First Previous |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
Next Last
リアクション
間章二
「極東新大陸研究所はこっちですかね?」
ランツェレット・ハンマーシュミット(らんつぇれっと・はんまーしゅみっと)は南エリアから西エリアへと駆けていた。
パートナーのドラージュがイコンに容易くやられるのを見て、イコンがどれほどの力があるかを思い知った。
彼女が缶蹴りに参加している理由。それは、海京に入るためだ。こういう機会でもない限り、東シャンバラにいる彼女がここまで来るのは容易ではないだろう。いくら東西の往来が自由であるとはいえ。
光学迷彩で姿を消しているが、彼女はユニフォーム姿である。また、彼女のすぐ近くには身体の大きい黒猫がいる。パートナーのティーレ・セイラギエン(てぃーれ・せいらぎえん)が獣化した姿だ。
「とりあえず、何とかして会えないものでしょうか」
イコンの研究チームが来たことは、PASD経由で耳にしてはいる。とはいえ、実際に会えるかといえば別問題となる。
イコン自体、まだ機密事項であり、司城の旧友であるロボット工学の第一人者である責任者がそれを簡単に教えるということは有り得ない。
「――!」
気配を感じ、そちらを見る。
彼女達の目的が何であれ、缶蹴り参加者であることに変わりはない。が、そこにいたのは犬だった。
だが、犬は鼻が利く。
その直後、彼女達はタッチならぬ、襲撃を受ける。
犬に察知されたことにより、それを連れた者が神の目で見破ったからだ。カルキノスである。
ルカルカ一行が彼女達を捕まえようとしてきた。
超感覚で察知し、バーストダッシュで自ら突っ込んでいく。やられる前に、やれといった感じで。
だが、二体四では厳しかった。
極東新大陸研究所に辿り着く前に、捕まってしまう。もっとも、着いたところで目的が達成出来ていたかは分からないが。
* * *
その頃、東と北の間。
「さーて、どこにいるのかなー?」
如月 玲奈(きさらぎ・れいな)は葉月 ショウ(はづき・しょう)を探していた。東エリアの缶がたった今倒れたため、他のエリアに向かっている最中のはずだ。
むしろ、缶を蹴ろうとしていたなら、本物の缶のあった位置から離れようとする。と、いうことはまだ缶からそう遠くにはいない。
「そこだ!」
ほとんど直感的に遠当てを放つ。直接武器で攻撃しているわけではないので、問題はない。
二人とも攻撃側のはずが、もはや缶蹴りなど関係なくなっている。
「確かに当たったと思ったけど……」
姿は見えない。
「フィー、力貸して」
「はい」
レーヴェ著 インフィニティー(れーう゛ぇちょ・いんふぃにてぃー)とともに、次の攻撃に出る。彼女の火術に、玲奈が盛夏の骨気と爆炎波を組み合わせ、疑似さーちあんどですとろいを行う。
「見つけた!」
咄嗟に物陰に隠れていたショウが氷術を放って反応してしまったため、場所が露見する。ここまでは光学迷彩で移動していた玲奈だったが、もはや姿を見せようが見せまいが関係なかった。
「な、待て……!」
バーストダッシュで逃げようとするショウに、インフィニティーがサイコキネシスで周囲に落ちているダミー缶をぶつける。
さらに、玲奈が遠当てを食らわせる。
続いて、間髪入れずにインフィニティーがサンダーブラストをお見舞いする。
「ぐぐ、俺が悪かった、話せばわか――」
「ゆーるーさーなーいーぞー」
問答無用だった。
その後、断末魔のような叫び声が上がる。
* * *
「石化してますし、死にはしませんよねー」
牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)は、石化させたマッシュの首にロープを括り付けて運んでいた。
そして、
「ぽいすー」
そのまま途中の貯水池に投げ捨てた。沈みはするが、溺れはしないだろう。それに、本当にヤバかったら結界張っている術者が何とかしてくれるはずである。
まだ西の缶が倒れてからそれほどの時間は経っていないため、南に向かっているところだった。
ところが、すぐに倒れたことを知ったたため、そのまま北へと進路を変更し――
「牛皮!」
佐野 亮司(さの・りょうじ)に見つかった。
むしろ、先に彼の気配を察知していたナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)が神の目を発動して光学迷彩を解除していたので、どっちもどっちである。
「この前の借りを返しに来たぜ!」
「ふふ、出来ますか?」
前回はアルコリアを亮司が止められず、結果的に攻撃側に勝利を許すことになってしまった。
亮司が鬼眼でアルコリアを怯ませようとする。
「効くとでも」
が、状態異常対策が万全な彼女には効かない。そして、そのまま地獄の天使で飛び上がる。
「逃がすか!」
またもジュバルを掴み、投げる。
「マイロード、お守り致しますわ!」
それに対し、ナコトがサイコキネシスでジュバルを止める。
亮司には飛行を解除するスキルはない。だが、地獄の天使といえど、飛行には限度がある。
なお、アルコリアは亮司に対してペトリファイを放っているが、効いていない。彼もまた、耐性持ちのようだ。
(とりあえず、引きつけておきますか)
飛んでいてもマークされているらしく、ずっと追いかけてきていたので、頃合を見て逃げるのを一旦止める。
そして迫る亮司にアシッドミストを施す。あくまでも目晦ましだ。
それに対し、亮司は光術で霧を晴らそうとする。
「そうきますか」
ならばと煙幕ファンデーションでまたも視界を塞ぐ。
「く、どこだ!?」
「片方は素手です。一瞬ですので安心して下さい」
亮司の延髄を素手で殴打する。その衝撃で、亮司は気を失った。
「お休みなさーい」
そのまま動けないように亮司をロープで縛って、アルコリアはその場を去っていった。
とはいえ、亮司一人にかなりの時間を取られてしまっていた。
タイムリミットまで、あと三十分だ。
First Previous |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
Next Last