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【十二の星の華】シャンバラを守護する者

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【十二の星の華】シャンバラを守護する者
【十二の星の華】シャンバラを守護する者 【十二の星の華】シャンバラを守護する者

リアクション

「助けの必要な人はいるっスかー!? 大丈夫な人はそのままあっちのテントまで行くっスよ!!」
 サレン・シルフィーユ(されん・しるふぃーゆ)は大声を出し、誘導をこなしていく。
「……この中にはいない……」
「みたいだな! ルシア、次行こうぜ!」
 その近くではセルシア・フォートゥナ(せるしあ・ふぉーとぅな)ウィンディア・サダルファス(うぃんでぃあ・さだるふぁす)が一軒一軒、建物の中を探して逃げ遅れた人がいないかチェックしている。
 次の扉を開けると、そこには3人の子供が炎の中、恐怖で動くことが出来ずにいるのが発見出来た。
「大丈夫……すぐ、助けるから……」
 ルシアが声を掛けるが、ぎゅっと固まっていて言葉が届いていない。
「私も助太刀するっスよ!!」
 動きがあったとみるや、サレンも駆けつけてくれたのだ。
 子供達の周り以外は炎に飲み込まれてしまっている。
 建物自体もいつ倒壊してもおかしくない。
 心頭滅却によって、炎の耐性がついてるとはいえ、この炎の勢いは危険だ。
 入れば一瞬にして燃えカスになってしまいそうだ。
 よく見ると、一番大きい子が他の2人を小声で励ましている。
「いくぜ! オレの氷術で少しは静まれ、炎!」
 ウィンディアの放つ氷術で、直ぐ側だけは火が少しだけおさまった。
「……ウィン、頑張って……」
「おうっ! もういっちょっ!」
 セルシアの応援を受け、次々氷術を放っていく。
「これなら行けるっス!」
 そういうとサレンはまだ完全には消えていない炎の中へと入って行き、子供達を3人背負い出てきた。
「はぁ……、はぁ、体力があるのが役に立って良かったっス!」
「……大丈夫?」
 建物から出ると、少し離れたところに3人を下ろし、セルシアがヒールを使用する。
 すると後ろでは先ほどの家が崩れ落ちた。
「危機一髪だったな」
 ウィンディアが呟く。
「……うっ……」
 一番体格の良い男の子の意識が戻ったようだ。
 今まで2人に声を掛けていたのは無意識でやっていたのだ。
 しかし、あとの2人は――。
「……」
 ヒールを使っていたセルシアの手が止まり、意識の戻った子へとキュアポイゾンを掛けだした。
 もう、息が無かったのだ。
「……ノップとアーシヤ……は?」
 男の子は虚ろな目であとの2人を探す。
 その目が息絶えてしまった2人で止まり、瞳からはゆるゆると涙が流れた。
「……偉かったな」
 ウィンディアは優しく生きている子の頭へと手を持っていき、撫でてやる。
「守れなかっ……た」
 そう言うと、男の子はまた意識を手放したのだった。
「このままじゃ、やばいっス! 早くテントでちゃんとした治療をしてもらった方が良いっス!」
「……うん……ちゃんと2人も連れて行ってあげるからね……」
 聞こえてはいないかもしれないが、セルシアはそう男の子に告げたのだった。
 そして、セルシアとウィンディアの2人でテントまで連れて行った。
「ヒーローが泣く時は……全てが終わってからっス!」
 うつむいた顔を上げるとサレンは誘導を続けた。


「あっちの出火現場からはタイマーと豆電球が見つかった……と」
 洋兵はロウからのメールを読み、顔をしかめた。
「洋兵さん?」
 入ろうとしている納屋を氷術で消火しているユーディットが、その様子に気が付き声を掛けた。
「ちっ……タイマーと豆電球とくれば、時限出火装置か。ともかくここの確認で解る……」
 ユーディットの声はあまり聞こえていないようだ。
 どんどん険しい表情に変わっていく。
「洋兵さん、消火が終わりました」
 洋兵は壊れかけた扉を蹴り飛ばすと、中へと入っていく。
 真っ黒く焦げた所へと一直線に向かっていき、立ち止まった。
 その足元にはタイマーと豆電球らしき物がある。
 それを手に取ると軽く握った。
 氷術によって冷やされた為か、簡単にクズへと変わっていった。
「村全体規模の火事を起こす犯人のメリット。人々の目を目的のものから遠ざけることか? 昔、似たような陽動作戦を過激派共から受けたことがあるが……嫌な事思い出させやがる……」
 隣ではいつもとは全く違う表情にユーディットはキュンとしていた。
 とりあえず、考えはまだ確定ではないことから発見出来たものだけを皆にメールで送って知らせた。
 そして、他の出火場所へと向かっていったのだった。


