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 ゆーこ(YuriYuriYuko) on Twitter
 プロフィール:女子高生やってる。テレビに出たこともあるよ。イモい奴のフォローお断り
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 あいつら自分で鍋作るらしい。注文しろよ

 世界のナベアツって日本で仕事なくなったから空京きてるらしいよ

 @eiichi_hagi とんだ変態だな

 うぜー

 トイレ血まみれなんだけど

 事件?

 違うって

 これあたしが掃除すんの?

 この店うぜー

 決めた、バイトの鳳明ってやつにおしつける




 再びアゲハのテーブルに戻ろう。
 こちらではあまりにも絶望的なアゲハ鍋に見切りをつけた鍋将軍が別の鍋を用意しようとしていた。
「最初からこうしておけば良かったのだ。何も奴らの鍋に手を入れる必要などない」
「そのとおりでございます、殿。毒が入った鍋など奴らが許しても世間が許しません」
「我らの正しい鍋を見せつけて奴らの悪行三昧に天誅をくだしてやりましょうぞ」
「その意気や良し!」
 不意に、通りすがりの帝王ヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん)が叫んだ。
 遮光器を被って顔を隠し、黄金の箸を携えマントをたなびかせ、堂々登場。
 世間擦れした風貌に世間の冷たい視線が刺さるけれども、強靭なカイザーハートで跳ね返す。
「待たせたな! 帝王派美食集団が首領、解決、味・帝・王推参! 味比べとあれば、この『味帝王』の出番!」
「味比べ……?」
「おまえとアゲハ嬢……どちらの鍋が美味か、この帝王タン(Tongue)で品評してくれるわ!」
 ハーハッハッハッと高らかに笑った。
「将軍VS帝王、最強のコラボ来たッス!」
 おともの体育会系獣人シグノー イグゼーベン(しぐのー・いぐぜーべん)も味比べをことさらにあおる。
「あ、勿論VSといっても東映映画祭り的な意味ッスよ?」
「そういうことでしたら、私も参加せざるを得ませんね」
 今度は仮面を装着した戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)が颯爽登場。
「美食と称して他人の料理を卑下する悪行三昧、美食家の風上はもとより風下にすら置くわけにはいきません。この鍋奉行も鍋将軍すらも超越した存在である『鍋皇』が真の美食道をおしえてさしあげましょう」
「え、偉そうに……!」
 なにかもごもご文句を言おうとした将軍、だがその足下にカカッと箸が突き刺さった。
「ひぃ!」
「将軍如きが大きい顔をするのではありません。お下がりなさい」
 さらにもうひとり、ハラペコ乙女姉ヶ崎 雪(あねがさき・ゆき)も可憐に参上。
「灰汁如き箸の一つで取ることも出来ない未熟者に鍋を語る資格はありませんわ」
「取れる……わけねーだろがぃ!」
「あら、わたくしはできますわ」
 クワッと振り袖をめくって肩を出し、その手に光条兵器のラスター菜箸を発現させた。
「箸を制する者が鍋を制す。このチョップスティック選手権空京ナンバーワンのわたくしが目にもの見せてくれますわ」
 そして、品評が始まった。


「実食!」


 まず、美食三部衆はアゲハ達の作った『よどみ鍋』に手をつける。
 帝王はスープをずずずーっとすすった。食あたりを引き起こした危険なスープだが、口いっぱいに含んで味わう。
 帝王を名乗るからにはこれぐらいの懐の深さを見せねばならないのだろう。
「ほう……、スッポンとカレーの組み合わせはなかなかものだ。カレーの隠し味にスッポンなど贅沢過ぎて庶民派の帝王には出来んが、カレーに深みを与えることに成功している。この雑炊もなかなか……。マンドレイクはやめておこう……」
「やべーっス。マジ旨いっす」
 シグノーは興奮した様子で雑炊にがっつく。
「これは……そう、シャンバラ一、いや地球……それ以上、まさにマジ宇宙ッスよ!?」
「……しかし何かもうひとつ隠し味があるな」
「え! 自分、全然わかんないッス!」
中華っぽいな……、それでいて軍隊っぽい……」
 その言葉に、草葉の陰……じゃなくて柱の影から見ていた南部ヒラニィは深く頷いた。
 これで犠牲となった彼女も浮かばれることだろう……、帝王は別にその味を褒めてはいないが。
 とその時、帝王の眉間にしわが寄った。
 あぐらを掻いて鍋をむさぼる姿が帝王の帝王学に反したらしい。
「コラ、シグノー、なんだその姿勢は! 帝王の名において命ずる……おまたを閉じよ!」
「す、すまねぇっス……」
 続いて鍋皇が評ずる。
「帝王殿のおっしゃるとおり……味は良いですね。まあ、カレーと言う浸食されづらい素材が良かったのでしょう。圧政で支配する独裁者のごとく、強烈なカレー風味でほかの食材を圧倒し強引ながらもまとめあげるのに成功しています」
 ですが……、と言って、多比良幽那に厳しい視線を送る。
「食べられないものを投入したのは頂けません。料理に対する冒涜です。料理は愛だ、愛さえあればラブイズオーケーと日本では申します。食材に対しては愛はあったのかもしれませんが、食べる人への配慮が足りないと思いますね、ええ」
「うむ、それは帝王も感じていたことだ。周りの見えない人間は大成しない。それは鍋も同じことよ」
「そんなことありませんわ、美味しいですわ」
「え……?」
 雪の不敵な発言に、鍋皇と味帝王は振り返った。
 見れば雪さん、バリボリとマンドレイクを平らげているではないか。
「や、やめたほうがいいですよ」
「それは流石に帝王ストマックも受け付けなかったのだが……だ、大丈夫なのか、娘?」
「胸一杯に広がる死の風味がたまりませんわ」
 それは毒が広がってるんだと思う。
「歯ごたえと渋味が絶妙な美味しいゴボウのようです。猛毒のベニテングダケも食べるとかなり美味しいと言いますし、同じ毒物のこれもやはり美味なのでしょう。ああ、なんだか美味しさのあまり指先がしびれてまいりました」
 味帝王と鍋皇が顔を見合わせたその時、雪はドサッと崩れ落ちた。
「きゅ、救急車ー!」