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リアクション
第一章 大奥恒例。年末大掃除!3
「おーい、現示さん。ちょっと、手伝ってもらいたいんですけどねえ」
八神家の家の前で、瑞穂藩で活躍した八神 誠一(やがみ・せいいち)が手招きしていた。
瑞穂藩士日数谷 現示(ひかずや・げんじ)がかったるそうに言う。
「だから、なんで俺がおめえん家の大掃除を手伝わなきゃなんねえんだよ」
「まーた、そういう反抗的な態度をとる。瑞穂のために僕がどれほど骨を折ったと思いますか。おかげで、冷蔵庫の中身の処分をやり忘れてたんですよ。まあ、終わったら忘年会も兼ねて飲みましょうよ」
にこやかに答える誠一だが、現示ははた玄関先で足を止めた。
「さっきから、なんか異様な殺気を感じるんだが、おめえん家って何屋?」
「ん? ま、いいじゃないですか。さあさあ、どうぞ上がって!」
誠一は暗殺一族の分家であることを巧妙に隠ながら、現示をズラリと並んだ鎖で封印された冷蔵庫の前に立たせた。
現示が一、二歩と下がる。
「だから、てめえは何屋なんだよお!」
「ははは、往生際が悪いですよ。八神一家の地獄の年末大掃除、とくとご覧いただこうか!」
いつの間にか防毒マスクにゴーグル、手袋といった完全武装の誠一が鎖の一つを引きちぎった。
「ご開帳うう〜!!!」
中から飛び出したのは……ほんの一例。
緑色をした粘性の『何か』
青紫色で鉤爪の生えた『何か』
黒色で瘴気を吐く『何か』
赤と黄色のまだら模様で触手を生やしている『何か』
灰色で牙を生やした『何か』
茶褐色で小さな『何か』を飛ばしてくる『何か』
ぎゃあああああああ〜〜〜
声にならない声が辺りに満ちていく。
現示は口元を押さえ、出口を求めた。
「だらしないあ。コレはオフィーリアの作った元料理の数々ですよ〜。ほら、この辺にその名残が見られませんか?」
誠一は笑いながら、ぐにゃぐにゃしたものを割り箸でかき回している。
とたんに割り箸は折れ、どす黒い瘴気が立ち昇った。
「やめろおお! 俺を殺す気か!?」
現示はすでに戦意を消失している。
「まったく、役にたたねー男だな。そこどきな! 大掃除ってのはこうやってやるもんだ」
シャロン・クレイン(しゃろん・くれいん)が機関銃を構え、精神を集中させた。
特技の射撃技術を活かして引き金を引く。
弾を次々に『何か』にぶち込み、ババババババッという機関銃と共に、薬莢が転がった。
硝煙があたりに立ち昇る。
「おかしいだろ。絶対てめえら、おかしいだろ。なあ!?」と、現示。
「信じられねーだろーけど、あれが八神家の『冷蔵庫の中身』だ。最後まで付き合ってもらうぜ」
シャロンは、機関銃を装填して再度狙いを向ける。
大掃除は……まだ始まったばかりだ!
卍卍卍
「ほれほれ、よくぞ参られた。ちっと驚かれたようじゃが、いつものことだ。酒でも飲んで落ち着かれよ」
「じーさん……あんたもおかしいだろ」
今年も大掃除が無事に(?)済んだ八神家では、そのまま忘年会へと突入していた。
伊東 一刀斎(いとう・いっとうさい)が刀の話を肴に酒をあおっている。
「おぬしの刀、かなりの業物とみたがいかなる銘かな」
「ああ、これは『元平(もとひら)』だ。これ一本で家が建つな」
「素晴らしい! やはりただの盗人風情が持つ刀ではないな」
一刀斎はニヤリと笑い、現示は咳払いをした。
「……コホン。ちなみに、鬼城貞継が持ってるのは『宗近(むねちか)』らしいぞ。あいにく、俺は奴と手合わせすることはなかったが」
「ほほう、名刀に銘酒……いい組みあわせじゃな。なあ、誠一」
一刀斎は上機嫌で誠一にもたれ掛かっている。
今回の酒は誠一が大奮発したものだ。
「まあね、お礼も兼ねてですよ。何はともあれ、お互い無事に過ごせたんです。次のシリーズにも皆さん出演してくださいよ」
そう言って誠一が酒に口付けたとき、
オフィーリア・ペトレイアス(おふぃーりあ・ぺとれいあす)が彼の背中をばんと叩いた。
「……ぶはっ!」
「せ〜ちゃん、なに綺麗にまとめようとしてるんだ? 俺様ほったらかして茶屋に行ったり、最終回でシャロ参加、俺様留守番とは、どうゆう了見だ? ええ?!」
既に酔いが回ってるオフィーリアはしつこく絡みだした。
「納得できないのだよ!」
「いや……それは」
タジタジの誠一を見て、一刀斎は現示に耳打ちした。
「ここの娘たちもこれで多少色気があると良いのだが……おぬしも次は小僧だけでなく、わしも茶屋に誘うて欲しいのう」
「うるせー、クソジジイ。聞こえてっぞ。不満があるなら手酌で飲んでろ」
酔っ払ったシャロンが顔を赤くしながら吼えていた。
ふと現示と目が合い、目を逸らす。
「あんたは……まあなんだ、日数谷。踏んだりけったりでも出番が多かったと思えば、悪い事じゃねえよ。初詣に誘えるそうな相手、出来たらいいな。うんまあ、ガンバレ」
「ちょっとまて、何で俺同情されてる?! そんな可哀相な奴にみえんのか!」
「みえる!」
現示の叫びに、八神一家全員が一致していた。
こうして朝までドンちゃん騒ぎが続くのであった。
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