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怪人奇獣面相侵入事件!

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怪人奇獣面相侵入事件!

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【File8・犯人のみが知る真実】

P.M. 15:03

 真人がツタの元を倒したことで、他のツタも衰え事件が収束しはじめてから、数時間が経過して。
 ルルナと幻影少女は、疲れと空腹から食堂へ戻って来ていた。
「さあ、たっぷり食べてくださいね」
 ただ。透乃たちが調理したツタの和え物、ツタのおひたし、ツタの天麩羅、ツタの酢の物、ツタの水煮などが並ぶテーブルを見て、ルルナが食欲を失わせたのはいうまでもない。もっとも幻影少女のほうは美味しそうに食べ始めていたが。
 更に同じテーブルについている翡翠、レイス、桂たちもしっかり頂いている。
「大丈夫でしたか? しかし、災難でしたね。一応落ち着いたみたいですので、犯人見つかったのでしょうか? でも、後片付けも大変ですねえ」
「あ、その犯人なんですけど。実は最近パートナーの利経衛さんが蒼空学園のことばかり褒めるので嫉妬して、学園の力量を見極めるためにこんなことをしたらしいですよ」
 幻影少女の解説に、レイスは心底面倒そうな表情になって、
「なんだそりゃ。つまり俺らはただの痴話喧嘩に巻き込まれたってことなのか? あー、それ聞いたら余計に疲れた。しかし犯人には、きついお仕置きと言うか一発殴りたい気分だ。苦労したしさ」
「それについては、利経衛さんがちゃんと怒ってましたから」
「でもさ。やっぱりこの騒動が起きる前になんとかして欲しかったぜ」
「あ、彼はパートナーの暴挙を事前に防ごうともしたそうですよ? でも結局返り討ちにあっちゃったみたいですけど」
 幻影少女は苦笑いしながらそう言って、ツタの天麩羅を口へと運んでいった。
「お疲れ様でした。怪我したのなら、見せて下さい」
 それぞれの呟きを聞きながら、桂はルルナのすりむいた膝を治療してあげている。
 例えどんな事件が起ころうとも、生徒達はすぐに平和をとり戻していく。
 それはミステリーでもなんでもなく、彼らの強さゆえのことだった。

 ちなみに、ルルナと幻影少女の余談。
「そういえば、お姉ちゃん」
「ん、なに?」
「お姉ちゃんの本名、結局なんて言うんですか?」
「え? ど、どうでもいいじゃないそんなこと」
「でも。幻影少女っていう称号だと呼びにくいし、色々助けてくれましたからちゃんと知りたいんです」
「……そんな純粋な瞳で言われると拒めないじゃないの。しょうがないわね、ワタシの名前は夕霧(ゆうぎり)っていうの」
「?? いい名前じゃないですか、どうして教えるのためらってたんですか?」
「苗字と合わせると、からかわれるのよ。カードゲームとか挑まれるのよ」
「は?」

 その頃。
 虎神獅子媛は、校長が帰ってくるまで会議室で軟禁状態にされていた。
 一応の見張りとパートナーの不祥事の責任として、利経衛も隣に控えている。
「はぁ。本当なら屋上あたりに陣取って、戦闘をじっくり観察したかったのに。予想以上にモンスターが集まるのがはやくて、参ってしまったわ。あげくにエレベーターに閉じ込められるなんて、我ながらドジ踏んだとしか言いようがないし」
「やれやれ。まるで懲りていないようでござるな、こんなことをしでかしたというのに」
「でも利経衛。どうしてわざわざ匿名でメールしたりしたの? わたくしが言うのも何ですけど、具体的に事件の詳細を伝えていればもっと早くに解決に向かったでしょう?」
「そうでござるね。正直なところ、身内の恥を晒すのが嫌だったんでござるよ。甘い考えだとは自覚しているんでござるが」
 獅子媛は利経衛のその言葉に、彼が自分を密かに守ろうともしていたことを察し、わずかに頬を朱に染めた。
「そ、そういえば、なんなんですか。怪人奇獣面相とか、ネット探偵Aなんてネーミングは。正直センスを疑うわ」
「え? まあ、適当に考えた名前でござるからなぁ。もう少しちゃんとした名前のほうがよかったでござるか? 怪盗レパンとか、警部補古田三郎とか」
 なんだか真面目に悩みはじめる利経衛を見つめつつ、獅子媛は掌のSDカードを握りしめた。
 そこにあるのは、実は友人に頼んで密かに入手した監視カメラの映像だったりする。
(利経衛。今回の戦闘データで、貴方はまたひとつ強くなるわ。さあ、この次はイルミンスールの情報かしらね。もっともっと、情報を盗んでいかなくちゃ)
 などと目論む怪人奇獣面相の真意ばかりは、誰も知る由もなかった。

                                    おわり

担当マスターより

▼担当マスター

雪本 葉月

▼マスターコメント

 マスターの雪本葉月です。
 ジャンルはミステリーですが、書き終わってから本当にそうだったのか疑問に思ったりしています。なにしろ大半ツタとの戦闘でしたからね。
 一応解説しておきますと、利経衛が偽者でそのパートナーが犯人というのは事前に考えていたりしました。今回の事件、モンスターを呼び寄せて戦闘を起こして一体誰が得をするのか……と考えていくと、四人の中では戦闘の情報を収集することで強くなる利経衛ということになるんですよね。で、彼が強くなるのを望むのはやはりパートナーかなという発想で。
 こんなの推理しろという方が無茶なのはわかっているんですが、皆さんがどのくらい私の発想に切り込んでくるか、ちょっと見てみたかったんですよね。ご容赦ください。

 ちなみに今回、黒衣の男と幻影少女の名前が出てきましたが。
 前シナリオで出さなかったのは、まあ別に深い意味はありません。
 考えるのが面倒だったからとかでもありません。ええ、決して。

 それにしても、登場するゲストキャラが最近ヤンデレばかりのような気が……。