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【ニルヴァーナへの道】泣き叫ぶ子犬たち

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【ニルヴァーナへの道】泣き叫ぶ子犬たち

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第十六章 総攻撃! 巨大な悪魔を打ち倒せ!!

<月への港・施設外部>

「真司、準備OKですか?」
「ああ、いつでも仕掛けられる」
 ヴェルリアの確認にそう答えて、和輝からの合図を待つ真司。
 そしてその和輝は、サブパイロットのアニス・パラス(あにす・ぱらす)に声をかけていた。
「これで決める……アニス、もし手が回りそうもなかったら、その時は頼む」
「うん……何とか、やってみるね」
 もともとアニスの役目は火器管制だったのだが、幸いにも偵察役に徹していたグレイゴーストが狙われることはなかったため、ここまで出番がなかったのである。

「では、状況を開始する! 各機、作戦通りに!」
『了解!!』
 和輝の合図で、全機が一斉に動く。
 まず、最初に仕掛けるのは真司のゼノガイストにアキラのジャイアントピヨ、そしてエリシアのモデラート。
 三人が同時に別々の方向から射撃を仕掛けてデヘペロの足を止め、さらにその隙をついて鉄心のサルーキと鮪のパンティーレックス、そして麻羅の天目一箇神機が中距離からさらに仕掛ける。
「よし、今だ!」
『任せて!』
 デヘペロがそのうちの誰かを狙い始める前に、モモのジェファルコンカスタムがバスターライフルで「目立つ一撃」をお見舞いし、デヘペロの注意を惹く。
 そうして、デヘペロがジェファルコンカスタムの方を向いた瞬間を狙って、トマスのアイゼンティーゲルがその目を狙った一撃を放った。
「当たれ!!」
 当たってくれればそれが一番、なのだが、そう簡単に当たってくれる相手でもない。
 目の横に一撃を受けて、デヘペロがアイゼンティーゲルを視界にとらえた、まさにその時。
「本命は……こっちです!!」
 動きが止まる瞬間を待ち受けていたシフのアイオーンが、トマスが狙ったのとは逆の目を射抜いた。
「ペロロロロロロウゥー!!」
 さすがのデヘペロも、目への攻撃は堪えたらしい。
 デヘペロが痛みに吼えた、まさにその瞬間。

「新型機の実力……見せてあげるっ!!」
 明けの明星 ルシファー(あけのみょうじょう・るしふぁー)の力でワープ機能を付与されていた湯島 茜(ゆしま・あかね)アータルと、同じくワープ機能を持つグラキエスのシュヴァルツ・IIが、同時にデヘペロの後方、左右の脇腹の当たりにワープで出現する。
「もらった!!」
 アータルは、必殺のスフィーダソードを。
 そしてシュヴァルツ・IIは、新型ビームサーベルとソードブレイカーの二刀流で。
 頑丈そうな肩を避け、脇の側から切り上げるようにして腕の付け根を斬りつけた。
「いっけえええええっ!!」
 その一撃をもってしても、やはり腕を切り落とすには至らないが、決して浅いとは言えぬ傷を与えることはできたはずだ。

 両脇の痛みに、おそらく後方にいるであろう敵を肘で排除しようとするデヘペロ。
 だが、ワープ機能のある二機は攻撃を終えると同時に離脱しており、その肘打ちはむなしく空を切る。

「よし! さあ、ヒーローらしく決めてくれ!!」
 和輝の言葉通り、この戦いを終わらせるべく動いた切り札は、二人のヒーローだった。
 すなわち、ダイリュウオーとグレート・ドラゴハーティオンの二大ヒーロー夢の競演である。

 グレート勇心剣を構えたグレート・ドラゴハーティオンと、空裂刀を構えたダイリュウオー。
「デヘペロよ! 傍若無人な振る舞い! ザナドゥに帰り反省せよ!」
「この空裂刀で、悪漢デヘペロ……オマエを斬る! 命を弄んだ罪を知れ!」
 二機並んでの決めポーズから、まずはグレート・ドラゴハーティオンが動く。
「必殺! 彗星・一刀両断斬りぃぃぃっ!!!」
 空高く飛び上がり、渾身の力で放つ必殺の一撃を――今回は脳天ではなく、右肩へと放つ。
 その威力はさしもの巨大デヘペロを持ってしても耐えきれるものではなかったらしく、肩を砕かれた右の腕が力なく垂れ下がり、手にしていた鈍器が地面に落ちる。
「ペロロロロロロロロウウゥゥーッ!!」
 その激痛に叫びながら、残った左腕でグレート・ドラゴハーティオンを弾き飛ばそうとするが――その動きこそ、牙竜の待っていたものであった。
「これで終わりだ! 突貫!」
 左腕が上がった隙をついて、その脇へと飛び込みながら横薙ぎの一撃を放つ。
 その一撃が、先ほどアータルがつけた傷をさらに深く切り裂く――が、本命はこの一撃ではない。
 そこからその勢いを保ったまま、一回転してさらにもう一度斬りつける。
 先ほど以上の速度と遠心力の乗った一撃は、今度こそ確実にデヘペロに深手を負わせたのだった。





「どうする、まだやるか?」
 月への港の入り口の方を見ると、撃退されてきたボロボロのデヘペロ弟たちが逃げ出してきている。
 ことここに至っては、デヘペロの低い知能であっても自らの不利は容易に悟り得るであろう。
 それでも、アルベリッヒの役に立ちたい一心で撤退を迷っていたデヘペロだったが……そこに、「あの」デヘペロ次兄が戻ってきた。
「兄者ァー! 秘密兵器を手に入れたぜェー!!」

 秘密兵器を手に入れた、ということは。
 港の破壊自体には失敗したとしても、一定の成果を上げたことになる。
 そして何より、「奪った秘密兵器を持ち帰る」という、絶好の「撤退理由」が手に入ったのだ。

「ペロロロロロロウゥー!! きょ、今日のところはこれくらいにしておいてやるよォっ!!」

 それだけ言うと、デヘペロは弟たちとともに一目散に逃げていったのであった。