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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)

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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)
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 佑也はそんな赫夜の横顔が妖艶なまでに美しく輝いていることに気がつき、彼女の業を知る。
「佑也殿、私は所詮、こんな人間だ…許して欲しい」
「何を許すって言うんだ! 俺はそんな赫夜さんも全部、受け止める!」
「俺たちもだ!」
 正悟も叫ぶと、葉月も腕を押さえながら頷いた。
「水くさいこと、言わないでよ! 藤野赫夜!」
 ミーナが言うと玲が
「その通り」
 一言だけ呟く。
「みんな…」
 赫夜は皆の声を背に受け、そう口にするしかできなかった。
 しかし、ケンリュウガーこと牙竜は、赫夜の言う通りにすることにした。それが赫夜の決意だからだと理解したからだ。牙竜の脳裏に寂しがり屋の獅子座の十二星華の姿が思い浮かぶ。誰も傷つけたく無い!!と強く思う牙竜。だが、その一方で赫夜の言うことも理解出来た。
「浮遊島にいる生徒のみんな。きこえたら返事をくれ。退路を探しているものはめぼしい手段や格納庫への道が分かれば、すぐに連絡が欲しい!」
 携帯の一斉送信でメールを打つと、怪我人達を遠ざける準備に入った。



☆   ☆   ☆   ☆   ☆    ☆   ☆   ☆   ☆   ☆



「逃げなくていいのかい、真珠」
 ミケロットはにゃん丸に護られている真珠に声をかける。
「ミケロット…さん?」
「どういう意味だ」
 にゃん丸やリリィまでもが目を丸くする。
「…僕は君を奪い返すべきなんだろうね。…でも、今はそうはできない。それに真珠、君は僕が捉えていなくても、ここから離れる訳にはいかないだろうからね。ケセアレ様と赫夜の戦いを止めたいんだろう? だからここに残っているんだろう? 僕はケセアレ様を助けに行くよ。あとは君と君の友達次第だ…にゃん丸君とやらに従ったほうがいいとは思うけれど、君はここを動けないだろう」
それだけ言い残すと、黒の仕立ての良いスーツを翻し、ミケロットはケセアレたちのもとへと走り出した。
「どうしたら…どうしたらいいの…」
 真珠はうろたえる。
「真珠、逃げよう!」
 リリィの声に真珠は座り込み、頭を振る。
「出来ない! 私だけが逃げるなんて出来ない!」
「何いってんの! にゃん丸がどんな気持ちでこんなところまで来たと思ってるの!」
 リリィが真珠の頬を張ろうとする時だった。
 御凪 真人(みなぎ・まこと)がリリィの手首をぱしっと掴む。
「リリィ、気持ちは分かるけれど落ち着いて」
 そういうと真人は真珠の体を起こさせる。
「シャムシェルの言ったことはある意味正しいのかもしれませんね。あの2人…いえ、ミケロットさんも含めた3人を救う鍵を持っているのは君ではないでしょうか? 君の求める強さは『誰も頼らない』だけなのですか? 厳しいことを言いますが自らの選択に後悔だけはしないでください。そして、願わくば、誰もが笑顔になれる結末を手に入れましょう」
 真珠はその言葉に改めて
「ケセアレおじさま! 赫夜ねえさま! お願い、止めて!」
 大声で叫ぶが、二人の耳には届いていないようだった。
「う…」
 一瞬涙を流しかける真珠だったが、そこで涙をこらえる。
「にゃん丸さん、リリィさん、ごめんなさい…私、ここを動くわけにはいかない…だから、お願い、先に逃げて」
「ばっきゃろー!」
「ばかー!!」
 にゃん丸とリリィは同時に叫んだ。
「そんなことしに俺たちは来たんじゃない!! 君に最後まで付き合う! 月夜にグレーターヒールもして貰った。俺は大丈夫だ!」
「そうよ! 真珠がやりたいようにしなさいよ! 絶対に守ってあげるから!」
「俺もです」
 真人の言葉に真珠はきゅっと唇を噛みしめた。
「みんな、ありがとう…」



☆   ☆   ☆   ☆   ☆    ☆   ☆   ☆   ☆   ☆



 一方、元ネッリ隊と激戦を繰り広げている一群がいた。
 肉体の強靱さではネッリ隊と堂々渡り合うラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)はふっと笑う。
「ふん、肉体改造なんざ所詮紛い物の強さだな。強さってのはな…自分で手に入れるから価値があるんだよ!それを俺がわからせてやんよ。それに、赫夜は大切な話し中だ。邪魔はしないでもらいてぇな。へ! 俺の筋肉でどこまで闘えるか試させろ!」
 拳での格闘を軸にした近接戦闘で、最初からフルバースト。軽身功で身軽な行動を確保すると、ヒロイックアサルト【剛鬼】で鬼の力を身に付け、それら全ての攻撃をドラゴンアーツに乗せて、繰り出していく。
「たとえ、敵わないって分かってても、引けねぇ事情があるんだよ!」
 急所を狙って疾風突きを繰り返すラルク。
「ラルクさん、無理はしないでください!」
 樹月 刀真(きづき・とうま)の言葉に
「おうよ、だけど無茶もしねえといけねえ時もあるもんだ!」
「確かに!」
 意図的にネッリ隊に当たる生徒達は、協力体制を自然と敷いていた。
(肉体改造を施されて体は通常の2倍とあるがその体でどれ位の時間動けるんだ? カロリー確保の手段がないのならスタミナ勝負に持ち込めばいけるはず、体格差を利用して引っかき回して疲れさせよう)
 刀真は体力を消耗させる為、剣で膝関節を攻撃。自重を支える負担を増やし、ネッリ隊の関節からの出血も狙った。また【アルティマ・トゥーレ】を使い、空間の温度を下げ熱を奪った。ネッリ隊の体温はみるみる下がっていく。
「この餓鬼どもめ…」
 刀真は自分に手を伸ばしてくるネッリ隊の一員から、素早く身をかわす。
「握りつぶされたりしたら、俺もひとたまりもないですから」
 深く踏み込まず浅く攻撃を繰り返す。