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【借金返済への道】秋の味覚を堪能せよ!

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【借金返済への道】秋の味覚を堪能せよ!

リアクション

 口の周りにバンダナを巻き、さらにそのバンダナの下にマスクをして、匂い対策をしつつギンナンを拾っているのは結和だ。
 ギンナンを踏みたくないと空飛ぶ箒で超低空飛行をキープ、そして匂いが漏れないように3重にしたビニール袋を持ち、軍手をして大型のトングを持参している。
 かなりの念の入れようだ。
「ギンナンの数は調理する人によるかもってホイップさんは言ってましたが……んー……どれくらい使うのか聞いてからこっちに来ればよかったですねー」
 トングで拾ったギンナンを袋に入れながら呟いた。
「そういえば……いつの間にか魔道書さんの姿が見えないのですが……」
 占卜大全を探してキョロキョロと見回すが、見当たらない。
 仕方がないので、ギンナン拾いを再開する。
「結和ちゃん」
「あ、魔道書さ……どうしたんですか!?」
 ちょっとすると背後から占卜大全に声を掛けられたのだが、ギンナンの汁がべっとべと(少しの果肉も)ついた顔を見て、驚きの声を上げたのだった。
「いやぁ、さっきそこで木に魅了されて木の上から降りられなくなってる猫の女の子がいて助けたんだけど……こんな状態に」
「そんな事があったんですねー。あ、今タオルを…………もしかして汁が目に入ってませんか?」
 恐る恐る聞く。
 占卜大全があまりにも嬉しそうに自分を見ているのに気が付いたのだ。
 占卜大全の目には、結和の落ち着いた赤のシンプルなレースの下着姿が見えている。
「これは不可抗力だって」
「み、見ないでくださいー!」
「うん……」
 大人しく後ろを向いたと思ったが、顔を斜め後ろに傾けてこちらをチラ見しているのがバレバレ。
「もう! 見ないで下さいって言ってるじゃないですかー!」
「せっかくの結和ちゃんの姿を目に焼き付けるチャンスがーー!」
 結和は光術を発動し、目くらましをしてしまった。
「ああ……素敵タイムが終わってしまった」
「やめてくださいね! さ、一緒にギンナン拾いをしましょー」
 目が見えるようになったとき、ギンナンの効力はもうなくなってしまっていた。
 だが、その目に結和の体を焼きつけることが出来たようなので満足そうだ。
「あれも巨乳じゃなかった」
 少し離れたところから結和を見ていた泰宏はまた次へと移動したのだった。


「このギンナンの汁は服についたら3日は取れないらしいから気を付けて――って、まったく聞く気が無いのね」
 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)紫月 睡蓮(しづき・すいれん)プラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)の3人に注意を促そうとしたのだが……すでにギンナン拾いに夢中になっており、誰も聞いてなかった。
「いや、うん、良いんだけどさ……」
 唯斗はちょっと寂しそうだ。
「おお、この辺りのギンナンは大振りでうまそうだ」
「エクス姉さん流石ですー! これが美味しそうなギンナンなんですねー」
 エクスが品質のチェックをしたばかりのギンナンを見て、睡蓮が感歎の声を上げた。
「なるほど、こういうのが良いギンナンなんですね」
 プラチナムも覗きこむ。
「この森、変わった匂いがしますねー。だいぶ強烈ですよねー」
「そうか、おぬしはギンナンが初めてであったか。この匂いはギンナンの匂いだ。普通のものよりかなり強いがな」
 睡蓮の疑問にエクスが答えた。
「なるほど! 潰すともっと匂いが強くなるって兄さんが言ってましたよねー。じゃあ、私は踏まないように飛びながら集めますー」
「うむ、それが良いかもしれぬな。あまり遠くまで行かないように気を付けるんだぞ?」
「はいー!」
 エクスが注意をすると、素直に頷き、睡蓮は低空飛行しながらギンナン拾いに没頭していくのだった。


