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救助隊出動! ~子供達を救え~

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救助隊出動! ~子供達を救え~

リアクション

 本命の馬車を待機させてある地点。凪から精神感応で連絡を受けた夜月鴉が、クレア・シュミットへと状況を伝える。
「クレア、突破された……っていうか、向こうが囮だって気付かれたらしい。二割くらいは削ったけど、大半がこっちへ来るってよ」
「そうか。ならば作戦通りここで迎え撃つ事にしよう」
 クレアは頷き、再度布陣を確認する。自身の後方に護衛の馬車を置き、その周囲には狙撃兵が複数配置されていた。更に前方には近接戦要員と、第一射用の砲撃要員がいる。その中で砲撃要員の指揮を執っている武神牙竜へと声をかけた。
「武神と言ったか……。どうだ、状況は」
「おう、クレアだったか。こっちはいつでも行けるぜ。なぁ、ライザー」
「はい、マスター」
 牙竜が後ろに声をかける。するとその空間がゆがみ、2mを越す機晶姫が姿を現した。
「クァイトス、クリュティ両名の管制システムとのリンクは完了済み。マスターの許可があり次第、ミサイルの一斉発射が可能となっています」
 機晶姫、重攻機 リュウライザー(じゅうこうき・りゅうらいざー)が答える。その近くでは今リュウライザーが挙げたクァイトス・サンダーボルト(くぁいとす・さんだーぼると)クリュティ・ハードロック(くりゅてぃ・はーどろっく)の二人がマスターである閃崎 静麻(せんざき・しずま)と話をしていた。静麻がこちらに気付き、声をかけてくる。
「よう、こっちはもう準備は出来てるぜ」
「ああ、武神から確認した。今、こちらに増援の部隊が向かっているらしい。まもなく戦闘になる。よろしく頼むぞ」
「任せておきな。って言っても俺は上から不意を突くだけだからな。クァイトス、クリュティ、期待してるぜ」
「了解です。マスター静麻」
 クリュティが答える。クァイトスは言語回路が搭載されていない為、頷く事でそれに答えた。
「それじゃ、俺は上に上がるぜ」
 静麻が空の色に合わせて迷彩を施した小型飛空艇に乗り込む。上昇すると、遠目からは視認が難しくなっていた。
「さて、俺もちょっくら前に出させてもらうとするかな」
 牙竜が街道を進む。その背に向かってクレアが声をかけた。
「どうする気だ? 武神」
「何、とりあえず警告くらいはしてやらないとな」
 そう言って牙竜は少し先の地点で身を潜ませた。代わりに後方から三船 敬一(みふね・けいいち)がやって来る。
「隊長殿! 狙撃班、配置完了しました!」
「ご苦労。……三船、別に私は隊長という訳では無いのだが」
 クレアが答える。だが、敬一は実力のある者には一定の敬意を払う人だった。
「いえ、この戦い、ロイヤルガードであるシュミット隊長こそが率いるにふさわしいかと」
「そう言ってくれるのは有り難いがな……。分かった、その名に恥じぬ戦いをして見せよう。三船こそ、エイミーとパティを任せたぞ」
「はっ!」
 敬一が待機場所へと戻っていく。クレアはそれに背を向けると、街道の先を見据えた。
「そろそろか……。そうそう賊の好きにはさせんよ」
 
 
「リスさん、辺りに怖そうな動物さんはいませんですか〜?」
 馬車のそばでは、咲夜 由宇(さくや・ゆう)が動物と話をしていた。それを見てミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)が驚きの目で由宇を見る。
「うわぁ。由宇さん、動物の言葉が分かるの?」
「私、ドルイドですから〜。何となくですけど、動物さんが何を伝えたいか分かるんですぅ」
「凄いっ! ねぇねぇ、このリスさんは何て言ってるの?」
