リアクション
(焼くだけだから大丈夫。焼くだけだから大丈夫!!)
クリスタル・カーソン(くりすたる・かーそん)は鉄板の前で拳を握りしめた。
トングを持ち、お肉を鉄板の上で焼き始める。
「火気をつけろよ」
「うん、任せて!」
お肉に気を取られ、髪の毛が鉄板につきそうになっていたからニーア・ストライク(にーあ・すとらいく)は言ったのだが、クリスタルはわかっていない。
(仕方ないなぁ)
ニーアはクリスタルの後ろに周り、髪の毛を後ろに持って行ってやる。
「わわ。な、何!?」
髪の毛を持ったニーアの手がクリスタルの頬に触れ、やっとニーアが後ろにいたことに気が付いたらしい。
「いや、髪の毛が……」
「えっ? あ……ありがとう!」
「良いって。それより、お肉焦げるぞ?」
「わぁぁぁ!」
クリスタルは慌てて鉄板からお肉を皿に移す。
「はい、ニーア。出来たよ」
「おう、ありがとう」
ニーアは割り箸を割ると、ちょっとだけ焦げたお肉をつまんで口の中へ。
その仕草を見つめるクリスタル。
「もぐもぐ……」
「ど、どう……? 焼くだけだから大丈夫だと思うんだけど……」
「ああ、おいし――ぼふんっ!!」
もぐもぐしていたニーアの頭から煙が噴き出したように思えた。
みるみるうちにニーアの唇が真っ赤に腫れていく。
「おいひいよ……クリフ……」
(うん、いつもの威力に比べたら普通のサバイバルナイフくらいの威力。何故か辛すぎるだけで食べるのに問題はないな)
ニーアは笑顔でお皿のお肉を平らげる。
「うぅ……ありがとう……」
(焼くだけなのに……どうして……うっう……。でも、きっといつか本当に美味しいって言わせてみせる!)
「そうだ、クリス。俺もお肉焼くからちょっと待っててくれ。俺のために焼いてくれたからな、今度は俺がクリスのために焼くぜ」
ニーアは一応持ってきていたお肉をクーラーボックスから取り出し、鉄板で焼く。
塩を軽く振って、皿にうつすとクリスタルに手渡した。
皿にはくし型切りをしたレモンが添えられている。
テーブルに皿を置き、レモンを絞るとお肉を口へ運んだ。
「美味しい……!」
「そりゃよかった。俺も食べるかな」
2人は仲良くお肉を楽しみながら、モモの往復ビンタや追いかけっこを見て苦笑いしていたのだった。