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リアクション
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つぐむのパートナーの一人、ミゼ・モセダロァ(みぜ・もせだろぁ)はスライム騒動を受け、手洗い場へ向かったつぐむを探す。
きょろきょろしながら進んでいると、不意に誰かとぶつかった。見ると、まさに探していた彼その人だ。
「あっ、つぐむ様。ご無事ですか? 何かスライムが――」
しかしつぐむの反応はなく、ミゼは彼の顔色を窺う。先ほどまで蕎麦にありつけると上機嫌だったつぐむが、今ではすっかり虫の居所が悪そうだ。
「つ、つぐむ様……?」
辺りもスライム騒動で賑やかになってきたが、何か関係があるのだろうか。
「あ、あの……どうかなさったんですか?」
他意もなくそう尋ねただけなのだが、ミゼのその言葉を聞いてつぐむの眉がぴくりと動いた。
「どうか――したか――だと?」
まるで別人のようなつぐむが低い声でそう唸る。
何か地雷を、まったくわからなかった地雷を踏んだんだわ――。そう悟ったミゼは彼と目が合うとびくんと肩を跳ねさせたが、その華奢な双肩をつぐむに鷲掴みにされる。
「俺は手を洗おうとしたッ、手を洗おうとしただけだ! それなのに蛇口を捻ってみればスライムだぞ!? これがどうかしないでいられるか!?」
怒鳴られながらがくんがくんと揺さぶられるミゼは、徐々に身体が昂ぶっているのに気付きながらもなんとかまだ自我を取り留めていた。
「お話はわかりましたっ……それで、お蕎麦は――」
「蕎麦だと!?」
その声にぞくぞくと興奮を身体に走らせるミゼの身体は、つぐむに無理やり後ろを向かされた。
「見ろっ! これが蕎麦なんか食ってる場合か!?」
ミゼの視界の先では、溢れるスライムと数人の生徒が暴れているのが見える。しかしミゼはもはやそれどころではなく、頬に朱を入れてもっと強く掴んで下さいと言わんばかりの表情を浮かべていた。
ミゼは生粋のドMである。強く当たられたり罵られたりすると快感を得てしまう性癖の持ち主なのだ。
怒り心頭のつぐむの勢いに、もはやエンジンはフルスロットルへと傾いている。
つぐむの腕から解放され向き直った彼女は、それでもなんとか話を進めることに努めようとする。
「あ……ン、それで、どうなさるおつもりで……?」
「決まってるだろ! 蕎麦を食いなおせるように事態を治めるんだよ! わかったか、この――デカチチ!」
「でかちっ――!」
頭に血が上りきっているつぐむがとどめの一言を決めると、ミゼは口から生温かい吐息を洩らしてへたり込む。
「はふゥ……」
今回はもうダメ――。体温も上昇し、身体が艶やかに紅潮しきったミゼの中の最後の理性が、そう残して弾けた。
「スイッチ……入っちゃったぁ……」
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「ここじゃないみたいだな……」
廊下から駆け込んできたエヴァルトが、騒ぎの起きている食堂を見回して呟いた。ちょうどそれに気が付いた鷺はスライムを蹴飛ばしながら彼に声をかける。
「あのー、何かお探しで――」
「伏せろっ!」
鷺は突然のことに驚いたが、エヴァルトにSPASを向けられて反射的にしゃがみこむ。その動作のお陰で回避できた後ろからの粘液攻撃を、エヴァルトが銃弾で拡散させた。
「ああ、すみません。助かりました」
鷺が身体を起こそうとするとエヴァルトが手を貸した。
「気をつけたほうがいい。粘液を飛ばしてきたり色違いがいるところを見ると、どうやらただのスライムじゃなさそうだ」
「そうなんですか。わかりました」
鷺は足元のほうをぱんぱんと叩くと本題に戻る。
「それで、何かお探しなんですよね?」
「ああ。どうやら普通のことじゃなさそうだし――」
エヴァルトは話しながら、四方から攻撃を仕掛けてくるスライムに向けて容赦なくSPASを見舞う。
「――これだけの数だ。応戦するには人手が要りそうだな」
