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リアクション
「陽先輩、ちょっと庭を見てくるね」
三井 静(みつい・せい)が部屋の庭に下りると、三井 藍(みつい・あお)もついていく。
「うん、行ってらっしゃい」
皆川 陽(みなかわ・よう)は手を振って、2人を見送った。
「三井くんたちと一緒に来られてよかったな」
陽の隣に座ってみかんを食べていたテディ・アルタヴィスタ(てでぃ・あるたう゛ぃすた)が陽を見ながら言う。
「そうだね。誘うのに勇気がいったけど、これで仲良くなれたらいいなぁ〜」
(僕は2人きりでも良かったけどね)
陽がほわほわしている横で陽とは違う事を考えながらテディはお茶をすすった。
テディはお茶を飲み終わると、立ち上がった。
「よっし! 僕もちょっと庭見てくる! 月が綺麗なんだよ! 月! 一緒に行かないか?」
「んー……ボクはやめておくよ。バーベキューしてちょっと疲れちゃったし。楽しんできて」
「そうか? じゃあ、ちょっと行ってくる! 月が僕を待ってるぜー!」
テディは勢いよく庭へ飛び出していった。
「ふぅ……ボクもお茶飲もうかな」
陽はティーバッグを湯呑みに入れ、ポットのお湯を注いだのだった。
庭では、手を繋いで仲良く散歩する静と藍の姿があった。
「もう、別に子どもじゃないのに」
「だが、こう暗いと迷子になるかもしれないだろう?」
「むぅ」
静は少しだけ頬を膨らます仕草をしたが、内心は喜んでいるのかちょっと嬉しそうだ。
「陽とテディに誘ってもらって良かったな。けっこう楽しんでるだろ?」
「うん。楽しい。昼間のバーベキューも美味しかったし、さっきの露天風呂も風情があって良かったよね」
「ああ、そうだな」
藍はふっと微笑んだ。
しかし、すぐに顔を真剣なものに変える。
「どうかした?」
藍のにらんでいる視線の先には誰かの陰。
ゆっくりとこちらに歩いてきている。
月明かりに照らされ出てきたのはテディだった。
その顔を見て、藍は警戒を解く。
「テディ先輩もお散歩?」
静がテディに近づいたその時――。
「ふっふっふ……三井くんたちも僕のものだー!」
そう叫ぶと、テディは矢じりが吸盤になっている呪縛の弓を静に放つ。
藍は慌てて静に駆け寄ろうとするが、慣れない浴衣と下駄のためか、つんのめってしまう。
あっという間に静は弓の餌食に。
体の自由を奪われた静に微笑みながら近づくテディ。
そんなテディからはオオカミの耳としっぽが生えてきている。
「まずは1人目〜♪ いただきます!」
(え……何事!? 今、何が起きてるの!?)
テディは動揺しまくっている静かに近づくと、肌蹴た襟元からのぞく素肌を見て、舌なめずりをした。
「ちょっと待ったーーーー! 可愛い後輩たちに何やってんだーーー!」
そこへ矢が急に飛んできてテディの頬をかすめた。
矢を放ったのはのんびりしていたはずの陽だ。
テディはすぐに陽へ向かって矢を放つが、行動予測を使った陽に軽々避けられてしまう。
「あ! あんなところに艶っぽい美少年!!」
突然旅館の屋上を指さした陽につい乗せられて、テディはそっちを見てしまう。
その隙をついて、陽は制服のイバラを使ってテディをぐるぐる巻きにしてしまった。
身動きがとれずじたばたするテディににっこりと笑いかける陽。
「なんか気になって来てみたら……これは一体どういうことかな?」
「いや……あの……えっと……」
「はっきり答えられないの? テディ……ねぇ、キミね。誰がキミの主だか忘れたの?」
「う……いや、忘れては……」
「……忘れたのかって聞いてんだよ!! キミがそうやって、誰でも良い、ボクじゃない男でも良いっていうんだったら……、ボクもう、今度からは指一本触らせてあげないからね」
「うええっ!? 違うんだ! 誰でもいいわけじゃ……!」
「ふーん……でも、さっきボクが艶っぽい美少年って言ったらまんまと引っかかったじゃないか」
「そ、それは……!」
陽はテディを縛り上げているイバラでぎりぎりと締め上げる。
「うわぁぁぁぁ……!」
静はそんな様子を茫然と見て、まだ動けずにいた。
「悪い! 助けてやれなくて!」
藍は浴衣から足が出ているのも気にせず、駆け寄ると静をぎゅっと抱きしめた。
「藍……うん、大丈夫。ありがとう」
静も抱きしめ返す。
「それにしても……陽先輩って強かったんだね……色んな意味で……」
「あ、ああ……」
静と藍は顔を見合わせると、くすりと笑ったのだった。