぎろり、と片目でルナミネスを睨むとルナミネスは体を硬直させて、バターン! と床に倒れてしまう。
「ルナ! 大丈夫!? うそ、機晶姫なのにサガンの魔力がかかってしまうの!?」
 リカインは硬直し、カタカタ震えるルナミネスを引っ張って遮蔽物の影に隠れた。
 それには同じく機晶姫のルケト・ツーレも驚いてしまう。
「機晶姫とはいえ、血に該当する部分に影響が出るんだな…畜生」
「た、助けて…」
 ルケトは隠れた教室で突然、自分の後ろから聞こえた声に振り返った。
 教室の隅で、数名の女生徒がガタガタと震え、隠れていたのだ。
「逃げ遅れたの…」
 女生徒達を一見し、おかしな部分がないか、チェックをしたルケトは、彼女たちを避難させることにした。
「デゼル、ルー! こっちに生徒たちが残ってる!」
「何だって!? しかし、今の状況だとサガンに睨まれるのは確実だぜ…サガンが戦闘に入ったら、すぐに生徒たちを連れ出せ! 勿論あんたが背負ってな」
「ああ、解ってる!」
 次に駆け上がってきたイーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)が事情を察知したらしく、踊り場からありったけの発煙筒をサガンに向けて投げつけると、一瞬にして3階の通路は激しい煙幕に覆われてしまう。そこにサガンを足止めするためにイーオンが雷術を放つ。
「すまんな。みんな、死ぬよりはましと思ってくれ」
 一方デゼルや幸たちは丁度、教室内に隠れていたため、イーオンの雷術に当たる事は避けられた。
「無茶しやがる…!」
 そこにイーオンのパートナー、フェリークス・モルス(ふぇりーくす・もるす)が飛び込んでくる。
「私は味方だ。一般生徒たちはいるか!?」
「ここに数名!」
 デゼルとルケトがガタガタと震えている女子生徒を抱きかかえると、フェリークスの誘導で階下へ避難させようとしている横を、一人の隻眼の生徒が駆け抜けていく。
「おい! なにをしているんだ!?」
 周囲の制止も聞かぬその人物は、教導団の「デビルハッカーズ」の一員、レオンハルト・ルーヴェンドルフ(れおんはると・るーべんどるふ)その人であった。
「こりゃ好機であるな…よし、発煙筒の煙が消える前にパソコンルームに向かうぞ! ホストコンピュータを鹵獲し、教導団へ持ち帰る…それこそが我が使命。役に立って貰うぞ、蒼空学園!」
 その後ろ姿に不安を感じた幸も、パソコンルームへと駆けていく。
「もしかすると、あの者は蒼空学園の生徒ではないかも…もしかして、悪魔召還プログラムを狙っているんじゃ…止めなければ!」


 イーオンの発煙筒が底をついたころ、サガンがようやく体勢を立て直し、ゆらり、と煙の中から姿を現す。とは言え、まだ、煙は廊下に充満している状態だった。実体化して間もないせいか、サガンの体はまだ安定していないようだった。
「うむ、素晴らしい雷術ではあったぞ。ここには気骨のあるものが多いようじゃな…くく、面白い。かかってくるがよい。我は偉大なる王にして総統のサガン。そして33 の悪霊の軍勢を治める智慧富む者…我に命を差し出すのであれば、全能の智慧を授けよう。我からの智慧を欲する者がおるか? おるなら、今こそ名乗りをあげよ。我に引き裂かれる前に」
「俺です」
 譲葉 大和(ゆずりは・やまと)が遮蔽物の影に隠れたまま、サガンの申し出を受ける。
「姿を隠したままで、頼み事か」
「申し訳ありません」
 大和は姿を現すと、ちゃっとメガネをかけ直す。
「俺は死んでも治らない馬鹿です。治るなら命も惜しくありません…その前に俺にとって命よりも大事なものをサガン様に差し上げたいと思います」
「それはなんじゃ」
「メガネです」
 大和はメガネをすっと差し出す。その時、大和の瞳がギラリと不穏な光を放った。
「そのようなもの、我には必要ないわ。お前はホンモノのウツケじゃな」
「うるせえよ、このくそ悪魔」
 今までの丁寧な態度とはまったく違い、大和はいきなり機関銃を取り出して、サガンの目を目掛けてガガガガっとぶっ放す。そう、大和は伊達メガネS属性であったのだ。
「グギャア!」
「ヒャッハー!! まだまだだぜ!」
 光の精霊の光量を最大まで上昇させ、目つぶしをかけようとする。
「これってチャンスじゃないかしら!?」
 トイレから大きな姿見を取り外して持ってきていた荒巻 さけ(あらまき・さけ)が、サガンの背後に駆け込んで大和の光量を更に鏡を反射させて目つぶしの効果を増大させた。
「やるじゃねえか! さけ!」
 S属性が突出しすぎ、いつもの丁寧な口調が吹っ飛んでいる大和であった。
「弁償、させられないわよねえ…」
 さけは鏡を掲げながら、それを心配していた。
 さけを守ろうと、パートナーの信太の森 葛の葉(しのだのもり・くずのは)がサガンの注意をそらせるため、催涙スプレーをサガン目掛けて吹きかける。
 そのスキにヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)が、トイレの掃除道具から、バケツ、モップ、濡れ雑巾、液体洗剤等を持ち出してきて、液体洗剤をサガンにぶつけると、光条兵器の鎖を最大出力にし、そこに雷術流しでさらに発光させる。『元』結婚詐欺師の過去、その美貌で男を誘惑しては財産を根こそぎ奪ってきた経歴と真っ赤な美しい髪、そして素晴らしい肢体を持つヴェルチェは、サガンとの戦いを楽しんでいるようですらあった。
「悪魔サガンと言えども、こうも連続攻撃が続くとたいへんよね〜♪ とっとと終わらせて、悪魔召還プログラムでも持って帰りたいものだわ♪ 悪魔を自由に出来るプログラムなんて、パラ実の改造科に持ち帰ったら面白いかもしれないし♪」
「しゃらくさいわ…ええい、くそ」
 さすがのサガンも実体化して間がない上、もともとが悪魔。明るいところは得意ではない。
 そこに最愛の兄を魔物に殺された過去を持つ峰谷 恵(みねたに・けい)がサンダーブラストを発動させ、サガンにぶつける。
「悪魔だろうと魔王だろうと、人を殺すっていうならボクは許すつもりはないよ!」
「暴走しすぎないで下さい、恵」
エーファ・フトゥヌシエル(えーふぁ・ふとぅぬしえる)が恵とタイミングを合わせ、雷術を最大に繰り出す。
 次々、光と雷の攻撃で目にダメージを受けたサガンに、シルバ・フォード(しるば・ふぉーど)がライトブレードで斬りかかる。
「睨まれなきゃ、どうってことないだろ!」
「シルバ、調子に乗ってはダメですわ。慎重に!」
 と、雨宮 夏希(あまみや・なつき)がウォーハンマーでサガンの足元を狙い撃つと、サガンの体がぐらりと揺れた。
 シルバのライトブレードがサガンの右目をかすめた。
「ぐっ」
 さすがの地獄の総統であっても、これほど次から次への攻撃にはSP値が落ちてきてしまっているようだった。
「やったか!?」
 一瞬期待したシルバだったが、次の瞬間、驚愕の表情がシルバの顔面に浮かぶ。