リアクション
第12章 それじゃ、またね!
一番星が見え始めた頃、ハイキング参加者達は、ようやく麓に到着した。
ベースキャンプでは、伽羅達が帰還したパーティを出迎えてくれた。
参加した時に記入した名簿と名前を照合して、全員が無事に下山出来るよう、チェックを行っていた。
「皆、今日はありがとね! なんか、色々あったけど、すっごく楽しかったよ!!」
フレデリカが、参加者、そしてサポートしてくれた伽羅達に言う。
「こっちこそだぜ、フレデリカ!」
トライブが大声でフレデリカに叫ぶ。
「ハイキング、誘ってくれてサンキュ! 次のクリスマスに会えるの、楽しみにしてるぜ! それまで、なんか辛い事でもあったらよ、クリスマスにサンタを待ってる子供たちを思い出せ。あと、俺らの事もな!」
トライブの最後の言葉に、皆が笑顔を見せたり、頷いたりした。
「サンタちゃん、今年のクリスマスも、またみんなでプレゼント配ろうね!」
美羽が、自分の小指とフレデリカの小指をからめて、ぎゅっと握った。
「フレデリカさん、今年は私もミニスカサンタとしてお手伝いするね!」
涼子が、笑顔で約束する。
「皆、思ったより遅くなっちゃったから、気をつけて帰ってね!」
フレデリカの言葉に、あちこちで返事があがる。
フレデリカはもう一度、皆の顔をしっかりと見つめ、最高の笑顔を浮かべた。
「それじゃ、皆、またねっ!!」
再開を約束する言葉を残し、フレデリカは、仔トナカイのヘノ子と共に、パラミタ大陸のいずこかへ去って行った。
第13章 お家へ帰らない(もしくは帰れない)方々
その夜は、ありがたい事に天気は上々だった。地球ではお目にかかれない降ってきそうな星空が広がっている。
さっそくルカルカは持って来た2人分の『こいのぼり』を取り出し、1つをザカコに渡した。
『こいのぼり』は、入ったまま歩く程度のスピードで空を飛べるアイテムなのだが、2人はこれを固定したまま宙に浮き、寝袋にしようと考えていた。
さっそく、2つの『こいのぼり』の口と口、尾と尾が、それぞれ50センチ程度の遊びを持たせたロープで繋がれる。これで空中での安定を高めたまま、話しやすい体制をとるつもりだ。
次に、知らない間に流されないよう、本体を丈夫なロープを使って太い木の幹に結びつける。
着れるだけの防寒具を身につけ、2人は『こいのぼり』の口に足から滑り込み、すっぽりと鯉の腹に収まった。
抜け防止と視界確保にと用意した、ワンタッチ子供傘を骨だけにした物が、鯉の口の内側から開かれる。
やがて、ばさりと布がはためく音がして、ゆっくりと時期外れの『こいのぼり』が星空に浮かび上がった。
まるで、星空に抱かれているよう風景の中、ルカルカは星座の由来やそれにまつわる神話の話をザカコに教える。
ザカコはルカルカの話を聞きながら、この時のためにとっておいた魔法瓶の暖かい紅茶を、こぼさないようルカに差し入れた。
ザカコは実は自分も星座には詳しいのだと、『春のダイヤモンド』の話などを披露する。
ふたりは、普段話さないような、他愛もない事をまったりと話せる事が気に入っていた。
「上には満天の星空、下には一望できる大地、この景色を一緒に見る事が出来て良かったです」
まどろむザカコが、満天の星空の下、素直な気持ちをルカルカに囁いた。
翌日、ヒラニプラに一番に届く光で、ザカコとルカルカは目を覚ました。
「おはよ、朝だね!」
「おはようございます。朝ですね」
2人は『こいのぼり』から起き出し、どちらともなく柏手を打って御来光を拝むと、記念撮影をして下山の準備にとりかかった。
「ルカルカさんのおかげで、とても楽しいキャンプになりました。良ければまた来ましょう」
ザカコの言葉に、ルカルカは笑顔で答えた。
「おっそいのですぅ〜!!!」
麓では、「家に帰るまでがハイキングなのですよぉ」などと言い出した伽羅が、ルカルカとザカコのおかげで名簿の照合を終えられず、朝まで待機するハメになっていた。
「そうそう美味しい話は転がってないのでござろうなぁ」
うんちょうが、ふぅと重いため息をついた。
その後、教導団に不審者として突き出された者達は、登山名簿で真偽が確認された。(受付していないはずの魅世瑠達に関しては、伽羅が裏で工作してくれたようだ。)
しかし、紛らわしい真似はしないようにと説教された挙句、教導団の好意?により、監視付きでの2泊3日の強化訓練を受ける事になり、山と教導団の厳しさを身をもって教えられる事となった。
一方、フレデリカのDVD制作について会議をしていたミヒャエル達は、こっちの方が売れるというロドリーゴの強硬な主張により、『実録、ヒラニプラの秘境で日夜鍛錬を怠らないサンタクロースの素顔』から、萌え路線の『フレデリカのサンタクロース日記。みんなといっしょ☆』に変更となり、通信販売が決定となった。
一部、真実を知る者以外から見れば、ただのコスプレDVDにしか見えないのが残念である。
ちなみに、利益が出ればクリスマスに備えてサンタ基金に全額を寄付するという事なので、興味のある方は、ぜひ、続報を楽しみにしていて欲しい。近日発売予定である。
END.
皆様、長いハイキング、お疲れ様でした。
今回、シナリオにちなんだ称号はありませんが、何人かの方に、称号を贈らせていただきました。
詳細は個別コメントに書きましたので、ご確認下さい。
確認はしていますが、コメントが表示されていない、本文での名前が誤字、などありましたら、玉野からの修正申告で直せますので、リアクション公開後5営業日以内にシナリオ掲示板に書き込んでいただければ対応します。
それ以降は、申し訳ありませんが運営経由での修正となります。
また、称号のミスについては玉野では修正出来ませんので、すぐに運営に対応をお願いして下さい。
今回は、ちょっと色々とバランスが上手にとれず、反省しております。
書きすぎもしました。何事も、バランスは大事ですね。
色々と至らぬ点はございますが、楽しんでいただければ幸いです。
玉野に付き合って下さった皆様に、心からの感謝を。