「え〜っと、近くにはいないって言ってますね〜。狼さん達もどこかに行ってるみたいですぅ」
 その時、急に手のひらに乗っていたリスが飛び降り、森の奥へと逃げ出そうとした。由宇がそれを追おうとする。
「あっ、待って下さい〜」
「待つのは由宇の方だと思うけどねぇ」
 そのまま森へと入って行ってしまいそうな由宇の首根っこを、パートナーであるアレン・フェリクス(あれん・ふぇりくす)がガシっと掴んだ。そのまま馬車の方へと引きずって行く。
「あ、あうぅぅ。放して下さいですぅ」
「オレ達の役目は馬車の護衛だろう。あまり離れるんじゃない」
「で、でも〜。リスさんが『何か怖いのが来る』って言ってたんですぅ」
「……何?」
 アレンの動きが止まる。それとほぼ同時に上空の静麻がバイクの土煙を見つけた。
「来やがったぜ! 団体さんのお出ましだ!」
 
 
「見つけたぜ! あれが獲物だぁ!!」
 猛スピードでバイクを走らせるならず者達の視界に、目的の馬車が飛び込んできた。男達は鬨の声をあげて突撃する。
 ――すると、街道に一人の男が立ちはだかった。武神牙竜だ。牙竜はならず者達に向かって『警告』を発する。
「俺はかつて、正義のヒーロー……ケンリュウガーと呼ばれていたものだ。ここから先に進むのであれば……龍骨の剣の露となると知れ!」
「ケンリュウガーだぁ? 正義のヒーローだか何だか知らねぇが、俺達を止められると思うんじゃねえぞ!」
 止まるどころか更にスピードを上げるならず者達。それを見て牙竜はリュウライザーへと指令を下す。
「やはり退きはしないか……ライザー! オペレーション『サーカス』、始動だ!」
『了解です。マスター』
 携帯電話からリュウライザーの声が聞こえる。牙竜の後方、潜伏していた地点のメモリープロジェクターが解除され、リュウライザーが姿を現した。
「オペレーション『サーカス』始動確認。攻撃対象捕捉。データリンク開始……」
 リュウライザーが前方のならず者達をロックし、データを脇に控えるクリュティ、小型飛空艇ヴォルケーノに乗ったクァイトスと共有する。
「サーカス2、ミサイルポッド、一番、二番、ロック完了。管制をサーカス1に委譲、ユーハブ」
 クリュティのミサイル管制がリュウライザーに移される。『サーカス3』クァイトスも一度頷き、管制を委譲して来た。
「アイハブ。……データリンク完了。5秒後に攻撃を開始します。5、4、3――」
 カウントダウンが始まる。同時にリュウライザーとクリュティが脚部装甲のスパイクで身体を地面に固定し、反動に備える。クァイトスも加速ブースターを起動させ、ヴォルケーノの姿勢制御をした。
「2、1――発射」
 三人合わせて八門の六連ミサイルに加え、ヴォルケーノのミサイルが一度にならず者達へと襲い掛かる。個々のミサイルが流麗な弧を描きながら敵陣へと飛んで行く様は、さながら戦闘機の航空ショーか、あるいは空中を自在に飛び回るサーカスの曲芸を彷彿とさせた。
「な、何ぃ!?」
 突然前方から襲い掛かってくる大量のミサイルに驚いたならず者達は、慌てて回避を試みる。だが、広いとは言っても所詮は森に挟まれた街道。ましてや大人数で併走しながらの突撃である。避けるどころか動く隙間も無いまま直撃を受ける者、無理やり避けようとして他の仲間や両脇の木にぶつかる者、倒れた前の仲間のバイクに乗り上げて転倒する者など様々であった。
「く、くそっ。怯むな! 進め進めー!!」
 運良くミサイルの標的にならなかった者や後方にいた為に難を逃れた者達が再び突撃してくる。しかし、その大半は新たなる障害に阻まれる事となった。
「よし。皆、準備はいいな?」
 敬一が銃を構えながら周りを見る。隣ではパティ・パナシェ(ぱてぃ・ぱなしぇ)エイミー・サンダース(えいみー・さんだーす)がそれぞれ狙いをつけていた。
