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リアクション
■
クラーク 波音(くらーく・はのん)と彼女のパートナーであるアンナ・アシュボード(あんな・あしゅぼーど)とララ・シュピリ(らら・しゅぴり)は、レティーフに囚われたプットを救出しようと、作戦を密かに立てていた。
アンナとララがレティーフを陽動し、その隙を見て、波音がレティーフの後ろから空飛ぶ箒で可能な限り素早く飛行し接近を狙うといったものだ。
「いい? アンナ、ララ。作戦通りばっちりやるのよっ!」
「了解! 波音ちゃん、ララちゃん、頑張りましょうっ!」
「ララも頑張るんだもん! そんでねそんでね、ララの子守唄でゴブリンを眠らせて、2人をしっかりサーポートしちゃうんだもん☆」
ララは満面の笑みで言うと、波音とアンナと一緒に乱戦の中へと進んで行った。
「んっふっふ〜♪ スーパーミラクル全開でいっちゃうよ〜!」
波音は機嫌よく、乱戦の中へ足を踏み入れたものの、数秒も経たないうちに絶句した。
そこには3人の想像をはるかに上回る光景が広がっていたのだ。ゴブリンが立ちまわる度、砂煙が巻き起こり、怒声と悲鳴、銃弾のめり込む音や剣がはじき返される音がほど近いところから聞こえてきた。
「これじゃあ、レティーフのところまではなかなか行けないわ……」
波音が困った顔をしたのを見て、ララは子守唄を歌い出した。
一瞬、ゴブリンの動きが止まったように見えたものの、すぐにゴブリンたちはいつも通りの動きを取り戻す。
「きっ、効かないのーっ!?」
焦ったララは波音にしがみつく。
「大丈夫よ。ララ。安心しなさい」
優しく諭すように波音は行ったが、内心焦っていた。
――どういうことよ……!?
「これでは、作戦通りには……」
アンナも不安そうな顔をして、波音を見ている。
「大丈夫ですっ! 一緒に戦いましょう!」
自分たちの立てた作戦が実行出来ないことに不安を隠しきれない波音たちに声をかけたのは、波音たちのすぐ近くで戦っていたビン底レンズの眼鏡が特徴的なナイトの 六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)だった。そのかよわそうな外見とは裏腹に彼女の繰り出す一撃は力強い。ゴブリンは優希の攻撃にのたうち、その場に倒れ伏した。
「子守唄は効かないんです! このゴブリンたちはレティーフにかなり訓練されているようなんです! そこら辺にいるゴブリンたちとはわけが違いますから、気を付けて下さいっ!」
「そうなのね! ありがとうっ!」
波音は優希にお礼を言うと、自分に銃口を向けているゴブリンのライフル目がけて、雷術を放った。感電の要領で鋭い痛みがライフルを伝い、ゴブリンはライフルを手から滑り落ちさせる。
そのすぐ近くでは優希がポニーテールと巨乳を揺らしながら戦っていた。彼女のパートナーであるアレクセイ・ヴァングライド(あれくせい・う゛ぁんぐらいど)も彼女にゴブリンが奇襲をかけないように上手く間合いを取りながら、戦っている。
彼はトレジャーセンスを使い、レティーフの居場所を探して当てたものの、自分たちのいる場所がレティーフの場所とは遠かった為、ゴブリンと戦いながら、少しずつレティーフに近付いていた。
――レティーフのところへ行けば、人質になっているプットの救出もすることが出来るんだが……。
彼はそう思い、ちらりと自分の盾を持つ手を見た。
アレクセイはクイーン・ヴァンガード本部から閃光弾を貰い、その閃光弾をスイッチで起爆出来るようにし、盾に仕込んでいたのだ。勿論、出来る限り盾の装飾となじむ様にしてあるので、戦闘に支障はなかった。起爆スイッチは盾を持っている方の手に隠し持っているので、時折視線がそちらへ向かう。誤って押してしまっては元も子もないからだ。
「アレクさん、大丈夫ですか!?」
ゴブリンと対峙している最中、偶然にも背中に合わせになった優希はアレクセイに問う。
「俺様がゴブリン程度に手こずるわけがないだろ。自分の心配をしろ、優希!」
アレクセイは言うと、ゴブリンたちにバニッシュを放ったのだった。
■
「覚悟っ!」
イーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)は叫ぶと同時に1体のゴブリン目がけて氷術を解き放つ。ゴブリンは断末魔に似た叫びを上げて、その場に倒れ伏した。ゴブリンが氷の刃に貫かれるとほぼ同時に次の氷術が解き放たった。それを彼のパートナーであるフィーネ・クラヴィス(ふぃーね・くらびす)はその氷の一部を火術で蒸発させ、水蒸気を大量に発生させた。瞬時に視界が悪くなり、ゴブリンたちの動きが鈍る。そこへイーオンのもう1人のパートナーであるアルゲオ・メルム(あるげお・めるむ)が、バーストダッシュをかけつつも、闇属性を帯びた大剣を振り上げ、ゴブリンたちに斬りかかった。
「アル、フェル! 行くぞ!」
イーオンの声に「はいっ!」とアルゲオとフィーネは返事をし、3人同時にレティーフの下へ走り込む。
レティーフはその状況をいち早く察知し、その場を退こうとしたが、ポジションが悪く、咄嗟に逃げることが出来なかった。
――殺られる!!