「ギンナンをたんまり拾えばホイップに……褒めてもらえる!」
 強く拳を握り、ホイップに褒めてもらえる事を妄想して気合いを入れたのは大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)だ。
 ホイップの大ファンらしい。
「超孫よ、頑張れー!」
 そんな剛太郎を応援するのは大洞 藤右衛門(おおほら・とうえもん)だ。
「うおりゃーーっ!」
 剛太郎は叫びながら、ギンナンを拾い、背負った籠の中へと入れていく。
「そのいきじゃ」
 藤右衛門はそんな剛太郎を温かく見守り、自分もギンナンを拾っていく。
 ある程度集まると、剛太郎はそわそわきょろきょろと辺りを見回す。
 藤右衛門の様子を見、ギンナンを拾っていてこちらを見ていない事を確認すると、手に持っていた1粒のギンナンを自分の目のところへと持って行った。
(ホイップを見る……かどうかは置いといて、ギンナンの効果を確認はしないとな、うん)
 しかし、その様子を藤右衛門はばっちり見ていた……が、止めることはしなかった。
 自分もまた、ギンナンを使って女性の体をチェックしようとしているのだから当然だろう。
 剛太郎と藤右衛門が目の中へと汁を入れると、その強烈な匂いに一瞬目を閉じてしまったが、自分の目的を思い出し、目をしっかりと開けた。
 2人とも側にいたエクス、睡蓮、プラチナムをがん見する。
 エクスは白のレースで胸の谷間とパンツの前中央を黒いリボンで編み上げられた下着を、睡蓮は可愛らしいケーキがプリントされた下着、プラチナムは深緑の総レースの下着を身につけている。
「エクスは……ちっちゃいな」
「しかし睡蓮よりはあるようじゃな」
「!?」
 いきなり隣にきた藤右衛門に驚き、声をあげようとしてしまったが、すぐに自分と同じ事をしているのに気が付き、やめた。
「あの3人の中ではプラチナムが一番大きいようじゃな」
「そうだな。標準より少し大きい感じの――」
「さっきからごそごそやってる連中がいると思ったら……エクス達を見るんじゃねぇーーっ!!」
「!!」
 剛太郎と藤右衛門の背後にはいつの間にか唯斗がいたのだ。
 唯斗は2人の股間へと両手を伸ばした――が、間一髪のところで避けられてしまった。
 そのまま2人はダッシュで逃げ出した。
「天誅金的クラッシャーを大人しく受けておけばよかったものを……待ちやがれーーーっ!!!」
 2人を追いかけ、唯斗も走って行ったのだった。


 こちらでは池から走ってきたホイップ達がようやく到着した。
「あそこだ」
 ジュレールが指差した先にはイチョウの色気にやられて、木に登って、幹にしがみついているカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)の姿があった。
「カレンさん!?」
 助けようとしていた占卜大全を猫のような威嚇で追い払おうとしている。
 占卜大全はホイップ達が来たのをみて、ここは任せたと他の場所へと移動していった。
 ホイップが近づいて行くと、最初は威嚇していたが、その顔を確認出来ると大人しくなり、瞳から涙がほろりと出た。
「カレンさん! 大丈夫!?」
 木の下まで来て、ホイップが声を掛ける。
「あ……れ……? ボクどうして……」
 自分が涙を流している事実に驚きを隠せないようだ。
(……ああ、そっか……友達だと思って抑えてただけだったんだ……やっぱりボクはホイップが好きみたい)
 涙の理由が分かったとき、完全にイチョウの色気から解放され、正気に戻った。
「ごめん! 今、降りていくから――」
 そう言って、降りようとした刹那、カレンは足を滑らせ、ギンナンが大量に落ちている地面にダイブしてしまった。
「大丈夫(か)!?」
 ホイップと、ジュレール、黎が一斉に駆け寄り、声を掛ける。
「大丈夫、大丈夫……ん?」
 むくりと起きあがり、ホイップの方を見て、カレンは固まってしまった。
 ギンナンの実が潰れ、その汁がカレンの目の中に入ってしまっていたのだ。
「淡いイエローのシフォン生地が見え……る」
 そう言うとカレンは鼻血を垂れさせた。
 色と生地に思い当たったホイップは自分の胸元をちょっとだけ開けて、確認をし、自分の下着である事が判明した。
 白地に淡い黄色のシフォン生地をあしらったものでお気に入りの下着の1つだ。
「えーっと……スケスケ銀杏って本当に透けるんだね……」
「ああ、そうらしいな。ここは危険だろう。カレンは我に任せて次の食材を採りに行くと良い。カレンを正気に戻してくれて有難う、手間を掛けさせてすまない」
「皆が頑張ってるんだから、私だけ逃げるわけにはいかないよ。ギンナンも拾わないとね!」
 ジュレールは一刻も早く、この場所から立ち去らせようとホイップの背中を押したが、ホイップはそれをよしとはしなかった。
 横で黎が頷いていた。


