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黒羊郷探訪(第2回/全3回)

リアクション公開中!

黒羊郷探訪(第2回/全3回)

リアクション


特別編 オークスバレーを死守せよ!

 オークスバレーの平和は俺達が守る!!
「パラミタ刑事シャンバラン!!」こと神代 正義(かみしろ・まさよし)
「教導団のジャックだ。宜しく」
「……闇の商人の佐野だ」
 いずれも各々の方面で濃ゆかったり渋かったりな活躍をしてきた面々だ。
 もう一人は、
「あの……初参加です。グロリアと申します。よろしく……」
「もうちょっと、派手に!!」
 シャンバランは張り切っている。
 だって……
「さあ、皆! チャンスだ!
 今、オークスバレーには俺達四人しかいない! もっと、目立とうぜ!!
 シャンバランダイナミィィィック!!!!悪は滅びろ!!」こと神代 正義(かみしろ・まさよし)
「教導団のジャックだ。宜しく」
「……ええと。闇の商人の佐野だ」
「あの、……初参加です! グロリアと申します!
 よろしく……」

「お、おい。私達がいるぞ」「俺達を誰か知っているか?」
 オークスバレーに居残る将ソフソゾルバルゲラだ。
「知らん」
「……やっぱりな」「……仕方あるまい。兵※のがまだ活躍してるくらいだもん」(※ソフソ・ゾルバルゲラ隊。第2章参照)}

 それから、
「あたしもここに登場するよ! 岩造隊長、このリアクションの流れからするとたぶん、今日中に到着できなさそうでごめんなさい。
 龍雷連隊の草薙 真矢(くさなぎ・まや)
 わかってないなぁ〜。
 あちゃ〜……。
 ……ダイジョウブ。
きっと」


the special program オークスバレーを守る四人の戦士たち

「いいさ……悔しくなんてないさ……皆楽しくやってればそれで……」
「えっ。シャンバラン? そ、そこからですか……さっきのは……」
 ともあれ遠征への集合時間に遅刻したシャンバランこと神代 正義(かみしろ・まさよし)
 寒い風の吹く、休業中の札のかかるプリモ温泉前でいじけ中だ。
「はいはいわかりましたから……興奮して眠れなかったから遅刻したって子どもですか?」
 呆れながらも慰める、大神 愛(おおかみ・あい)
 そこへ……ぞわぞわ。
 上空を覆い尽くし、飛んでいく黒い影。
「シャンバラン? あれは……」
 ぎゃぁぎゃぁ、けたたましく鳴き声。不穏な、影だ。
 神代はすぐさま危険を察知した。
「集落の皆が危ない!」
 突如、元気よく立ち上がると、神代は集落の方へ急行、「あ、シャンバラン。待ってください〜」愛も、急いで彼に付いていく。



