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【ろくりんピック】こんとらどっじは天使を呼ばない

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【ろくりんピック】こんとらどっじは天使を呼ばない

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 7、選手入場、そして試合開始! 〜忘れられた一族〜
 
 
「陽太さん、先頭なのね。てことは、リーダー……? 透乃ちゃん達がいるわ。ラルクさん、アリアさん、唯乃さんに美央さん……あ、アシャンテさん達も! 隼人さん達は、あれから仲直りできたのかしら……?」
 ファーシーは銅板時代に協力してくれた面々を見て、驚いたり喜んだり人数を数えてみたりと楽しそうだ。更に、復活してから知り合った七枷 陣(ななかせ・じん)にも声を掛ける。
「真菜華ちゃんもいるよ! 真菜華ちゃーん!」
 ピノもボンボンを持って騒ぎながら言う。春夏秋冬 真菜華(ひととせ・まなか)は元気にそれに応え、そして呟く。
「ピノちゃん、今日もカワイイね! ……あ、やっぱり出てないんだ」
「よし、応援するわよ!」
 そうして、ファーシーは霧雨 透乃(きりさめ・とうの)緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)達に、順番にエールを送っていく。
「スカサハさん、朔さん、がんばってね!」
「ファーシー様であります! がんばるでありますよ!」
 スカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)が右肘を曲げて拳を挙げ、ポーズを作る。鬼崎 朔(きざき・さく)も頷きかけてきた。
「ザカコさん、ロートラウトさん達も、ファイト!」
 ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)が頷き、ロートラウトは勢い良く手を振った。
「全部言ってると台詞としておかしくなる程、知り合いが出てるな。しかし……あいつらも出るとはな。まともに試合する気なんかあんのか? まあ暴れるのが好きな奴にはうってつけの競技と言えるけど……」
 真菜華や明日香を見て、ラスがひとりごちる。ノルニルが言った。
「『あいつら』の『ら』が誰を指しているのかは知りませんが、明日香さんは今回真面目ですよ。エリザベートちゃんにいい所を見せる、とはりきっていましたから」
「へー、エリザベートちゃん、ねえ……」
「大地さーん、がんばってくださいねー!」
(ティエルさん……!)
 チアリーダー姿のティエリーティアに、大地は顔をほころばせる。絶対に勝とう、と改めて気合を入れなおし、彼は首にかけたロケットペンダントを手のひらでそっと包んだ。ロケットの中には、ティエリーティアとのデートで撮ったプリクラが入っている。初めてで慣れなくて書き損じとかもあったけれど、大地の宝物だ。
 フリードリヒは、椅子にふんぞりかえって座っていた。特等席、という感じだ。ふと気付いたかのように、ポケットからメモを出して何かを書いている。
「ティエルティエル」
 ちょんちょん、と肩をつつかれてティエリーティアは振り返った。
「これ、応援の定番メッセージだから、ここぞという時に言ってやんな。喜ぶぜー」
「え、あ、はいー。ありがとうございますー」
 ティエリーティアはメモを受け取ると、素直に笑った。

「い、いーしゃん、いーしゃん、ですわ〜」
「兄さま、姉さま、わたくし達はここで応援してますわ。聞こえますかー?」
 ミリアと、メガホンを口に当てて声を出すエイボンの書に、本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)は首を向けた。涼介はミリアの姿を見て、背筋をますます伸ばした。
(……また、よく見える位置に座ってるな……)
 妻と2人の子供を認め、カイルフォールは小さく手を振った。子供達も振り返す。セシルとの作戦が上手くいけば、少しはヘタレ返上になるかもしれない。
(や、やるぞ……、私は、やる……!)
「西チーム、応援してるっスよ! 幸運のマスコットキャラもついてるっス!」
 アレックスと彼の肩やら仕切り壁やらに乗ったパンダ達も、個性豊かに応援する。

「……以上、東シャンバラチーム24人、西シャンバラチーム28人での試合になります」
「選手達が配置につきましたねえ。全体的に後方で待機……また、約1名最初から姿を消している選手がいますね。マントを着ているのも1人。人数としては東の内野が20人、西が23人、それぞれ、最大人数に満たないスタートです。大差ないとも言えますが、3人という差がどう出てくるか……非常に楽しみです」
 闇口が無難な実況をしている中、東チーム椿 薫(つばき・かおる)は向かいのコートを見て感動していた。
(たまにはユニフォーム姿を眺めるのもいいものでござるな)
 薫の視線の高さは、ほぼ固定されている。
(これで試合が始まったら……動くたびに大きな物や、小さなものが揺れ動くでござる。男子が邪魔でござるな……)
 素早く西の内野男子の数をチェックする。
(男は8人でござるか。これはうまくすれば、楽園を作るのも夢じゃないでござるよ!)
 西チームから男子が消えた所を想像し、他の選手達とは一風変わった動機でやる気を出すのぞき部員。
(両軍女性選手のみとかきっと素晴らしいに違いないでござる)
「薫さん、何考えてるですか〜?」
 ラインを挟んで、ひなが目を光らせて聞いてくる。瞬きと共に、一瞬間の抜けた顔をする薫。しかし、すぐに彼はにやりと笑った。
「なんでもないでござるよ」
 ひなはのぞき部仲間。どんな系列の事を考えているのかは、すぐに分かるのだろう。そして尚且つ、それを共有できる相手でもあった。