「はいっ、子供達の明るい明日の為に、頑張っちゃいましょうね。エイミーちゃん」
「けっ、別にガキがどうなろうと知った事じゃないね。でも、ボスの指示だし……それに弱い者イジメしてる奴らなんて気に食わないね。だから、ちゃんとやってやるよ」
「もう〜、そんな事言っちゃって。本当はエイミーちゃんがとても優しい娘だって分かってるんですからね〜」
「オレはそんなんじゃないっての! いいからとっとと片付けるぞ!」
「ふふっ、はいはい」
「さて、二人ともいいみたいだから行くぞ。……今だっ!」
 敬一のタイミングに合わせ、それぞれが発砲する。先頭のバイク達はタイヤを正確に射抜かれ、後続を巻き込みながら転倒する。
「くそっ、狙撃か! 前に気をつけろ! 撃たれさえしなけりゃ――」
「……残念、前だけじゃないのよね」
 突然頭上から声がしたかと思うと、上空から銃弾が降り注ぐ。シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)と静麻からの狙撃だった。
「はい命中、と。しっかしまぁ、よくワイバーンなんかに乗ったまま撃てるね」
「そう? 両手が使えるし匍匐姿勢もとれるし、結構便利よ」
「つっても、そんなに揺れてちゃ狙いが付けづらいだろうに」
「リズムがあるから慣れるとそうでもないわよ」
「そんなもんかねぇ」
 のんきなやり取りをしている二人とは対照的に、地上のならず者達は狙撃を避けられる地点を探しまわっていた。ある者は一旦バイクを降り、脇の森へと身を隠す。
「はぁ……はぁ……。へへっ、ここなら撃ってくる事も出来ねぇだろ。待っていやがれ……すぐに狩ってやらぁ」
 男が木々を盾に身を隠しながら馬車へと向かおうとする。だが、そこに黒服の少女、ゾリア・グリンウォーター(ぞりあ・ぐりんうぉーたー)が立ちはだかった。
「非武装の女子供を襲う程度の連中が、我々を前に狩りだのなんだの……。クク……笑える冗談です。てめーら立場がまるで分かってないにょろ」
「ちっ、こんなとこまで来やがるか」
 男が武器を構える。だが、ゾリアは武器を構える事無く、鬼眼で男を怯ませる。
「てめーら、獲物を見つけていかにも得意顔って感じだから懇切丁寧に教えてやるです。……我々も『同じ』にょろ」
「同じだと? 訳の分から――ギャッ!」
 男がゾリアへと一歩近づいた瞬間、後ろからの攻撃を喰らって崩れ落ちる。そこにはゾリアによって召喚された、悪魔のザミエリア・グリンウォーター(ざみえりあ・ぐりんうぉーたー)が立っていた。
「ふふ、だから『同じ』だと言ったでしょう、我がマスターが。あなたはわたくし達にとっての獲物……狩りの相手なのですわ」
 倒れた相手に最早興味は無いとばかりに二人が街道の方を見る。そこには今倒れている男と同じ考えなのか、哀れにも罠へとかかる獲物のごとくこちらへと近づいてくる男達の姿があった。
「さあ、我がマスター。盗賊風情に、現実というものを教えて差し上げましょうか。……ふふ、闘争の時間ですわ」
「クク……『暴力のプロ』が本当の暴力を見せてあげます……にょろ」
 こうして、森の中はゾリア達による狩場と化した。
 
 
「このやらぁぁぁぁ! こいつでどうだ!!」
 馬車に近づくのが困難と判断したならず者達は、スパイクバイクの機関銃やトミーガンなどの飛び道具を使って馬車を攻撃して来た。その攻撃をミルディアが盾を構えて受け止める。
「絶対に守ってやる……馬車はやらせないんだからっ!」
 その後ろではロビン・グッドフェロー(ろびん・ぐっどふぇろー)が馬車の手綱を握って、馬を落ち着かせていた。馬にはあらかじめ、音や敵の姿で驚かないようにブリンカー付きのメンコを装着させてある。
「よーしよし。お前さんは俺とミルディアの嬢ちゃんが守ってやるからな。いい子にしてろよ……。ミルディアの嬢ちゃん、大丈夫かい?」