「そういうことですか。それならばまず、パートナーを呼ばなければなりませんね」
納得して手を打った鷺は、振り返ってテーブルの上でダガーを振り回すパートナーを見た。どうやら今は一人で戦っているようだ。
「カフカ!」
目の前に飛び込んできたスライムをホーリーメイスで叩き落とすと、彼女の名前を呼ぶ。
「うおおおおおおッ、必殺、ご飯の恨み!!」
しかし、どうやら声は届いているものの、彼女の脳までは到達していないようだ。流石は『四次元胃袋』と呼ばれたカフカだけあって、食事の機会を奪われた彼女の怒りは相当のものなのだろう。
エヴァルトは思わず目を点にする。
「あれがお前のパートナーか?」
「ええ、まぁ……」
鷺もなんと紹介していいかわからず苦笑いを見せる。
「随分キレてるみたいだが、大事な人でもやられたのか?」
「いえ、特にそういうわけでは。大事なご飯がやられましたけど」
なんと返していいかわからないエヴァルトを見て、鷺はまた苦笑をこぼした。
#
食堂はすっかりスライムの海と化してしまった。そんな光景を目の当たりにして、明倫館生の霧雨 透乃(きりさめ・とうの)はこう言う。
「きっとさ、このまま解決したら、このスライムたちはいなくなっちゃうんだよね」
「引っかかる言い方だな」
襲い来るスライムたちをラスターエスクードで押し返しながら、パートナーの霧雨 泰宏(きりさめ・やすひろ)が怪訝な顔をした。もう一人のパートナーである緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)は、ワイヤークローでスライムと粘液を上手く処理しながら事の成り行きを見守っている。
「なんかさ、もったいなくない? せっかくだから、スライム食べてみようよ」
透乃がそう言った途端に、パートナーの二人が「そうきたか!」と言わんばかりに振り返る。
ワイヤークローの鋭い先端をスライムに突き刺して遠くへ放りながら、陽子は口を開く。
「わ、私はあまり食べてみたいとは思いませんが……」
「でもよ、興味がないって言ったら嘘になるよな。今までスライムなんて食べたことないし」
泰宏も恐れ知らずな発言をすると、透乃は笑顔になった。
「だよね! 陽子ちゃんも、いいよね?」
すっかりスライムの味のことで頭が一杯になってしまった透乃は隙だらけだ。そんな彼女に飛びかかるスライムを、陽子は綺麗に打ち返す。
「透乃ちゃんがそうしたいというのなら、その手伝いはしてあげたいです」
「よし、けってーい!」
嬉しさに飛び上がった透乃は、盛夏の骨気を籠めた拳でスライムを勢いよく殴る。
「目指すは家庭科室! どうせ校舎内もスライムだらけなんだから、飛んでいこ! ささ、陽子ちゃん、『空飛ぶ魔法↑↑』よろしくね!」
陽子と泰宏は、透乃が冗談を言っていたのではないことがわかると目を合わせた。
「さぁっ、レッツゴー!」
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「なにこれ!?」
明倫館を訪れたシャンバラ教導団の藤井 つばめ(ふじい・つばめ)は、学校の入り口で思わず声をあげた。
学内のあちこちから悲鳴や戦闘音が聞こえ、窓や入り口からスライムがはみ出ている。おまけに屋根の上までスライムが這っている始末だ。
「うっわー、スライムだらけ……。なんだかひと悶着起きてるみたいですね〜」
一体どこから湧いてるのだろうと少し首を傾げるつばめ。
「まぁ、事態を把握するにはまずトップに会うべきですよね!」
考えてても始まらないことに気がつくと、『隠形の術』を使用して校長室へ向かうことにする。
「例のアレ、使っちゃいましょ!」
しかし一直線に向かうわけではないらしい。つばめはくすっと可愛らしく笑むと、スライム溢れる明倫館へと突入するのだった。
#
明倫館生の紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は、スライムたちから距離を取るため天井裏に移動し、携帯を取り出した。
ハイナは無事なのか――?
