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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)

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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)
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 如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)は静麻のメールの着信には気がついていたが見る暇すら無く、ケセアレと戦う赫夜のバックアップにあたっていた。

 メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)セシリア・ライト(せしりあ・らいと)フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)は三人で士気旺盛、かつ、精鋭部隊であり、元ネッリ隊同様にケセアレの部下である彼らの足止めをしないと、赫夜の援護に回る人たちの行動が阻害されると考え、三隊の中でも戦闘に積極的かつ隊長が存在する隊であるダンツオ隊に戦いを挑んだ。
 一人の相手に三人がかりパートナーたちと組み、共に部下を倒していく。
「みんな、離れてはだめですぅ!」
 メイベルがウォーハンマーを繰り出しながら、他の二人にも注意を促す。
 セシリア・ライト(せしりあ・らいと)
「大丈夫だもん! それより、メイベルが気をつけてよね!」
 と殺気看破を使い、敵をライトニングウェポンで次々と倒していく。
(ダンツオは下級隊士の出身だから、下級隊士の人身掌握に優れているよね。…まず説得は無理。だから着実にメイベルとフィリッパとの連携で一人ずつ部下を減らしていくことに専念したほうがいい! そのほうが、赫夜たちの役に立てるもん!)
 互いの死角が無いように戦い、少しでも早く形勢を決めるようにとセシリアは集中する。
 フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)も、力で押してくるダンツオ隊及び元ネッリ隊の戦力を殺ぐことで、アンジェラ隊もひくはず、と考えたのだ。
 乳白金に白い瞳のメイベル、黒く紅い瞳のセシリア、キュートなロングヘアに青い瞳のフィリッパはまるで、この崩壊しかけた城にふいに舞い降りた可憐な花のようであったが、その戦闘力はダンツオ隊にも劣らない。
「ひとりひとりは弱くても、三人で力を合わせれば怖いものなどありません!」
 メイベルの言葉に他の二人も頷いた。

 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)はそのまま、バーストダッシュで壁を蹴り、くるっと一回転するがその視界に映ったのは、ケセアレを庇ったダンツオだった。
「ダンツオ!?」
「お前か、小娘!」
 コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)は美羽が頭上からケセアレを攻撃した瞬間、側面からバーストダッシュで突撃。バーストダッシュの突進力を試作型星槍にのせ、ケセアレが赫夜から離れるように思いきり吹き飛ばそうと投げ、頭上と側面からの同時攻撃で、ケセアレを倒そうとする。しかし星槍をケセアレはカンタレラでなぎ払い、ダンツオが銃でコハクを狙い撃つ。それを避けながら、コハクは叫ぶ。
「もうやめてくださいケセアレさん! こんなことを続けていたら、真珠さんが悲しみます!」
 しかし、耳を貸さないケセアレ。
 赫夜が隙を見て、ケセアレに星双頭剣で叩き込むもカンタレラで受け止め、
「甘い!」
 と赫夜の腹を蹴り飛ばす。
 ケセアレは光条兵器だが、赫夜との剣の腕の差が違うのか、剣にかかる力を利用し、上手く受け流してしまう。追い込まれる赫夜。
「赫夜! 大丈夫!?」
 アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)がそれを助ける。
「くうぅっ、光条兵器で星剣と渡り合うなんて…ケセアレ、なんて人なの…」
「あれが本当の剣士というものなのだろう…本当の達人は、使う剣を選ばない…」
「蒼空学園で剣を交えたときの私の言葉、覚えてる?」
「覚えているとも…『私は光も闇も、同一の力を持っていると思っている。…もちろん、私程度の力量ではそれを掴むことはできない。だが、アリア、あなたにはその可能性が充分ありえるはずだ。たとえ苦しいことがあっても、明るい方へ歩いていって欲しい』…そんなことを言ったな。私もつくづく、説教くさい…」
「赫夜、私はフェルブレイドの闇に力に飲まれない、そしてあなたを助ける!」
(多分本質的にはケセアレさんは愛が憎しみに負けない人なんだわ…過去の悲劇もあるけど、対話の道も残っているはず。とは言え、落ち着かせる為にも、赫夜を守る為にも一度倒さないと)
「友を、愛する人を、仲間を信じて」
 そう告げると普段使わないフェルブレイドの力を【封印解凍】し、赫夜の攻撃に合わせて斬りかかるアリア。闇に呑まれないように力をコントロールする。フェルブレイドの力は闇にも通じる。
 天穹 虹七(てんきゅう・こうな)
「お姉ちゃんなら大丈夫。虹七も力になるよ……お姉ちゃんの心が、力に呑まれないように」
(またことちゃんの膝にのせてもらいながら、一緒にお姉ちゃん達の稽古を見たい。蒼空学園での戦いの後、だっこしてくれたことちゃんの温もり。それにアリアお姉ちゃん、無茶してる。でも虹七はお姉ちゃんを信じる。この気持ち、お姉ちゃんに届け…!!)
 虹七は光条兵器を強く握り締め、それを通じてアリアに強く優しい想いを送り、フェルブレイドの力の制御を支えた。
 アリアと赫夜のケセアレへの攻撃は続くが、ダンツオたちが盾になり、直接、ケセアレに対峙することも難しい。その上、ケセアレのカンタレラの攻撃は凄まじいものだった。
「…【奈落の鉄鎖】を自分に使うしかないわ…」
 窮地に立ったアリアは今まで自分の体に負荷をかけるため、避けていた切り札を出そうとするが、
「やめろ、アリア! そんなことをしたら、アリアの体がどうなるかわからない! 生きて帰るために、力は残しておくんだ! アリアには虹七ちゃんもいるだろう!? 命を粗末にするな!」
 と赫夜が叫ぶ。
「赫夜…!! …分かったわ!」
 アリアは赫夜の自分への想いを感じとり、そう応えた。
 そこに一旦退避した美羽がやってきて、赫夜の手を取る。
「逃げよう、赫夜!」
「…美羽さん」
 その手を掴み返した赫夜は美羽とアリア、そして虹七を女の力とは思えない勢いで、後方へ押しやってしまう。
「赫夜! 何をするの!」
 ずざざっと美羽ははね飛ばされると、赫夜の行動に驚きを隠せない。アリアも同様だった。
「ありがとう、美羽さん。だが、今はここを離れるわけにはいかない! あなたが怪我をしたりするところを私は見たくない! アリア、虹七ちゃん、あなたたちもだ!」
「何をいってるの! 私たちはあなたを護る!」
「そうだよ、赫夜お姉ちゃん!!」
 そこにダンツオ隊が美羽を狙ってショットガンを撃ってくるのが見えた。
「美羽さん、あいつらはあなたを仇に思っているようだ、はやく逃げろ!」
「赫夜!」
「また、後で! 美羽さん! アリア! 虹七ちゃん!」
 にっこりと笑う赫夜の笑顔が美羽の瞳に焼き付いて離れない。
 追いすがろうとする美羽を、佑也が引き留める。
「どうして!?」
「虹七ちゃんのような小さな女の子は早めに脱出すべきだ。それに美羽さん、ダンツオはあなたを狙っている」
「あんなの怖くもなんともないもん!」
「聞いてくれ! 赫夜さんはあなたたちが傷付くところをみたくないんだ! ケンリュウガーさんが大型飛行艇の場所までリードしてくれる。余裕のある今の時期に逃げて欲しい!」
「そうだよ、美羽。そうしよう」
 コハクの言葉に美羽は悔しそうな顔をする。
「虹七が…いけないの?」