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オオカミさんにご用心

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オオカミさんにご用心
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リアクション

「セレア?」
「健闘様?」
 男湯と女湯、別々に入っていた健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)セレア・ファリンクス(せれあ・ふぁりんくす)だったが、示し合わせたように出てくる時間がぴったりと一緒になった。
(いつもは洋服だけど……浴衣姿も良いな)
「?」
 勇刃の視線を感じ、首を傾げるセレア。
「な、なんでもない。なんでもない。そうだ、一緒に散歩行かないか? 月が綺麗だったんだ」
「お月見散歩も良いですね。わたくしでよろしければご一緒させてください」
 勇刃とセレアは外に行く前に部屋ではんてんを羽織る。
 そして旅館の入口で下駄を履くと、夜の村へと散策に出たのだった。


 昼間の騒がしさが嘘のように感じられるほど静かなバーベキュー広場。
 月明かりと鈴虫の声だけがそこにはあった。
 2人は広場を歩いてみる。
「温泉はどうだった?」
「そうですね……しっとりと肌に吸い付くような良いお湯でしたわ。お肌がもちもちになった気がします。男湯の方はいかがでした?」
「あー……そこまで気付かなかった。空に浮かんでいる月ばかりに目が行ってたな」
「ふふ……健闘様はロマンチックですわね」
「そ、そんな事ねーよ。ん? なんだこれ? って、ただの石か」
 勇刃が拾ったのは確かにただの石。
 しかし、形がハートになっている白い石だ。
「綺麗ですわね……。アクセサリーになりそうなほど美しいですわ」
 セレアの言葉を聞き、ふむと考え込む勇刃。
「……今日の記念に持って帰るか。これで……ネックレスでも作ってセレアにやるよ」
「良いんですか?」
「ああ、セレアを幸せにするって俺の決意みたいなもんだ……受け取ってくれるか?」
 それを聞いたセレアは勇刃の胸に飛び込み、胸に顔をうずめた。
「ど、どうした急に!?」
「あまりにも嬉しくて……」
 顔を上げるセレアは、本当に嬉しそうに笑う。
「セレア……」
 そんなセレアを見て、愛おしさの込み上げてきた勇刃はセレアの前髪を手でどけると、額にキスを落とした。
「健闘様……ふふ、あったかい……ですわ」
「ああ、そうだな……」
 2人は寄り添いながら、月を見上げたのだった。