唯斗は突然のスライム出現に驚き、まずは何が起こっているのかを把握するため様子を見ることにした。
これだけの数のスライムである。恐らく被害規模は全校舎だろうと考えると、次に思い当たるのは総奉行の安否だ。
しかし、コール音はするのだが肝心のハイナが電話に出ない。
「くそっ!」
『やはり何かあったのでしょうか……』
既に白金の闘衣と化したプラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)が不安な声を出す。
「わからないが、ハイナもスライムごときにはそうそう遅れを取らないだろう。それに――」
唯斗が振り返ると、天井裏なのにも関わらずスライムの姿があった。
「とりあえず『陰形の術』のお陰で気付かれてはいないが、ハイナばかり気にしているわけにもいかないな」
『そうですね。地上階ならともかく、見たところ校舎内にもまんべんなくスライムが行き届いているようです』
唯斗は薄暗い天井裏を駆け出すと、再び携帯電話を開いた。
「今回はどうにもニオうな――」
#
「どうしてこうなるわけ?」
百合園へ所用で訪れていたシャンバラ教導団のセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は、ぼやきながら廊下に犇くスライムに向けてアサルトカービンを乱射する。
「それにしても百合園まで来てスライムとはね」
パートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は、セレンの背中を守りながら答える。
「まったくもう、ナンセンスだわ――あ、リロード。5時の方向」
セレンが弾の充填のためにしゃがんだのと同時に、セレアナはパートナーの支持した方向へランスを振り、飛んできたスライムを薙ぎ払った。手薄になったセレアナの背中を、セレンが込め直したカービンでフォローする。
「減ってる気がしないわ」
セレンがうんざりした顔で言う。侵攻を留めてこそいるが、銃弾と槍ではなかなかスライムを減らせない。
「同感。むしろ増えてるわね」
無表情のセレアナはスライムたちの粘液攻撃を避けながら冷静に言う。
「セレン、どうせ戦うなら発生源を突き止めましょ。このままじゃ埒があかないわ」
「あら、今あたしもそれ考えてたとこよ」
二人は一瞬だけ視線を重ねると、完全に同じタイミングでスライムのいない方へと駆け出した。
「今の人たち、見た?」
スライムたちから避難している百合園生の秋月 葵(あきづき・あおい)は、パートナーのエレンディラ・ノイマン(えれんでぃら・のいまん)に問いかける。
「はい。どうやらこのスライムたちは、どこかから発生しているようですね」
二人とも、綺麗な髪をなびかせながら校舎内を駆けている。
「こういう場合って、大抵親玉みたいのを倒せばなんとかなるよね?」
「ああ、じゃあ葵ちゃん。これ以上被害が広がる前に片付けちゃうっていうのはどうです?」
エレンディラが人差し指を立てて提案すると、葵は目を輝かせた。
「いーねそれ! やろうやろう!」
学園的危機を純粋に楽しんでいるのだから、なかなかに度胸のある二人だ。
「あ、でも、仮に親玉がいるのだとしたら、どこにいるんでしょうか?」
「何言ってるの、スライムといえば生物室でしょ!」
葵が常識よという目で見ると、エレンディラもあっさり納得した。
「なるほど! じゃあ早速生物室に――」
「待った!」
きゅきゅきゅと音を立てて葵は突然立ち止まった。エレンディラも何事かと振り返る。
「退治に行くのは魔法少女コスチュームに変身してから!」
威勢よくそう放つと、葵は光精の指輪で人工精霊を作り始めた。
#
明倫館の食堂。
スライムの海の中でちょっとした輪が出来ていた。そのうちの一人、エヴァルトが声を上げる。
「集まったのはこれだけか!」
彼のSPASが輪の外側に向けて火を噴くと、隣の鷺がメイスを振り下ろす。
