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【十二の星の華】黒の月姫(第2回/全3回)

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【十二の星の華】黒の月姫(第2回/全3回)
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「赫夜様、お願いしたいことがございます」
 爺やが床に伏したまま、赫夜に声をかけた。
「赫夜様もご存じでしょうが、某が子供たちに近所の道場で、稽古をつけておりますでしょう。しかし、この状態ではできません。ですから赫夜様に代理をお願いしたいのです」
「いいが…みんなが」
「じじい、ばばあは若者と喋りたいのですよ、お行き下さい、赫夜様」
 婆やがそう、フォローすると、赫夜は支度をして、家を出て行った。

☆    ☆    ☆


 セルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)がお茶を入れたりしている。
「そういえば、以前に聞いたことがあるお話しなのですが、パートナー、中でも特に「剣の花嫁」は縁(えにし)の深い人に似ることがあるそうですね。十二星華なら尚更、宿命が強いのではないでしょうか。わたくしと詩穂様が始めて会ったとき、わたくしが詩穂様のお姉様に似ているとのことを想い出しました。」とさりげなく、話しかけるが、爺やは「そうかえ」と軽く流してしまった。
(いわくありげですわね…)
「さて、みなさんは、赫夜様、真珠様についてお話しが聞きたい、と来られていたのですな」
「ええ、そうです」
「みなさんの心のうちはよう、わかりました…某でわかることであれば、お話ししましょう」
 ウィング・ヴォルフリートが口をひらく。
「真珠さんを犯人と疑っていません。そして疑惑を晴らすために動いています。直接、本人にお話しを聞ければ、と思ったのですが」
「真珠様はまだ引きこもってらっしゃいます。大勢で押しかけて頂くのは止めて頂きたい。その上で、某が質問に答えましょう」
 ウィング・ヴォルフリートが
「では、まず真珠さんの持つ指輪について誰からもらったのか、おわかりですか?」
「残念ながら…婆やから聞くところによると、いつの間にか、身に付けていた、と。恐らく、パラミタに来た頃、直ぐではないかと思います」
 アレクセイとリカインも質問する。
「赫夜姫の種族と彼女の眼について、お話しを聞かせて頂きたいぜ」
 赫夜を「赫夜姫」と呼ぶアレクセイが口を開く。
「ええ、私も知りたいわ…本当は赫夜君の口からきちんと聞きたい、それが私の願いですが、赫夜君は私たちに話をしてくれない…ですから、このように押しかけたの」
 とリカイン。
「赫夜様は、ああ見えて、非常に自分の気持ちをさらけ出すことが下手でな。お許し頂きたい。それと、赫夜様は『剣の花嫁』でいらっしゃいます」
「やっぱり…」
 レイナは
「真珠さんと赫夜さんの間に何があったのですか? 最近二人を見ていて何か気になったことは? それに、現女王候補について何か言ってなかったでしょうか」
「…そのようなことは、某は一切、関知しておりませんで…」
 ただ、その軽い口調には苦渋の色も見えた。不穏な気分になる生徒達。爺やも何か知っていると、察知する生徒もいた。
「…そうですな…みなさんもご存じかもしれませんが、真珠様と赫夜様には血の繋がりがございません。真珠様のおじいさま、現、藤野家当主、藤野真言(ふじの しんげん)様が赫夜様を6年ほど前に連れてきたのです。その時には、赫夜様は記憶がありませんで、今のような人間らしさも少なく、粗暴な振るまいをする娘でした」
「では、なぜ、真珠さんではなく、赫夜さんが次期当主に?」
「真珠様が本来は次期当主だったのですが、真珠様のお父上、真一様と妻のルクレツィア様、ルクレツィア様は真一様がヨーロッパに留学されていたときに恋仲になられたイタリア人なのですが、真言様はその結婚に反対されていました。そもそも真一様は平和のために自分の力を尽くしたいと考えておられ、真言様のように『藤野の家を継ぐ』ことや、武道にはそれほど興味をお示しにならない、学術肌の方でした。しかし、真一様とルクレツィア様、そして幼い真珠様がある日、突然、事故に遭われ、唯一生き残った真珠様を真言様が事故死した両親に代わって引き取ったのです。ですがルクレツィア様の面影が強く、体も弱い真珠様をなかなか愛せず、また、藤野家のために日本人らしい風貌をし、剣の達人でもあった赫夜様を連れてきて、次期当主に据えた、と言うことなのです」
 周は「ひでえじじぃだ!」と怒りを見せた。
「いえ、真珠様には次期当主の荷は重うございます。それも真言様は考えてはいらっしゃいました。ですが、ルクレツィア様そっくりの真珠様より、全く関係のない剣の腕前も、見た目も凛々しい赫夜様を真言様は愛していらっしゃるのは確かです」
「じゃあ、女王候補については…」
 その質問に対して爺やは
「藤野家としてはミルザム様のことには興味がございません。女王候補にも、全く関わりたくない、というか、藤野家として巻き込まれるのはご免こうむりたい」
 と言い切ったのだ。

------そのころ、学園では。
「ねえねえ、マナ。藤野姉妹のお見舞いにいかない?」
 朝野 未沙(あさの・みさ)小谷 愛美(こたに・まなみ)に誘いをかけていた。
「うーん、でも今もどうやら、爺やさんに話を聞く! って腕に自信のある生徒達がお邪魔してるみたいだよ~」
「でもさ、そういうのじゃなくて、お泊まりして、あたしたちが藤野姉妹のベッドに4人で入って夜通しお話したりしよう? そうすればきっと、気持ち良くなって心から判り合えると思うの。ということで、パジャマと着替えを持って藤野さんのお家にお泊りに行こう!」
「気持ち良くなってって…なんかひわいね。それに、さすがにそれほど仲良くないのに、押しかけると嫌われるし、繊細な時期だからやめておこうよ~」
「じゃあ、マナんち、泊まりに行っていい?」
 未沙は愛美が好きなだけなので、これもチャンス! と思ったのだ。
「え、ええ?」
「いいよね? ね?」
「仕方ないなあ…いいよ」
 さすがに愛美も未沙の押せ押せ攻撃に屈してしまう。
「やったー!! お風呂にも一緒に入ろうね!」


☆    ☆    ☆


「ごめんください」
 爺やたちとの仕合いが終わり、みんながリラックスしていた頃、黒龍が漸麗を伴い、手に入れたグッズを持って藤野家を訪れた。
「あら、どちらさま? あなた方も吉備津に挑みにこられたのかしら?」
 勝手口に現れた婆やに
「いえ、そうではなく、今日は婆やさま、あなたに持ってきたものがありまして」
「まあ、なんでしょう。丁度、同じような方がいらしてるのですよ。どうぞ、私の部屋へお寄り下さい」
 綺麗に整頓された和室に入ると、そこにはアイドルのポスターが一面に貼られていた。
「あれ、黒龍に漸麗じゃないか」
 そこには、すでに通されてお茶をすすっていた静麻がいた。
「静麻、おまえもか」
「そういうこと」
「どうやら、僕たちの考えていることは一緒だったようだね」
 クスッと漸麗が笑う。
 すでに広げられているグッズの数々に、以心伝心な三人だった。