「任せて下さいっ! あたしは空を飛ぶ事も出来ないし、強い攻撃も出来ないけど……馬車を守る事くらいはしてみせるんだからっ!」
「そうかい。だがそのままじゃ反撃に移ることも出来ないんじゃないか?」
「反撃? 反撃は元から考えない! 他の人にお願いするよ! その代わり、あたしは絶対にここを守ってみせる!」
「……へっ、未熟半熟であろうとも、手持ちの札で戦ってみせるか。……気に入ったぜ。分かった、俺が絶対に馬を抑えつけといてやる。その代わり、馬車の護衛は任せたぜ」
「はいっ!」
 ミルディアがなおも銃弾を防ぎながら答える。その先ではようやく馬車を護衛していたメンバーが射撃を行っている敵に肉薄しようとしていた。
「行きなさいっ!」
 九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)が魔獣を呼び出し、戦場を駆けさせる。
「おわっ! このっ、どきやがれ!」
「その隙、もらった!」
 魔獣が足元を駆ける事でバイクに乗っているならず者達の動きが鈍る。その隙を逃さず、ローズは薙刀を操って男達をバイクから引き摺り下ろした。
「ん〜、いい感じ。ほら、これもあげようかねぇ」
 引き摺り下ろされた敵めがけてアレンが火術を放つ。
「あちっ! あちちち!」
 そのまま転がって火を消すならず者に由宇が両手剣で追い討ちをかける。
「え〜いっ!」
「ぐはっ!」
「絶対にこの馬車は壊させないのです! みんなが笑顔で帰ってくる場所なんですから!」
 続けて銃を撃っているならず者へと斬りかかる。それをアレンが魔法で援護した。
「帰る場所を護るのはいいけどねぇ。由宇、君はただでさえドジなんだから怪我しないように気をつけないと駄目だよ」
「はうっ。わ、分かってるのですぅ」
 自覚はあるのかちょっと落ち込む由宇。それをローズがフォローした。
「安心しな。ちょっとの傷くらいなら自分が治してやるさ」
「それならいいけどねぇ。ま、そうならないように気をつけておきますか」
 
 
 砲撃と狙撃で大半を削られ、奇襲をかけようとした者は逆に奇襲によって破れ、馬車へと強襲をかけた者はその防御の前に押し返されていた。そして残った者達は――
「効かない……」
 敵の攻撃を巨大な盾、ラスターエスクードで受け止めながら、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が敵陣を駆け抜ける。そしてリカインに気を取られた者は狙撃によって数を減らされていった。
「くそっ、デカブツ持ってやがるくせにちょこまかと動き回りやがって!」
 他のならず者を盾にする形で狙撃の射線から外れた男がリカインへと斬りかかる。
「どんなに防ごうが、盾だけで何が出来――」
「――こんな事が出来る」
「ブッ!?」
 リカインがドラゴンアーツなどで身体を強化した状態で盾をならず者へと叩きつける。さすがに倒せはしないものの、直撃をくらった相手はフラフラとよろめいた。そこにレイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)が追撃を入れる。
「はあぁっ!」
「げはっ!」
 鞘に収められたままの剣の一撃だが、それでも気絶してしまうほどの威力はあった。レイナはそのまま左手の剣も振り抜き、もう一人の男へと喰らわせる。
「あと少し! 皆さん、一気に畳み掛けますよ!」
 そう言ってレイナが光の翼で空を飛ぶ。そして相手の死角を突く形で次々とならず者達を倒していった。
「凄ぇな、ありゃ。まぁその分こっちは楽出来るからいいけどな」
 レイナの奮戦を見て鴉があからさまに手を抜く。彼は色々と他人を助ける立場になる事が多いものの、本質的には面倒くさがりな面があった。そんな鴉の前に、バイクに乗ってならず者達を追いかけていた凪が到着する。
