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リアクション
「それでは今日1日よろしくお願いしますわ」
狭山 珠樹(さやま・たまき)は一緒に旅館を警護することになったセフィー・グローリィア(せふぃー・ぐろーりぃあ)、オルフィナ・ランディ(おるふぃな・らんでぃ)、エリザベータ・ブリュメール(えりざべーた・ぶりゅめーる)ににっこりほほ笑んだ。
挨拶もそこそこに、4人はそれぞれの持ち場へとつくのだった。
こちらはオルフィナが警護している露天風呂。
オルフィナはゆったりと温泉に浸かっていた。
(仕事の合間に温泉に入れて、月と良い女を眺められるんだがら、良い仕事だよな)
そんな事を考えながら、意気投合している紫水 蝶子(しすい・ちょうこ)とリブロ・グランチェスター(りぶろ・ぐらんちぇすたー)を見ていた。
「たまには女性だけっていうのも悪くないわね」
「そうだな」
蝶子の言葉にリブロが相槌を打つ。
「……」
その隣にはレノア・レヴィスペンサー(れのあ・れう゛ぃすぺんさー)がいるのだが、ふらりふらりとしていて、なんだか危なっかしい。
「大丈夫か? のぼせたんじゃないか? 少し夜風に当たってくると良い」
「そうですね……。ちょっと行ってきます……」
リブロに言われ、大人しく温泉から上がっていったレノア。
(なんだか体が異常にうずくし……それも沈めてこよう……)
レノアはふらふらと浴衣に着替えていたためか、自分に生えたオオカミの耳としっぽには気が付いていないようだ。
「私たちもそろそろ上がる? けっこう長い時間入ってたわよね」
「そうだな」
「じゃあ、続きはあたしの部屋でチェスでもどう?」
「良いな」
2人は温泉を出ると、蝶子の部屋へと向かって行った。
そのちょっとあとに温泉にやってきたのはメイド修行中の未沙だったり、メイコたちと一緒にやってきたホイップだった。
部屋の明かりを点け、部屋に備え付けてあるチェス盤を出すと、さっそく勝負がスタートした。
が、勝負はそれほど時間がかからずに決してしまった。
「チェックメイト。なんだチェスはそんなに得意じゃなかったか?」
「そうね……どちらかと言うと――」
蝶子が何か言おうとした瞬間部屋の中になだれ込んできた者たちがいた。
オオカミ化してしまったセフィーとオルフィナだ。
セフィーは白、オルフィナは黒のオオカミ耳としっぽが生えている。
「温泉にいたときから目を付けてたんだよな」
オルフィナは舌なめずりをすると、リブロと蝶子に飛びかかった。
しかし、蝶子はひらりとそれをかわし、リブロは敷いてあった布団の上へと押し倒されてしまった。
「離せ……!」
「もっと嫌がってくれても良いんだぜ? あとで気絶するほど気持ち良かったって言わせてやるよ」
「くっ……!」
オルフィナはリブロの両手首を左手でリブロの頭上に固定してしまう。
そうしてから、顔を胸にうずめる。
やわらかな感触を楽しんだ後、口を使って浴衣の帯を解いていくとリブロの白豹柄の下着があらわになっていくのだった。
そして、セフィーと蝶子の方はというと、ちょっとしたにらみ合いが続いていた。
「ふふ……生存闘争始めましょうか」
「あたしはそんなものに興味はないわ」
セフィーは綾刀を構える。
その時――
「何事です!?」
「何かあったのかしら?」
物音に気が付いてやってきたのは珠樹とエリザベータだ。
「警護に当たっているはずの人たちが何をしているん――」
「獲物の方が来てくれたのね……」
そう言うと、セフィーは綾刀で珠樹に切りかかった。
「ええっ!? どういうことですのー!?」
セフィーは珠樹の浴衣の帯だけを切る。
「私も混ぜさせていただくわ」
珠樹を後ろから羽交い絞めにしたのはなんとエリザベータだった。
その体からはしっかりと白銀のオオカミ耳としっぽがついていた。
「エリザベータさん……あなたまで!?」
前から迫るセフィー、後ろから攻めようとするエリザベータ。
(これってどうなってるんですのー!?)
そこへ扉を蹴破り入ってきたのはレノアだった。
「貴様らっー! 私のリブロ様に何をする気だ、下衆狼がぁー!」
自分の頭やお尻から耳やしっぽが生えていることには気が付いていないらしい。
レノアはバスタードソードを構えると、オルフィナに切りかかった。
その攻撃をかわすため、リブロをそのままにオルフィナは後ろへと飛びのいた。
「すまない、助かった……」
本当に気絶ぎりぎりのところまで追いやられていたリブロは心底ほっとしたようだ。
「貴様ら……出て行けーーーー!」
リブロがほぼ下着だけの姿になっているのを見て激昂したレノアがバスタードソードで他の全員に切りかかる。
しかし、ほとんどかすり傷だけで終わってしまっている。
「あーあ、これからってときによ! 他の獲物探しに行くか」
オルフィナは惜しそうにリブロを見ると、どこかほかへと行ってしまった。
珠樹を捕獲していたセフィーとエリザベータもこの部屋にいたんじゃゆっくり出来ないと判断し、珠樹を持って空き部屋へと移動してしまった。
そして、傍観者を決め込んでいた蝶子はというと、いつの間にかどこかへ行ってしまっていたらしい。
レノアは誰もいなくなると3人を相手に疲れたのか、布団の上に倒れるように眠ってしまった。
「助かった……ありがとう」
そんなレノアの頭を軽く持ち上げ、自分の膝の上に置くリブロの姿があった。
翌朝。
ぐったりしながら出てきた珠樹。
あの2人相手になんとか未遂で済ませることが出来たらしい。