校長室
おいでませ、葦原明倫館♪
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第13章 食堂・御茶会 夕食を終えた見学者達が、食堂を借り切って感謝の御茶会を催すこととなった。 案内役はもちろん、教科や実技を披露してくれた教師や生徒、食堂の職人達も、その場へ招かれている。 「どうぞ、お口に合わないかも知しれませんけど……ブルーベリーソ−スはお好みで」 砕いたビスケットを敷き詰めた底の上に、あっさり味のレアチーズム−ス。 自作のレアチーズケーキを、神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい) は人数分に切り分けていく。 「お待たせ〜わあ、美味しそう〜」 「おや、やっと来ましたか? 楽しかったようですねえ……食べ過ぎたら、駄目ですよ」 「分かってるもん〜やっぱり疲れたときには、甘いもの」 1つめのレアチーズケーキを切り終わったとき、食堂の入り口に榊 花梨(さかき・かりん)が現れた。 翡翠と別れて校内を見学していたのだが、途中で迷ってしまったらしく。 「校内案内図を探していたら、この人に出会ったんだよ。 いろいろと案内してもらって、ここも教えてもらったの!」 花梨の背後から、背丈も年も花梨と同じくらいの少女が顔を覗かせる。 手招きすると、翡翠は2つめのレアチーズケーキの最初の一切れを手渡した。 「すみません、花梨がご迷惑をおかけしました。 これは自分が作ったのですが、よろしければどうぞ」 「いいなぁ、あたしにも!」 「花梨の分は取ってありますから、紅茶淹れるのを手伝ってくれますか?」 花梨の頭を後ろからつかむと、翡翠は自身と花梨の頭を少女へと下げる。 反省の色が見えない花梨に、紅茶の葉とガラス製の急須を差し出す翡翠。 受け皿は机の上に広げてあり、器もすでにお湯のなかで温めてある。 翡翠が飲みやすい温度に調節したお湯を使って、花梨はせっせと紅茶を淹れるのであった。 「う〜ん、葦原明倫館はみんないい人たちばっかりだね」 葦原明倫館の学生達と交流してみたいという理由で、朝から食堂にいるシェーラ・ノルグランド(しぇーら・のるぐらんど)。 気の合う友人に出会えたようで、数人のグループでずっと談笑している。 「えっと……これ、私が作りましたお菓子なんですけど、よろしければ皆さんでどうぞ♪ これは私が作った苺のミルフィーユです……あと、和菓子も作ってみまして……これは桜餅です♪」 神楽坂 有栖(かぐらざか・ありす)は、案内やお世話をしてくれた陰陽科の生徒達の前へお菓子を広げる。 白いテーブルの上が、濃淡の赤で彩られた。 「こほん、ではわたくしも、『手作り』のお菓子を……これは『おはぎ』ですわ♪」 「!? み、ミルフィっ……!?」 有栖に続き、得意げにタッパーのふたを開けるミルフィ・ガレット(みるふぃ・がれっと)。 顔を覗かせる黒い物体と、漂う焦げたにおい……有栖は驚愕の表情で再度ふたをした。 言わずもがなミルフィは……料理の腕が、壊滅的に下手だったのだ。 「母校を護りたいという気持ちは、どの学校も同じと思います……。 ともに外敵と戦い、母校を護るためにも、本日教わりました明倫館の技術を皆にも広めますね!」 ごまかしを兼ねて……今後の決意を、力強く宣言する有栖。 百合園女学院をより強くするために、陰陽科にて新しい知識や技術を教わってきたのだ。 「ミルフィもがんばりますわ!」 (いまのうちに……) 有栖の言葉に触発されたミルフィも、立ち上がると拳を握った。 ちなみに、ミルフィが見学したのは士道科である。 ミルフィが盛り上がっている間に、有栖は『おはぎ』を包んで荷物のなかに戻すのであった。 「茶は心を癒しますな」 お抹茶を一口、道明寺 玲(どうみょうじ・れい)はほっこりした顔で微笑う。 ちなみにこのお抹茶は、葦原明倫館の生徒達に習って玲自身で淹れたもの。 今日1日、玲は家庭科室にて、お抹茶の淹れ方や和菓子の作り方のコツを教わっていたのだ。 「うちの学校から、烏龍茶やら月餅とかも準備してきました」 「では早速……美味しいでありんす! 玲、あっちにこのお茶菓子をもっと食べさせてくりゃれ」 「えぇどうぞ、お気に召していただけて何よりですな」 茶の湯を学びにきた、礼節を知る者の情報を聞きつけて、食堂を訪れたハイナ。 玲持参のお菓子に満足したようで、自身に出された和菓子と引き換えに玲から月餅を受け取った。 「新しい学校の新しい食堂……この学校の食事も期待どおり、ほんに美味しかったどす」 「そうでありんすか、嬉しいことを言うてくれるのう」 「また食べさせてほしいどすなぁ〜スシ、スキヤキ、ハラキリ……」 イルマ・スターリング(いるま・すたーりんぐ)も、和菓子をいただきながら昼夕の食事の感想を素直に述べる。 何やら最後の単語が怪しいが……イルマは、ぜひまた葦原明倫館の食堂を訪れたいと思っていた。 「和服の服の着付けとか効率よくやるコツとかは……次の機会かな」 「麿は食堂で待っとります、玲のように長い正座には耐えられんどすから」 「ははは、あっちがじかにおしえてやるでありんす!」 再びの来校を期待する玲に、イルマは消極的。 食事はしたいが、正座はしたくないらしい。 ばんばんとイルマの背をたたくハイナの高笑いが、食堂全体に響き渡るのだった。
▼担当マスター
浅倉紀音
▼マスターコメント
お待たせいたしました、リアクションを公開させていただきます。 未だ謎多き新学校、少しでもつかめるものがございましたでしょうか。 楽しんでいただければ幸いです、本当にありがとうございました。