「誰かーーーっ! いないのっ!? 私はまだここにいるってばっ!!」
 家の中からは女性の悲鳴に近い声が聞こえてくる。
「今行きます! もう少しの間だけ頑張って下さい!」
 その声に御凪 真人(みなぎ・まこと)が家の外から答えた。
「それでは、俺とセルファで中へと突入します。外からの援護お願いします」
「任せて!」
 真人の言葉に神和 綺人(かんなぎ・あやと)が頷いた。
「ファイアプロテクト掛けるから!」
 そう言うと、セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)はすぐに発動させ、3人は炎への耐性を手に入れた。
 ここに来るまでに見つけた井戸で水も被っている。
 真冬の水は冷たいはずなのだが、全く気にしている様子はなかった。
 扉を開けると熱気と煙が大量に出てきた。
 女性は階段の上にいる。
「ちょっと! 早く助けないさいよっ! うぇ……げほっ!」
 声を出した途端に煙が口から入り、喉に熱が張り付いたようだ。
 うずくまって咳き込んでいる。
「セルファ!」
「うんっ!」
 セルファが先に中へと入り、炎は後ろから来ている真人が火術で操作し押さえたところを氷術で消火し、道を作っていく。
 セルファが階段を駆けあがり、女性へと手を伸ばす。
「じ、自分で立てるわよっ!」
 そう言うと、咳き込みながら自分の足で立ち上がろうとするのだが、よろけてしまった。
「おっと……」
 その体を真人が支え、まるでダンスをしているかのような体勢になってしまった。
「面倒です。そのまま動かないでください」
 真人は軽々と女性をお姫様抱っこして、安心してほしいと微笑む。
 女性が落ち着いたところで階段を下りて行く。
 セルファは続いて降りて行った。
 階段を下りた、その瞬間、上から軋む音がし、天井が落ちてきた。
「出番だね!」
 綺人は奈落の鉄鎖を使い、真人達の周囲だけ瓦礫が降りかからないよう重力を操作する。
 が、やはり無理があったようだ。
 そこまでの事は出来ないと悟ると妖刀村雨丸で真人達の真上だけなんとか切りつけた。
 木で出来た天井で助かったようだ。
 そのまま、さきほど作った道を戻り、なんとか家の外まで到着した。
「っはぁ〜……」
 綺人は無事を確認すると、長く息を吐いた。
 真人は女性を下ろし、火傷や煙によって体に異変はないか確かめたが、大丈夫なようだ。
「あ、有難う。助けてくれたお礼は言うわ。でも、遅過ぎよっ! もう少しで死ぬところだったわっ!!」
 女性は居丈高に言うと、鼻を鳴らし偉そうだ。
「ちょっと! 助けてもらったのにその態度――」
 真人はセルファの口の前に手をやると、にこりと女性に笑いかけた。
「もう大丈夫なんですよ? そこまで気を張らなくても、もう平気です」
「そ、そんな……こと……」
 図星だったらしく、安心したのか目から雫がこぼれた。
 よしよしと真人が頭をなでてやる。
「あなた……彼女とか決まった人はいるの?」
「はい?」
「なっ!!!」
 まあ、危機を助けてもらった人に惚れるのはよくある話しだ。
「え〜っと、まだ助けなければいけない人がいると思うので……僕が安全な場所まで案内するね」
 綺人はぽかんとしてしまっている真人と真っ赤になっているセルファでは無理だろうと名乗り出たのだ。
(ホイップさん……無茶してないと良いな)
 そして、2人にあとの救助を任せ、まだ何か言いたげな女性を連れて綺人はテントへと向かっていった。
 ホイップという友人を心配しながら。