「どうやらそのようですね。しかも、全員蒼空学園生みたいです」
「それは奇遇ですね。見知った顔もいますし、俺たちも協力させてもらいますよ」
刀真がトライアンフを大きく振る傍で、月夜がマシンピストルを連射しながら嘆く。
「ひーん、お蕎麦食べようと思ってたのにー!」
「あ、いつぞやのパーティーで見かけたウェイターさんたち! 君たちもご飯の恨みなんだね!」
鷺がなんとか連れてきたものの、未だ恨みの晴れていないカフカは休みなくダガーを投げ続ける。
「俺も蕎麦の恨みだァァァァァァッ!」
もはや何の主張をしてるのかわからなくなってきたのもお構いなしに、激昂状態のつぐむがルミナスライフルを撃ちまくる。
その隣ではエンジン全開のミゼがウルミでスライムを細切れにしながら、色っぽい声でおねだりする。
「つぐむ様ぁ、もっとワタシを罵ってくださいよぅ〜!」
「つぐむは一体どうしたのだ?」
高周波ブレードでスライムに対抗しながら、つぐむのパートナーのガラン・ドゥロスト(がらん・どぅろすと)が彼の様子を窺うと、スライムを大鎌で貫いたもう一人のパートナー・竹野夜 真珠(たけのや・しんじゅ)は諦め気味に呟いた。
「あっちゃ〜、ああなったつぐむちゃんは止められないのよねー」
葦原明倫館・食堂に現われた蒼空学園九人の輪は、スライムたちを寄せ付ける気配もない。
その輪の中でエヴァルトが切り出す。
「いいか! 見てわかる通りこのスライムたちは普通じゃない!」
この食堂でも、何人もの生徒たちがスライムに襲われ石化や睡眠といった被害を受けている。
「状況を見る限り、このスライムどもは校舎内で発生してるみたいだ! 最悪の場合、ボス的なでかいのがいるかもしれない!」
「そいつがスライムを生み出してるかもってことかァ!」
怒り心頭とはいえ、相槌を挟んだつぐむの思考は正常に動いているようだ。それを聞いて月夜が理解の表情を見せる。
「はっはーん、読めてきたわ。そいつを叩けばいいわけね?」
「でも場所がわからないんでしょ? だったら二手に分かれて探しましょうよ!」
真珠がそう提案すると、エヴァルトは熱くなってきたじゃないかと声を張り上げる。
「そいつは名案だ! お前らは四人一組なんだろ? じゃあ俺と『四次元胃袋』ペアと刀真ペアで決まりだな!」
「了解。こっちは俺たちが道を作りますよ」
そう言う刀真と月夜は、既に食堂から廊下へと斬り進んでいた。カフカもやる気満々で前へ出る。
「じゃあ僕たちは音楽室へ行こう!」
「はぁ、『四次元胃袋』ペア……」
頭を抱えながら鷺がカフカを追うと、エヴァルトが後に続きながらつぐむたちを振り向いた。
「じゃあ健闘を祈る! また後で会おう!」
力強い目線でそれに応えたつぐむも足を動かし始める。
「俺たちも行くぞォッ! 目指すは屋根だ!」
「待ってよつぐむちゃん、なんで屋根なの〜?」
そう言いながらつぐむの後を追う真珠に、恍惚とした表情でミゼも続く。
「あぁン、つぐむ様、もっとぉ〜!」
最後に食堂を出ることになったガランは飛びかかってきたスライムを素早く跳ね除けた。
「さしずめ、『食べ物の恨み戦線』ってとこなのだ」
かくしてこの九人も、二手に分かれてスライム退治へと乗り出した。
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「あらあら、この葦原明倫館にスライムがいっぱい!」
しかしほとんどの生徒たちとは打って変わって、明倫館生の秋葉 つかさ(あきば・つかさ)はスライムの大群を見るなり歓喜の声を上げていた。
「ふふふっ、スライムですか。スライムと言えば……やはりえっちなことにっ!」
一人で舞い上がっておきながら、つかさはふと冷静になってはふぅと息をつく。
「ま、流石に冗談ですけれどもね。……ですが最近、色々と溜まっているんですよねぇ――あら?」
