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【十二の星の華】シャンバラを守護する者

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【十二の星の華】シャンバラを守護する者
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リアクション

「……安全なのは、あっち……」
 ノア・ナファイレ(のあ・なふぁいれ)は動ける人を見つけては避難場所を指差し誘導している。
「そこ! 危ないから家屋から出来るだけ離れて避難しろ!」
 燃え落ちて行く自分達の家を眺めながら移動している男の子をセレ・ハービデンス(せれ・はーびでんす)が注意していた。
 しかし、その注意が少し遅かった。
 呆然と見ていた男の子の上へと屋根の一部が落ちてくる。
 男の子はあまりの事に声も出ず、足も動かない。
「危ない!」
 セレが急いで向かったが間に合わず屋根は男の子を覆い、見えなくしてしまった。
 が、何やら瓦礫がもぞもぞと動いている。
「だ、大丈夫!?」
 慌てて、駆けより、瓦礫をどけるとそこには、間一髪で滑り込んだ姫矢 涼(ひめや・りょう)が男の子に覆いかぶさるようにして守っていた。
「ふぅ……危なかった……。大丈夫か? どこも怪我してないか!?」
 涼は自分の腕の中にいる子供に話しかけると、男の子はあまりにびっくりして声が出ないようだ。
 瓦礫をセレにどかしてもらい、瓦礫の中から出ると男の子はやっと声を上げて泣きだした。
「もうボーっとしてちゃダメだぞ? 危ないからな? 家族も心配すんだから」
 涼は自分が体験した残される者の辛さを言葉に込めると、男の子は涼の腕の中で涙でぐしょぐしょになりながら、何度も頷いていた。
「うっし! 歩けるか?」
 涼は男の子を立たせると、ススを払ってやる。
「うん……だいじょうぶ! こわい顔のおにいちゃん、ありがとう!」
「あ、ああ、良いってことよ! それより、あっちにいるちょっと眠そうな顔した人が差してる安全な場所に避難だ。行けるか?」
 怖い顔と言われたのが少しグサッときているようだが、なんとか誘導すると男の子は近くを通った大人の村人が一緒に行ってくれた。
「涼……」
 男の子に手を振って見送っていると後ろからセレの声が聞こえた。
「ああ、さっきは瓦礫どけてくれて助か――」
「誘導って役目があるお前がケガしたら、意味がないんだぞ!」
「いや、それはそうだが――」
「あたし……心臓が止まるかと思ったんだから……」
 涼の服をぎゅっと掴んでうつむいてしまった。
「悪かった、気を付ける」
「うん……」
 セレが顔を上げるとそこにはいつもの男っぽい雰囲気よりも可愛らしい1人の女の子の表情がそこにはあった。
「……これで十分……」
「いってーーーーっ!」
 ノアが近づいて来たと思ったら、涼がこしらえてしまった腕と足の火傷に火傷用の塗り薬を塗ったくった。
 ポーカーフェイスで解りづらいが、かなり心配していたようだ。
 涼の傷の手当てが終わると3人は誘導へと戻って行ったのだった。


