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コンビニライフ

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コンビニライフ

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 傍を通過するセルシウスを見送りつつ、座って弁当を食べているのは鳳明のパートナーにして店員のヒラニィであった。
 セルシウスと目が合うヒラニィ。
「何をしている?」
「うむ……鳳明と共にバイトとやらをしに来たが、見ての通りわしは体力仕事に向かん。よって、先に休憩に入り賞味期限切れの弁当の処理を兼ね、こうして食っておる。所謂、エコなのだよ」
「……」
 ヒラニィの傍には買い物カゴに入った弁当がある。それは先ほど賞味期限が切れたために店頭から撤去した弁当である。
「む、弁当の中身が気になるか? ……お主も食うか?」
と、セルシウスに弁当を差し出すヒラニィ。
「ヒラニィちゃん! それ、あたしの分だ……よぉッ!!」
 地面に立てたモップを軸にした強烈な回転蹴りを賊に御見舞いしつつ、鳳明が抗議する。
 モグモグと弁当を食べるヒラニィに、セルシウスはやや重たい口を開く。
「それは……サボ」
「サボっとる訳ではない。空いた時間に休憩をとるという立派なタイムマネジメントだ!」
「……」
「教導団で鍛えた体力と、色んなアルバイトで培った手際の良さでパパッと済ませる……よっ!」
 モップを折られた鳳明が傍にあった台車で賊の頭をヒットする。
「ちゃんと作業終わらせてから休憩時間を取りたいよね。ほらほら、ヒラニィちゃんもちゃんと働い……てぃっ!!」
 鳳明の投げた折れたモップが、隙を見て突入しようとしていた賊の額にクリーンヒットする。
「何か……貴公のパートナーの孤軍奮闘ぶりが気になるのだが……」
「ふ。それはそれ、これはこれだ。お主も故郷にもこのような店を出したいのであろう?」
「当然だ!! 我がエリュ……故郷が発展するためにもな!」
「んむ、その熱意気に入った! 次会う時はお主の店で、だな!」
 そう言って割り箸を振るヒラニィ。
「ところで……賞味期限切れの弁当を食べて良いのか?」
「……」
「もー!! ヒラニィちゃんも少しは手伝ってよ! だから搬入はスピード命の大変なお仕事なんだから……ねぇッ!!」
 台車で賊の弾丸をガードした鳳明が叫ぶ。
「鳳明もああ言っておるように、賞味期限切れの弁当もスピードが命なのだ」
「成程……」


 店は今や賊の集団に襲われ、客達は帰るに帰れない状況になっていた。
 パートナーで店員のアキのバイトの様子を変装してまで見に来ていたレヴェナ・バイオレット(れう゛ぇな・ばいおれっと)レオナ・バイオレット(れおな・ばいおれっと)も、同様であった。

「アキ姉がバイトするって心配でこっそり変装して付いて来たけど…大丈夫なようね!」
 アホ毛を揺らすレヴェナが、お菓子の棚から顔をぴょこりと覗かせ、レジにいるアキを見る。
「まあ、この変装ならアキ姉は気付かないでしょ。メガネは人の印象を変える魔力があるのよ! このまま、店内でだらだら過ごしながらアキ姉の働く姿を観賞よ! ハァハァ……」
 レヴェナの熱い息を傍で聞くのは、その双子の妹のレオナである。
「……ハァハァと、うぜぇですよ、姉さん。メガネにジャージのだせぇ格好で変装と言えるその精神にはある意味敬意を表しますが、もう少し黙っててくれませんか?」
 レオナは姉と違い、口元までマフラーを装備している。最も、特技の『隠す』で野球のバットを隠している分、こちらの方が危険であるが……。
「アキ姉さんの身を護る為の監視なんですからばれない様にしないと……」
 レオナが言うと、レヴェナがそれに同意する。
「まあ、アキ姉がピンチになったら、あたしが遠当てと先の先の動きで敵を翻弄する囮役ね。弱ったら、ボコ殴りだけど……」
「ええ、姉さんが囮をしている間に、私が野球のバットでツインスラッシュをします」
「てか……一緒に働いているあの女……腹立つほど胸がデカイわね。挙句に鼻血出して鼻にティッシュ? 自分の胸見て興奮したのかしら?」
「姉さん? あまりコンプレックスを他人にぶつけるのは……」
 レオナがレヴェナの小さな胸を見る。
 実は最近、妹の自分の方が胸が大きい事に気付いたが、姉に打ち明けられずにいた。
「……くっ、あの胸もいでやろうか? アキ姉以外の巨乳はもげるべきなのよ!」
 歯ぎしりするレヴェナが「もげろもげろ」と邪念を送る。


 アキと共にレジに立っていた雅羅が、ゾクリと背筋を震わせる。
「どうしたの?」
「アキ……何か視線を感じるんだけど」
「雅羅が可愛いからじゃない?」
「そういう種類のモノじゃないのよ。アキはプラス思考でいいわよね」
「ケ・セラ・セラよ。どんな事でもありのまま受け入れる事が大切よ」
 雅羅が表の攻防戦をチラリと見て、
「こんな状況でもそれを言えるアキはすごいわよ」
「まあ、地球に居た頃の痛いだけのお仕事じゃないから、大丈夫だよね〜」
 店員のエプロンの下でも十分に存在感を示すGカップの巨乳で、エッへンと胸を張るアキ。
「バイト終わったらアキ姉に抱きついて色々堪能するわ!」
「姉さん。声が大きい!」
 何やら声が聞こえた雅羅がふと店の奥を見る。
 その時、バックヤードから漫画原稿片手にセルシウスが出てくる。
「漫画家は何処に行った?」
「……取材とサイン会を終えて、帰りましたわよ」
 店員の真宵が、つまらなさそうにそう答える。
「何!? イカン! その者にはこれを返さねばならんのだ!」
 慌てて、店の入り口へと向かうセルシウスに、真宵が驚く。
「ちょ……店長代理! 今出て行くのは危ないって……」
 真宵の忠告虚しく、使命感に燃えるセルシウスは外へと出ていく。