 テントの近くではルイとリアが軽傷の人の手当てをしながら村民に聞き込みをしていた。
「では、突然納屋から火が出た……と?」
「ああ、そうなんだ……他の場所でも同時に火が出たんじゃないかな……皆いっきに騒ぎ出したし……」
 ヒールを使いながらの会話が終了すると村人は立ち去ろうとする。
「待って下さい! 貴方にも……ルイ! スマイル! これで元気百倍です!」
 引きとめるとキラリと光る歯を見せ、笑顔を向けた。
「……あり……がとう」
 微妙な顔でお礼を言うと、急ぎ足で立ち去った。
「……ルイ、スマイルは……いや、もういいや」
 リアはスマイルについて突っ込もうと思ったがやめた。
「それより、ほぼ同時に出火したと言う情報は結構出て来ましたね」
「そうだな。出火現場を調べてくれた人達の情報によると、なにやらタイマーと豆電球が発見されているようだし」
「ええ、どの出火現場からも見つかっているようですね」
「……人為的な火事……で、確定か?」
「……あまり気分の良いものではありませんが……そうでしょうね」
 ルイとリアは悲しげな表情を作る。
「行かせてくれ! 俺の……俺の……婚約指輪がーーーっ! 明日渡そうと思っていたんだ! 行かせてくれーーっ!」
「ダメでござるっ!」
 2人の側では1人の男性が椿 薫(つばき・かおる)によって村に入ろうとするのを止められていた。
「自分が行くでござる。だから、大人しく待っているでござる」
「ほ、本当か!?」
 薫は力強く頷く。
「それで、一体どこにあって、どういう形状のものでござるか?」
「有難う!! 村の西側にある井戸の側の家で、入口にゴルフ道具が沢山積まれてる。1階の一番手前の部屋にある机の一番上に入ってる。白い普通の指輪の箱に入ってるからすぐに解るはずだ」
「了解でござる。大人しく待ってるでござるよ? 火傷もしているようでござるし、早く治療もしてもらうでござる」
「では、ワタシが治療をしておきましょう」
 やりとりを聞いていたルイが素早く治療に取り掛かってくれた。
「行ってくるでござる!」
「気を付けて行くんだぞ」
 薫にリアが答えると、元気よく飛び出していった。
「……あまり他人とは思えな……ああ」
 薫が行ったあと、リアは呟いたがすぐに思い当たった。
 ルイと同じで頭がツルツルなのだ。
 その後、無事に指輪を発見出来た薫は火傷をしていたが、ルイにスマイル付きで治療してもらったのだった。


(こんな辺鄙な村を燃やしてなんの利があるのか。また俺達の誰かが十二星華の1人で、それを誘い出す為のダシに使われたのか? しかし、何故俺達の目の前で行う必要がある……挑発か? それとも……)
「た、助けてくれ!」
「大丈夫か!?」
 思考をいったん止め、レン・オズワルド(れん・おずわるど)は前から来た声を掛けてきた男性に近づく。
 男性は女性を姫抱っこしており、女性の意識はないようだ。
 頬がうっすらピンクになっている。
「ヤバイな……」
「そうなんだ! もうずっと意識がない! 気持ち悪いと言っていたんだが、急に倒れて……どうしたらいい!?」
 男性は泣きながら、ぎゅっと強く抱き寄せた。
「待っていろ! すぐ近くに治療の出来る奴らがいる!」
 言うとレンは走り出した。
 道を横に入るとすぐに目当ての人物達を発見した。
「来てくれ! 急ぎだ!」
 レンの言葉にそこにいた者達が反応した。
 治療が一段落していたケイラ・ジェシータ(けいら・じぇしーた)にSPリチャージを掛けていた御薗井 響子(みそのい・きょうこ)と、その周りの熱気を押さえる為に氷術を使用していたミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)シェイド・クレイン(しぇいど・くれいん)だ。
 4人はレンの後を追い、治療の必要な者達の元へと到着した。
「大丈夫ですか!?」
 ケイラが女性に話しかけるが、やはり反応はない。
「今、治しますから頑張って下さい!」
 ケイラはすぐにキュアポイゾンを使うが、なかなか頬の色が戻らない。
 この辺りにも炎が迫って来ている。
 煙が多いのだ。
「すぐに冷やすからね!」
「ケイラさんも頑張って下さい」
 ミレイユとシェイドは同時に言うと、お互いに頷き合い別々に近くを消火して回る。
 響子は周りに他の助けを求める人がいないかを探し始めた。
「……人影なし」
 きっちり指差し確認もしているので、見落としはほとんどなさそうだ。
 ケイラがもう一度キュアポイゾンを使用し、やっと顔色が戻ってきた。
 次にヒールを女性へと使うと、意識は戻っていないが、峠は越えられたようだ。
「これでなんとか……」
「よ、良かった……本当に良かった!」
 男性は心底ほっとしたような表情をした。
「でも、まだ安心はできません。早く救護テントへと運んだ方が良いです。ここに居てはまた煙を吸ってしまいますし、熱で体力が奪われます」
「はいっ!」
「……こちらです」
 響子は女性を抱いたままの男性をテントの方へと案内していった。
「流石だな」
 レンがケイラに話しかける。
「大丈夫だった!?」
 ミレイユがある程度消火を済ませ、近づいて来た。
「はい、多分、大丈夫だと思います」
 ケイラは笑顔を向けたのだった。