 そんな中、キャンディスは首を捻っていた。
『これで終わりじゃないはずですヨ? 各チーム1人ずつ足りないデス。申し訳ないです。ミーとあろうものが、名前が出てきません。メ……メ……エート……?』
「メガネじゃねえ!」
「俺達を呼んでおいて忘れるな!」
 選手入場口から、山葉 涼司(やまは・りょうじ)と山葉 聡が入ってくる。彼等はワンセグでも見ていたようで、携帯電話を持っていた。
『……名前が思い出せないから、メガネでいいですネ。そうそう、各チームの応援ポイントを「1」使ってメンバーに加わってもらったのヨネ。もう片方は新参過ぎてワカラナイですヨ。メガネいとこでいいネ』
「分かってるじゃねえか!」
「俺は山葉涼司! 東チームだ!」
 聡と涼司が携帯にそう叫び、芝に捨てた所で東の選手達が露骨にえぇーっ、という顔をした。
「なんだよその反応……。先制して呼んでもらって喜んでたのに……」
 情けなさそうに言う涼司に、選手達はにやにやする。からかっている。
「彼は山葉聡……海京に黒いイコンが来た時に迎撃した生徒ですねえ。名前は知っています。あのガラの悪そうな銀髪は誰でしょう」
「あれは、蒼空学園の生徒ですぅ。皆さんからは『メガネ』と呼ばれて親しまれています?  山葉聡選手のいとこですぅ」
 ヘリシャが教えると、闇口は言った。
「ではメガネ選手と呼びましょう。山葉選手と同じ名字だと判りにくいですし、ちょうどいいですね」
「メガネっていうな!」
『審判さんがコートの中央に移動しましたネ。ジャンプボールは……おや、メガネとメガネいとこがリーダーを押しのけて立ちましたヨ。まあ、これが最初で最後の活躍かもしれないし、大目に見るネ』
 神和 綺人(かんなぎ・あやと)がボールを持って打ち上げる構えを見せると、東チーム唯乃が護国の聖域をかけた。内野全員の魔法防御が上昇する。西チームでは漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)樹月 刀真(きづき・とうま)と自分に、ロートラウトも自身にパワーブレスをかけた。エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)が東の空を見ながら、シャンバラからカナンを経た先にある国まで届かせる気持ちで声を放つ。
「エリュシオンの連中め、この試合を刮目し、俺達の熱い闘志に恐れおののくがいい……!」
 話題がメガネに変わった後、『密かに』位置に着いた朔は綺人の持つボールを見て、思う。
(ドッジボールか……小さい頃は友達とよく遊んだな……。今では……もうあの面子と遊ばないが……)
 一瞬、屈託無く笑う子供達が脳裏に浮かぶ。彼女は、それを打ち消すように首を振った。
(……感傷に浸るのは止そう。今は目の前の事に集中しよう。……まずは、ボールをとらない事には始まらない……)
 超感覚を使い、殺気看破を発動する。光学迷彩で隠れてる奴もいるかもしれない。警戒は怠らない方がいいだろう。
(……何があろうと、ボールを味方に当てさせはしない! ……そして、根こそぎ刈り取ってやろう……)
 実況の高説めいた喋りが聞こえる。
「コートが大きいだけに選手同士の間隔が開いているのがポイントですね。ダブルアウトが取り辛いかもしれませんよ」
『スキルや必殺技を上手く使えば、ダブルアウトも不可能ではないと思いますヨ。スキルも今は200個近くありますからネ』
 ちなみに、イヤホンを外した闇口にはキャンディスの声が届いていないが、実況席の声はキャンディスに聴こえている。何気なく入る突っ込みを聞こうと、観客達は徐々にワンセグを併用し始めていた。
 遙遠が『地獄の天使』で骨と闇の羽を出して空中で待機し――
 ――ボールが垂直に打ち上げられる。涼司と聡がほぼ同時に地を蹴った。