 百合園女学院から火事の報せを知って駆けつけたロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)は村の外でどこが安全かをチェックしていた。
「何が一番良い方法なのかを考えないといけませんよね」
 救護テントの位置を確認、ホイップ達の氷術を使った大掛かりな消火活動も目視出来た。
 氷術を使った消火に自分が巻き込まれるわけにはいかない。
「よしっ! 行きます!」
 自分に気合を入れると火の勢いが強く、悲鳴が聞こえてくる方へと走り出した。
 村の東側では納屋を中心に業火が暴れ回っていた。
 ロザリンドは現場に着くと直ぐに歩ける人達を救護テントの方向を指差し、誘導を始めた。
「テントまで行けば安全です! 頑張って下さい!」
 炎の熱で額から汗が流れる。
「僕達も誘導手伝うよ!」
 突然、横から声を掛けられた。
 そこにいたのは、たまたま近くを通った羽鳥 浩人(はとり・ひろと)フィサリア・リリス(ふぃさりあ・りりす)だ。
「はい! お願いします!」
 3人は協力してこの辺りにいる人達を誘導していく。
 少し遠くからは一斉に氷術を掛ける為の掛け声が聞こえてくる。
 しばらくするとこの近辺の人達はほとんど避難が完了したようだ。
 もう走っている人物を見かけない。
「もうこの辺りは避難する人いないのかな?」
 フィサリアが避難をしてる最中にこけてしまった若者にヒールを掛けながら言う。
「誰か残ってる人はいないーっ!?」
 浩人は大声で呼びかける。
「い、いる……たすけ……」
 すると、納屋の近くの炎の中から、か細い声が聞こえてきた。
 誘導していた時に声を掛けたときは声がしなかったのは気絶していたのかもしれない。
 フィサリアはヒールが完了すると若者に救護テントの場所を教え、ロザリンドと浩人の側へと駆け寄った。
「どうやって中に入るの?」
 あまりの炎とどこらへんにいるのかよくわからない村人。
 武器で瓦礫と一緒に炎を吹き飛ばしたら、下手すれば村人も巻き込んでしまうかもしれない。
「痛いのも、熱いのも嫌だけど……でも、ここで頑張れば助かる人がいるんだ! うぅぅぅ……火なんて怖くないっ!!」
 そう叫びながら炎の中へと突っ込んでいったのは鳳明だ。
 近くの井戸で水を被り、心頭滅却で耐性を付けてからの行動のようだ。
 3人は突然の事にびっくりしていたが、すばらくすると中から鳳明の声が聞こえた。
「こ、ここにいるよっ! 炎と瓦礫を吹き飛ばして欲しいの!」
 ロザリンドは声にすぐ反応し、光条兵器の巨大ランスで鳳明の声がした場所から外れたところを吹き飛ばし、道を作った。
 すると中からおばあちゃんを背負った鳳明が出てきた。
 すでに水が乾いており、中の炎がどれだけ凄かったかを物語っていた。
 火傷も酷いようだが、今は気になっていない。
 きっと全てが終わり、安心したら痛みがくるだろう。
 背中のおばあちゃんは気絶してしまっているが、息はまだある。
「すぐにヒールを!」
 フィサリアが応急処置でヒールを掛け、ロザリンドはナーシングを使用した。
「早くテントに連れて行った方がよさそうだな」
 浩人の言葉に頷き、鳳明が少し遠くに止めていたバイクに乗せテントへと運んで行った。
 3人はまだこの辺りに人がいるかもしれないと大声を出しながら探し始めた。


 買ったばかりのパンを救護テントに置かせてもらった皐月と七日は燃え盛る家の前にいた。
「早くいってくるのです!」
 七日は皐月のお尻を蹴り飛ばした。
 バランスを崩し、皐月はそのまま家の中へと入って行った。
「まったく……七日に何かあったら困る、とか……生意気です」
 言われた事を呟くと顔が赤くなっていく。
 そんな場合ではない事は十分わかってはいるのだが、どうしようもない。
 家の中では氷術で道を切り開きながら誰か取り残された人がいないか探している。
「あっちー……おーーい! 誰かいるかーー?」
 エンデュアで多少の熱さなら平気なのだが、こうも熱いと本当に効いているのか疑いたくもなる。
 叫ぶが返事はない。
 1つ1つ部屋を確認していくが、人の気配はないようだ。
 全ての部屋の確認が終わると外へ出ようと駆けだした。
 突然、横からミシミシと嫌な音が聞こえてきた。
 皐月がそちらへと目をやると柱に亀裂が入り、まさに今倒れようとしているところだった。
「あぁ……こりゃ、やばいわ」
 思いっきり、皐月の方へと向かって倒れてくる。
 横へと避けようとしたが、間に合わない。
 倒れてきた燃えている柱は皐月の右肩へと直撃した。
「っつーーーっ!」
 自分の肩から嫌な音が聞こえた気がしたが、とりあえず外へとそのまま走っていった。
 なんとか外へと出ると、七日がびっくりした顔で近寄って来た。
 顔はススだらけだし、青くなっている。
 肩を押さえているのを発見した七日は急いで、ヒールを使用する。
「すまねぇ……でも、誰もいなくて良かった」
「グズ過ぎです、皐月」
 そう言いながらも、心配した表情で一所懸命にやってくれている。
 肩はどうにか動かせるまでには回復した。
 動けるようになったのをチェックしてから逃げ遅れた人を探しに行ったのだった。