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平安屋敷の赤い目

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平安屋敷の赤い目

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【序章】


 ガラッ! ガラッ! ガラッ!

 建てつけの悪い扉を身体ごと思い切り横に引いては、その先の光景に絶望を覚える。

 音楽室。教室。屋上。
 開いた扉の先はどれもこれも彼女、片野 ももか(かたの・ももか)の求める場所とは違っていた。
「っ! あった!!」
 焦燥しきった顔に歓喜の笑みを浮かべて見つけた扉――校庭に続くはずのそこから飛び出そうとして、
ももかは震える足を慌てて内側に引っ込める。
「これ……何?」
 目の前に広がっていたのは青空では無く、黒い絵の具をぶちまけた様に永遠と続く暗闇だったのだ。
「外に出なくちゃ……でも、玄関はどっちなの!?」
 扉の取っ手を掴んだまま、ももはその場にへたり込み絶望の声を上げる。
 助けを求めるようなももの声は頼りなげに木霊するだけで、返事等到底期待は出来なかった。

 そうだ、もう誰も頼る事は出来ない。

 味方だという言葉も信用出来ない。

 ももかは意を決して再び走り出す。
 足は自分でも驚く程重い。これ程の疲れを感じた事等無かった。
 そういえば靴は途中階段で足を捻った時に落としてしまったので、もう片方も邪魔になって脱いだから、
足の裏がいやに冷たい。
 今朝お祭り用に何時もより可愛いものにしようと選んだシュシュはもう解けて落としてしまった。
 魔法力はもう残っていない。雷術はもう使えないだろう。
 頼みの綱の白の魔剣も振り上げる力が残っているかどうか分からない。

 行く先に絶望しか見えていなくても、だからこそ彼女は走り続ける。
 出口を探して。この恐怖から抜け出す道を探す為に。
「助けてくれ! 助けてくれ」
 扉の向こうで声が聞こえても、背中の向うで肉が裂かれる音が聞こえても、
ももかは耳を塞いで聞こえないふりをして走り続ける。
「……人が死んでるのなんて怖くないもん。
 自分が殺されるより……
 100万倍マシだもの!!」

 ただただ必死で、この絶望から逃げ続ける。