 旧オークスバレー砦。
 カービンを肩にかつぎ、ジャック・フリート(じゃっく・ふりーと)
「騎凛教官殿の不在により、私達がここ旧オークスバレーの警護にあたることになった。
 お前達にとっては初陣となる」
 ジャックの指令を受けているのは、オーク戦以降ジャックと契約を交わした新しい機晶姫二体。
「見ての通りだ。すでに魔物の襲撃は始まっている。気合を入れろよ」
「了解です、ジャック!」
 意気揚々なのは、タクラマカン・パフェ(たくらまかん・ぱふぇ)。――正式名称TCLMK-ED1131.青い瞳。白に赤いパターンのボディスーツ。ネコ耳型ヘッドギアが特徴。(説明書より)
 女性型機晶姫だ。
 対して……
「はぁ……ついに戦闘に出されるのか……」
 見てくれは三メートルを越す戦闘ロボ型機晶姫からもれるため息。マスカレード・チキン(ますかれーど・ちきん)。――正式名称MSCRD-2038Type-β.ダークブルーの装甲にグリーンのモノアイが特徴。(説明書より)
 三人の機晶姫(*一人目はイルミナス・ルビーのこと)の中では最も戦闘能力が高い……とされるのだが、厳つい容姿からは想像も付かない程の……
「ニャー」
「ヒィィ!」
 びくっ。とっさに物陰に隠れるチキン。隠れられていないが……
 とにかく、戦闘能力は最も高いとされるが、仔猫の鳴き声にすらびびる引っ込み思案。今回は、戦闘スキルを磨くというより、本来的にはこのチキンの戦闘時の恐怖をどう克服すべきかが、……
「おまえ、ヘンな顔してるニャ」
「ネ、猫がしゃべったぁぁぁぁぁ!!」
 、……課題なのだが、いや、……遥かそれ以前の問題かも知れない。
 猫は、旧オークスバレーの守備に残っているニャオリ族の兵士だ。
「お前、オリ達と似てるニャ」「仲間だニャ」「仲間だニャ」
 ミャオリ兵は、パフェのネコ耳を指して言う。
「あら、お揃いですね♪」
「ヒィィ!」
 ジャック、「……」。
 訓練どころか、ストーリーが始まらない。
 さて、気を取り直して、
「タクラマカン、襲撃している魔物は?」
「解析中。……一つは鴉賊。現在、砦の上空一帯を飛行中。
 もう一つは、鯰賊。数は不明ですが、河川より勢力を拡大しています」
「よし、上空のカラスは私が撃ち落そう。お前達はナマズを……」
「ヌルヌルしたものは苦手です」
「っ……」
「あの、ジャックさん? 私は、グロリア・クレイン(ぐろりあ・くれいん)。今回から、教導団の任務に加わります」
 ロリ顔にナイスバディという反則的存在だ。
「あ、ああ。よろしく」
 グロリアの陰に隠れている、グロリアの機晶姫レイラ・リンジー(れいら・りんじー)。こちらは童顔の可愛い小型の機晶姫。
 ジャックの陰に隠れている、チキン。こそこそ。「マスカレード。挨拶ぐらいしてはどうだ?」「あ、あの…………………………コココンチチワ」
 レイラ、「……(Yes.)」
「ヒィィ!」
「指揮官のジャックさんに従います。私は民を守るべきだと、思います」情に厚いグロリアだ。「ナマズの方は、では私達が何とかしましょうか?」
「指揮官……?」
 ソフソ、「……」。ゾルバルゲラ、「……」
「わかった。ともかく、では、私達は上に向かう。下の方を、頼む。危なくなったら、すぐに砦に引き返すといい。
 民の救助には、東西の集落へすでに、シャンバランと闇商人という手練れが向かっている」
「オリ達も手を貸すぞ!」
「では、行きます! レイラ、にゃんこ、行きましょう」
 ジャックとグロリアは互いの武運を祈り、それぞれの戦いの場へ。



