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リアクション
(どこもかしこもカップルさんだらけ。あまりらぶらぶのお邪魔しちゃ悪いよね……でも、せっかく来たから何かしたいし……そーだ!)
部屋でごろごろしていた滝宮 沙織(たきのみや・さおり)はいきなり起き上がると、手をぽんと打った。
(もう月が出てる時間だけど、お庭に散歩だったらきっと邪魔にならないよね! 庭の山茶花綺麗だって話だし!)
沙織はそう思い立つと、持ってきていたストールを肩にひっかけ、大きな庭へと向かって行った。
「わぁ……山茶花がいっぱ〜い! 写真撮っちゃおう♪」
沙織はデジカメをポケットから取り出し、生け垣の山茶花と月を入れた写真を撮り始めた。
「こんなにいっぱい咲いてると……」
沙織は撮影の手を止めると、生け垣の前に立って、くるりと回って見せた。
モスグリーンのプリーツスカートと白いハイネックの薄手セーターの上からかけているストールがひらりと舞う。
「花の中可憐に舞う沙織ちゃん☆ まるで花の妖精みたい♪ なんちゃって」
「まさに妖精みたいでしたよ♪」
突然現れたのは、仲居姿のヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)だ。
ヴァーナーは構えていたデジカメを降ろし、沙織ににこにこと笑いかけた。
「わわ。もしかして……見てた?」
「はい〜♪ 写真もばっちりです」
ヴァーナーは先ほど取った沙織が待っている姿を見せた。
「ちょっと恥ずかしいかも……えへへ」
「ちゃんと可愛く撮れてます〜♪」
「そう?」
「はい。あ、あとで転送しましょうか?
「良いの? 手間にならないかな?」
「さっき、エルさんとホイップさんが一緒にいるところも写真に収めたので、送ろうと思っていたのです。そのついでなので、全然大丈夫ですよ〜」
「わぁ〜☆ ありがとう!」
「っと、あれは……お散歩ですよね。仲が良いですね〜」
ヴァーナーの視線の先には庭を通って村まで散策に行く勇刃たちの姿。
「あ、ほんとうだ〜。良いなぁ、仲良しさん」
「ですよね〜」
ヴァーナーはこっそりと勇刃たちの姿もカメラに収める。
それから2人はしばらく庭で撮りあいっこをして遊んでいた。
しかし、月の写真を撮ろうと沙織が池に行ったその時、沙織からオオカミの耳としっぽが急に生えてきたのだ。
「がぉ〜☆ 今ならなんでもできる気が――」
「可愛いです〜〜〜♪」
それを見たヴァーナーが沙織に抱き着いた。
そして、テンションの上がったヴァーナーは沙織の頬にちゅーをして、離れた。
「じゃあ、その可愛い姿も撮りますよ〜」
ハグちゅーと写真で沙織は気が済んだらしい。
そのまま2人で撮影を続行したのだった。