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またゴリラが出たぞ!

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またゴリラが出たぞ!

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-1



 また別のテーブルの様子を見てみよう。
 こちらのテーブルでは『すき焼き大会』と言うグループの新年会が催されている。
 大会……と言ってもテーブルにいるのは男女数名で、こじまんりとした仲良しグループの席なのだろう。
 その中で唯一の男子、樹月 刀真(きづき・とうま)はテーブルに肘を突いてぼんやり何か考えていた。
「刀真が考え込んでる……」
 パートナーの漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)は眉を寄せた。
 気分転換にと思って和民に連れてきたのだがまだ引きずってしまってるようだ。
「とーま、どうしたの?」
 久世 沙幸(くぜ・さゆき)は尋ねた。
「たぶん白花のことだと思う。やっとの思いで環菜を連れ戻せたと思ったら、次は白花が扶桑に取り込まれたから……」
「そう。辛いね」
「うん……、でも白花は生きてるし必ず助け出す。私は刀真の剣の花嫁……刀真の剣で最後まで共にあるパートナーだから……、これからも一緒に道を斬り開くの。気持ちはわかるけど、刀真には早く元気になってもらわないと……」
「じゃあまず美味しいごはんだね」
「え?」
「腹が減っては戦は出来ぬって言うじゃない。美味しいすき焼きで元気出してもらおうよ」
 その言葉にきょとんとしたが、すぐに月夜は頷いた。
「とーまが喜ぶやつを頑張ってつくろ!」
「うん、沙幸がね
 迷いなく押し付けられてズッこける。
「な、なんで〜。手伝ってよ〜」
「ごめん、刀真に料理をしちゃ駄目って言われてるから……」
「そ、そうなんだ……」
 しょうがないので戦力外通知が出された剣の花嫁にかわって鍋の準備を始める。
 まあ入れて煮るだけなのでそうむずかしい行程ではない。
「えっと、すき焼きは少しお肉を焼いてから割り下を入れて……、それからほかの具材を入れるんだっけ? そういえばお肉としらたきを近くで煮ると何かあった気がするけど、気にしなくって良いよね? きっと煮たらおんなじだもん」
 割とアバウト。
 グツグツ煮立つ鉄鍋を見つめていると、刀真は昨年の出来事に心がゆっくり落ちていくのを感じた。
 去年の今頃はただの一般生徒だった。
 ……『ホワイトバレンタイン』にホットチョコを環菜にあげた時だったかな。力になりたいと話をしたら、ならクイーンヴァンガードに入ってくれと言われたのは。それでヴァンガードに入って、『【十二の星の華SP】女王候補の舞』特別隊員になった。そして、もっと力になろうとロイヤルガードになった矢先に『ろくりんぴっく』で環菜は死んだ……。
 殺された。
 ……結局のところ、俺が何かを『護る』と意気込んでいたのが間違いだったのかもな。俺はずっと殺し続けてきた人間だ。『世界を滅ぼす方法最終回』で、ハルカを助ける為にジェイダイトを殺したようにただ殺せばいい。俺はただ原因と障害を殺し続けよう……、他のことは……他の奴のほうが上手くやれる……、だからそれがきっと一番良いんだ。
 そんなことを刀真は考えている……。
 時としてひとは道に迷う。だが忘れてはならないのは、そんな自分を見守っている人の存在だ。
「また刀真が下らん事で悩んでいるな、最近多いぞ……」
 相棒の玉藻 前(たまもの・まえ)は彼をちゃんと見ていた。
 自由人のイメージがある奔放な人物だが、一番周りに目を向けられているのは彼女だったりするのだ。
「何か派手なことをやって元気付けてやるか……」
 そして、沙幸のパートナーの藍玉 美海(あいだま・みうみ)をちらりと見る。
 いつもパートナーを弄って楽しんでるようだが、たまには弄られる側を体験させてやろう。人間なにごとも経験だ。
 素知らぬ顔で近づくと、後ろから優しく抱きしめ胸元に手を滑り込ませた。
「ひゃっ、た、玉藻さん!?」
「なに、たまには沙幸とではなく我と遊んでみるのもよかろう?」
 優しく乳房を揉みほぐし、固く隆起した先端部分をつまむようにいじくる。
「んんっ、その手つき……、わたくし、おかしくなってしまいそうですわ……」
 でも……と思う。
 玉藻さんがそのつもりならこのまま身を委ねて、たまには攻められる側を楽しむのもいいですわね。
 それに、久しぶりにあの図書館での事件のときようなやきもちを焼く沙幸さんが見られるかもしれませんし。
「なにを考えておる?」
 囁きながら耳を噛む。
「あんっ!」
「こ、こ、こ……公衆の面前で何をしているの、おねーさま!」
 美海の上げた耽美の声はいささか大きく、まわりのテーブルにちょっと気まずい空気が流れた。
「あら、またやきもちを焼いていらっしゃいますのね。ご心配なさらなくても、わたくしは沙幸さん一筋ですわよ」
 そんなこと言いつつも、玉藻にまさぐられ桃色の吐息を漏らしている。
「全然説得力ないし……。ふんだ、やきもちなんて焼いてないもん。もう知らない。食べよう、月夜」
「う、うん……。てか、玉ちゃん下品すぎ……
 若干引き気味の二人は動揺を鎮めるかのごとく、お肉ばっかりぱくぱく口に放り込む。
「……って止めろよ!」
 目の前の異常事態に、流石の刀真も我に返った。
「通報される前にはやくやめ……って、オイイイイ!! に、肉が! なんで俺の分まで食べちゃったの!?」
「だって刀真、ボーッとしてんだもん」
「もっと慈愛の心を持とうよ!」
「……刀真が気づかないだけでしょ。わかったわよ、すいませーん、お肉追加でお願いしますー」
「つ、月夜……、おまえ、いいやつだな……」
 だが刀真はまだ知らない。今日の支払いが自分持ちになることを……。