 【第四師団闇商人】の佐野 亮司(さの・りょうじ)。いつものように、仕入れのため集落へ向かっていたところ、突如魔物の大群に見舞われた。
 地域のために暗躍する佐野はすぐ、こう考え巡らせた。遠征軍が出たばかりのこのタイミングで、偶然魔物が大挙し押し寄せるとは考えにくい……となると、また誰かが裏で操っている可能性が高いか、これだけの数。……佐野は上空を見上げる。空の青が見えないほどの、黒。これだけの数をずっと潜伏させておくなんてそう簡単にできることだとは思えん。……まさか、最初からこっち狙いか? と、なると敵の真意は。
 佐野はそこを探る必要があると判断していた。
 だが、まずは民を避難させる必要がある。
 今日佐野の隣にいるのは、仕入れの帰りに温泉に連れてってもらえるというので一緒に来た向山 綾乃(むこうやま・あやの)。家事が全くできない亮司らの代わりに、普段は部屋の掃除や選択を任されている。が、まさか温泉どころか戦闘に巻き込まれることになるなんて……。
 同じく、(美容のために)温泉に入りにきた、ソル・レベンクロン(そる・れべんくろん)。美容どころじゃない。何だ、この醜い連中は。「お前に足りないもの、それは! 情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ! そして何よりもー! 美しさが足りない!!」メイスで、やたら鴉賊を打ち打ち落とす! 守護天使の彼の背には美しい白い翼。鴉賊は天敵かも知れない。汚くわめき散らし、襲いかかってくるカラスどもめ。ナルシストのソルには許せない状況だ。「お前に足りないもの、それは! 情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ! そして何よりもー! 美しさが足りない!!」
「ソ、ソル……後でもうすることがなくなるぞ……」
「大丈夫だよ。ボクにはこれがある」
 攻撃と防御の隙間を見つけては、鏡を見てうっとりするソル。……あぁ。ボクはどうしてこんなにも美しいんだろうか。……お前に足りないもの、それは! 情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ! そして何よりもー! 美しさが足りない!! ……あぁ。ボクはどうしてこんなにも美しいんだろうか。
「……」「……あ、亮司さん、ソルさん、何か来ましたよ」
「早速、新手か? ソル!」
 ……あぁ。ボクはどうしてこんなにも美しいんだろうか。……お前に足りないもの、それは! 情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ! そして何よりもー! 美しさが足りない!! ……あぁ。ボクはどうしてこんなにも美しいんだろうかどーーん
 川に転落するソル。
 ぶつかったのは、
 せ、戦車??
「オークのロカク戦車をりゅーらいのもとへ届けなきゃ! オークのロカク戦車をがんぞーたいちょーのもとへ届けなきゃ!」
 オークの鹵獲戦車。
 オークスバレー解放戦役を思い出して頂きたい。キングの出現に合わせて現れたオークのクイーン、ナイト、ビショップ、ルークといった手駒たち。その中のルークすなわちオーク・チャリオット。人間の骨で組み立てられたあのおぞましいオークの戦車だ。
 龍雷連隊の遅れてやってくるかっこいいヒーローこと草薙 真矢(くさなぎ・まや)は、恐るべきことに、大破したオークの人骨戦車を回収&改修して、これを龍雷連隊の兵器として再利用するべく日夜秘密裏に働いていたのだ。今、その成果がついに。
 草薙は、岩造隊長が前線で苦戦していることを心で感じ取り、一刻も早く岩造隊長のもとへ駆けつけるべく鹵獲戦車へと乗り込んだ。
 鴉賊、鯰賊の包囲網を突破し、オークスバレーから、三日月湖へ今、草薙が急行する! 「隊長、待ってて!」
「いや、貴様が待てい! 誰の許可あって戦線を離脱するか。
 今、オークスバレーの最高指揮官はこのゾルバルゲラだ! 命令だ早く、持ち場に戻れい!」
 戦車で突き進む草薙。
「○○××△△だから、△△××○○しかないんだっ! って、隊長が言ってた」
「ま、待て。何と言っておるかわからん。岩造は確かにそう言ったのか!」
「隊長が言ってたー!」
 どどーん
「うぷっ 溺れる、貴様、助けろ」
「……あぁ。ボクはどうしてこんなにも美しいんだろうか」
「えい、待たれい。オークスバレーの最高指揮官として留守を預かる、ソフソである。
 理由もなく、己の持ち場を離れてはいかん。さあ、まずは皆で力を合わせ、ここを守るのだ」
「機械は壊れても、また修理できる! 敵は死んでも、次の敵が出てくる! けど……」
「な、な……??」
 草薙は泣き出した。
「……けど、仲間は死んだら二度と戻らないのよ!!」
 どどーん
 龍雷連隊! 突撃せよ!
 こうしてオーク戦車を操舵し草薙は一両日かけて岩造のもとへ急行することになる。
 ナマズに寄ってたかられながら、そんなやり取りをソルは、
「……あぁ。ボクはどうしてこんなにも美しいんだろうか」
 ……見てもなかった。自分しか。



 川から、続々上がってくる鯰賊。
 グロリアにとっては初陣だ。
 鯰賊は、モリや短刀のような武器こそ手にもっているが、動きも遅く、ニャオリ兵の槍にかかって、すぐに倒れていく。が、如何せんその数は多い。
 グロリアの守る砦の入り口にもぞろぞろと迫ってくる。
 スキルの出し惜しみはできない! グロリアはスプレーショットで、ナマズどもを撃ち抜いていく。
 撃ち漏らしは、にゃんこが片付けてくれた。
 レイラは、……? 大丈夫……?!
 レイラは、「……」――グロリアの陰に隠れていた。
「あ、あれっ? まだ実戦は早かったのでしょうか??」