「……鴉」
「お。凪、お帰り。なんか大変だったみたいだな」
 鴉の言葉に凪が首を振る。
「……こっちの方が大変。……だから戻って来た」
「そっか、ありがとな。でもほら、皆強いからさ。もう終わりそうだぜ」
「……凄い」
「だからさ、凪は……いや……『俺達』は、ここで見守ってようぜ」
 鴉が凪の頭に手を置く。彼女は両親の影響で幼い頃から戦場に立っていた為、戦闘に入ると惨忍で冷酷な人格が出る事があった。
(わざわざそんな面を出させる事は無いもんな……)
 頭に置いた手で軽く撫で回す。それが気持ちいいのか、凪は目を細めながら頷いた。
 
 
「ひ、ひぃぃぃ!」
 ならず者の一人が尻餅をつき、後ずさる。その眼前にはファイアストームを身に纏った空京稲荷 狐樹廊(くうきょういなり・こじゅろう)がいた。
「おや、逃げる事は無いじゃありませんか。手前の炎舞・鳳閃渦、じっくりと味わってもらいたいのですがねぇ」
 アボミネーションによっておぞましい気配を放つ狐樹廊を前に、男は完全に恐怖に飲み込まれていた。
「た、助け……」
「無論、殺しはしませんからご安心くだせぇ。あなた方には空京から旅立った者を襲うという事がどういう事なのか、しっかりと世に伝え広めてもらわないといけませんからねぇ」
 狐樹廊がゆっくりとにじり寄る。男はなおも後ずさり続けていたが、やがて背中に木の感触を感じた。
「ひっ!?」
「追いかけっこは終わりのようですねぃ。それでは、じっくりと教えて差し上げましょうか……」
 一歩、また一歩と距離を詰める。やがてそのプレッシャーに耐えられなくなったのか、男の体から力が抜けていった。どうやら気絶したらしく、白目を剥いている。
「おや、これからという時に残念な事です」
「気が済んだか? 狐樹廊」
 これまでの一連の戦闘を記録していたアストライト・グロリアフル(あすとらいと・ぐろりあふる)が声をかけた。
「ったく、趣味の悪ぃ事しやがってよ」
「おや、何の事ですかねぃ」
「とぼけんなよ。野良の盗賊相手に私刑で恐怖制裁。別に否定も非難もしねぇけどさ、一応ツァンダ……ひいては蒼空学園にだって面子ってもんはあるんだぜ」
 あくまでも撃退や捕縛にとどめておき、それ以上の事には手を出さない。それがアストライトのジャスティシアとしての判断だった。それを知ってか知らずか、狐樹廊はにっこりと笑う。
「嫌ですねぃ、アストライト。もちろん冗談ですよ。手前は空京の地祇。ツァンダさんのご迷惑になるような事をする気はありませんよ」
「だったらいいんだがな」
 狐樹廊がこういった態度を取る時は大抵うやむやにされてしまうので、アストライトは深く追求せずに話を打ち切った。
「これで街道の賊は一掃出来たようだな。皆、よくやってくれた」
 全体の指揮とカバーを行っていたクレアがこちらにやって来る。
「すまないが、手が空いている者は賊を縛り上げておいてくれないか。引渡しは私がロイヤルガードとして請け負おう」
 その言葉でそれぞれがそこかしこで気絶しているならず者達を縛り上げていった。それを指揮しているクレアにアストライトが記録データを差し出す。
「えっと、クレア・シュミット……さん……だったか。これを使ってくれないか?」
「これは……記録ディスクか?」
「ああ。俺はアストライト・グロリアフル。ロイヤルガードを目指してジャスティシアをやってるんだ。そのディスクには今回の事件について収めてある。今後同じような事件が起きないようにする為の対策として役立ててくれ」
「そうか……分かった。協力に感謝する。私があなたをロイヤルガードに推薦出来る訳ではないが、あなたのような行為が平和に繋がるのであれば、これは決して無駄にはならないだろう」
 こうして、街道での戦いは終わった。後は森へと入ったメンバーが、子供達を連れてくるのを待つばかりである……。