つかさが独り言を呟きながら歩いていると、廊下の隅に珍しい色のスライムを見かけた。ピンク色の小さなスライムがのそのそと移動している。
「あらまぁ、可愛らしいこと。少し触るくらいなら平気かしら」
そのスライムにつかさがそろりそろりと近付くと、スライムは移動をやめてその場でぷるぷるし始める。つかさはそのスライムを見て小首を傾げた。
「どうなさったんでしょう? もしかして私に心を開いてくれたのでは――ひゃっ!?」
スライムが心を開いてくれるわけなどなく、つかさの顔面にスライムの粘液攻撃が直撃する。
「ぷはッ、まさか顔に粘液なんて! それに、まだ何にもしてないのにあえなくリタイアなんて嫌でございますっ!」
つかさは顔にかけられた粘液を慌てて手で拭う。
「あぁん、強引に眠らされてイロイロされてしまうの? それともかっちかちのカタ〜い石になってしまうのでしょうかっ?」
しかし少し時間が経ってみても、つかさの身体に異常は現われない。彼女は目をぱちくりさせる。
「……あら? おかしいですわね」
一体何の効果があるのかと先ほどのスライムを振り返るが、そこにもうスライムはいなかった。
「う〜ん、まぁいいですわっ」
考えても仕方がないとあっさり開き直ってしまうと、ふつふつと欲求不満が込み上げる。
「石化してたり眠っている皆様には悪いですが……いえ、奉仕して差し上げるんですから悪いとも思わないですけれど、私のストレス解消に役立って頂きましょう」
そう思い立ったつかさは、早速獲物を探し始める。彼女の服の袖が少し溶けていることには気付かずに――。
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「ピンク・レンズマン、月美あゆみ! とーちゃーっく!」
天御柱生の月美 あゆみ(つきみ・あゆみ)は、パートナーのヒルデガルト・フォンビンゲン(ひるでがるど・ふぉんびんげん)と共に百合園女学院の入り口に立ったところだ。
二人がここへ来る少し前、ヒルデガルトは『ヒロイックアサルト』の幻視で何かを予測しあゆみにこう告げた。
「はっ! 大変ですよあゆみさん!」
「どしたの?」
「百合園女学院にスライムしか見えません!」
「……は?」
聞いた当初はあゆみも間抜けな声を出すほどだったが、どうやら間違っていなかったようである。
「あら、本当にヒルデの幻視どおり百合園がスライム祭りね。よし、ここは銀河パトロールの愛のピンクレンズマンにお任せQX!」
「あゆみさん」
ヒルデガルトはノリノリで口上するあゆみの肩をちょいちょいとつつくが、あゆみはそれを無視して続ける。
「スライムの発生源を抑えて銀河の平和を――」
「あゆみさん」
「――って、何?」
もう一度呼びかけられたあゆみはやっとヒルデガルトを振り返る。
「あゆみさん、落ち着いて下さい。今回の私達はあくまでサポートです」
「え?」
意表を突かれてきょとんとするあゆみに、ヒルデガルドは柔らかく微笑む。
「私たちは、天御柱の所属ですから」
「なに、他校生がしゃしゃりでてもよく思われないってこと?」
「ま、まぁ平たく言えばそうですね」
結論は間違ってないので、ヒルデガルトはあまり細かいことを言わなかった。
「そう、ならいいや。じゃあ最終的に銀河が平和になればQX! 縁の下の力持ち大作戦ね」
あゆみがあっさりシフトすると、ヒルデガルトはまた幻視する。
「今回の鍵を握っているのは……どうやら校長室のようですね」
「校長室? そこに大きいのがいるの?」
「いえ、そういうわけではないですけれど――」
「そうじゃないの? まぁとにかくそこへ向かってみればいいわけね、了解!」
早口になるあゆみはとにかく突撃したい様子で、ざかざかと百合園に踏み込んでいく。ヒルデガルトも彼女の後を追った。
「んじゃ、ミッションスタート!」
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