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【十二の星の華】シャンバラを守護する者

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【十二の星の華】シャンバラを守護する者
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第7章


 消火が終わるとホイップはエヴァの箒から降りた。
「ホイップちゃん、氷術連続で疲れましたよね? ボクのアリスキッスで元気になるです〜」
「んっ!?」
 駆けよったヴァーナーは突然の事にびっくりしていたホイップの唇を奪う形となった。
「何!? ホイップ、SP切れか!」
 それを見たウィルネストはすかさずホイップの手を取りアリスキッスをお見舞いした。
「っ!?」
 なんだか凄い状況になっている。
「大丈夫ですかーーー!?」
 そこへ、障害物を光条兵器である5メートル近い巨大ランスでふっ飛ばしながらやってきたのはロザリンドだ。
 どうやら最後まで村の中に残っていたホイップ達を心配して来てくれたようだ。
「…………なんだか、お邪魔ですか?」
「アリスキッスで回復してただけですよ?」
「うん、邪魔!」
 ヴァーナーは素直に返し、ウィルネストもまた素直に返したのだった。
 すぐにウィルネストはヨヤにホイップから引っぺがされた。
「えっと、その……ここまで心配して来てくれてありがとう」
 ホイップはワタワタしながら、ロザリンドへとお礼を言った。
「いえ、普通の事ですよ」
 ロザリンドは心なしか顔が赤い。
 凄いモノを見てしまったと思っているのだろう。
 ロザリンドが障害物を全て吹っ飛ばして来てくれたおかげで村の皆や救助活動をしていた皆がいるテントまで一直線に到着した。

 テントへと到着すると待ち構えていた人物がいた。
「あなたが今回の事件で皆に連絡をした、ホイップですわねっ!」
 鬼の形相で迫ってきたのは珠樹だ。
「へっ? うん、そうだけど――」
「あなたが犯人ですわね!」
 ホイップの胸倉掴んでガクガク揺さぶり続ける。
「さあ、キリキリお吐きになって!!」
「待った! ストップ! ストップ!」
 見兼ねたミレイユが珠樹を制止した。
「あ、ら……? 我ってば、また取り乱して……申し訳ありませんですわ」
 落ち着きを取り戻すと珠樹はしおらしく謝った。
「ううん、大丈夫だよ」
「で、あなたが犯人ですわね?」
 珠樹は再度同じ質問をした。
「ううん、違うよ?」
「嘘おっしゃい! あなたが犯人だと言ってましたわ!」
 珠樹のこの言葉に近くにいた火事に疑問を抱いていた皆が注目した。
「へぇ……それは一体誰が言ったんだ?」
 輪廻が珠樹達に近づき聞く。
「挙動不審だった弟を探してるとかいう、ぽっちゃりした中年男性でしたわ!」
 珠樹は告げるとまたホイップに食ってかかろうとする。
「……それって、火事の前日うろいついていた人物だと村人から聞いたが?」
「はい?」
 珠樹はホイップの胸倉を掴もうとしていた手を止めた。
「空京にある薬屋のおやじ……が、よく似た人物としてあがっていたところだ」
「どういうことですの?」
 マイトの言葉をさらに聞き返す。
「やはり薬屋のおやじですか」
 刀真は確信したように言う。
「この火事の応援要請からして変でしたから疑ってはいましたが……」
 そう言うと、刀真はリリがタイマーと豆電球を発見していた事を報告する。
 洋兵もそれについては、こっちも一緒だったと言う。
 そんな話をしていると薬屋のおやじを数日前に目撃したとされる青年が名乗り出てくれた。
「夜……だったかな、一緒にいた奴としゃべりながら歩いてた時にすれ違ったんだ。で、ティセラとかいう奴が女王になるのは嫌だとかいう話しを聞かれた途端、物凄い形相でこっちを睨んできたんだ……」
 この話しを聞き、皆が固まった。
「どうやらいっぱい食わされたようですわね……本当に申し訳ありませんでしたわ」
 珠樹はホイップに深々と頭を下げた。
「ううん、そんな状態じゃあ疑って当然だと思うよ? だから気にしないで?」
 2人はふふっと笑い合った。
(……ティセラ……)
 ホイップは心の中だけで呟いた。
 とりあえず、皆でおやじを探す事となった。

「ホイップさん」
 皆がおやじを探しに行く中、ホイップに話しかけてきたのはミレイユだ。
「あ、さっきは止めてくれてありがとう!」
「凄い剣幕だったもんね。あ、ちょっと良い?」
「ん?」
 ミレイユは断りを入れるとホイップの腕にあるエルお手製ブレスレットを見つめた。
「どうかした?」
「エルさんが、友達に相談してどんな石を選んだら良いかとか凄く悩んで作ってたものだから、完成品を見てみたくて」
「そ、そうだったの?」
 顔を赤くしながら答える。
「うん! 見せてくれてありがとう! ワタシも探しに行って来るね!」
 そう言うとミレイユは去って行ったのだった。

「まだこの辺りに居るのか?」
 武尊は殺気看破を使用しながら言った。
「う〜ん……とにかく、この周囲にはいなさそうですね」
 シーリルは少し離れたところでディテクトエビルを使いながら首を捻った。

 テントから少し離れた場所。
 ここには残り火がないかチェックをしている風天の姿があった。
「大丈夫そうですね――わっ、すみません」
 疲れていたのか、人が居たのに気付かずぶつかってしまった。
「いや」
 短く返すと走り去ってしまった。
「?」
 姿が見えなくなったと思ったら、ちょっと奥の草むらでバイクの走る音が聞こえた。