 ホイップがギンナンを拾っていくと、また占卜大全が木の色気にやられたエミン・イェシルメン(えみん・いぇしるめん)を助けている場面に出くわした。
 今度は結和も一緒だ。
 エミンの手には3重にした袋があり、中にはそれになりにギンナンが入っているようだ。
「ああ、なんて美しいんだろう! 黒々とした幹の中にはきっと優しさが詰まっているんだろうね……なんて愛しいんだろう!」
 エミンは木の根元に座り込み、うっとりとした表情を浮かべ、木を褒め称え続ける。
「聞こえてますかー? ここにずっといるわけにはいかないんですよ? ちゃんと帰らないと心配する人がいるんですから!」
「結和さん、そうだね……でも、この木を愛してしまっているんですよ。ですから離れたくないのです。結和さんは優しいですね。だからこんなにも瞳が綺麗なのか……まるで吸い込まれそうです」
 エミンは結和の顎を持ちあげてしっかりと目を見て告げた。
 説得しようとした結和は返り討ちにされてしまった。
 エミンの言葉に顔を赤くして口をぱくぱくしてしまっている。
 エミンの方は言うだけ言うと、また木に向かって甘い言葉を吐き出した。
「うごっ!!」
「って、急に何するんですか!?」
 いきなりエミンの後頭部を殴りつけ、気絶させたのは占卜大全だ。
 結和がエミンをゆすってみるが起きない。
 これにはびっくりして、ホイップも駆けつけ、結和と一緒にエミンを抱き起こした。
「いやぁ、ごっめーん。ちょっと手が滑ったみたーい」
 占卜大全は言葉では謝っているが、全く誠意が感じられない。
(結和ちゃんに何してくれてるのかなぁ、この野郎)
 なんて事を考えているのだから当然だろうが。
 占卜大全は放っておいて、結和とホイップがエミンの頬をぺちぺち叩き、起こす。
 暫くすると、目を覚ました。
「自分は一体……?」
 色気から解放されたエミンに結和が説明をすると恥ずかしそうにしていた。
「ご迷惑をおかけしてすみません」
「大丈夫なら良いですよー」
「うんうん! 良かったね!」
 エミンが謝ると、結和とホイップは笑顔で言った。
「あなた達は海の様に深い慈愛に満ちているのですね」
 2人の手を握り、さらっと他意なく言えるのが凄いところだ。
「はーい、もう2度と迷惑にならないように、ここから離れようねー」
「えっ!? えっ!?」
 かなり面白くなさそうな占卜大全がエミンを担ぎ、無理矢理森の外へと連れ出してしまったのだった。