レティーフがそう確信した瞬間、事態は一遍した。
「あんたたち、両方ともここに留まってもらうわよ!」
九弓・フゥ・リュィソー(くゅみ・ )はいけしゃあしゃあと言い放つと、攻撃をしかけてきた。その攻撃は、鏖殺寺院だけではなく、鏖殺寺院と戦う生徒たちにも向けられている。
「どういうことだ!?」
意味のかわらないイーオンは叫んだ。
「簡単なことですわ。大人数で押しかけるのも武力に訴えるのも、威圧する意味では鏖殺寺院と一緒なのですわ★」
リュィソーのパートナーであるマネット・エェル( ・ )は微笑む。
「誰も傷つけるつもりはないの。けれど、メモワールとしては、リュィソーとマネットの考えを尊重したいので……。ごめんなさい」
そう言って、九鳥・メモワール(ことり・めもわぁる)はリュィソーたちに加勢する。一瞬にして、戦場と化したこの場は混乱に陥れられる。
「アシッドミスト!」
リュィソーが叫ぶと同時に辺りは突如霧に包まれた。周りの様子が一切わからなくなってしまった鏖殺寺院と生徒たちし身動きを取ることが出来ず、その場にただ立ち尽くすことしか出来なかった。
「戦いは無駄ですわ。傷つけ合って、得るものなんて何1つありませんもの」
マネットは動けなくなっている鏖殺寺院と生徒たちに言う。
「そういうわけでね、ここでじっとしててもらいたいんだわ」
メモワールはマネットの言葉に続けた。
「くっ! このままでは、埒が明かない……」
イーオンは呟き、アルゲオとフィーネを見据えた。
「仕方ないわ、イオ。他にも隠れ里に向かっている人たちはいるはず。私たちはここでこの人たちを足止めして、他の人たちに隠れ里探しは任せましょう!」
アルゲオはリュィソーたちと対峙しながらイーオンに言った。しかし、意識はリュィソーたちから一時も反らしてはしていなかった。
「そうだな。取り敢えず、俺たちはここで暴れさせてもらうとしよう!」
フィーネのセリフを合図にするかのように、鏖殺寺院たちと対峙していた生徒たちは思い思いにゴブリンやリュィソーたちと刃を交え始めた。時に魔術が炸裂し、閃光が閃いた。
「ふぅ。ラッキーだな。行くぞ、メイコ、マコト!」
レティーフはこの乱戦の間に抜け出して、隠れ里をめざすことにしたようだった。現在も数匹のゴブリンと生徒たちが乱戦状態で戦闘を繰り広げている。それを視界の端に捉えたものの、レティーフの移動に気付かない数匹のゴブリンをあっさりと置いて行き、その場を後にした。
「疲れたなぁ……。だいたい、あんなに人数を相手にし始めると、いくらゴブリンが連携プレーを得意とするったって、限界があるよなぁ……」
レティーフは独りごちる。
「まぁ、いいじゃない。ピグミーちゃんは無事なんだし。ねぇ、まこち」
「そうだな。これで問題なく、隠れ里に辿りつくことが出来るだろうよ」
マコトは言って、プットをちらりと見やる。
プットはむすっとした顔のまま、相変わらず、適当な指示を出し続けていた。
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