 砦の屋上階に上ったジャックとその機晶姫ら。
「……っと!」
 扉を開けざま、飛来した鴉賊が手槍を突き出してきた。
「ヒィィ!」
「マスカレード! 何している、出てこないか!」
 鍛えられた射撃の腕で、次々カラスどもを撃ち落すが、屋上は黒い羽で一杯。
 ようやく、パフェがカラスを振り払いジャックの傍へ駆けつける。
「タクラマカン、戦闘準備」
 パフェ、ネコ耳のヘッドギアから四つ目のバイザーを展開。
「戦闘準備完了……ジャック、指示をお願いします」
「マスカレード、お前は……あれ、どこ行った?」
「彼は裏で隠れています。ほら、あそこに」
 チキンは、まだ屋上に出てきていないどころか、屋内武器庫の奥に詰まれたジェリカンに身を隠している。……つもりらしい。
「さすがにあれでは丸見えですね」
 ここからでも、見える。
「あのチキンが……っ!!」
 ともあれ、
「ジャック!」
 襲い来る鴉賊を、切り付ける。
「ニャー!」「ニャー!」
 ニャオリ兵も加勢に駆けつけあちこちで打ち合っているが、相手はカラス。
 空から襲い来る分、ナマズよりは厄介だ。
「くっ。撤退しつつ戦うしかないか!」



 東の集落へと向かった佐野達。
 目下、住民を襲いつつある魔物達を、佐野は適者生存のスキルを放ち、驚きの歌を用い、ひとまずは退ける。
「怪我した方は、こちらへどうぞ!」
 綾乃が、負傷した人々の治療にあたる。
「あ、佐野さんの彼女?」
「え、えっと、違うんですよ……」
 綾乃は、佐野のことを恋愛ではなく親愛感情をもって見ている。
 佐野は……行くあてもなく行き倒れていた綾乃を保護してくれた、大切な人なのだ。
「ジュバルはいないの?」
「いるぞ」
「わっ」「どこ? どこだ?」
 ジュバル・シックルズ(じゅばる・しっくるず)は、戦いに備えあらかじめ光学迷彩で姿を消している。
 治療が終わると、佐野は戦えない者達を温泉へと避難させる。
 鍵は……「ピッキングで開ける」(「コラ――!!」(プリモ))



 西の集落では……
「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ……悪を倒せと俺を呼ぶ! 聞け悪党ども……俺は教導団のヒーロー! パラミタ刑事シャンバラン!!」
 シャンバランキタ―――――!!!!!
 民は、わき立った。
「子ども達は、こちらへ!」
「あ、ラブリーアイだ」
 神代は、集落に舞い降りてくる、鴉賊とチェインスマイトで打ち合う。
「メリークリスマス!」
「シャンバランサンタの格好してるよ」
「一日遅れですまない!(すみません、三日だ(今唯))
 久しぶりだな皆……ちゃんと俺の言った通り、この街を自分達の力で守ってきたんだな! 偉いぞ!」
 シャンバランは、子ども達一人一人にプレゼントを手渡し、
「これから俺は東の集落にも助けに行ってくるが……俺一人ではこの集落、いや渓谷を守りきれないかもしれない。どうか力を貸してくれないか?」
「教導団が、我々民をオークの手から救ってくれたのだ。
 今度は、我々が立ち上がり、この峡谷を守りきるとき!」
「おう」「やったるぜ」「皆、シャンバランに続け!」
 西の集落から魔物を追い払うと、シャンバランは民を率い、東の集落にも向かった。
 今度は愛が頭を下げて民に呼びかける。
「お願いします! 自分の事で精一杯かもしれませんけど……協力できるときにしないと守りたいモノも守れないことがあるんです!」
 東の集落の民も立ち上がると、村を襲う鴉、鯰の群れを一掃したのであった。
「むうう。あとは、砦か。しつこく群がっているようだな。ラブリーアイちゃん、行くぞ!」
「シャンバラン、待ってー!」



 佐野は、ジュバルと鉱山へ入った。
 鉱山は未だ、再開発の目途や具体的な計画は立っておらず、休鉱状態にある。
 ジュバルは尚、光学迷彩で不意打ちに備えるが……(今日は最後までカモノハシの姿は見れないのか……)
 鉱山の中は静まり返っており、敵が潜んでいる様子も、また、先の賊どもが侵入している様子もなかった。
「となると、狙いは何だったのだろう……。
 統率も取れていないただの賊……にしては、やはりタイミングが偶然すぎるし。
 しかしもし、これからも、遠征の留守にこうして本拠であるこの旧オークスバレーが襲撃の脅威にさらされる、ということであれば、俺たち第四師団は、それなりの防備をここへ割かなければいけない、ということになる。……そうか、そこが敵の狙いか?」


 ともあれ、今回はこの四人の活躍によって、見事旧オークスバレーは守られた。
 四人は、オークスバレーの四守護神と呼ばれることになる。