 セーラー服姿でギンナンを拾っているのは滝宮 沙織(たきのみや・さおり)だ。
「んー? さっきから視線を感じるんだけど……」
 さっと振り向くと木の陰に隠れた人物がいた。
(そんなに巨乳じゃない……と)
 泰宏は小花柄の下着を身につけている沙織の胸をチェックすると、次へ移動しようとしたが、ホイップが近くに来たのを確認して、ギンナンを持って、スタンバイした。
「沙織さん、そっちはどう?」
「けっこう採れたよー! ほらー!」
 ホイップに自分が採ったギンナンを1つ手に取り、見せる。
「大きくて立派なギンナンだよね!」
「うん!」
 ホイップに見せ終わったギンナンを袋の中へと戻そうとした時、あまりに熟しすぎていた為か、少しだけ力を入れただけで果肉が破れ、汁が飛び跳ね、沙織の目の中へと入ってしまった。
「くさーい!! 何これーー!」
 目をこすって、涙目になりながら、ゆっくりと瞳を開けると、じーっとこっちをみている泰宏と目が合った。
 そして、視線はがっしりとした泰宏の体へ。
「逞しい体……どきどき……って、そうじゃなくて! もしかしてさっきから見られてたのはコレ!?」
 沙織は泰宏へと走り寄っていった。
 泰宏はやっと出会えた大きい胸に釘付けになっており、反応が遅れてしまった。
「もう、もう! ばかばかばかっ!!」
「すまんー!!」
「いやーーーっ!」
 左頬に右ストレートパンチ、顎に左フック、腹に正拳突き、そして最後に大事な部分を蹴りあげられてしまった。
「う……ご……」
 見事にノックダウン。
「あれ? ごめんなさい! ごめんなさい!!」
 沙織は一所懸命に頭を下げ、謝ったが、泰宏はそれどころではなかった。
 泰宏の目からはギンナンの汁を入れたわけでもないのに、涙が止まらなかったという。


「けっこうギンナン採れたし、そろそろ最後の食材に――」
 ホイップが黎に話しかけたときだった。
 誰かがこちらへと向かって走って来ている。
 1人は剛太郎、もう1人は藤右衛門、そしてその2人を追いかけている唯斗だ。
「ホイップを発見!!」
 剛太郎はそう叫ぶと、走りながら背中の籠に手を伸ばし、ギンナンを1つ取ると汁を目の中へと入れた。
 勿論、藤右衛門も同様だ。
「見ようかどうしようか悩んでいたのではなかったのかの?」
 藤右衛門はにやにやと剛太郎へ言う。
「せっかくのチャンスを逃したら男がすたる!」
「よく言ったのぅ!」
 2人はさらに走るスピードを上げ、ホイップへ近付き、よく目に焼きつけようとしたが、そう簡単には問屋がおろさない。
「そうはさせない」
 ジュレールがホイップの前に立ち、盾となってしまった。
「エクス達だけじゃ飽きたらず……もう我慢ならねぇ!」
 唯斗は雷光の鬼気で拳と足に雷を纏うと一気に間合いを詰めた。
 そして、がっかりしている2人の背中に拳を入れ、体勢が崩れ、前のめりになったところで、足を払い、倒れさせた。
「そんな目はいらないよな」
「ふごーーーっ!」
 髪を掴んで頭を上げ、2人に指2本で目潰しをする。
「これでしばらくは見えないだろう」
 満足そうに唯斗は立ちあがった。
「無念……」
 2人は声を揃えて言った――が、これで終わりはしなかった。
「嫁入り前の娘に、なんて事を考えている!」
 ホイップの護衛をしていた黎に弱めの氷術で瞼を凍りつかされてしまった。
「こんなところにおったのか……何かあったのか?」
 そこへいつの間にか消えていた唯斗を探しに来たエクス達が到着した。
 事の次第を唯斗が話すと、エクスの目がキラリと光った。
「汝等、消し炭にしてくれる」
「いや……もうじゅうぶ……あぎゃーーーっ!」
 エクスから問答無用のサンダーブラストを食らった。
「本当にやる人がいるなんて、あほらしくて言葉がありませんね」
 プラチナムは言葉で2人を刺した。
「もー、そんなことしちゃダメですよー」
「は……い……」
 一番小さい睡蓮に言われ、一番のダメージを受けたのだった。